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運命の乙女を娶った王太子は新妻にご執心!

藍井恵

第一章 (3)

「わかった、わかったよ。ここに閉じこもって、やりまくればいいんだろう?」

 うんざりしたような声だ。

 ──やる? 何を?

 ガチャガチャと鍵を開ける音がしたので、アリシアは慌てて離れた。

 が、すぐに扉がギギッと音を立てて開く。

 そこには、そうぼうがきりっとしてせいかんな顔つきをした、黄金に輝く髪の男が立っていた。エメラルドグリーンの瞳は深みがあり、理知的な印象を与える。上背があって、アリシアよりひと回りもふた回りも大きい。

 アリシアは、こんなに美しい男を見たことがなかった。

 彼の外見は、貴族の女なら、神話の男神を模った彫像のようだと形容しただろう。だが、平民のアリシアは、さっき目にした彫像が男神、女神だったこともよくわかっていない。

 想像とあまりに違うので、アリシアは目をまん丸にしたまま固まってしまう。

 扉が再びギギッと音を立てて閉じられ、ガチャガチャと金属音がする。おそらく、あの侍従長が施錠したのだろう。

 男は威圧的にアリシアを見下ろし、距離を縮めていく。

 アリシアの全身が総毛立つ。

 それは決して恐怖ではない。むしろ衝撃的なほどの幸福感──。

 それなのにアリシアはあとずさる。

 ──怖い。

 この男が怖いのではない。

 これからこの男によって自分が根こそぎ揺さぶられ、変わっていくようで、それが怖かった。

「君、名は?」

「は、はい、アリシアと申します」

 アリシアは慌てて膝を少し曲げて腰を下ろす礼をした。確か貴族はこんなお辞儀をする。

「アリシア、君には、ここで私の子を身ごもってもらう」

「は、はいい!?

 アリシアは驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げてしまう。

「聞いてないのか」

 金糸のしゆうが入った黒のじようを脱ぎながら、男がジリジリと近寄ってくる。

「あの、恐れながら、あなた様は王太子殿下でいらっしゃいますよね?」

「それも知らないのか」

 ──やっぱり、このお方が……王太子様!?

「え、ええ。私はただの平民でございます。おたわむれはやめて、ディミトー村にお帰し願えませんでしょうか」

「君が〝ただの〟平民?」

 王太子が上衣を近くの長椅子に放った。今度はヴェストを外し始める。隣室へと続く扉が開け放たれたままだったので、いつしかふたりは寝室に足を踏み入れていた。

「侍従長様は私を『月桂樹の乙女』だとおっしゃっていましたが、きっと同名のほかの貴族のお嬢様がいらっしゃるのですわ」

「どこに──? そんな者、見つからなかった」

 彼が皮肉な笑みを浮かべる。

 王太子がヴェストのボタンを外し終え、アリシアの背後に放り投げた。

 ──ん? 私の後ろ?

 ちょうどそのとき、アリシアの脚がベッドに突き当たる。これ以上退くことができない。

 そこでそのまま王太子に押し倒された。

 アリシアの背に、ふわふわしたものが当たった。このベッドのリネンは、雲の上にでも浮かんでいるかのように心地いい。

 だが、それを喜ぶ余裕などない。

 それもそのはず。王太子の顔が、鼻が触れそうなほどに近づき、そのれするような緑眼に見つめられたからだ。

 ──新芽のようにみずみずしい……でも、葉にはこんな透明感はないわ。

「君がその『月桂樹の乙女』だ。会えばわかると言われていたが──」

 王太子の瞳が戸惑いで揺れ、何か認めたくないものに遭ったように、その眉間にしわが刻まれた。

 ──やっぱり、王太子様も困っていらっしゃるわ。

 まさか運命の乙女がこんな庶民的な小娘だとは、王太子は思ってもいなかっただろう。

 悲しくなって、顔を背けると、彼の手がうなじに回り込み、もとに戻された。

「何も心配することはない。君の実家には侍従をふたり派遣しているし、きんはずんだ。王宮で何不自由ない生活をおうするがいい」

 王太子がもう片方の手でアリシアのほおを包み込む。

 その大きな手、やわらかくはないがなめらかでひんやりした手の感触に、アリシアの全身に愉悦がほとばしる。

「ほら、君の体もよろこんでいる」

 ──

 王太子の顔が傾いたかと思うと、唇に冷ややかな感触が訪れ、ぬるりと温かく肉厚なものが滑り込んできた。

 ──うそ~!

 いくら相手が見目麗しい王太子とはいえいきなりである。それなのに自分でも信じられないことに、アリシアは狂わしいほどの幸福感に襲われていた。

 アリシアはめいていしたように半ばまぶたを伏せる。

 やがて、唇が離れた。

 アリシアは無意識に口を半開きにしたままだ。少し離れただけなのに、名残惜しくて仕方なかった。

「月桂葉のしるしはどこにあるんだ?」

 王太子は彼女の両脇に手を突いて、こう問うた。その瞳はあくまでも冷静、いやもっと正確に言うと……。

 ──冷酷だわ。

「げ、月桂葉?」

 その鋭い瞳に射すくめられ、アリシアはおどおどしてしまう。

「本当に、君に何も知らせていないんだな、あのたぬきは」

「狸?」

 侍従長のことだろうか。

「『月桂樹の乙女』は体のどこかに刻印があるんだ。母は腕にあった」

 そう言いながら、王太子は当然のように、アリシアのシュミーズドレスの絹帯をほどいた。

 驚いたアリシアはベッドに肘を突いて逃げるようにあとずさる。すると、王太子がベッドに乗り上げ、アリシアにのしかかった。

 すぐに追いつかれて、彼の顔が目の前にくる。

「なぜ隠す?」

「そ、そんなこと言われても──」

 ないものは、ない。

「悪いが、確認させてもらう。我が国のために必要なことだ」

 ──国のため?

 なぜかアリシアはがっかりしていた。

 王太子が、ほどけかかった薄桃色の帯を片手で引っ張ると、あおけだったアリシアは回転し、うつ伏せになった。

 彼は膝立ちになり、アリシアのドレスを下着ごとまくりあげる。下には何も履いておらず、陽光に照らされて輝かんばかりの双丘があらわになる。

 ──仕事してなくても、女子にはズボンが必要よ~!

 アリシアがもとに戻そうと、ドレスの端を下げようとするが、彼は、下げるどころかさらに上げていった。

 しかも冷静な声が耳に入ってくる。

「ここには見当たらないな」

 アリシアのでんまたがり、王太子はドレスを一気に頭からはがす。その動作は先ほどよりも性急になっていた。

「背にはなし、か」

 わきの下をつかまれて軽々と仰向けにされ、アリシアはとっさに腕で、ふたつのピンクのつぼみを隠す。

「邪魔してはいけないよ?」

 なぜ、こんなことをさとすように言われないといけないのか。まるで自分が悪いことをしたような扱いだ。

 両手に彼の手が重なり、シーツに張りつけられた。

 乳房が外気に、そして何よりも、この美しい王太子の目にさらされた。

 アリシアは自身の体がっていくのを感じる。それが羞恥なのか官能なのか、彼女にはまだわからない。

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