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呼び出した召喚獣が強すぎる件 (サーガフォレスト)

しのこ

プロローグ (1)

「おぉ、ここがVRMMOの世界か」

 ヘッドギアを装着して辺りを見回すと、俺が立っているのはリアルではありえないような場所だった。物が一切ない世界が無限に広がり、あたりには光源もないのに明るさが保たれている。ゲームを始める時は家にいたので、改めてゲームの世界へ入れたことを実感する。

 VRMMOとは従来のネットゲームとは違い、五感全てで没入することが出来る、バーチャルリアリティの空間で行われるネットゲームだ。

『イオンの世界へようこそ。これからキャラクターを作成します。まずは名前を入力してください』

 俺がきょろきょろと周りを見ていると、少し機械じみた声が響いた。どういう流れでキャラクターを作っていくかはすでに調べてあるし、ゲームを始める前にどんな名前にするのかも決めていたので、パパっと名前を入力していく。

「『ナオ』でいいかな」

『同一ネームのユーザーが確認されませんでしたので、この名前で登録を完了します』

 今、俺が始めようとしているゲームはe-world Online。通称イオンと呼ばれるVRMMOだ。これまでのコンシューマーゲームと違い、このゲームはキーボードやコントローラーを使ってキャラクターを操作することはない。ヘッドギアを装着し、ゲームの世界に入って自分の体を使ってゲームを遊ぶことが出来る。体を使うといっても、自分の体を本当に動かすわけではない。仮想空間では自分の思考の通りに体を動かせるので、体が不自由な人でも存分にゲームを楽しむことが出来る。イオンはVRMMOの第一号として、今日サーバーがオープンになる。ゲームメーカーによってかなりの台数が生産されたらしいが、全国のゲームショップから即日で売り切れる人気ぶりだ。オークションなどで転売もされていたが、定価の数十倍の価格まで膨れ上がっているのだから驚きだ。

 俺はβテストでは残念ながら抽選落ちしてしまったが、運よく正式版では抽選でゲームを入手することが出来た。このゲームはβテストも相当数のプレイヤーを募集していたが、その時の反響が大きく影響したようだ。入手出来たのは本当にラッキーだった。

 俺が参加した抽選の倍率は二〇〇倍近かった記憶がある。レジでイオンを買った際に、高値で買い取りたいと何人からも声をかけられるぐらいだ。それほどまでにこのゲームは人気だし、入手は困難を極める。

 そんな期待値の高いゲームだが、期待値が高いのは世界初のVRMMOだから、というだけではない。開発時に公開された動画での圧倒的なクオリティや、βテスト時にプレイしたユーザーから高い評価を得ているからだ。

 NPC(ゲーム内にいるキャラクター)には優秀なAIが実装されており、記憶や感情など、ほとんど人間と変わらないレベルで表現されている。関係を築いたNPCから特殊なクエストを受けることが出来たり、サブクエストもかなり豊富に用意されている。農業、釣り、経営など幅広く遊べるので、どんな年齢層でも楽しむことが出来る。これまで挙げたのは従来のMMOでもあった要素だが、イオンはその全てが従来のゲームとは比較も出来ないほど細かく、高いクオリティを誇っている。

「さて、次の設定に進もう」

 名前の入力はすでに済んだし、キャラクターの設定をしていく。そうは言ってもこのゲームにアバター要素はほとんどなく、基本的には現実と同じ体でゲームを遊ぶことになっている。どうにも、リアルの体格とゲームの体格が乖離すればするほどゲーム内のキャラクターの操作に不自由を感じるので、そういった仕様になったらしい。顔に関しては変えることも出来るが、オフ会があった時にがっかりされたくないし、リアルと同じ顔でいいだろう。俺は少し童顔だが、コンプレックスがあるわけでもない。身長は一七五センチと平均より少し高い、今年で二五歳になる普通のサラリーマンだ。

 名前と顔を決定したので、次は職業を決めていく。イオンはキャラクター作成前に職業の選択をしなくてはいけない。

『職業を選択してください』

 案内の声が聞こえると同時に、俺の前に選択可能な職業が表示された。剣士、魔法使い、武闘家、盗賊など様々な職業が表示されたが、俺は予め決めておいた召喚士を選択した。

 召喚士とは、自分の力で戦うだけではなく、召喚獣を率いて一緒にモンスターと戦う職業だ。βテスト時代から不人気の職業だが、それには理由がある。この職業は他の職業に比べてキャラクター単体として見ると弱いのだ。自分の力だけ戦う職業ではないので当然と言えば当然なのだが、せっかくのVRMMOなのに自分が弱いというのが敬遠される理由の一つになっている。召喚士はこのゲームでは不人気職だが、俺としては召喚士の性能は逆に好ましく感じた。自分の力で戦うのも確かに楽しいだろうが、召喚獣を使役して、指示しながら戦うのはロールプレイングゲームで遊んでいた子供の頃から憧れていた。強力な召喚獣を実際に使役して戦うのはさぞかし楽しいだろうし、気持ちが良いと思う。

『キャラクターの作成が完了しました。職業、召喚士を選択したので召喚石を消費して召喚獣を呼び出します。実行しますか?』

 職業を選択し終わったので、次にやるのは俺の相棒決めだ。

 召喚士はキャラクター作成後に、ゲーム開始時から連れて歩く召喚獣を呼び出すことになっている。所謂ガチャだ。β時代には高レアリティの召喚獣が出てくる確率が低いせいで闇鍋ガチャ、何て言われ方をしていた。イオンはキャラクターの作り直しは出来ないので、今から行う召喚獣のガチャが大切になってくる。この召喚ガチャを外してしまうと、どれだけ頑張っても序盤は最前線で戦う召喚士としては今ひとつなものになってしまう。それぐらい今からやる召喚獣のガチャは大切だ。召喚獣にはアイテム同様☆1から☆10までのレアリティが存在する。序盤のマップで入手することが出来る召喚獣は☆1から☆3までなので、最低でも☆4以上のレアリティの召喚獣を呼び出せれば及第点だ。βテストの時には最高で☆6の召喚獣を呼び出したのが最高記録らしい。そんな召喚獣を呼び出したい、なんて贅沢は言わないが、☆2、☆1とかの低レアリティの召喚獣は勘弁してほしい。ここで躓いてしまうと、俺のゲームプランがかなり狂う。

「よし、いける、いけるぞ。今日の俺はきっとついてる」

 最初の召喚獣は重要になってくるので、さっき案内の声を聴いてから心なしか気持ちが落ち着かない。心臓がいつもより早く鼓動を打っている気がするので、深呼吸をして逸る気持ちを落ち着ける。ただ、今回のチャンスを逃したからと言っても高レアリティの召喚獣を入手出来なくなるわけではない。イベントであったり、特定のクエストを攻略することで今回のように高レアリティの召喚獣を呼び出すチャンスはある。仮にスタートダッシュに失敗したとしたら、ゆっくりとそのチャンスを窺うことにしよう。

「ふぅ。召喚獣の呼び出しを始めてくれ」

『召喚を開始します』

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