追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~
第37話 「半分もいらない。俺の国だけで十分だ」魔王、平社員として採用。
俺の城の謁見の間。
本来なら国王や皇帝が威厳を持って座る場所だが、今は俺が足を組んでリラックスしていた。
その前に、一人の魔族が緊張した面持ちで跪いている。
昨日、「世界の半分をやるから許してくれ」と懇願してきた魔王軍残党の代表――魔将軍アザゼルだ。
黒い甲冑に身を包み、背中には蝙蝠のような翼を持つ、いかにも強そうな魔族だが、今は俺のオーラに完全に萎縮している。
「世界の半分、か」
俺は呟いた。
アザゼルがビクリと肩を震わせる。
「は、はい! 魔王城跡地、暗黒大陸、そして旧魔王領の全権……。これら全てをレント皇帝陛下に献上いたします! ですからどうか、我々魔族の命をお助けください!」
「いらない」
「……へ?」
アザゼルが間の抜けた声を上げた。
「いらないって言ったんだ。そんな広大な土地、管理が面倒くさいだけだろ。それに、暗黒大陸なんて瘴気まみれで住み心地も悪そうだしな」
「で、ですが……! 世界の半分ですよ!? 支配者として、これ以上の名誉は……!」
「名誉なんて腹の足しにもならない。俺はこの『レント帝国』だけで十分満足してるんだ」
俺は窓の外を指差した。
そこには、美しい城下町が広がっている。
豊かな農地、活気ある市場、笑顔で暮らす人々。
そして何より、俺の愛する家族たちがいる場所。
これ以上、何を望むというのか。
「俺は世界征服がしたいわけじゃない。自分の庭を平和にしたいだけだ。だから、世界の半分なんて押し付けられても迷惑なんだよ」
「そ、そんな……」
アザゼルは絶句した。
魔族の価値観では、力ある者はより広い領土、より多くの富を求めるのが当然だ。
それを「面倒だからいらない」と切り捨てる俺の思考は、彼には理解不能なのだろう。
「だが、お前たち魔族を路頭に迷わせるのも寝覚めが悪い」
俺はニヤリと笑った。
「そこで提案だ。世界の半分はいらないが、お前たち『魔族そのもの』は貰ってやる」
「我々を……?」
「ああ。俺の国で働け。ただし、幹部としてではなく、一市民としてな」
俺は一枚の羊皮紙をアザゼルに渡した。
エリスが作成した『雇用契約書』だ。
「条件はこうだ。
一、人間との争いを一切禁止する。
一、俺の国の法律を守り、税金を納める。
一、それぞれの能力を生かして社会貢献する。
給料は能力給。福利厚生は人間と同じ。住居も用意する。……どうだ?」
アザゼルは震える手で契約書を読んだ。
そこには、魔族を奴隷としてではなく、対等な労働者として扱う条項が並んでいた。
人間社会から迫害され、魔王からも使い捨てにされてきた彼らにとって、それは夢のような待遇だった。
「……本気、なのですか? 我々のような化け物を、国民として受け入れてくださると?」
「化け物? うちにはドラゴンも天使もゴーレムもいるぞ。今さら魔族が増えたところで、誰も気にしないさ」
俺は笑い飛ばした。
アザゼルの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「ありがとうございます……! 一生、レント陛下に忠誠を誓います!」
「陛下はやめろ。社長でいい」
「はっ! レント社長!」
こうして、魔王軍残党のトップ、魔将軍アザゼルは、レント帝国の『土木建築会社』の平社員(のちの現場監督)として採用されることになった。
彼が率いていた魔族たちも、それぞれ適性に合わせて農業、工業、警備などの職に就き、人間たちと共存する道を歩み始めた。
かつて世界を恐怖に陥れた魔族たちが、今は汗を流して働き、夕方には酒場で人間と肩を組んで笑い合っている。
そんな光景が、レント帝国の日常となった。
◆
「ふう、これで魔族問題も解決か」
俺は執務室に戻り、椅子に深々と座った。
これで本当に、世界中の脅威は去ったと言えるだろう。
魔王も倒した。
帝国も降伏した。
魔族とも和解した。
神の使徒も撃退した。
「平和すぎて退屈しそうだな」
贅沢な悩みだ。
だが、そんな俺の退屈を吹き飛ばすような「事件」が、身内から発生しようとしていた。
「レント様、お話があります」
執務室のドアが開き、シルヴィアが入ってきた。
彼女の表情は、いつになく真剣だ。
そして、その後ろにはイグニス、セレスティア、リリアーナ、さらには異世界魔王のリル=マオまで続いて入ってきた。
全員、妙に頬を赤らめ、モジモジとしている。
「どうした、みんな揃って。何かあったのか?」
「あの……レント様。実は……」
シルヴィアが一歩前に出る。
彼女は意を決したように、俺の目を見つめた。
「私たち、妊娠したかもしれません」
「……ぶふぉっ!!」
俺は飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
エリスが無言でハンカチを差し出してくる。
「に、妊娠!? 誰が!?」
「全員です」
「全員!?」
俺は立ち上がり、彼女たちを見回した。
シルヴィア、イグニス、セレスティア、リリアーナ。
リル=マオは……さすがにまだ子供だから違うよな?
