追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第29話 元パーティ、魔王軍の残党に襲われ、誰も助けに来ない。

――時を少し遡る。
ヴァルスたち元『栄光の剣』が、堕天使の甘言に乗って新たな力を手に入れる少し前の話だ。

彼らは、俺の城への侵入に失敗し、エリスによって彼方へと吹き飛ばされた後、命からがら森を彷徨っていた。
魔人化の力も失い、装備もなく、体力も限界に近い彼らにとって、Sランク魔物が跋扈するこの森は地獄そのものだった。

「はぁ……はぁ……。水……どこかに水は……」

ヴァルスは地面を這いずりながら呻いた。
喉が焼けるように渇いている。
数日前までは、最高級のワインを浴びるように飲んでいた自分が、今は泥水一滴すら手に入らない現実に、気が狂いそうだった。

「ヴァルス……もう歩けないわ……」

エリナが木の根元に座り込む。
彼女の足は傷だらけで、裸足の裏は血豆が潰れて赤く染まっている。
魔法使いとしての魔力も枯渇し、ただの無力な少女でしかなかった。

「起きろ! ここで寝たら死ぬぞ!」
「うるさいわね! あんたがリーダーなら、なんとかしなさいよ!」
「なんだと!? 俺だって必死なんだよ!」

極限状態での仲間割れ。
かつての結束など見る影もない。
彼らは互いを罵り合い、責任を押し付け合うことでしか、正気を保てなかったのだ。

その時だった。

ガサッ。

茂みが揺れ、複数の影が現れた。
彼らを取り囲むように現れたのは、腐肉の臭いを漂わせる集団――魔王軍の残党であるゾンビやグールたちだった。
俺たちが倒した魔王軍本隊から逸れ、森の中に潜伏していたはぐれ魔物だ。
指揮系統を失い、ただ本能のままに生きた肉を求める飢えた獣たち。

「ウヴゥゥ……ニク……ニク……」

ゾンビたちが涎を垂らしながら近づいてくる。
その数は二十体以上。
全盛期の彼らなら、あくびをしながらでも一掃できる相手だ。
だが、今の彼らにとっては、ドラゴン以上の脅威だった。

「ひぃっ! 魔物だ! 来るな!」

ジャミルがナイフ(刃こぼれしてただの鉄板と化したもの)を構えるが、手は震えて止まらない。
アリアは恐怖で声も出せず、ガタガタと震えている。

「くそっ、戦うしかないのか! 俺は剣聖ヴァルスだぞ! こんな腐った死体ごときに!」

ヴァルスは落ちていた木の枝を拾い、構えた。
剣はない。プライドだけを武器に、彼はゾンビに殴りかかった。

バキッ。

木の枝が折れた。
ゾンビの腐った肉にすら傷をつけられず、あっけなく砕け散った。

「あ……」

ヴァルスが呆然とする間に、ゾンビの腕が彼の首を締め上げた。

「ぐぇっ!?」
「ヴァルス!」

エリナが叫ぶが、彼女もすぐにグールに押し倒された。
ジャミルとアリアも、数体の魔物に囲まれ、逃げ場を失った。

「助けて……誰か助けて!」
「レント! レントぉぉ! どこにいるんだよ! 助けに来てくれよ!」

彼らは叫んだ。
かつて自分たちが捨てた男の名前を。
今までなら、どんなピンチでも必ずレントが助けてくれた。
防御バフを張り、回復魔法を掛け、敵を弱体化させてくれた。
あいつがいれば、こんな雑魚など恐れるに足りなかった。

だが、誰も来ない。
森の静寂を破るのは、彼らの悲鳴と、魔物たちの咀嚼音だけ。

「なんで……なんで来ないんだよ……」

ヴァルスは涙を流した。
レントはもういない。
自分たちが追い出したのだ。
その事実が、今更ながら重くのしかかる。

「痛い……痛いよぉ……」

アリアが泣き叫ぶ。
ゾンビに腕を噛まれ、鮮血が飛び散る。
聖女としての加護も、今は何の意味も持たない。

彼らは絶望の中で理解した。
自分たちが「選ばれた勇者」などではなかったことを。
レントという最強の支えがあって初めて輝けていた、ただの張りぼてだったことを。

「……もう、嫌だ……」

エリナが目を閉じた。
死の予感が彼らを包み込む。
だが、運命は彼らに安らかな死さえ許さなかった。

ズドォォォォォン!!

