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弱キャラ友崎くん

屋久ユウキ

0 クリア後にオープニングを見直すとなんかしんみりする / 1 なんだかんだ言って有名なゲームは大体おもしろい (1)

0 クリア後にオープニングを見直すとなんかしんみりする



『人生は神ゲー』だのという有名な文章コピペがあるが俺から言わせればそんなのはうそだ。

 本気でがんばればギリギリクリアできるように絶妙なバランス調整がされている、なんてのは本当にどうしようもない事態に直面したことのない人間のれ言だし、全てのキャラが深い人間性と歴史を持って登場する、なんてのは世の中に底の浅いモブキャラがどれだけいるのか知らない人間による気の抜けた理想でしかない。お前もモブだろとかは言わないでほしい。

 無限×無限ピクセルの画素数が毎秒無限フレームで動いてることだって、必ずしもいいことじゃない。画素数が少ないがゆえの味ってもんだってあるし、なによりこの世界の解像度が高すぎるせいで俺みたいなブサイクがブサイクとして映るのだ。ドット絵ならもっとみんなと同じだったに違いない。泣いてないよ。

 ていうかそもそも、複雑で美麗なら複雑で美麗なほどいいという考え方自体がまず間違っている。優れたゲームってのは、いつだってシンプルで美しいものなのだ。

 将棋だってそうだしスーパーマリオだってそうだし、最新のFPSだってルールとコンセプトはシンプルだ。シンプルなルールとコンセプトの中に、奥深さと味わいが息づいている。

 歴史に残るゲームとは、いつだってそういうものなのだ。

 さて。その点、人生はどうだ。

 古代から多くの賢い科学者たちが実験と検証を駆使して『あらゆる事象の法則』という『人生のルール』を探し求めてきたが、ついに現在に至るまでその答えは見つけ出されていない。

 古代から多くの鋭い哲学者たちが発想を論理で束ねて『生きる意味は何か?』という『人生のコンセプト』を考え尽くしてきたが、そんなの人それぞれ、と言われて反論できる意見なんて俺は一度だって聞いたことはない。

 そんな、シンプルどころかもし現状で無理やり答えをだすなら『とりあえず生きろ、あとは知らん』としか言いようがないルールとコンセプトだけを持ったゲームなんて、一体どこが神ゲーだというのだろう。

 それどころか、人と同じことをしても顔や体格や年齢で差別され悪いように取られたり、どんなにがんばっても本番で体調を崩したら全て無駄になったり。クソゲーである理由として説得力のある要素ばかりが目につく。なんの罪もない俺みたいな弱キャラが、ただ生まれつき弱いというだけでこんなにもしいたげられる。

 理不尽で不平等。弱者に不利。

 つまりは──『人生はクソゲー』。

 このありふれた定型句こそが、この世界の本当のことなのだ。

 すると、こんな反論が聞こえてくるかもしれない。「ちゃんと人生をがんばってないからそう思うんでしょ?」。けどそれこそ、強キャラに生まれたから思うだけの、かたよった思考だ。

 もともと有利だから、『人生』の理不尽さに気づけていない。強キャラのイージーモードで簡単に無双して、それが楽しくて、それが世界のすべてだと思い込んでしまっている。

 つまりはただのにわかゲーマーの意見だ。

 ろくにゲームを極めたことがないならすっこんでろ。

 たまたま強キャラに生まれて楽してるだけのにわかゲーマーに、人生を語る資格はない。

 あらゆるゲームをがんばり続けて、頂点に立ち続けてきた俺が言うんだから間違いない。

 人生は、クソゲーだ。


 ──以上。日本一のゲーマー、nanashiより。

1 なんだかんだ言って有名なゲームは大体おもしろい



 実力の差は歴然だった。

 俺の操作する忍者キャラ『ファウンド』の動きと、なかむらの操作するきつねキャラ『フォクシー』の動きには、だれが見てもわかるくらいのレベル差があった。まあ、リア充にしてはやるんじゃない、ってくらい。このテレビゲーム──アタファミを使ったかけで勝ちまくってるとのうわさだが、その場の程度が知れる。俺は試合開始早々、勝ちを確信していた。

 けれど俺はアタファミに関しては手は抜けないたちだ。だから中村の残機が一になったこの状況でも、あえて愚直に突っ込んでいくように見せて途中で『しゆん』を使う、みたいな揺さぶりを使っていく。おそらくこのくらいの実力なら、瞬を知ってすらいないだろう。地面スレスレで斜め下に『空中回避移動』することで、地面を素早くすべる回避のテクニックだ。

 中村は俺のその揺さぶりに引っかかり、打撃を放つ。俺はそれを後ろへの瞬でかわしたあと、すきを突いて、近づく。このゲームのコンボの基本は投げだ。投げから始動するコンボをどれだけつなげられるか。俺の使っているキャラであるファウンドは、特にその側面が強い。

 中村のキャラをつかむファウンド。そこからはもう俺の独壇場だ。簡単なようで実は繊細な操作を要求されるコンボを、次々と繋いでいく。抜ける方法がないわけではないが、中村はそれを知らない、できない。だから当然そのままフィニッシュ。


 これで、なかむらの残機はゼロ──。


「よし」

 うん。勝ってしまった。まあ、俺がアタファミで素人しろうとに負けるはずがないのだが、それにしたってこんなあっさりと、って感じだ。なんというかこのあとが怖い。

 ストック四機制。特殊ギミック無しのへいたんステージ。お互いにプレイは初見。

 その平等な条件下で、中村の残機はゼロ。俺の残機は──四。

 これはまあ、完勝だ。中村のほうを見てみると、なにか言いたげな表情で、俺の顔と手に持ったコントローラーを交互に見ている。俺の顔に向けられる視線からは、ほんの少しの劣等感が見て取れる。これはちょっとびっくりだ。まさか俺の高校生活で、中村からこんな弱い目線を向けられることがあるなんて。想像していなかった。

 茶髪でイケメン、見るからにリア充、勉強も運動もモテも、それこそゲームのさすらもすべてトップクラス、要領のよさだけで周囲の人間から頭ひとつ抜けてきたような、自信に満ちあふれた顔つきのリア充高校生中村。その中村が俺のことを、弱々しい目で見ている。こんな、見るからにキモオタ丸出しの俺のことをだ。

「……の…いだ」

 中村がなにか言っている。

「え?」

「キャラのせいだ」

「……はい?」

「キャラが悪かった。そのせいだろこれ、普通に」

「い、いや、このキャラとこのキャラ、性能的に同じくらいだけど……」

「じゃなくて、相性。どう考えても相性悪いじゃん、これ」

 中村は当然のように言う。あっけにとられてしまった。そんなの、どう考えても言い訳だ。

 そして、ああそうかと俺は気づく。こんな悪あがきをされるということは、俺がものすごくナメられてるってことだ。ここまでしないとプライドを保てないほど俺に負けることが屈辱的だってことだし、まあこいつにならかっこ悪く言い訳してもいいや、と思われているということですらある。前提として見下されているのだ。そう、これが弱キャラに与えられた不平等な定めなのだ。

 けど。いまだけは違う。

 この瞬間。アタファミを目の前にしている瞬間だけは。

「た、たしかにフォクシーは落下が速いからコンボつなげやすいっちゃやすいけど」

「だろ。キャラの相性じゃん、こんなゲーム」

 俺は息を吸って、なかむらの目をぐ見据える。怖い。けど。

「……そんなの、言い訳だろ」

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