(と思ったら、彼女も「パパの子だよ!」と嬉しそうに自分のお腹を撫でている。これは教育的指導が必要か、それとも魔王特有の生態なのか……)
「ま、待て待て。一度に全員って、そんなことあるか?」
「レント様、『子宝』の付与を忘れていませんか?」
シルヴィアがジト目で指摘する。
あっ。
思い出した。
毎晩の営みにおいて、俺は自分自身に【精力増強】だけでなく、【受胎確率操作】の付与も無意識にかけていたかもしれない。
最強の遺伝子を残そうとする本能が暴走したのか、あるいは単に俺の魔力が強すぎて、避妊魔法をも貫通してしまったのか。
「検査の結果、間違いありません。すでに新しい命が宿っています」
セレスティアが恥ずかしそうに、でも幸せそうに微笑む。
イグニスも「うむ、強い竜の気配を感じるぞ」と満足げだ。
リリアーナは「レント様との子供……! きゃあぁぁ!」と一人で盛り上がっている。
「そ、そうか……。俺が、父親に……」
実感が湧いてくると同時に、強烈な責任感がのしかかってきた。
一気に五人(リル=マオ含む?)の父親になる。
これは、魔王を倒すよりも重大なミッションかもしれない。
「おめでとうございます、旦那様」
エリスが珍しく柔らかな声で祝辞を述べた。
ゼクスやリナも駆けつけ、「お祝いだ!」「宴会だ!」と騒ぎ始める。
城内は一瞬にしてお祭り騒ぎとなった。
「皇帝陛下に世継ぎができた!」というニュースは瞬く間に国中に広まり、民衆たちも歓喜に沸いた。
祝砲が打ち上がり、街中でパレードが始まる。
「……はは、まいったな」
俺は頭をかいた。
これからは、国作りだけでなく、子育てにも全力投球しなければならないようだ。
だが、不思議と嫌な気はしなかった。
むしろ、これからの未来が楽しみで仕方がない。
「レント様、男の子でしょうか、女の子でしょうか?」
「どっちでもいいさ。元気に育ってくれれば」
俺はシルヴィアたちを抱き寄せた。
この愛おしい家族たちを守るためなら、俺は何度でも最強になれる。
そう確信した。
そして数ヶ月後。
無事に子供たちが生まれた。
シルヴィアからは銀髪の王子。
イグニスからは角の生えた元気な男の子。
セレスティアからは翼を持つ天使のような女の子。
リリアーナからは金髪の王女。
リル=マオからは……なぜか卵が生まれた(やはり魔族の生態は謎だ)。
城は赤ちゃんの泣き声で賑やかになり、俺はオムツ替えと夜泣きの対応に追われる日々を送ることになった。
最強の付与術師も、育児の前ではただの新米パパだ。
だが、その忙しささえも、今は心地よい。
「レント様、あの子が初めて立ちました!」
「パパ! 見て見て!」
子供たちの成長を見守る日々。
これが、俺が求めていた本当の『最強の幸せ』なのかもしれない。
そんなある日。
俺は城のテラスから、遠くの山並みを眺めていた。
そこには、かつて俺を追放した元パーティの仲間たちが送られた、『魔の山』の鉱山がある。
「あいつら、どうしてるかな」
ふと、そんなことを思った。
彼らは犯罪奴隷として一生労働に従事する運命だ。
かつての栄光も、プライドも失い、ただ生きるためだけに土にまみれているはずだ。
「……まあ、自業自得だけどな」
俺はワイングラスを傾けた。
彼らへの恨みはもうない。
ただ、彼らがいたからこそ今の俺があるという、皮肉な感謝だけが残っていた。
もしあの日、追放されていなければ、俺は自分の力に気づくこともなく、こんな幸せな日々を手に入れることもなかっただろう。
「ありがとうよ、元仲間たち。せいぜい長生きしろよ」
俺は彼らに向かって、心の中で祝杯を挙げた。
それが、彼らへの最後の手向けだった。
物語は、いよいよフィナーレへと向かう。
俺たちの幸せな日々は、これからもずっと続いていく。
そして、その影でひっそりと幕を閉じる、敗者たちの物語もまた、一つの結末を迎えていた。
本来なら国王や皇帝が威厳を持って座る場所だが、今は俺が足を組んでリラックスしていた。
その前に、一人の魔族が緊張した面持ちで跪いている。
昨日、「世界の半分をやるから許してくれ」と懇願してきた魔王軍残党の代表――魔将軍アザゼルだ。
黒い甲冑に身を包み、背中には蝙蝠のような翼を持つ、いかにも強そうな魔族だが、今は俺のオーラに完全に萎縮している。
「世界の半分、か」
俺は呟いた。
アザゼルがビクリと肩を震わせる。
