くま クマ 熊 ベアー

くまなの

2 クマさん、少女と出会う (2)

「あれ?」

 石はウルフに当たった。

 3匹のウルフは血飛沫しぶきをまき散らして倒れた。

 命中するとは思わなかった。

 このクマ装備、命中補正でもあるのかな。

 クマの口をパクパクさせてみる。


 とりあえず、ウルフは死んだようなので女の子に近づく。

「大丈夫?」

 黒髪の10歳ぐらいの女の子に声をかける。

 そんなキャラ、選択できなかったはずだからNPCだろう。

「あ、ありがとうございます?」

「なんで、疑問形?」

「わたしを食べますか?」

「食べないよ」

「クマさんですか?」

 自分の格好を思い出す。

 頭にかぶっている、可愛かわいらしいクマのパーカ部分をとる。

「これで大丈夫?」

「あ、はい」

 女の子のステータス画面を呼び出してみようとするがステータス画面は出てこない。

 NPCでもなにかしら情報が出るはずなのに出ないとなると、バグか、本当に異世界なのか。

 ウルフの血みどろのがいを見ると異世界の方が現実味を帯びてくる。

 とりあえず、少女に話を聞くことにしよう。

「あなた1人?」

「あ、はい、お母さんが病気で薬草を探しにきたんです」

「あなたみたいな小さな女の子が」

「お金がないんです。だから、街では薬草が買えないから森に採りにきたんです。そしたらウルフに襲われて」

「街ってことは近くに街があるの?」

 うん、いい情報ゲット。

「お姉ちゃんは他の街から来たんですか?」

「うん。それで、ちょっと道に迷っちゃってね。だから、街まで案内してくれない?」

「はい」


 わたしが歩きだそうとすると、

「お姉ちゃん、このウルフこのままにするの?」

「そのつもりだけど。こんなの持って帰れないし」

もったいないよ。ウルフの毛皮も肉も売れるし、魔石も安いけど売れるよ。解体すれば持ち運べると思うよ」

「わたし、解体なんてできないから無理」

「お姉ちゃんがよければ、わたしが解体するけど」

「解体できるの?」

 その言葉に女の子はうなずく。

「じゃ、お願い。ウルフの売れた金額は折半でどうかな。わたしも助かるし」

「いいの?」

「いいよ」


 少女は小さなナイフを取り出すと、ウルフを器用に解体していく。

上手うまいわね」

「うん、たまに仕事でするから」

 ほどなく3体のウルフは少女の手によって、毛皮、肉、魔石とれいに解体されている。

 荷物は2人で分けて運ぶ。

 アイテムボックスがないのはつらいな。

 ゲームなら触るだけでアイテム回収できるのに。

「街は近いの?」

「うん、近いよ。だから、薬草採りに来たんだけど」

「それで、薬草は見つかったの」

「うん、見つけたよ。けど、帰るときにウルフに襲われて」

 その現場に出くわしたわけか。

「それじゃ、行こうか……」

 名前を呼ぼうとして、まだ聞いていなかったことに気づいた。でも、そのことを察した少女の方から名前を教えてくれた。

「フィナです」

「わたしはユナ。それじゃ、フィナ行こうか」

 しばらく歩くと森を抜け、遠くに城壁が見えてくる。

 おお、意外と大きい。

 遠くからでも城壁の高さがわかる。

 あれなら、魔物に襲われることはないだろう。


 街に着くまでの間、フィナにいろいろ聞くことができた。

 やはりこの世界は、わたしが知っているゲームの世界ではないようだ。

 廃人プレイヤーのわたしが知っている街が一つもなかった。

 アップデートによってできた新しい大陸って可能性もあるけど、話を聞くたびにゲームではない可能性が増えていく。

 街に行けばなにかしら情報があるだろう。

 プレイヤーが一人もいなければ異世界だと認めることにする。

 街に入るには住民カードやギルドカードが必要になるらしい。

 わたしが持っていないことを言うと、フィナが「ギルドカードは冒険者ギルドでもらえるよ」と教えてくれた。

 でも、街に入るには銀貨1枚と、犯罪の有無を調べられるらしい。

 わたしは来たばかりだし、犯罪を起こしたことはないから、大丈夫なはず。


 とりあえず、街の入り口まで距離があるのでステータスを確認する。

 あれ、レベルが上がっている。


  名前:ユナ

  年齢:15

  レベル:3

  スキル:異世界言語、異世界文字、クマの異次元ボックス


  装備

   右手:黒クマの手袋(譲渡不可)

   左手:白クマの手袋(譲渡不可)

   右足:黒クマの靴(譲渡不可)

   左足:白クマの靴(譲渡不可)

   服:黒白クマの服(譲渡不可)


 おや?

 スキルも増えている。

 説明文を読む。


  クマの異次元ボックス

   白クマの口は無限に広がる空間。どんなものも入れる(食べる)ことができる。

   ただし、生きているものは入れる(食べる)ことはできない。

   入れている間は時間が止まる。

   異次元ボックスに入れた物は、いつでも取り出すことができる。


 ゲームのシステムにあったアイテムボックスをゲットしたみたい。

 ゲームのアイテムボックスも食材を長時間入れても腐らなかったし。

 そう考えるとやっぱりゲームの中なのかな?

 でも、その機能がクマについているって。

「ん?」

 アイテムボックスも空っぽかと思ったら、お金が入っているみたいだ。

 あと紙が1枚入っていた。

 白クマの口から紙を取り出して読んでみる。


  君が現実世界で大切にしていた

  お金を持ってきてあげたよ。

  もちろん、あちらのお金は使えないから

  こちらのお金に両替しておいてあげたよ


                   神様


 それはありがたいけど。

 これで、この場所が「ゲーム」から「異世界」側へとまたてんびんが傾いたことになる。

 でも、もし本当にここが異世界ならは、このお金は助かる。

 いくら入っているか確認したら、とんでもない金額が入っていた。

 これって、異世界でも一生引きこもれるんじゃない?

 とりあえず、街に行ってから考えよう。

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