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異世界征服記~不遇種族たちの最強国家~ (ブレイブ文庫)

未来人A

序章 異世界転移 (2)

 リアルでは普通の大学生であるペペロン。当然、普段こんな喋り方はしていない。王様なので、なんとなく王様っぽく振る舞いたくなって、こんな口調になっている。

 最初は若干の気恥ずかしさを感じたものの、慣れると意外と楽しい。本当の王様気分を味わうことができた。ちなみに休むというのは、一旦ゲームをやめるという意味だ。

 区切りの良いところまでプレイしたし、だいぶ疲れてきたので、ここらで一旦ゲームをやめようとペペロンは思ったのだ。

 ゲームを終了するには、スタート画面を開き、終了のボタンを押せばいい。セーブはこの玉座に座った時点で、自動的にされるので行う必要はなかった。

 終了し、しばらく視界が真っ黒に染まる。

 十秒ほどこの状態になり、徐々に現実の視界が戻ってくるようになっている。

 しかし、

(あれ? やけに長いな)

 三十秒くらいたっても視界は真っ暗なままだ。

 何だ? 事故でも起きたのか? ペペロンは不安になる。滅多に起きないが家庭用VRゲームでログアウトできなくなる状態になることがあった。大概はVR技師の人に頼めば、何とかなるのだが、極々稀に深刻な事態に繋がるケースもある。

 しかし、不安は杞憂だったのか、一分ほど経過して視界が戻ってくる。

 よかった、とペペロンはほっと一安心する。

 だが、安心できたのは束の間だった。彼は仰向けで寝ていたのだが、天井を見て異変に気付く。木の天井。明らかに自分の家の天井ではない。

 ペペロンは混乱して、目だけで周囲を見回そうとする。その時、

「お目覚めになられましたかペペロン様!」

 心配するような女性の声が聞こえる。ペペロンは声が聞こえた方を見た。そこにいたのは、耳がとんがったエルフの女性。ペペロンはその女性に見覚えがあった。

「ララ……なのか?」

「はい、そうでございます」

 現実と区別が付かないほどリアルな外見のララが、心配そうな表情で返事をした。

(……は? どうなってんだこれ)

 ペペロンは激しく混乱する。ゲームが終了したはずなのに目の前にララがいるのも、ララのグラフィックがありえないくらいリアルなのも、現在どこにいるのかも、何一つ分からなかった。

 ペペロンは自分の手や胴体を確認する。手や足が小さい。体はぺペロンのままだ。

「三日もお目覚めになられないので、本当に心配していたのです。お体に何か障りはございませんか?」

 ララは、ペペロンに顔を近づけて顔色を見る。ペペロンもララの姿をじっくりと見る。

 金髪の髪に、瑠璃色の瞳、エルフの特徴であるとんがった耳、きめ細かい白い肌、服は防御性能の高い高価なドレスを身につけている。

 おかしい。間近で見ても実際の人間と全く同じ質感だ。マジック&ソードのグラフィックにしては絶対にありえない水準だ。グラフィックだけじゃなく匂いもリアルだ。女の子の何とも言えないいい匂いが漂ってくる。ペペロンはララを観察しながら、ありえない事態が起きていると確信する。

 まるで、ゲームが現実になったようだ……

 異世界転移……

 馬鹿な、それこそありえない。ペペロンは首を横に振る。

 異世界転移なんて数十年前にブームが終わって、今じゃ完全に古典扱いされている。そんなのに巻き込まれているわけがない。アップデートでもされたんだ。ペペロンはそう考えるが、でも、視界が暗くなっていたのは一分程度だし、その間にアップデートなんてできない。仮に出来たとしても? ここまでリアルに出来るアップデートなんて、できやしないよな……と自分の考えを否定する。

「どうなさいました? ペペロン様?」

 ペペロンが黙って首を振ったり唸ったりしているので、心配したララが話しかけてくる。

 その心配している表情が非常にリアルだった。表情や仕草など、今まではどこか違和感を確実に感じていたが、それをまったく感じない。

「少し、失礼する」

 ペペロンは不意に、ララの頬を触ってみる。

「あ……」

 温かい。人の肌のぬくもりを手に感じる。感触もリアルな人の肌の感触だ。

 これほどリアルに再現されているVRゲームは今までやったことがない。あるのかどうかも疑わしい。マジック&ソードの世界に、転移したという疑惑が、ペペロンの中で確信に変わりつつある。