「は、はい! 魔王城跡地、暗黒大陸、そして旧魔王領の全権……。これら全てをレント皇帝陛下に献上いたします! ですからどうか、我々魔族の命をお助けください!」
「いらない」
「……へ?」
アザゼルが間の抜けた声を上げた。
「いらないって言ったんだ。そんな広大な土地、管理が面倒くさいだけだろ。それに、暗黒大陸なんて瘴気まみれで住み心地も悪そうだしな」
「で、ですが……! 世界の半分ですよ!? 支配者として、これ以上の名誉は……!」
「名誉なんて腹の足しにもならない。俺はこの『レント帝国』だけで十分満足してるんだ」
俺は窓の外を指差した。
そこには、美しい城下町が広がっている。
豊かな農地、活気ある市場、笑顔で暮らす人々。
そして何より、俺の愛する家族たちがいる場所。
これ以上、何を望むというのか。
「俺は世界征服がしたいわけじゃない。自分の庭を平和にしたいだけだ。だから、世界の半分なんて押し付けられても迷惑なんだよ」
「そ、そんな……」
アザゼルは絶句した。
魔族の価値観では、力ある者はより広い領土、より多くの富を求めるのが当然だ。
それを「面倒だからいらない」と切り捨てる俺の思考は、彼には理解不能なのだろう。
「だが、お前たち魔族を路頭に迷わせるのも寝覚めが悪い」
俺はニヤリと笑った。
「そこで提案だ。世界の半分はいらないが、お前たち『魔族そのもの』は貰ってやる」
「我々を……?」
「ああ。俺の国で働け。ただし、幹部としてではなく、一市民としてな」
俺は一枚の羊皮紙をアザゼルに渡した。
エリスが作成した『雇用契約書』だ。
「条件はこうだ。
一、人間との争いを一切禁止する。
一、俺の国の法律を守り、税金を納める。
一、それぞれの能力を生かして社会貢献する。
給料は能力給。福利厚生は人間と同じ。住居も用意する。……どうだ?」
アザゼルは震える手で契約書を読んだ。
そこには、魔族を奴隷としてではなく、対等な労働者として扱う条項が並んでいた。
人間社会から迫害され、魔王からも使い捨てにされてきた彼らにとって、それは夢のような待遇だった。
「……本気、なのですか? 我々のような化け物を、国民として受け入れてくださると?」
「化け物? うちにはドラゴンも天使もゴーレムもいるぞ。今さら魔族が増えたところで、誰も気にしないさ」
俺は笑い飛ばした。
アザゼルの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「ありがとうございます……! 一生、レント陛下に忠誠を誓います!」
「陛下はやめろ。社長でいい」
「はっ! レント社長!」
こうして、魔王軍残党のトップ、魔将軍アザゼルは、レント帝国の『土木建築会社』の平社員(のちの現場監督)として採用されることになった。
彼が率いていた魔族たちも、それぞれ適性に合わせて農業、工業、警備などの職に就き、人間たちと共存する道を歩み始めた。
かつて世界を恐怖に陥れた魔族たちが、今は汗を流して働き、夕方には酒場で人間と肩を組んで笑い合っている。
そんな光景が、レント帝国の日常となった。
◆
「ふう、これで魔族問題も解決か」
俺は執務室に戻り、椅子に深々と座った。
これで本当に、世界中の脅威は去ったと言えるだろう。
魔王も倒した。
帝国も降伏した。
魔族とも和解した。
神の使徒も撃退した。
「平和すぎて退屈しそうだな」
贅沢な悩みだ。
だが、そんな俺の退屈を吹き飛ばすような「事件」が、身内から発生しようとしていた。
「レント様、お話があります」
執務室のドアが開き、シルヴィアが入ってきた。
彼女の表情は、いつになく真剣だ。
そして、その後ろにはイグニス、セレスティア、リリアーナ、さらには異世界魔王のリル=マオまで続いて入ってきた。
全員、妙に頬を赤らめ、モジモジとしている。
「どうした、みんな揃って。何かあったのか?」
「あの……レント様。実は……」
シルヴィアが一歩前に出る。
彼女は意を決したように、俺の目を見つめた。
「私たち、妊娠したかもしれません」
「……ぶふぉっ!!」
俺は飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
エリスが無言でハンカチを差し出してくる。
「に、妊娠!? 誰が!?」
「全員です」
「全員!?」
俺は立ち上がり、彼女たちを見回した。
シルヴィア、イグニス、セレスティア、リリアーナ。
リル=マオは……さすがにまだ子供だから違うよな?
