話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

魔人勇者(自称)サトゥン

にゃお

プロローグ 魔人勇者 (2)

「本当、あなたといたこの三千年は一秒たりとも退屈する時がなかったもの。だからこそ、寂しくもあるわね。これから先、あなたなしで生きていくかと思うと、退屈で死にたくなりそう」

「お前の気持ちも分かるぞ、カルヴィヌ。この魔人界という(くう)(きよ)に満ちた世界で永遠に生きること、それはどれほど退屈なことか。何よりこの世界から私という素晴らしき男が消えるのだ。お前のような美女が悲しむのも切に分かる。だが、涙を拭いて見送ってくれカルヴィヌ。魔人界では私の夢は(かな)えられぬ。美学を理解できぬ戦闘狂が相手では、私の理想郷は生み出せぬのだ」

「ええ、分かっているわ。だから私はあなたを引きとめない。あなたを笑って送り出してあげるだけ」

「そうだ、笑って見送ってくれカルヴィヌ。私の求める世界は、私の求め続けた夢は、今この先にある!」

 意を決し、彼は魔術を発動させる。

 (くら)(やみ)に満ちた(どう)(くつ)内に、魔法陣から放たれた光が(かがや)く。

 その魔力量は、(いつ)(かい)の魔人では考えられないほどの奇跡。これこそが、魔神七柱の三位まで上りつめた彼の実力。

 (おさ)えられぬ魔力の(ほん)(りゆう)に、彼はただ楽しげに高笑いする。そうだ、この時を待っていた。

 下らぬ土地に生みだされ、わけも分からぬ(けもの)や魔人どもに追い回され、命を(ねら)われ、殺し合う。どれだけ(しかばね)を積み重ねても終わりが見えない、(しゆ)()の世界。

 こんなものを望んだわけではない。

 こんな世界を(かつ)(ぼう)したわけではない。

 こんな世界で夢は(かな)えられない。

 こんな世界で願いは果たせない。

 それが彼の結論だった。だから彼は行く。魔人界に別れを告げ、神のみに許された世界転移の秘術を(こう)使()し――彼は夢を(かな)えるのだ。

「ククク――クハハハ! 待っていろ、人間界! 待っていろ、困り果てた人間ども! この私、サトゥンがお前たちを救ってやろう! 私こそ、私こそがお前たちの心より願う『リエンティの勇者』なのだ!」

 魔神七柱序列三位、『破天のサトゥン』。

 彼の夢は、勇者になることだった。

 正義の勇者となって、みんなにちやほやされたい。

 小さい子供や可愛(かわい)い女の子、絶世の美女にもてはやされたい。

 そんなどこまでも自分に正直な願いを胸に秘め、彼は世界転移を成し()げたのだった。

「魔人勇者(自称)サトゥン」を読んでいる人はこの作品も読んでいます