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転生したらスライムだった件

伏瀬

第一章 初めての友達 (2)

 何故かって? 決まってるさ!

 暇、DA・KA・RA、だよ!


 自分がスライムだと、嫌々ながらも認めてから結構な日にちが経ったと思う。何日経過したのかまではわからないけど……。何しろ、暗闇では時間の感覚が全くないのだ。



 その日々で実感したのだが、スライムの身体というのは思ったよりも便利だった。腹も減らなければ、眠くもならない。つまり、食事も睡眠も不用なのだ。

 もう一つ判明した事がある。

 この場所には不確かながらも、他に生物はいないようなのだ。お陰で、命の危険を感じる事もない訳で……。ただただ、暇な毎日を送っていたのだ。

 この間、あの変な声も聞こえなかった。今なら相手してやってもいいのだが。

 で、仕方なしに草を食っている。

 他に出来る事が何もないのだから、仕方ない。暇つぶし感覚で食べているのだ。

 今では、吸収した草が体内で分解され、成分がより分けられて蓄積されていく様子が、感覚でわかるまでになった。

 そこに何の意味があるかと問われれば、意味はないのだが。

 何かをしていないと狂ってしまいそうで、怖かっただけだ。

 ここ最近で慣れてしまった、吸収・分解・収納を繰り返す。

 ここで不思議な点があった。

 今まで一度も排泄行為をしていないのだ。

 スライムだから必要ないと言えばそれまでだが、では、この収納されたモノはどこに行ったのだろう?

 感覚では、元の形態から変化しているようには感じない。

 どうなっているんだ?


《解。ユニークスキル『捕食者』の胃袋に収納されています。尚、現在の空間使用量は一%未満です》


 なんだと? 返事キターーー!!

 しかし、いつの間にスキル使用したんだ? NO! と答えたはずなのに。


《解。ユニークスキル『捕食者』は使用されておりません。体内に取り込まれた物質は、自動で胃袋に収納される設定になっています。これは任意で変更可能です》


 なんだと? 今度は返事がスムーズにきたな。いや、それは置いておいて……。

 という事は、スキルを使用すると、どうなるんだ?


《解。ユニークスキル『捕食者』の効果――


 捕食:対象を体内に取り込む。ただし、対象に意識が存在する場合、成功の確率は大幅に減少。効果の対象は、有機物・無機物に限らず、スキル・魔法にも及ぶ。


 解析:取り込んだ対象を解析・研究する。作成可能アイテムを創造。物質が揃っている場合、コピーを作成する事も可能。術式の解析に成功すると、対象のスキル・魔法の習得が可能。


 胃袋:捕食対象を収納する。また、解析により作成された物質の保管も可能。胃袋に収納されると時間効果が及ばない。


 擬態:取り込んだ対象を再現し、同等の能力を行使可能。ただし、情報の解析に成功した対象に限る。


 隔離:解析の及ばない有害な効果を収納する。無害化を行い、魔力に還元。


 以上の五つが主な能力です》


 え? ……え?

 久々に動揺した。何か、凄い能力に聞こえたぞ……。決して、スライム如きが所有していい能力ではないような。

 待て、それ以前に俺の質問に答えてくれる声、これはなんだ? 誰かいるのか?


《解。ユニークスキル『大賢者』の効果です。能力が定着した為、反応を速やかに行う事が可能となりました》


 大賢者か……。馬鹿にされてるのかと嘆いていたが、今となっては頼もしい。これからも頼りとさせて貰おう。

 というか、この際なんだっていいさ。

 この果てのないと思われた孤独が癒されるのなら。

 もしかしたらこの〝声〟は、俺の創り出した幻聴なのかもしれない。でもそれでもいい。

 俺は、久しぶりに自分の心が軽くなったのを実感したのだった。



 現在、俺がスライムに転生して九十日が経過した。

 正確には、九十日と七時間三十四分五十二秒である。

 何故ここまで正確に断言出来るのか? それは、ユニークスキル『大賢者』による補正効果だ。

 いやー、このスキル、マジで便利。困った時の『大賢者』である。俺が感じた疑問に、なんでも答えてくれるのだから。

『大賢者』によると、スキルが俺の魂に定着するのに九十日かかったそうだ。ただし、本来ならば会話による返答など出来なかったとの事。俺の疑問に答える為に自己改造を行い、〝世界の言葉〟の権能の一部を流用したのだと説明された。

 通常では、疑問に対して心に言葉が響く、などという便利な能力はないらしい。世界の改変が行われたり、スキルの獲得や進化が行われた際に、〝世界の言葉〟が響くのだとか。

 もっとも、スキルの獲得や進化が普通に行われている訳ではないようだ。何らかの成長を世界が認めた際に、まれに獲得出来る事があるのが『能力スキル』らしい。『進化』など、それこそ普通の人には縁のないものなのだそうだ。

 全く意味がわからなかったけど、そういうものだと割り切った。

『大賢者』が質問に答えてくれるようになったが、あくまでも受動的で自我はないのだ。

 こちらから話しかけないと、向こうからこちらへの問いかけはない。そこが残念な所でもある。

 しかし、言葉のキャッチボールが一方通行でも可能なのは嬉しい事だ。

 自分のスキルと会話なんて、元の世界では変な妄想乙って所だが……。


 という訳で、真っ暗闇で他にする事もなかった俺は質問しまくったのだ。

 その結果、間違いなく俺はスライムになっている事が判明した。

 空腹や睡眠が必要ない理由も判明した。

 この世界のスライムとは、魔素を吸収出来れば食事を摂る必要がない。魔素の濃度の少ない地方では、モンスターなり小動物なりを吸収して魔素の補充を行うらしい。

 故に、この世界では珍しく、魔素の薄い地方のスライムの方が凶暴で強いらしい。普通は、魔素の濃度の濃い地方の方がモンスターの強さも上なのだ。

 つまりこの場所は、食事の必要がないくらいに魔素が濃いのだ。

 そして睡眠に関しては、


《解。スライムの身体は全てが同一の細胞の集合体です。一つ一つの細胞が脳細胞であり、神経であり、筋肉なのです。故に、思考する演算細胞が持ち回りで休憩する為に、睡眠は不要です》


 との事だった。

 俺の記憶はどこに記録されるのか?

 恐らく、PCのHDDでいう所の、RAIDのような状態になっているのではなかろうか?

 と考えたら、《大体あっています》と返答された。

『大賢者』は意外に相槌が上手いヤツだ。

 で、気になった『大賢者』のスキル効果は五つ。

  思考加速:通常の千倍に知覚速度を上昇させる。

  解析鑑定:対象の解析及び、鑑定を行う。

  並列演算:解析したい事象を、思考と切り離して演算を行う。

  詠唱破棄:魔法等を行使する際、呪文の詠唱を必要としない。

  森羅万象:この世界の、隠蔽されていない事象の全てを網羅する。

 というものだった。

 森羅万象だと? これは全ての知識が労せず手に入ったのか!? と思ったのだが……。

 実際には、俺が触れた情報に対して、俺の知りえる事柄にのみ、情報開示が可能との事。

 つまりは、一度認識する必要があるが、理解出来た事柄に関しては解析可能な能力という事のようだ。

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