高嶺の彼の淫らな欲望 ~エリート課長のイジワルな溺愛~
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彼のことを思うたびに、見かけるたびに心がドキンと大きく高鳴っていく。
身体中が真っ赤に染まってしまうんじゃないかと心配になるほど、熱くなってしまう。
この症状を恋と言わずして、何を恋と言うのだ! そう、力こぶで力説してしまうほどだ。
恋ってこんなに足元がフワフワして羽が生えて飛んでいきそうなほど浮かれてしまうものなのだろうか。
とにかく浮かれている。恋って素敵。片思いバンザイ!! ……いや、両思いの方が断然いいのだけど。
両思いなんて恐れ多いこと言わないから、せめてこの恋に少しの間だけでいいので浸らせていただきたい。
私が、『恋だ、片思いだ』と浮かれて想いをよせている男性は、結城諒一さんと言う。
年齢は私より三つ年上の二十七歳だ。情報システム部所属の超エリート様である。
まず見た目だけで言えば、格好いい、素敵、この言葉に尽きる。
そして、右目の下にある小さな泣きぼくろ。これがまた、彼をより一層色っぽく、魅惑的に見せているのだ。
そんな結城さんは、社内の女子社員、社外の女性……手っ取り早く言えば、結城さんを見初めてしまった女性たちに、彼女の座、もしくは妻の座を狙われているのだ。
とてもじゃないが、そんな競争率高い人の彼女になるなんて無理な話だ。それこそ、恐れ多いことである。特に、恋愛初心者の私には無理。絶対に無理だ。
容姿が整いすぎている結城さんだが、彼の凄さは見た目だけではない。頭もすこぶるよいのである。
なんでも、高校生の頃からシステムエンジニアに憧れていて、かなり勉強をしていたという話だ。
卒業した大学は情報系では国内ナンバーワンと言われる某大学で、大学に残って教授の道へ進まないかと言われたという。だからこそ、この歳にして出世株だと言われているのだと思う。
現に、彼が来春には主任を飛び越えて、課長に就任するのではないかという噂まで流れているほどだ。
容姿もいい、その上仕事も完璧な結城さん。だが、ベールに包まれている部分がある。それは、プライベートだ。
結城さんは徹底してプライベートを社内で隠している。会社関係者との交流は、極力控えているというのは有名な話だ。
会社の呑み会や打ち上げなどはたまに参加するようなのだが、仕事絡みではない誘いはすべて断っているらしい。
注目されている彼のプライベート、誰しもが興味があるだろう。もちろん、私もである。
そして、皆が一番知りたいことは、結城さんに彼女がいるのか、いないのかということ。そこが一番知りたいのに、わからない状況である。
結城さんの同期であり、私が所属している人事部の先輩である石井さんなら知っているのだろうけど……私は聞けずじまいだ。
結城さんのことをあれこれ聞くということは、イコール私が結城さんのことに興味を持っていると暴露するようなものである。
絶対にできない。誰にも、私のこの片思いについては知られたくないのだ。
もし、結城さんの耳に入ったりしたら……仕事がこの上なくやりにくくなってしまう。
仕事に支障はきたさないようにする。これ、社会人の常識だ。そこは、キッチリと守っていきたい。
どうして、そこまで仕事のことを危惧しているのかと言うと、私は結城さんとよく仕事をご一緒するからである。
人事部と情報システム部。端から見れば、なんの繋がりもなさそうに思えるだろう。
しかし、私は人事部と言っても社員教育促進課に所属している関係で、社員教育研修のアシスタントを務めている。場所の確保、社員への通達、書類の作成、当日の研修室の管理などを一手に引き受けているのだ。
我が社は、社長の方針により『よい仕事をするために必要なのは知識だ』ということで、あらゆる知識を社員に吸収させるために色々な研修会を行っているのである。
そこで、社員教育促進課は数年前に新設され、社員教育の充実を図るべく仕事をしているという訳だ。その末端に私がいるのである。
一方の結城さんは、会社のシステム関連の仕事をする合間に、その聡明な頭脳を買われてインターネット関連やソフトウェア関連、ハードウェア関連などのパソコン知識を社員に教える講師も兼任している。
だが、彼は本業がかなり忙しい。そこで、忙しい結城さんの手助けをするために私が補佐を務めているというわけだ。
私は結城さんと顔を合わせることがひと月に何度かあるし、内線で話すこともある。
それなのに、私が結城さんに想いを寄せていることがバレてしまったら……仕事に支障がでてしまうだろう。
だからこそ、忍ぶ恋を貫いているのである。まぁ、告白して玉砕する勇気が私にないだけと言われれば、それまでなのだが。
こんなふうに、今でこそ結城さんに想いを寄せている私だが、彼と仕事をし始めた頃は彼のことが苦手だった。
彼はとにかくデキる人だ。もちろん頭はいいし、仕事だって完璧だ。
研修中、講師として社員の前に立っている彼は大学の教授だと言っても誰も疑わないほどである。
結城さんは誰にも文句を言わせないほど完璧すぎて、近寄りがたいオーラを常に出していた。
近寄るとピリリと刺激が走るような、そんな空気を醸し出している。
それに……最初の頃は、私に対して苛立ちを見せるときもあった。
本人は必死に隠している様子だったが、私には伝わっていた。それが申し訳なくて、だけど仕事をうまくこなせなくて……辛かった。
まだまだ半人前。先輩の助言や上司の指導がなければ動けない私は、彼にとって厄介者以外の何ものでもなかったのだろう。
だからこそ、せめて私は結城さんの足を引っ張ることだけはしたくない、と必死になって仕事に取り組んできたつもりである。
必死に食らいつきながら、結城さんのアシスタントをするようになって半年を過ぎた頃から鋭い視線で見られることは少しずつなくなっていき、近寄りがたい空気を感じることが少なくなってきたように思う。
少しは彼に「使えるようになったな」と思われているのだろうか。だったらいいなぁ。
そんなふうに考えるようになった頃、ある事件が起きた。
先輩たちからは『要注意人物だからね。牧瀬ちゃん、とにかく気をつけなさい』と言われている庶務のセクハラ係長が、結城さんが講師を務める研修にやってきたときだ。
すべて講習が終わり、私一人で部屋の後片付けをしているときに事件が起きた。
誰もいなくなった部屋に忘れ物はないかチェックをしていると、扉が開く音が聞こえる。
研修を受けた社員が忘れ物でも取りにきたのかもしれない。屈めていた腰を起こそうとしたときだ。背中に誰かの手が触れた。
え、と驚いて固まっていると、その手は厭らしく動き出したのだ。
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