話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

レベル1の最強賢者~呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れ最強に~ (ブレイブ文庫)

木塚麻弥

02 新たな始まり (1)


 気づくと横たわっていた。

 何だか身体が重い。

 周りは暗く、何も見えない。

 自分の身体の周りを、何か柔らかいものが包み込んでいるのがわかる。

 手を動かしてみる。

 ──動いた。

 でもなぜか動かせる範囲が狭い。

 その後も身体を動かそうとするが、思うように動かない。

 あまりに動けないので、状況を整理してみることにした。

 俺は西条遥人。十七歳だった。生前の自分のことはわかる。邪神のことも覚えている。結局、アイツが俺を転生させた理由すら聞き出せなかった。

 ほんとに転生しているんだろうか? さらに、呪いをかけられたらしいが……。確認する手段がない。

 しかし、なんで俺に呪いをかけたんだ?

 わざわざ転生させて、呪いをかける意味があるのか?

 ステータスが固定されていれば、レベル上げをしまくって魔物相手に無双とかはできない。レベル1のままでは、スライムやゴブリンなどの雑魚にも負けるかもしれない。でも、俺には元の世界での知識があるから、いわゆる知識チートでこっちの世界でも何らかの方法で一般人よりは有利になるはず。……なるよな?

 ネット小説では、スキルが弱くても知識チートでマヨネーズとか作って大金を稼ぎ、ハーレムを作り上げた主人公がいた。きっと俺も、そうなれるはず!

 やはりまずは自分の状況を確認したい。動かしにくいが身体は動くのだ。思いっきり手を前に伸ばしてみた。

「あんっ」

 ──!?

 凄くやわらかいものが手に当たった。同時に色気のある女の声が頭の上の方から聞こえた。

 えっ? な、何これ!?

 俺を包み込んでいるものがモゾモゾ動いたかと思うと、急に周りが明るくなった。暗闇で目を開けていたせいで、眩しくて前が見えない。上半身を押さえていたものがなくなって自由になった手を目の前の光にかざす。俺の前に誰かがいるのが、ぼんやりと見えてきた。

「申し訳ありません、ハルト様。苦しかったですか?」

 黒髪ショートヘアの美女が、俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。幼さの残るその顔とは不釣り合いなほど、たわわに実った胸を俺の前に突き出す体勢が非常にエロい。

 彼女はティナ。俺の専属メイドだ。

 ティナはハーフエルフという種族で、尖った耳がショートヘアから少し見えていた。まるで何年も前から彼女を知っていたかのように、彼女のことがわかる。

 ──いや、俺は彼女を知っている

 何せ俺がこの世界に生まれて五年、ずっと世話をしてくれているメイドなのだから。

 記憶が戻ってきた。戻ってきたというのもおかしいかもしれない。今の俺には、この世界で生きてきた記憶がある。おそらく俺はついさっき、このハルトという五歳児の肉体に転生したのだ。

 元々この肉体にあったハルトの魂と、遥人の魂が混ざり合い、今のになった。西条遥人として異世界で暮らしていたことも、神界での邪神との会話も夢のように感じる。

 しかし俺は、元の世界の知識をしっかりと覚えていた。

 ハルト=ヴィ=シルバレイ

 それが俺の、今の名前だ。

 シルバレイ家は俺が住む国『グレンデール王国』の伯爵家だ。俺はその伯爵家の三男で、二日前に誕生日を迎え、五歳になった。

 ティナは俺の世話係だ。寂しがりな俺のために、毎日一緒に寝てくれていた。手を全力で伸ばしたせいで、ティナの胸を押して彼女を起こしてしまったようだ。

「……ごめん。少し、嫌な夢を見てた気がする」

「そうですか。では、こうしたら落ち着きます?」

 ティナに正面から抱きつかれた。やさしい匂いに包まれる。

「私はいつも、ハルト様のそばにいますからね」

「う、うん」

 すごく落ち着く。

 ティナにあやされて、五歳の俺は瞬く間に眠りについた。


 ──***──


 翌朝、ティナに用意してもらった朝食を食べ終えた俺は、屋敷の中庭にいた。ティナは朝食の片付けをしている。

 俺はまず、邪神の言っていた呪いについて確認することにした。

「ステータスオープン」

 そう唱えて手を前に突き出すと、半透明のボードが浮かび上がった。この世界の人間は誰もがステータスボードで自分の状態を確認できる。ティナに教えてもらった記憶があり、俺はステータスボードの出し方を知っていた。まずは自分のステータスボードの内容を見てみよう。


 名前:ハルト=ヴィ=シルバレイ

 種族:人族

 加護:なし〘固定〙

 職業:賢者(レベル1)〘固定〙

 体力:3030〘固定〙

 魔力:1010〘固定〙

 物理攻撃力:10〘固定〙

 魔法攻撃力:10〘固定〙

 防御力:10〘固定〙

 素早さ:10〘固定〙

 器用さ:10〘固定〙

 技能スキル:なし〘固定〙

 状態:呪い(ステータス固定)〘固定〙


 ──こんな感じだった。

「……マジか」

 本当に呪いがかかっていた。邪神が言っていた通り『ステータス固定』という呪いだ。さらに、この呪い自体にも〘固定〙がかかっている。

 種族は固定されてないので、人間以外になることはできるようだ。いや、人間辞めて何になるってんだよ!? そもそも種族って変えられるもんなのか?

 加護も『なし』で固定されているため、邪神以外の神様から加護を貰うことも難しそうだ。

 この世界では職業のレベルが上がると、ステータスが上昇する。そのレベルの上限は300だ。そして職業には一次職、二次職、三次職と、それぞれの見習い職が存在し、ある一定のレベルに達するとひとつ上の職業に『転職』ができる。

 通常、レベル1であれば近距離物理攻撃系の『戦士見習い』か、遠距離物理攻撃系の『弓使い見習い』、攻撃魔法系の『魔法使い見習い』、補助魔法系の『白魔法使い見習い』という一次職見習いのどれかになるのだが──俺はレベル1でありながら、三次職である賢者になっていた。

 この世界には『転生者特典』というものがあると、昔ティナから聞いた記憶があった。異世界から転移や転生してくると、その転生した時点で三次職になれるのだ。おそらく俺はそれで、賢者になれたのだ。

 ちなみに、ここグレンデールにおいて最強と言われている騎士団長がレベル130だ。

 レベル130とは単独でオークキングやオーガといったAランクの魔物を討伐できる強さで、この世界ではかなりの強者の部類に入る。その騎士団長でさえ、『剣闘士見習い』という三次職の見習いだ。

 つまり、三次職ってすごいのだ。賢者の俺って、すごい存在なのだ。

 本来のステータスであれば──

 だけど、俺は転生者特典で三次職になれたとしても意味がない。なぜなら、レベルを上げられないのだから。

 レベルだけではなく体力や魔力、攻撃力、防御力すらも固定されている。職業が賢者だといっても、魔力量が10しかないので魔法をたくさん放つことができないし、使えるとしても下級魔法しか使えない。また、魔法攻撃力が低いので、魔法一発の威力も低いはずだ。

 この世界で強くなるのは絶望的だった。転生させた理由すら説明せずに、こんな呪いをかけた邪神に殺意が湧いてくる。


 絶望すべきことが、もうひとつ判明していた。

「レベル1の最強賢者~呪いで最下級魔法しか使えないけど、神の勘違いで無限の魔力を手に入れ最強に~ (ブレイブ文庫)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます