話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

呼び出した召喚獣が強すぎる件 (サーガフォレスト)

しのこ

プロローグ (2)

 もう一度深呼吸したあとガチャ開始の許可を出す。すると召喚獣を呼び出す準備を始めたらしく、目の前に二メートルほどの魔法陣が出現した。赤い光を放つ魔法陣は、俺の前でグルグルとゆっくり回り始めた。これがソシャゲだったら高レアリティが当たる際に何かしらの演出等があるのかもしれないが、このゲームにそんな演出があるのか分からない。良い結果を祈って手を合わせていると、魔法陣が放つ光を強め、辺りを明るく照らした。

「ぐぅ……」

 魔法陣から発せられる光の強さに思わず目を細める。いち早く呼び出した召喚獣の姿を目にしたいが、光の強さのせいでしっかりとその姿を見ることが出来ない。しばらくして徐々に光が弱くなると、目を細めながらならその輪郭を見ることが出来るようになった。

「うそだろ……。やっちまった」

 大まかな輪郭が見えたことで俺の気持ちが下がっていくのが分かった。βテストや色々な情報で、高レアリティの召喚獣は基本的にサイズが大きいことが分かっている。ただ、俺がぼんやりと見ている召喚獣は明らかにサイズが小さい。一メートル……いや、もっと小さい。俺の目に映る召喚獣は、俺が知っている高レアリティ召喚獣の情報とは明らかに違うものだった。

「きゅい! きゅい!」

 俺が落ち込んでいると、甲高い獣のような声が俺の耳に届いた。音の発生源は間違いなく目の前の召喚獣だ。獣は小さければ小さいほど声が高いが、このゲームでもその規則に従っているんだろうか。そうなると、やはり目の前の召喚獣は今ぼんやりと見えている通りのサイズということになる。つまり、攻略的な意味で言えば俺は外れを引いたということだ。思わずため息が漏れそうになったが、いつまでもうじうじしていられない。決心して目の前にいる召喚獣を確認することにした。光が弱まって視界も開けてきたので、動いても問題なさそうだ。

 ─『ナオ』がエンシェントブラックドラゴン(幼体)を獲得しました─

 俺が目の前の召喚獣に近づいていると、見たことのないテロップが表示された。ダンジョンボスを倒した時には表示されるが、召喚獣を獲得した時にこんなテロップが表示されるという話は聞いたことがない。正式サービスを開始してから新たに追加で実装した機能だろうか。親切な仕様だが、今の俺には少し悲しい。

「いや、この見た目と種族名ならもしかしたらありなのでは?」

 最初は召喚獣の輪郭しか見えていなかったのでかなり失望していた。しかし、よく見てみると外見は手足が短く、目はクリクリしていて可愛らしくてマスコットのようだが、小さいながらも見た目は立派な黒色のドラゴンだ。この子が順調に進化してくれればかなり強くなるのではないだろうか。名前もエンシェントブラックドラゴンというあたり成長したら強そうな雰囲気を漂わせている。

『召喚獣に名前をつけますか? ランダムでの命名も可能です』

 呼び出した召喚獣はすぐに名前をつけなければいけないらしい。案内の声が命名しない俺を急かすように言葉を発してきたので、すぐに名前をつけることにした。

「自分でつけるよ。ついでにこの子のステータスでも覗いてみようかな。こっちにおいで」

「きゅい!」

 俺が手招きすると、ドラゴンはパタパタと小さな翼ではばたいて俺の胸に飛び込んできた。小動物らしい可愛い動きだ。胸に飛び込んできたドラゴンを抱いてあげると、マーキングでもしているつもりなのか、頭をぐりぐりと胸にこすりつけてくる。

「くぅ……」

 小動物的な可愛い仕草に心を奪われながらも、ドラゴンのステータスを確認する。頭の中でステータスの開示を念じると、ドラゴンのステータスが俺の目の前に表示された。ドラゴンのステータスだけ表示していても特徴を掴み辛いので、一緒に俺のステータスも出して比較するか。