 しかし、どうしても信じられない。あり得なさすぎる状況だからだ。

「すまない。もういい」

 ペペロンはそう言って、ララの頬から手を離した。「もう少し触ってくださってもいいですよ……?」と小声で名残惜しそうにララは呟くのだが、ペペロンの耳には届かなかった。

 ここがゲーム内なのか否か、簡単に判別する方法をペペロンは考えついた。

 さっそくその方法を実践。

 ペペロンは右の頬に手をあて、思いっきりつねった。

「っ!」

 痛みが頬に走る。ペペロンは顔をしかめた。

(……これは、本当にマジック&ソードの世界が現実となったのかもな)

 VRゲームで痛覚を感じることは設定をいじればできるが、痛みを感じる設定でも強い痛みを感じることはできない。理由は法律で規制されているからだ。

 タンスの角に小指をぶつけるレベルの痛みでさえ駄目。脛を強く打つだとか、頬を思いっきりつねるだとかも感じることができない。せいぜい少し小突かれたとか、優しくつねられたとか、その程度の痛みが限界である。

 VRゲーム機自体で痛みを感じすぎることがないよう設計されているので、アップデートでどうこうできることでもない。

 ここがVRゲームの世界ではないという一番の証拠になる。

 その証拠を自分自身で感じたが、それでもなお、夢じゃないのか幻覚ではないのか? という考えが頭に浮かんでくる。

 しかし、仮にどんなにありえない光景だとしても、自分の見ている景色が幻覚であり、夢であるだのと考えて行動することはできない。現実であると受け止めて行動するしかない。

 ペペロンは深呼吸する。混乱する頭を少しでも冷静にしようとした。

 そして、状況を正確に把握しようと努める。ペペロンは、周りを見回してみた。

 そばには、心配そうな表情で自分を見つめているララが一人。ほかには誰もいない。

 場所は小さな木作りの小屋だ。木はまだ新しく、建築されてそう時は経っていない。

(仮にマジック&ソードの世界が現実になったとしても、なぜ俺は玉座に座っていないのだろうか? ここはどこだ? 見覚えの無い場所……いや……)

 最初はこの木の小屋は初めて見ると思ったが、よく見ると見覚えがある。

(これは……俺が縛りプレイを始めたとき、初めて作った拠点の小屋じゃないか)

 マジック&ソードで国を作るには、最初に拠点を作る必要がある。最初に作れるのは小さな小屋しかないため、それを作成して拠点にしていた。この小屋は、そのとき作った小屋に酷似している。

 ペペロンの頭にいやな予感がよぎる。

 もしかして、異世界に転移したことによってグロリアセプテムは消えて、最初の小屋の状態に戻ったのか?

 本来なら、自分はログアウト前にいた王宮にいなければならないはずだ。あの時いた大勢の部下はララ一人だけになっている。

(それは、最悪というか……いや、だってあんなに頑張って作ったのに……)

 嫌な予感にこめかみに一筋の汗が流れる。

 そうだ。ララがいる。彼女がもし現実になったのなら、俺の質問に答えてくれるはずだ。

 ペペロンはそう思い、

「ララよ。ここがどこだか分かるか?」

 ペペロンは、ゲームでプレイしているときと同じ口調で質問した。この姿だと、ペペロンは自然と王様口調になってしまうようだった。

「分かりません。気付いたらここにおりました。グロリアセプテムはどうなったのでしょうか……」

「ここに来たのは、お主と私だけか?」

「いえ、ほかにも、ゴブリンのガス、巨人のノーボ、コボルドのポチ、賢魔のエリー、ハーピィーのファナシアの五人が来ております。私以外の者は全て、この地の情報を探るため、偵察に行っております。私はペペロン様の看病をしておりました。ペペロン様を間近で警護するのは私の役目ですから」

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