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嫌われ勇者を演じた俺は、なぜかラスボスに好かれて一緒に生活してます! (ブレイブ文庫)

らいと

一章 離反される勇者 (2)

「あんたが仲間!? 冗談じゃないわ! あんたなんかもう仲間でもなんでもないわよ! あたしたちへの仕打ちはともかくっ、敵を前にしても戦わず、救うべき人たちの手を掴まないどころか、払い除けるようなあんたは、仲間以前に人間として信用できないわ!」

「うむ。先ほどソフィアが言ったように、ここから先は生きて帰ってこられるかもわからない命懸けの戦場だ。そんな死地に、そなたのような者と共に向かうなど自殺行為でしかない。下手をすれば、魔神や魔物の前にそなたに殺されかねん。そのような無意味な死を迎えるなど、ワシは御免被る」

「わ、わたしは魔法を使う時、どうしたって隙ができます。厳しい戦いになればなるほど、わたしは誰かに頼らなくてはいけません……せ、戦場で誰かを頼ることは、その相手を信頼していなければ難しい……でもアレスさんは、わたしの……わたしたちの信頼を裏切った……もう、一緒に戦うのは、無理です」

 仲間であった三人から、口々に「信用できない」と言われ、冷え切った視線を向けられる。

 しかし、それでも俺は食い下がった。

「マルティーナ! お前はこの戦いの功績で王都の騎士団長に任命される約束だっただろうが! 誰がその口添えをしてやったと思ってんだ!? 俺様だろうがよ! ここで逃げたら、それもパーになるんだぞ!?

「気安く名前を呼ばないで! あんたにお膳立てされた騎士団長なんて、死んでもお断りよ!」

 マルティーナはそれだけ言うと、そそくさと踵を返し、足を速めて遠ざかっていく。

「ソフィア! お前だって魔道図書館の司書長になる道が閉ざされるんだぞ! それでもいいのか!? 今ならまだまだ間に合うぞ!」

「す、すみません。わたしはもう、あなたと一緒にいたくないんです。それに自分の夢は、自分で叶えます。あなたの力は借りません」

 真っ向からの拒絶の言葉を吐き出して、ソフィアはマルティーナの後を追った。

「トウカ! お前、たしか国の実家を再興したいとか言ってよな! ここで俺を見捨てて、それが叶うと思ってんのか!? 考え直せ! 俺様なら簡単に家を復興することができるんだぞ!」

「生憎と、ワシも彼女たちと意見は同じ。そなたの力など借りたくもない。いや、そもそもそなたのような最低な男に、我が家の復興など叶えられるはずもないだろう。それでは達者で。地獄に落ちるがいい」

 辛らつな言葉を残して、最後のトウカも俺から遠ざかっていく。

 俺は、こちらに一瞥もくれることなく遠ざかっていく三人の背中を、手を上げたままの体勢で見送ったのだった──。

「……ふぅ、ようやく全員、パーティーから抜けたか」

 三人が去った後、俺はぽつんと荒野の前で取り残されてしまった……

 だというのに、俺はこの状況に、心の底から安堵している。

 やれやれ、と腰に手を当て、彼女たちが消えた地平の彼方を見送り、小さく苦笑を浮かべる。

「わりぃな……俺はお前らを、最後の戦いには連れて行けねぇよ」

 そう。俺はこの瞬間をずっと待っていたのだ。


 徹底的なまでに嫌われ者となり、仲間に見捨てられるこの時を──


「どう考えても、魔神との戦いで生きて帰ってこれるとは思えねぇからな」

 敵は世界を混沌に陥れようとしている最強最悪の魔神、デミウルゴス。

 元々は創造神であったと伝えられているが、何がどうしてか、デミウルゴスは世界中で破壊の限りを尽くそうと、魔物という存在を創造した。

 それに対抗する手段として、俺たち人類は女神から【ジョブ】という戦う術を授かったのだ。

 ジョブは子供が成人したときに、神託として自然に身につくものである。世界にはあらゆるジョブが存在し、複数のジョブを授かる者も中にはいるとか。

 そんな中、俺は最強にして無敵のジョブ、勇者に選ばれた。勇者は一度見た全てのジョブの力を得ることができるという、破格のジョブである。俺が勇者であるとわかったとき、この世界を救う使命を国王より賜った。

 そして最初に仲間になったのが、聖騎士のマルティーナだったのだ。彼女は王からの指名で俺の護衛となり、それからしばらくして、賢者のソフィアがパーティーへ加わり、最後にトウカが俺たちの仲間になったというわけである。

 その後、パーティーは勇者の力を育てるために、各所にいる貴重なジョブ持ちのいる町を訪ね、俺という存在を強化していった。


 だが、俺はある小さな田舎町で、デミウルゴスという存在について知る機会を得た。


 そこで知ったのは、デミウルゴスの簡易的な能力の概要であった。

 いわく、デミウルゴスには魔法攻撃が通用せず、物理的なダメージしか受け付けない。

 更に、デミウルゴスは戦闘中に、魔物を創造してくるらしい。しかも強さはどんなに低くてもA級以上。一般的に魔物にはその強さによってF~S級までのランクが存在する。A級以上ということは、最低でも飛竜ワイヴァーンクラスが出てくるということだ。A級の魔物は、一体で小規模な町程度なら滅ぼしてしまえるだけの力を持っている。討伐するためには、訓練された兵士が五〇人は必要になると言われている。それだけの力を持った魔物を創造してこちらにけしかけて来るのだから、魔神の力が如何に規格外かがわかるというものだ。

 そして最後に、デミウルゴスは世界に存在するあらゆる魔法が使えるらしい。そのうちのひとつ、【魔力障壁】という防御魔法が、こちらの魔法攻撃が届かない要因であるという。それを突破するためには相手の魔力切れを狙うか、より強力な魔法で撃ち抜くしかないのだとか。

 だが、とてもではないが創造神であったと伝えられているような存在の魔力を枯渇させることは到底不可能なうえ、魔力障壁の強度はどれだけの威力をもってしても突破は困難。唯一の可能性として残されているのは、自爆魔法くらいなのだそうだ。それも超一流の魔法使いが使う、捨て身の一撃でようやく、数秒の間だけ魔力障壁を剥がすことができる。

 どんなチートだという話である。

 その話を聞いたのは、老獪なじいさんだったが、どうやら過去に一度だけ、デミウルゴスと対峙したことがあるそうだ。そのじいさんの正体まではわからなかったが、俺はその話を信じることにした。

 だが、その話を信用した俺は、マルティーナ、ソフィア、トウカの三人を、デミウルゴスとの戦いに参加させることが、できなくなっていた。

 結果、話を聞いたその日から、俺の嫌われ者になるための生活が始まったのだ。

 彼女たちはいずれも責任感が強く、世界を救うためならばたとえ命に代えてでもデミウルゴスを討とうとする。俺が、デミウルゴスの危険性を訴え、パーティーから外そうとしようとも、きっと抵抗し、俺と共に戦うと言ってくれたであろう。だが、俺は彼女たちの死を受け入れられるほど、覚悟ができていなかった。そして思いついたのが、彼女たちから徹底的に嫌われて、彼女たちの方から離反していくように仕向けることであった。

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