ぼのぼのみたいに生きられたらいいのに

キム・シンフェ

つまらないやりとりが必要 (2) / 友達になる方法 (1)

 父とわたしは会話の少ない親子だ。二人とも普段から口数の少ない方だが、共通の話題も少ない。ごくたまに向かい合ってごはんを食べることがあっても、必ずといっていいほど沈黙が続く。箸やスプーンを動かす音、食べ物を咀嚼する音、ずるずると汁物をすする音ばかりがひっきりなしに聞こえる。そのせいもあってだろうか。一緒に食事すると、二人とも異常に食べるスピードが速い。やがて沈黙を破るように、父がわたしの友達の近況を尋ねてくる。


 あの子は、結婚したのか?

 今もあそこに住んでるのか?

 まだ、あの会社に勤めているのか?


 ところが、その友達というのがみんな、今ではやりとりのない子供の頃の友達だ。ときどき父の無頓着さにカチンときて、冷たい言い方になることもある。


 最近あの子とは連絡とってないわよ。

 なんで?

 なんでって……なんとなくだけど。

 そんな友達、あるか。


 先日、久しぶりに家族で食事をしたとき、母親に友達の妹が結婚する話をした。三人姉妹の末っ子が最初に嫁に行くことになったと言うと、母は関心を持ったらしかった。友達本人は最近こんな暮らしをしていて、すぐ下の妹はどこで何をやってて、末っ子はこんな感じらしいとペラペラ話すと、母はまるでテレビのワイドショーでも見ているように夢中で聞いている。


 父が、昔の友達の近況を気にかけること。

 母が、わたしの友達の話を興味深げに聞くこと。

 その理由をじっと考える。

 わたしの日常に、両親が訳知り顔で聞ける話は

 それくらいしかないからじゃないだろうか。


 ひょっとしたら二人は、心配なのかもしれない。毎度毎度、

 そういうもんなのよ。

 自分でなんとかするから。

 心配いらないって、でまとめてしまう、日々の出来事。

 だけどそこには、無数のわたしが存在している。


 そんなわけで、実際両親はわたしの最近のことを知らないし、わたしはわたしで、むしろそれが心配をかけない方法だと思って暮らしてきた。でも、両親はいつも、わたしが話すのを待っている。つまらない話にも、まるで特ダネみたいに耳を傾ける。


 いつもおもしろいことを探しているアライグマくんは、森の動物たちがどうでもいい話をして喜んでいるのが理解できない。ぼのぼのやシマリスくんがつまらない冗談を繰り返してうきゃうきゃ言ったり、大したことない話にも深く共感したりするのを見て、なんでああなんだろうと思う。だが、そういうアライグマくんの疑問に、シマリスくんは大人っぽく答える。みんな、さびしいからそうするのだと。


 

  アライグマくん

    だいたいオレ よくわかんねえのよ

    昨日なにしてたとか今日の天気がどうのこうのとか

    そんなこと話して なんの意味があるんだよ~~

  シマリスくん

    アライグマちゃん そりはちげいます。みんなそんなにおもしろいことばかりあるわけではねいのでぃす

    もしそういうおもしろいことしか話せないとしたら

    みんな遊びにきても すぐにかえってしまうでぃしょう

  ぼのぼの

    それはさびしいねー シマリスくん

  シマリスくん

    さびしい そうなのでぃす ぼのぼのちゃん

    みんなさびしいのでぃす みんなさびしいから、

    つまんないことでも話したがるんでぃす

20巻・107、108ページ 


 一緒に住んでいたってじっくり話す時間はないし、別々に暮らせばそれを理由に、めったに顔も合わせなくなる。そうしているあいだに、互いのなかに積もっていた話が少しずつ古びて、結局は話したところで、だからどうしたという感じのつまらないやりとりになってしまう。でも、つまらない話がもたらす力を、シマリスくんは知っている。みんなさびしいから、つまらない話でもしないと、人生もっとさびしくなっていってしまうだろうという。その日、ぼのぼのは家に帰って、おとうさんとつまらない話をしながら考える。「つまらない話って なかなかいいと思うのだ」。


 だけど、わたしはぼのぼのじゃないから

 相変わらず無愛想で、いつもひとり忙しがっている娘だから

 いまだに、親が聞きたがっているつまらない話がどんなものか、わからない。

 どうでもいいような話さえ

 互いに話し、耳を傾ける、その大切さがピンとこない。

 人生はさびしいものだから

 つまらない話でもしたくなる、その気持ちが

 わたしはまだ、わかっていない。

 いつも意地悪でガサツ、そのうえ乱暴で友達づきあいがまったくダメなアライグマくんは、どうすれば仲間と自然につきあえるかがわからない。ひとり森をブラついては、動物たちに言いがかりをつけたり、何かコトが起きると必要以上に口をはさんでスッと仲間に加わったり。でも、そういうこともない日は退屈でたまらず、ぼのぼのとシマリスくんのところへやってきて、こんなふうに声をかける。

「よ~よ~ おまえら 知ってるか?」

 テレくさくて一緒に遊ぼうって言えないもんだから、毎回、ありもしない話で質問をこさえて、仲間に声をかけるアライグマくん。でも、仲間がその質問に知ったかぶりしたり、正解を当てようといろいろ答えたりすると、烈火のごとく怒る。答えは決まっているんだから、聞かれた方はただ、わかんないと答えればいいのだ。幸い、ぼのぼのとシマリスくんはそんなアライグマくんをよく知っているので、いつも期待通りに答える。おかげでアライグマくんは、そのひねくれた性格にもかかわらず、さびしくない一日を送ることができる。

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