 名前:『   』

 種族:エンシェントブラックドラゴン(幼体)

 レアリティ:☆7

 レベル:1

 HP:280/280

 MP:200/200

 筋力:28

 知性:20

 敏捷:19

 器用:10

 幸運:12

 スキル:黒炎Lv1

 ボーナス:ステータス成長補正〈極大〉〈未開放〉〈未開放〉


 名前:『ナオ』

 種族:人族  職業:召喚士

 レベル:1

 HP:100/100

 MP:100/100

 筋力:10

 知性:10

 敏捷:10

 器用:10

 幸運:10

 スキル:召喚術 ボーナス:なし


「いや、これはやばすぎだろ……。☆7って話に聞いたことすらないぞ」

 ドラゴンのステータスを見て俺は目を見開くことになった。確かに可愛らしい見た目とは裏腹に強そうな種族名をしているとは思っていたが、あまりにも初期ステータスが高い。しかも、俺は☆4以上のレアリティがある召喚獣を呼び出せれば良いと思っていたが、このドラゴンのレアリティは☆7なのだ。β時代には様々な召喚獣が呼び出されていたが、一番高いレアリティでも☆6だった。レアリティの☆が一つ変わるごとにかなりスペックが変わってくるので、これまで話に聞いたことすらないレベルの活躍が見込める。驚くべき場所はそれだけではない。このドラゴンが所持しているボーナススキルだ。イオンの補正は極小、小、中、大、極大と表現されているので、このドラゴンが所持しているボーナススキルのステータス成長補正はゲーム内で最高値の補正ということになる。つまり、ボーナススキルによってこのドラゴンは恐ろしい速度で成長していくことになるはずだ。

「きゅい! きゅい!」

 俺が一人で思考を繰り広げていると、早く名前を付けてほしいのか、ドラゴンが俺の方を向いて声を上げた。

「そうだった。ステータスに目を奪われすぎて完全に忘れてた」

「きゅう」

「うぐっ。ごめんって。すぐに名前つけちゃうからね」

 俺が名付けのことを完全に忘れていたのが悲しかったのか、ドラゴンは少し落ち込んでしまった。ついでにお腹にパンチを一発もらったのだが、ステータスが高いためかかなりの衝撃が俺を襲うことになった。ゲームなので痛覚はないが、バランスが崩れた。生まれてすぐなのにこれほどの攻撃を軽く行えるようなドラゴンだ。それなりの名前をつけてあげないと名前の方が負けてしまいそうだ。黒く、果敢に攻めていきそうな名前……。

「そうだっ! 強そうな名前だしビッテンフェルトとかどうかな?」

「きゅうう!」

「ごめっ! ごめん! もっと普通の名前にするから叩かないで」

 俺が付けた名前が気に入らなかったのか、今度は頭をバシバシと叩かれた。あまり適当な名前を付けると、今度はさっきよりも強い一撃を貰いそうだ。

 個人的には力強い名前で気に入ってたんだけどなぁ。

「それじゃ、クロでどうかな? 可愛くて良いと思うんだけど」

「きゅいい!」

 今度の名前は気に入ってくれたのか、さっきのように攻撃をお見舞いされることはなかった。クロはパタパタと小さな翼で飛び上がると、俺の周りをグルグルまわる。天井につけてクルクル回るおもちゃのあれみたいな動きだ。

『初期設定が全て完了しました。始まりの街へ転送します。また、召喚獣は転送先の始まりの街では呼び出していない状態でゲームが始まります。必要な場合は、スキルを使用して獲得した召喚獣を呼び出してください』

 キャラクター設定、召喚獣の設定が終わったので、始まりの街への転送が始まるようだ。案内の後、俺の足元に魔法陣が出現した。

「呼び出した召喚獣が強すぎる件 (サーガフォレスト)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます