異世界でも無難に生きたい症候群(サーガフォレスト)

安泰

01 (3)

「『彼女』ならば、違う目線から妙案を出すやも知れません」

「良いだろう、期間として一ヶ月を与える。任せたぞ」

 その実力の高さを認めたくない自尊心もあるのだろう、女性であるイリアスを快く思う騎士は少ない。ラグドー卿は数少ない彼女を高く評価する者だが、少数派のため彼女の地位を確固たるものにできないでいる。

 もしもイリアスが山賊討伐を成功させれば彼女への評価も一新するかもしれないが、失敗すれば目に付くものとしてより下に見られる可能性が高い。

 マリトもイリアスを評価しているが、彼女は真っ当な騎士だ。今回の悪知恵働く山賊に通用するか多少の心配もある。

 何か彼女に光明が差せば良いのだが、とマリトは内心彼女の今後の気苦労を案ずるのであった。



 目覚めました。

 体がとても痛い。筋肉痛というより足が乳酸付けって感じ。

 でも立ち上がる。弱音を吐く相手もいないんじゃ甘えることもできやしない。

 時刻は昼に近い。太陽らしき物はあるがこの世界でも太陽って言うのだろうか? 某ロボットのコンニャク食べたらきっと太陽でOKだと思うけど。

 あの幻想的な森は振り返ってももう見えない。

 スライムはさておき、熊はまた出るかもしれないから慎重に進まねばなるまい。

 ついでに木の実的なものを探しつつ進む。さすがにお腹が空き始めたのだ。

 幸い木苺的な木の実を早い段階で発見。口に含みしばらく様子見。

 甘みがあるが酸っぱさが強く、正直美味しくないが舌に痺れなどはないので食べられそうだ。

 念のため大量摂取は控えて、じっくり味わいながら進む。

 なお難易度が絶賛急上昇中。

「わぷっ、またか……」

 最初にいた場所をスライム地帯と呼んでおこう。この辺はあそこと違い虫がいる。つまるところ至るところに蜘蛛の巣が存在するため不快感が半端ない。

 さらに勾配が急になり始め、真っ当な下山感覚になり始めている。

 蜘蛛の巣に意識を向けていると足元が滑って危うい。

 拾った棒切れを振りながら蜘蛛の巣を払い進む。当然疲労は加速する。

  枝木を掻き分け進む。ちょくちょく引っかかって痛い。

 長袖の服装だったことに感謝。夏で半袖だったら今頃悲惨なことになっていただろう。

 登山中に道を外れて降りていけと言われたようなものだ。道のありがたさを痛感している。

 この山を攻略できれば富士山だってきっと登れるに違いない。体力はつけなきゃだけども。

 正直スライム地帯の方が数倍マシだった。なんか帰りたい。スライム怖いから帰らないけどさ。

 などと考えていると耳に新たな音が入る。

「……ん、この音は」

 そう、この音は心待ちにしていたアレだ。

 足早になり音の方に進む。

 そして視界に移ったのは川だ。

 浅く、細いがれっきとした川。

 感無量で川の辺に駆け寄り水を掬う。

 飲みたいがそこは我慢。上流の湧き水ポイントならまだしも、このポイントは色々心配になる。

 顔と髪を洗い蜘蛛の巣を流す。

 不快感が一気に消えた事でだいぶ気持ちに余裕ができた。

 そんなわけでしばらくは川で休息を取った。

 その後、魚とか取れないかなと思いつつ川を眺めながら歩いていると、衝撃が走る物を見つけた。

 ロープの切れ端である。

「お、おお」

 そりゃ感嘆の言葉も出ますよ先生。異世界に飛ばされたって実感しかなくてこの世界に人がいるのかって問題があったんですよ。

 それが解決しそうなんですよ。これ文明の証拠ですよやっほう!

 というよりこの辺に人が通った形跡があるということはですね、もしかして登山道とかあるんじゃないんですかね? と言うことで周囲を散策。

 するとありましたよ。道とはいえないけど意図的に折られた枝とかさ!

 獣に折られた可能性も示唆したけど、刃物のようなもので切断されているものも発見。これはテンションあがります!

 口がにやけるのを感じながらその道を進んでいく。

 しばらく進むと岩場がちらほら見える地帯に入る。そして──洞窟を発見。

 入り口の横には松明を置くような台座が一対、最近使った形跡も見られる。

 これはもうあれだよね、ついに第一村人発見ですかね!

「……いや、ちょっと待てよ」

 こんなところに住む人種を考えよう。

 スライムがいたんだよ? じゃあゴブリンとかいるんじゃね? 人間だとしても山賊とかじゃね?


 パターン1:ゴブリン

「ニンゲン、クウ。ニンゲンクッテ、ツヨクナル」

「ぎゃー」


 パターン2:山賊

「おう、珍しい服着てるな。全部よこせ」

「ぎゃー」


 パターン3:仙人

「修行」

「ぎゃー」


 アカン、これは見極め必要ですわ。というわけでこの入り口が見えて隠れられそうな場所をきょろきょろ。

 手ごろな場所の床をならし、場所を確保して伏せる。

 しばらくはここで待機するとしましょ。

 待つこと一時間後。寝てないよ? 意識飛んでたけど寝てないよ?

 なにやら話し声が聞こえたので、洞窟入り口の草むらに潜みながら覗く。

 そこには見事に人間が二人ほど、格好はだいぶラフで筋肉質だ。

 やっと人に会えた喜びをぐっと堪える。だってあの人たちThe・山賊って感じだよ? 腰に剣とか斧ついてるよ?

 でも見た目で判断してはいけない。実はめっちゃいい人で将来ブラザーって呼び合う関係になるかもしれない。

 あーいやないわー。なんか人の腕取り出したわー。笑ってるわー。蛮族だわー。

 しかも何言ってるのかさっぱりわかんない。

 方言がきついとかじゃなくて言語が違う。

 少なくともポピュラーな言語じゃないのは確かだし、日本語も通じないだろうよ。

 蛮族の前に言語の通じない異世界人。襲われるしかないわー。

 正直見るのも嫌なんだけどもう少し様子見。取り出された腕には宝石のようなものが金属のチェーンのようなものに取り付けられて巻かれている。

 これは想像だが商人とか金持ち襲って、腕についたアクセサリーを奪う時に外し難いから腕ごと持ってきたーって感じかな。

 なんかどっかの国で腕時計盗む時に腕ごと切り落とすって話を思い出してブルー。

 あまり視線を向けると気づかれるかもなので、そっと隠れなおして洞窟に入るか立ち去るかを待ちましょ。

 しばらくして山賊は洞窟の中に入っていった。

 ただこいつらが通った道ならそれなりの場所に出れそうなんだよな。

 他の仲間と出くわす可能性もあるから怖い、どうしたものか。

 とりあえず洞窟傍にて人が通った道を発見。

 馬鹿正直に行くのは危険と判断して隠れながら進むことに決定。

 すぐそこに楽な道があるというのに、という気持ちを抑え込む。

 こんな山中で山賊とエンカウントするくらいなら苦労する道選びます。

 はい、正解でした。

 隠れながら進んでいたら山賊とすれ違うわすれ違うわ。

 十人くらいすれ違うと言う、一回気づかれかけたし。

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