(と思ったら、彼女も「パパの子だよ!」と嬉しそうに自分のお腹を撫でている。これは教育的指導が必要か、それとも魔王特有の生態なのか……)
「ま、待て待て。一度に全員って、そんなことあるか?」
「レント様、『子宝』の付与を忘れていませんか?」
シルヴィアがジト目で指摘する。
あっ。
思い出した。
毎晩の営みにおいて、俺は自分自身に【精力増強】だけでなく、【受胎確率操作】の付与も無意識にかけていたかもしれない。
最強の遺伝子を残そうとする本能が暴走したのか、あるいは単に俺の魔力が強すぎて、避妊魔法をも貫通してしまったのか。
「検査の結果、間違いありません。すでに新しい命が宿っています」
セレスティアが恥ずかしそうに、でも幸せそうに微笑む。
イグニスも「うむ、強い竜の気配を感じるぞ」と満足げだ。
リリアーナは「レント様との子供……! きゃあぁぁ!」と一人で盛り上がっている。
「そ、そうか……。俺が、父親に……」
実感が湧いてくると同時に、強烈な責任感がのしかかってきた。
一気に五人(リル=マオ含む?)の父親になる。
これは、魔王を倒すよりも重大なミッションかもしれない。
「おめでとうございます、旦那様」
エリスが珍しく柔らかな声で祝辞を述べた。
ゼクスやリナも駆けつけ、「お祝いだ!」「宴会だ!」と騒ぎ始める。
城内は一瞬にしてお祭り騒ぎとなった。
「皇帝陛下に世継ぎができた!」というニュースは瞬く間に国中に広まり、民衆たちも歓喜に沸いた。
祝砲が打ち上がり、街中でパレードが始まる。
「……はは、まいったな」
俺は頭をかいた。
これからは、国作りだけでなく、子育てにも全力投球しなければならないようだ。
だが、不思議と嫌な気はしなかった。
むしろ、これからの未来が楽しみで仕方がない。
「レント様、男の子でしょうか、女の子でしょうか?」
「どっちでもいいさ。元気に育ってくれれば」
俺はシルヴィアたちを抱き寄せた。
この愛おしい家族たちを守るためなら、俺は何度でも最強になれる。
そう確信した。
そして数ヶ月後。
無事に子供たちが生まれた。
シルヴィアからは銀髪の王子。
イグニスからは角の生えた元気な男の子。
セレスティアからは翼を持つ天使のような女の子。
リリアーナからは金髪の王女。
リル=マオからは……なぜか卵が生まれた(やはり魔族の生態は謎だ)。
城は赤ちゃんの泣き声で賑やかになり、俺はオムツ替えと夜泣きの対応に追われる日々を送ることになった。
最強の付与術師も、育児の前ではただの新米パパだ。
だが、その忙しささえも、今は心地よい。
「レント様、あの子が初めて立ちました!」
「パパ! 見て見て!」
子供たちの成長を見守る日々。
これが、俺が求めていた本当の『最強の幸せ』なのかもしれない。
そんなある日。
俺は城のテラスから、遠くの山並みを眺めていた。
そこには、かつて俺を追放した元パーティの仲間たちが送られた、『魔の山』の鉱山がある。
「あいつら、どうしてるかな」
ふと、そんなことを思った。
彼らは犯罪奴隷として一生労働に従事する運命だ。
かつての栄光も、プライドも失い、ただ生きるためだけに土にまみれているはずだ。
「……まあ、自業自得だけどな」
俺はワイングラスを傾けた。
彼らへの恨みはもうない。
ただ、彼らがいたからこそ今の俺があるという、皮肉な感謝だけが残っていた。
もしあの日、追放されていなければ、俺は自分の力に気づくこともなく、こんな幸せな日々を手に入れることもなかっただろう。
「ありがとうよ、元仲間たち。せいぜい長生きしろよ」
俺は彼らに向かって、心の中で祝杯を挙げた。
それが、彼らへの最後の手向けだった。
物語は、いよいよフィナーレへと向かう。
俺たちの幸せな日々は、これからもずっと続いていく。
そして、その影でひっそりと幕を閉じる、敗者たちの物語もまた、一つの結末を迎えていた。
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