追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

sika3

第30話 裏切った幼馴染ヒロインの末路。「私、間違ってたの……」

次元の狭間へと元仲間たちを追放し、全ての因縁に決着をつけた――はずだった。
だが、運命とは皮肉なもので、俺が「無」へと送ったはずの四人のうち、ただ一人だけが、奇跡的というか悪運強く、こちらの世界に舞い戻ってきていた。

聖女アリア。
俺の幼馴染であり、かつては結婚の約束までしたヒロイン。
彼女だけが、転送の瞬間に身に着けていた『聖女のロザリオ』(俺が昔プレゼントした、一度だけ致死ダメージや次元干渉を防ぐ特製アクセサリ)が発動し、ゲートの裂け目から弾き出されていたのだ。

場所は、王都のスラム街。
雨が降る路地裏のゴミ捨て場。
アリアは泥水の中に横たわっていた。

「う……うぅ……」

彼女は目を開けた。
全身が痛い。堕天使の力は消え失せ、聖女としての魔力も枯渇し、ただの無力な少女に戻っていた。
それどころか、魔人化や堕天化の反動で体はボロボロになり、美しい金髪は白髪交じりのパサパサの髪になり、肌は老婆のように干からびていた。

「ここは……王都……?」

アリアは震える手で自分の顔を触った。
指先に触れる皺だらけの感触。
水たまりに映る自分の姿を見て、彼女は悲鳴を上げた。

「嫌ぁぁぁッ! 誰よこれ! 私じゃない! 私は聖女アリアよ! 世界で一番可愛いヒロインなのよ!」

彼女は叫んだが、その声は掠れて弱々しかった。
通りがかった浮浪者たちが、気味悪そうに彼女を見て避けていく。
かつては誰もが崇め、手を差し伸べた聖女様が、今は誰からも見向きもされない汚物扱いだ。

「レント……レントなら……」

彼女の脳裏に、かつての優しい幼馴染の顔が浮かんだ。
どんな時でも自分を守り、綺麗にしてくれ、美味しいものを食べさせてくれたレント。
彼なら、この姿を見てもきっと助けてくれるはずだ。
だって、私たちは幼馴染で、婚約者だったのだから。

「そうだ……レントに会いに行こう……。謝れば、きっと許してくれる……」

アリアは這うようにして立ち上がった。
都合の良い妄想に縋り付くしか、彼女が生きていく術はなかったのだ。
彼女はボロボロの体を引きずり、レントの城がある北の方角へと歩き出した。



数日後。
俺の城、レント城の門前。

「頼む……レント様に会わせてくれ……」

門番をしている騎士たちに、一人の老婆が懇願していた。
ボロ布を纏い、足は裸足で血だらけ。
異臭を放つその姿に、騎士たちは顔をしかめていた。

「おいおい、婆さん。ここは特級英雄様の居城だぞ。物乞いなら他を当たれ」
「違う! 私は婆さんじゃない! アリアだ! レントの幼馴染のアリアだ!」

老婆が叫ぶが、騎士たちは信じない。
アリアといえば、若く美しい聖女として有名だった。
こんな皺くちゃの老婆であるはずがない。

「嘘をつくな。アリア様なら、先日行方不明になったと聞いている。不敬罪で捕まる前に立ち去れ」
「嘘じゃない! レントを呼んで! 彼ならわかるわ!」

アリアが門にしがみつく。
その騒ぎを聞きつけて、城の中から俺が出てきた。
隣にはシルヴィアがいる。

「どうした、騒がしいな」
「あ、レント様! 不審な老婆が……」

騎士が説明しようとした時、アリアが俺を見て叫んだ。

「レント! 私よ! アリアよ!」

俺はその老婆を見た。
鑑定眼を使うまでもない。その魂の波長、そして微かに残る聖女の魔力残滓。
間違いなくアリアだ。
だが、その姿はあまりにも無残だった。

「……アリアか?」
「そうよ! わかってくれたのね! ああ、レント……会いたかった……!」

アリアは涙を流して俺に駆け寄ろうとした。
だが、俺は冷たい目で彼女を見下ろしたまま動かなかった。

「……生きていたのか。あのロザリオ、まだ持っていたんだな」
「ええ! 貴方がくれた大切なプレゼントだもの! ずっと大事にしてたのよ!」

アリアは必死にアピールする。
まるで、それを免罪符にできると思っているかのように。

「レント、ごめんなさい。私、間違ってたの。ヴァルスたちに騙されてたのよ。本当はレントのこと、ずっと好きだったの。だから、やり直しましょう? 私、また貴方の隣で……」

彼女は俺の手を握ろうとした。
その手は泥だらけで、爪は黒く汚れている。

パシッ。

俺はその手を振り払った。

「触るな」
「え……?」

アリアが凍りつく。

「やり直す? 何を寝言を言ってるんだ」
「だって……幼馴染じゃない……。約束したじゃない、ずっと一緒だって……」
「その約束を破って、俺をダンジョンに置き去りにしたのは誰だ? 俺を罵倒し、魔物の餌にしようとしたのは誰だ?」

俺の声は氷点下のように冷たかった。

「お前は俺を裏切った。それだけじゃない。魔神に魂を売り、堕天使の手先となって、この国の人々を危険に晒した。その罪が、『ごめんなさい』の一言で消えるとでも思ってるのか?」
「そ、それは……でも、今は反省してるわ! 心から愛してるの!」
「愛? 笑わせるな」

俺はシルヴィアの腰を引き寄せた。
シルヴィアは悲しげな目でアリアを見ている。

「俺の隣には、もう大切なパートナーがいる。お前が入る隙間なんて、1ミリもないんだよ」
「そ、そんな……。その女は誰よ! 私より可愛いの!?」

アリアがシルヴィアを睨む。
だが、その差は歴然だった。
美しく輝くシルヴィアと、醜く老いさらばえたアリア。
勝負にすらなっていない。

「鏡を見てこい。お前の今の姿が、お前の心の醜さを映し出しているんだ」

俺は言い放った。

「二度と俺の前に現れるな。次に会ったら、今度こそ確実に『処理』する」

俺は背を向け、門の中へと戻った。
門が重々しい音を立てて閉ざされる。

「レント! 待って! 開けて! 嫌ぁぁぁッ!」

アリアの絶叫が響く。
だが、扉は二度と開かなかった。

騎士たちによって引きずり出されたアリアは、そのまま荒野へと放り出された。
行く当てもなく、金もなく、力もない。
かつての聖女は、野垂れ死ぬか、あるいはスラムで残飯を漁って生き延びるか。
いずれにせよ、彼女の人生は終わったも同然だった。

城の中に戻った俺は、深いため息をついた。

「レント様……お辛いですか?」

シルヴィアが心配そうに聞いてくる。

「いや。むしろスッキリしたよ。これで本当に、過去のしがらみが消えた気がする」

俺はシルヴィアの手を握った。

「ありがとう、シルヴィア。お前がいてくれてよかった」
「レント様……」

俺たちは抱き合った。
過去の幼馴染との決別。そして、新たなパートナーとの絆の再確認。
これで俺の心に迷いはない。

「さあ、前を向こう。これからは、俺たちの国を作るんだ」

俺は窓の外、広大な領地を見渡した。
ここを起点に、世界で一番豊かで、平和で、誰もが笑顔で暮らせる最強の国を作る。
それが、俺の新たな目標だ。

          

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