異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。

向日葵

1 この展開は聞いてない! (2)

 そろそろたっちとかできるんじゃないかなーっと思ってやってみたら、思いっきり後頭部を強打するハメになった。

 あまりの痛さに大泣き……というか恐竜みたいな泣き声を出してしまった。

 小さな体でも、あれだけ大きな声が出せるもんなんだね。子供って不思議だ。

 事態を重く見たディーが、誰かを連れてきた。

 涙でぼやけた視界だが、抱き上げられた感じからお兄ちゃんと判明。

 こういうときって、呼ぶのは母親じゃないのか?

「ネマ、どこか怪我したの?」

 そう言って、私の体を丁寧に撫で回すお兄ちゃん。

 (しゆう)()(しん)なんて、赤ちゃん生活ですり減って、もうないに等しいから気にしない。

 お兄ちゃんが後頭部のたんこぶに気がつくと、そこを何度もなでなでしてくれた。

 すると痛みが少しずつ引いていくから不思議だ。

 痛みが気にならないくらいになると、今度は眠気に襲われる。

「抱っこしていてあげるから、眠ってもいいよ。無茶をするときは、誰かが側にいるときにしようね」

 あー、そうですね。

 ちゃんと立てるようになるまで、たっちの練習は介助してくれる人がいるときにします。

 

 そして、リベンジ!

 しかし、なんでこうもバランスが取りにくいんだ、赤ちゃんの体!!

 産まれたての仔鹿のように、脚がプルプルするよ。

 でも、頑張るんだ!

 たっちできたら、ディーの背中に乗ることもできるかもしれない!!

 プルプルする脚を頑張って踏ん張る。

 側ではお母さんとディーが(かた)()をのんで見守っていた。

 どりゃぁぁぁっと気合いを入れて立ったら、バランスが取れず前につんのめる。

 今度は顔面強打かぁぁぁ!!

 と、べちゃっと(じゆう)(たん)とキスをする自分が見えた。

 しかし、救いの救世主が床にダイブする前に助けてくれたので、キスをしたのはディーのもふもふ。

 あぁ、このもふもふ、お日様の匂い。癒される。

「だー」

 んー、上手くディーと発音できない。ま、赤ちゃんだから仕方ないか。

「ネマは本当にディーのことが好きなのね。お母さん、(しつ)()しちゃうわ」

 と、お母さんが淋しげにするので、「まんま」と呼んで甘える。

 お母さん、貴族なのに()()任せにせず、できる限り自分で子育てしているんだ。

 すっごい魔法使い? 魔術師?? らしくて、たまに王宮にお仕事に行っちゃうけどね。

 お母さんがいない日はお父さんが子守。子守っていうか、私がお父さんのお守りをしている。いろいろと残念すぎるパパンです。

 そうそう、ファンタジーのお約束、魔法もあったよ!

 お兄ちゃんに撫でてもらうと痛くなくなるのも、治癒魔法だった。

 でも、私には魔力がほとんどないとかで、魔法は使えないかも。

 まぁ、変に力があっても、面倒臭いことに巻き込まれそうなんで、よしとしよう。

 

 ディーや庭の鳥たちと(たわむ)れ、家族や使用人たちに愛情をいっぱい注がれて、私はすくすくと育っていった。

 そして、このお家に来て一年。早かった。

 今日は私の誕生日ってことで、家族だけでお祝いしてくれたよ。

 春だけど、肌寒くもないポカポカ陽気だから、広いお庭にテーブルを出してプチパーティー。

 まだ上手く()(しやく)できないから、柔らかい料理オンリーだけど、こっちのご飯うまー。

「ネマ、あーんして」

 食べやすいように細かく切った野菜とミンチを煮込んだミネストローネ風のスープをお兄ちゃんが食べさせてくれる。

「あーぅ」

 もぐもぐ……うまー。

 お兄ちゃんはお母さん譲りのハニーブロンドの髪と(こん)(ぺき)の瞳を持つ美少年。名前はラルフリード。愛称はラルフ。私とは十歳年が離れているけど、()(もく)(しゆう)(れい)で文武両道という将来有望な跡取り息子だ。

「こぼしているわ、ネマ」

 そう言って口周りを拭いてくれるのはお姉ちゃん。

 カーナディア、愛称はカーナ。年は七歳上だから、誕生日が来たら八歳になる。

 こちらはお父さん譲りの赤髪と()(すい)のような瞳。

 顔立ちもお父さんに似ているから、将来は壮絶美人決定!

 ちなみに私は赤銅の髪と黒い瞳だ。

 こっちの世界では黒という配色が珍しいんだって。色素薄そうだもんね。

 黒といっても、日本人のような濃い茶じゃないよ。本当に夜の空のような黒だった。初めて見たときは違和感バリバリだったけど。

 顔立ちは普通だが、北欧系のコーカソイドっぽい。でも、鼻は低い……。大きくなったら、高くなるといいな。

 両親といろいろ比較してみた結果、まるっきり似ていない。

 美人で上級貴族だと、大変なことも多そうだからよかった。

 家族みたいなハイスペックはいらんです。はい。

「ねーねありゃう」

 ()()はあるのに舌が回らないので、まだ上手くしゃべれません。てか、幼児ってどれくらいからしゃべり出すんだっけ?

「ネマはお利口だな」

 そう言ってお父さんは相好を崩した。

 親馬鹿ですなぁ。

 パパン、イケメンなんだから、顔はしっかり作ろうねー。

 

 ご飯を食べたあとはお庭で遊ぶ。

 お兄ちゃんは花壇のお花の名前や花冠の作り方を教えてくれ、お姉ちゃんはちょっとした魔法を見せてくれた。

 なんか男女逆じゃね? とも思ったが、お姉ちゃんはお転婆だからって容認されているみたいだ。

 見せてもらった魔法は、炎でできたハトくらいの鳥がお姉ちゃんの手から飛び立つと、パンッと小さな破裂音とともに花火みたいな火の粉となって消えるものだった。

 お兄ちゃんの解説によると、魔力を好きな形に留め、術者の制御を離れると無効化する訓練用の魔法らしい。

 魔力の供給と遮断を覚えるためだけの魔法なんだって。

 ある意味一発芸だな!

 次は一人でお庭の散策だ! 一人だが一人じゃない。私の側にはディーがついているから安心だ。

 お庭には意外と動物が多かった。

 まだ種類がわかんないけど、鳥とかリスみたいなのとか、池に魚もいた。

 池の魚を観察したいけど、ディーが池に行くことをよしとしないので我慢する。

 落ちないよー。そこまでマヌケじゃないよー、と思いながら木の下に向かう。

 ドテッ――。

 木の根っ子に足を取られて転ぶ。地味に痛い。

「ぅわぁぁぁん……」

 条件反射で泣いてしまった。

 まだまだちっこいから仕方ないよね。

 ディーがすぐに来てくれて、顔をなめなめしてくる。

 くすぐったいよー。

 泣き声に気づいて、お兄ちゃんも来てくれた。

 私を抱っこすると、怪我を確かめて治癒魔法をかけてくれる。

「もう痛くないよ。大丈夫、大丈夫」

 優しいお兄ちゃん、大好きです!

 感謝を込めて、お兄ちゃんにギュッと抱きついた。

 パパンよ、後ろで羨ましそうな顔するのはヤメテクレ。

 イケメン台無しだから。

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