突然、黒い雷が落ちた。
ゾンビたちが一瞬で消し炭となり、彼らの周りに円状の焦げ跡を作る。

「……え?」

ヴァルスたちが目を開けると、そこには漆黒の翼を持つ異形の存在――堕天使が立っていた。
(これが、前話で語られた彼らの「堕天」への入り口となるシーンだ)

『ほう、無様だな。かつての英雄が、腐肉漁りの餌になるとは』

堕天使は冷笑した。

『死にたくなければ、我の手を取れ。レントへの復讐を望むなら、力を与えてやろう』

究極の選択。
このまま魔物の餌になるか、悪魔に魂を売ってでも生き延びるか。
彼らに迷いはなかった。

「……やる。やってやる……!」

ヴァルスは血まみれの手を伸ばした。
それが破滅への契約書へのサインだと知りながら。



一方、レント城では。

「お兄ちゃん、見て見て! 新しい魔法作ったの!」

リナが庭で魔法の練習をしていた。
彼女が杖を振ると、空中に無数の光の球が現れ、複雑な軌道を描いて飛び回る。

「【スターダスト・ファンネル】! 自動追尾で敵を撃ち抜くよ!」
「おー、すごいな。機動兵器みたいだ」

俺はテラスから拍手した。
リナの才能は底知れない。
俺の付与術とは違う、純粋な魔力操作のセンスが抜群だ。
テツジンとの連携も完璧で、正直俺が出なくても魔王くらいなら倒せそうな気がする。

「平和じゃのう」

イグニスが隣で欠伸をする。
彼女は最近、人間界のスイーツにハマっており、今はエリス特製のパフェを食べている。

「そういえばレント様、最近妙な気配を感じませんか?」

シルヴィアが不安げに空を見上げた。

「気配?」
「はい。空気が澱んでいるというか……天界の方角から、監視されているような」
「ああ、それなら俺も感じてるよ」

俺はコーヒーを啜った。
堕天使の気配だ。
ヴァルスたちが接触したあいつだろう。
俺の【全知覚(オール・センス)】には、彼らの動向が手に取るようにわかっていた。

「放っておくんですか?」
「向こうから来るのを待ってるんだ。罠にかかった獲物が暴れるのを待つ猟師みたいにな」

俺はニヤリと笑った。
ヴァルスたちが堕天使の力を得て、再び挑んでくることは予想済みだ。
そして、それが彼らにとっての「最後の舞台」になることも。

「エリス、防衛システムの最終チェックを頼む。今度のお客さんは、ちょっとだけ手強いかもしれない」
「了解シマシタ。対神兵器『ロンギヌス・キャノン』、スタンバイ完了デス。イツデモ発射可能デス」

エリスがスカートの中から物騒な砲身をチラ見せする。
準備万端だ。

「さあ、来いよ元仲間たち。最高のエンディングを用意して待ってるぜ」

俺はカップを置いた。
嵐の前の静けさ。
だが、俺たちの心に恐怖はない。
あるのは、絶対的な勝者の余裕だけだ。



数日後。
その時は来た。

空が裂けた。
比喩ではない。物理的に、王都の上空に巨大な亀裂が走り、そこからどす黒い闇が溢れ出したのだ。
闇の中から現れたのは、四つの漆黒の影。
堕天使の力を得て変貌した、ヴァルスたち『堕天の四騎士』だ。

彼らの姿は以前の魔人化とは異なり、神々しくも禍々しいオーラを纏っていた。
ヴァルスは黒い鎧に身を包み、手には魔剣『堕落(フォールン)』を携えている。
エリナは黒いローブを纏い、背中には六枚の黒翼。
ジャミルとアリアも、それぞれ異形の武器を手に、空中に浮遊していた。

『レントォォォ! 出てこいぃぃぃ!』

ヴァルスの声が王都全土に響き渡る。
衝撃波でガラスが割れ、人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。

