社内恋愛禁止のオフィスで社長に溺愛されています あなたと秘密のランジェリー【電子書籍限定版】

深雪まゆ

第一章 二つの秘密 (1)

第一章 二つの秘密



 大手下着メーカー「ソレイユ」の営業・販売部で愛花は仕事をしている。以前は短大を卒業したあと、小さな繊維会社で事務員をしていた。しかし勤め始めて二年ほど経った頃、業績が悪化し経営が立ちゆかなくなった。このまま倒産かと思ったときに、なんとランジェリーブランドでも大手のソレイユが買収を申し出てくれたのだ。

 幸運だったのは、そこで働いている従業員全てを引き受けてくれたことだろうか。おかげで愛花も失業せず職に就けている。出世など高望みはしないし、前と変わらず目立ちすぎず平穏に勤められるならそれでよかった。

 この会社の現社長である高瀬は、三十歳の頃に父親からソレイユを任され、社長職に就いたという。まだ社長になってから月日は浅く、年齢も三十二歳である。

 これは会社のホームページに掲載されている、簡単な彼のプロフィールからの情報だ。

 他にも、スポーツ全般が得意で、趣味は体を鍛えること。特にマラソンが好きで、最近は水泳も始めたと書いてあった。

 彼の長身は人目を惹き、引き締まったバランスのいいスタイルはスーツを着用するとさらに際立つ。少し釣り上がった切れ長の目尻は涼しげで、虹彩の色は淡い栗色だ。魅力的なあの目に見つめられれば、たいていの女性なら身動きひとつできないだろう。

 髪の色は落ち着いたアッシュブラウンで、癖がなく見た目よりもずっとやわらかい。前髪は長めだが、その隙間から蠱惑的な目が見え隠れする。

 顔立ちは整いすぎていて、一見取っつきにくい印象があるものの、彼の笑顔をひと目見ると、強く記憶に残ると誰もが言う。

 その反面、愛花の見た目はいたって普通だ。どこにでもいるようなOLで、大勢の中に紛れたら目立つことはない。

 髪はセミロングよりも少し長めの、やわらかな栗色だ。目鼻立ちははっきりしているが、目尻が垂れ気味なのをアイラインやメイクでナチュラルに補正し、できる女、という雰囲気を演出している。それでも子供っぽい印象を隠すことは難しいような顔立ちだ。

 会社には制服があるから、出社時の服はそんなに気合いを入れてはいない。とはいえ、周囲にはおしゃれな女子が多く、変に目立つ服装では会社へ来ないようにしている。

 アフターに力を入れている女子の服装は、やはりひと目で分かってしまう。

 それに比べて愛花は、仕事終わりも週末も色気のあるスケジュールで埋まることはない。あるとしても週末の女子会くらいで、平日は真っ直ぐ帰宅することがほとんどだ。

 洋服の趣味は派手すぎず地味すぎず。流行に乗らない愛花は、露出の少ないものを選ぶ。

 ──洋服のチョイスは地味だけど元はいいから、もう少しセンスのいい洋服に変えれば垢抜けるのに。

 会社の同僚からそんな風に言われたことがある。自信のなさはそのまま愛花の外見を表していた。

 だが一つだけ、こだわって買っているものがある。それはランジェリーだった。

 自分に似合うとか似合わないとかを気にせず、どれだけエッチな気分になれるか、という基準で買うようにしている。それがいかにセクシーで大胆でも、服の下に着ているから見られはしないのだ。だから好きなだけ冒険ができた。

 そうして外見と中身のギャップを一人で楽しむ。もしかしたら、本当の自分は洋服の中の方なのかもしれない、と思う瞬間もたまにあるくらいだ。

 愛花が初めて会社へ着けてきた大胆なランジェリーは、シェルフブラとGストリングだった。

 シェルフブラというのは、トップを覆う布がほとんどなく、バストをワイヤーなどで下から支える形のものだ。カップの部分には、透け感のある黒いレースがデザインされていて、ホルターネックのトップカバーを着ける仕組みになっていた。トップカバーを外せば乳首は丸見えになる。

 Gストリングはフロント部分に小さな布があるだけで、サイドからバックは紐状になっている〝ひもパン〟のような形のものだ。ちょうど尾骨の辺りに黒くて大きなバタフライの刺繍がしてあり、セクシーなデザインが気に入って買ったものだった。

 それを着けてきた日は、一日中ドキドキして過ごした。その高揚感は想像以上で、始業から終業までずっと体が熱かったのを覚えている。

 下着姿になればかなりエッチな感じに見えただろう。だがどんなに大胆でセクシーなランジェリーでも上に白のブラウスとベージュのベストを身に着ければ、真面目で地味な愛花が完成する。

 まさか制服の下にフロント布から秘裂の影が見えるような、過激なGストリングを履いているとは誰も想像しないはずだ。大胆なランジェリーを身に着けて仕事をしている状況に、愛花は密かに昂奮を覚え、それ以来、よりセクシーできわどい下着ばかりを購入するようになった。

 幸い愛花の勤める会社がランジェリーを扱う会社だったのもあり、流行や新作の情報はいち早く入手できる。社員が新作のランジェリーを試着することもあるのだが、今やそれだけでは物足りなくなっている。

 もちろん自社製品は社員なら誰でも社員割引で購入可能だが、愛花が買うのは単に派手なランジェリーではない。特殊な用途で使用されるものばかりで、自分の会社ではあまり扱っていなかった。

 愛花は主に通販で購入しているが、最近ではさらに過激なものにも手を出し始めた。我ながら変な趣味だなぁとも思うが、ネットショップの巡回はやめられない。

 会社では、女性社員が合コンやコンパで知り合った男性の話でよく盛り上がっている。一緒に行こう、と声をかけられることも少なくなかったが、男性との距離感を摑むのが下手な愛花はいつも断っていた。だから以前はセクシーなランジェリーを身に着けたところで、それを披露する場も、相手もいなかった。

 男性が嫌いというわけではないが、自分の変な趣味を受け入れてもらえず、それに傷付くくらいなら自分だけで楽しめばいい、と決めてしまい、最初の一歩を踏み出そうとしなかったのだ。

 だが現在、愛花には文句の付けようがない魅力的な彼がいる。

 朝礼も終わり、みなそれぞれの仕事に精を出す中、愛花はパソコン画面を見つめたまま固まっている。もちろんキーを打つ指は止まっていた。

「どうしたの? ボーッとしてるよ。まあ春のこの時期って仕方ないかな」

 ボンヤリしている愛花へ、隣に座っている同僚のはるが声をかけてきた。

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