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異世界サバイバル~スキルがヘボいとクラスから追い出されたけど、実は有能だったテイムスキルで生き延びる~

三門鉄狼

STAGE1 第3話 負傷と襲撃

「いってえ……」

 オレは崖に背中を預けて座る。

 上を見れば生い茂る樹の葉が邪魔で、さっきいた崖の上の様子もわからない。

 だが、勇見たちはもういなくなっただろう。

 なに考えてるんだ、あいつは。

 下手すりゃ死んでたぞ。

 いや、もしかしたら、殺すつもりだったのか。

 コンビニがあるという話をしていたけど、ほかに食料を確保できる場所があるかはわからない。コンビニだって、やがて在庫がなくなるだろう。

 そういうときのために、役に立たないスキルを持ってる奴、あるいはクラスから嫌われてる奴は、あらかじめ排除しておく。

 それくらい考えてもおかしくない。

 まあ、勇見は、そこまで考えたというより、単にオレにムカついてただけっぽいけど。

 とにかく、オレはあいつから攻撃を受けた。

 クラスメイトと協力して生き残るという選択肢は、なくなったわけだ。

 ってことは、

「これも、自分でなんとかしなきゃいけないのか……」

 オレは右腕を見る。

 押さえている左手の、指の隙間から赤い血が滲んできていた。

 ズキンズキン、と脈打つような痛みが、脳へ伝わってくる。

 崖から落ちたときに、樹の枝かなにかにやられたらしい。

 これはマズい。

 放っておいたら、感染症にかかるかもしれない。

 早く治療したいけど、こんなところじゃ包帯も消毒薬もないし。

 どうすりゃいいんだ?

 ……くそ、なんかぼうっとして頭が回らない。

 怪我のせいで貧血になってるのかもしれない。

 なんの対策も思い浮かばず、ただ座り込んでいると……。

 ドスン!と激しい音が響いた。

 また地震か?

 そう思ったが、どうやら違うようだ。

 音は、定期的に響いてくる。足音のようだ。

 そしてそれは少しずつ大きくなっていく。

 つまり――近づいてくる。

 なんだろう。オレの血の臭いでも嗅ぎつけたのか?

 だとしたら、ここにこうしているのはマズい。

 せめてどこかに隠れないと。

 オレはよろめきながらもなんとか立ち上がると、手近の草むらに潜り込む。

 大して意味はないかもしれないが、さっきの場所に丸見えの状態でいるよりはマシだろう。

 しゃがみ込んで、音のするほうを見る。

 ――そこにいたのは、巨大なトカゲだった。

 体長は五メートルはあるだろうか。

 尾をぶんぶん揺らしながら、脚を振り回すように動かして、森を闊歩している。

 地震かと思った音は、尾が地面にぶつかるたびに発生している。

 あんなのに見つかったら、確実に一呑みだろう。

 オレは息を殺してオオトカゲの動きを見守る。

(……ん?)

 なんかこいつ、オレに向かってきてるわけじゃないっぽいな。

 オレが隠れている草むらの前を斜めに通り過ぎて、さっきオレが座っていた崖の近くへ向かっていく。

 オレのほうには見向きもしなかった。

 なんだろう。鼻が悪いのか、あるいは、こんな見た目で草食なのか。

 まあ、なんにせよ助かった――と思っていると。

『ヤット、オイツイタ』

『ウマソウ』

 そんな声が聞こえた。

 オオトカゲのほうからだ。

 まさか見つかったのかと思ったが、あいつはオレのほうなど見ていない。

 ということは、あのオオトカゲは、初めからべつの奴を狙ってたってわけか。

 ってことは、あっちに、かわいそうな獲物がいるのか。

「…………」

 オレは、何気なく、そちらに目を向けた。

 そして、そこに見知った姿を発見して、思わず声をあげてしまった。

「みるく!」

 そこにいたのは、オレが飼育係として世話をしていたウサギだった。

         ☆

 学校の飼育小屋で飼っていたウサギは二匹いた。

 一匹は、白い毛並みのみるく。

 もう一匹は、茶色い毛並みのここあ。

 といっても、どちらも名前がついていなかったので、オレが勝手につけたのだが。

 その白い毛並みのみるくが、オオトカゲに襲われかけているのを見て、オレは、

「みるく!」

 思わず草むらから飛び出していた。

 腕から出血しているのもかまわず、みるくを抱きかかえると、そのまま走り出す。

「うおおおお!?」

 するとオオトカゲは、すごい速度で脚を動かし、激しく尾をぶん回しながらオレを追いかけてきた。

 こいつ、こんなに速く動けたのかよ!

『エモノ、カエセ』

 そんな恨みがましい声が聞こえてくる。

 まったく、なにやってるんだオレは。

 あのままやり過ごせば、オオトカゲがみるくに気を取られている間に簡単に逃げられただろうに。

 と、数秒前の自分を罵っても仕方がない。

 勝手に身体が動いてしまったのだ。

(それにしてもしつけえな!)

 あのサイズの巨体からしたら、ウサギなんて、人間でいうところのタコ焼き一個くらいのもんだろうに。

 背後からは、ドスンドスンドスンドスン! と足音が迫り続けている。

 オレは振り返る余裕もなく走り続ける。

 くそっ、頭がフラフラしてきた。

 そもそもオレは怪我で貧血気味だったのだ。

 そんな状態でこんな激しい運動なんて、無茶に決まってる。

 このままじゃ、みるくと一緒に、オレもオオトカゲの餌食だ。

 どうすりゃいいんだ。

「仁飼くん!」

 と、不意にオレを呼ぶ声がした。

 とうとう幻聴が……と思ったけど、声は何度もオレを呼ぶ。

 視線を向ければ、前方に、小見川さんの姿があった。

「こっちだよ、仁飼くん。飛び越えて」

 オレと彼女の間の地面には、一メートルくらいの幅の割れ目があった。

 オレはそこを飛び越えた。

 背後を振り返る。

 オオトカゲがすごい勢いで迫ってくる――が。

『ヤバイ、トマレナイ』

 そんな焦った声が聞こえたかと思うと。

 オオトカゲはそのままの勢いで、頭から割れ目に突っ込んだ。

 四本の足が地面から離れて動けなくなり、バタバタともがいている。

 そうか。

 こいつ、巨体に似合わず動きは速いけど、ジャンプはできないんだな。

「仁飼くん、今のうちに」

 小見川さんに言われて、オレは彼女に続いて走り出した。

         ☆

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