『今度こそ貴様を殺す! 俺たちが手に入れた「神殺し」の力でな!』

彼らの背後には、彼らを唆した上位堕天使の姿もあった。
彼は高みの見物と決め込んでいるようだ。

俺は城のバルコニーに出た。
仲間たちも全員揃っている。

「やれやれ、随分と派手な登場だな。近所迷惑だぞ」
「レント様、あの方々……以前とは魔力の質が違います。神聖属性と暗黒属性が混ざり合った、カオスな力です」

セレスティアが警戒する。
彼女のような純正の天使にとって、堕天使の力は天敵とも言える。

「問題ない。偽物の神様ごっこに付き合ってやるほど、俺たちは暇じゃない」

俺は空中に飛び出した。
シルヴィア、イグニス、リナたちも続く。

「行くぞ! 最後の害虫駆除だ!」

上空での激突。
ヴァルスが魔剣を振り上げる。

『受けろ! 【堕天剣・ラグナロク】!』

世界を終わらせるほどの闇の斬撃が放たれる。
だが、俺はそれを素手で掴んだ。

ガシィッ!

「……は?」

ヴァルスが固まる。

「神殺し? そんな物騒な名前をつけるなら、せめて俺の『付与』を破ってからにしろ」

俺の手には【物理無効】【魔法吸収】【因果遮断】の三重付与がかかっている。
どんな攻撃も、俺に届く前に無力化される。

「お返しだ」

俺は掴んだ闇のエネルギーを圧縮し、そのまま投げ返した。

ズドォォォォォン!!

ヴァルスが自分の技で吹き飛ばされる。
黒い鎧が砕け、彼はきりもみ回転しながら落下していった。

「ヴァルス!」
「嘘よ! 神の力なのよ!?」

エリナたちが叫ぶが、彼女たちも同様だった。
シルヴィアの聖剣がエリナの黒翼を切り裂き、イグニスの炎がジャミルを焼き、リナの魔法がアリアを撃ち落とす。

圧倒的。
力の差は、神の力を借りようが埋まらなかった。

『ば、馬鹿な……! 我の与えた力は、神にも匹敵するはず……!』

高みで見物していた堕天使が狼狽える。
俺は瞬歩で彼の目の前に移動した。

「よお。黒幕さん」
「ひっ!?」
「お前が神にも匹敵するなら、俺は神を殴り倒す男だ。計算違いだったな」

俺は拳を握った。
【神威・本気パンチ】。

ドゴォォォォォン!!

堕天使の顔面に直撃。
彼は星になり、空の彼方へと消えていった。

残されたのは、墜落してボロボロになったヴァルスたちだけ。
彼らは地面に這いつくばり、空を見上げていた。

「なんで……勝てない……」
「何をしても……あいつには届かないのか……」

絶望。
完全なる敗北。
彼らはようやく悟った。
レントという存在が、自分たちとは住む世界が違う「特異点」であることを。

「……殺せ」

ヴァルスが呟いた。

「もういい……殺してくれ……」

生き恥を晒し続けることへの疲れ。
彼らの心は完全に折れていた。

俺は彼らを見下ろした。
怒りも、憐れみもない。
ただ、終わらせる時が来たという静かな納得だけがあった。

「わかった。望み通りにしてやる」

俺は指をパチンと鳴らした。
エリスが巨大な転移ゲートを開く。
その先は、次元の狭間にある『無の空間』だ。
死ぬことさえ許されない、永遠の虚無。
そこで彼らは、己の罪と向き合いながら、永遠の時を過ごすことになる。

「さようなら、元仲間たち」

彼らがゲートに吸い込まれていく。
最期に、ヴァルスが何かを叫ぼうとしたが、音になる前に消えた。

ゲートが閉じる。
空には青空が戻っていた。

「……終わりましたね」

シルヴィアがそっと寄り添う。
俺は彼女の肩を抱き、頷いた。

これで本当に、全ての因縁が終わった。
元パーティのざまぁも、魔王も、堕天使も。
全部片付いた。

「帰ろう。今日は宴会だ」
「わーい! お肉!」
「酒じゃ酒じゃ!」

俺たちは笑いながら城へと戻った。
最強のハーレムパーティの、新しい日常が始まる。
今度こそ、本当のスローライフが待っているはずだ。

……たぶん。

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