追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第28話 魔王幹部、レントの配下(ペット)になることを志願。

王都を襲った魔王城浮上事件。
その首謀者である魔王『終焉の王』は、俺のデコピンならぬ本気パンチによって塵一つ残さず消滅した。
公爵令嬢ミリアも正気を取り戻し、現在は王家の監視下で謹慎処分(という名のリハビリ生活)を送っている。
王都は復興作業に追われていたが、俺の城は相変わらず平和そのものだった。

「旦那様、本日ノ収穫物デス」

エリスが巨大なカゴいっぱいの野菜を持ってきた。
ゼクス率いるスケルトン農夫たちが育てた、魔力たっぷりの特製野菜だ。

「トマトが光ってるな」
「ハイ。【発光】ト【栄養増幅】ヲ付与シタ結果、夜デモ収穫シヤスイ仕様ニナリマシタ」
「便利だけど、食欲が湧くかは微妙だな……」

俺は苦笑しつつ、朝食の席に着いた。
シルヴィア、イグニス、セレスティア、リナがすでに揃っている。
さらに今日は、もう一人(?)の同居人が増えていた。

「おはようございます、レント様! 今日も良い天気ですね!」

元気よく挨拶してきたのは、背中に小さなコウモリの翼を生やした少女だ。
見た目は十歳くらいだが、その正体は――魔王城の瓦礫から見つかった『魔王の卵』から孵化した、次代の魔王候補だ。
名前は『マオ』。そのまんまである。

「マオ、卵の殻は片付けたか?」
「うん! 全部食べたよ! 美味しかった!」

マオはニカっと笑った。
彼女は生まれた直後、俺を親だと思って刷り込まれてしまったらしく、俺のことを「パパ」と呼びそうになったところを全力で阻止し、今は「レント様」と呼ばせている。
魔王の生まれ変わりとは思えないほど無邪気で、リナと一緒になって城内を走り回っている。

「平和じゃのう」

イグニスがしみじみと言う。
確かに平和だ。
だが、その平和を乱す来訪者が、またしても現れようとしていた。

「レント様、城門にお客様が来ています」

エリスからの報告だ。

「誰だ? またヴァンガードか?」
「イイエ。魔族デス。識別信号……『魔王軍四天王』ノ残リノ二名ト一致シマス」

四天王。
死霊公爵ゼクス(現・執事)、暴風将軍ガルド(現・庭師)に続く、残りの幹部たちか。
魔王が倒された今、復讐に来たのだろうか。

「通せ。庭で話を聞く」

俺たちはテラスへ出た。
城門が開き、二人の魔族が入ってきた。

一人は、全身を氷の鎧で覆った冷徹な美貌の女騎士――『氷結将軍』フリージア。
もう一人は、岩のような筋肉を持つ巨漢の格闘家――『剛力王』タイタン。

彼らは殺気立っている様子もなく、むしろ神妙な面持ちで俺の前に進み出た。
そして。

ドサッ。

二人はその場に跪き、深々と頭を下げた。

「お初にお目にかかります、勇者レント殿。我らは魔王軍残党の代表として参りました」

フリージアが凛とした声で言った。
敵意はないようだ。

「何の用だ? 魔王の仇討ちか?」
「とんでもない! 我々は、貴殿に『降伏』しに来たのです」
「降伏?」
「はい。魔王様が倒された今、我々に戦う理由はありません。それに、ゼクスやガルドからの手紙で、ここの待遇の良さを聞きまして……」

フリージアがチラリと横を見る。
そこには、エプロン姿で花壇の手入れをしているガルドと、洗濯物を干しているゼクスの姿があった。
二人とも、魔王軍にいた頃より遥かに健康そうで、肌艶も良い。

「あいつら、手紙なんて出してたのか」
「はい。『ここは天国だ。魔力は使い放題、飯は美味い、上司(レント様)は理不尽な命令をしない。早くこっちに来い』と」

タイタンが野太い声で補足した。
完全にリクルート活動である。

「我々魔族は、強者に従うのが掟。貴殿は魔王様をも一撃で葬った最強の存在。従うに値するお方です」
「どうか、我々も配下(ペット)に加えていただけないでしょうか! 掃除でも洗濯でも、何でもします!」

二人は必死に頭を下げた。
プライドの高い四天王が、ここまでへりくだるとは。
よほど魔王軍がブラックだったのか、それともウチのホワイトぶりが魅力的すぎたのか。

「まあ、戦力が増えるのは悪くないが……」

俺はシルヴィアたちを見た。
彼女たちは「また増えるのか」という呆れた顔をしているが、反対はしていないようだ。

「わかった。採用しよう。ただし、試用期間ありだ。少しでも反乱の兆しが見えたら、即刻クビ(物理)にするからな」
「ははっ! ありがたき幸せ!」

こうして、魔王軍四天王が全員、俺の配下となった。
フリージアは『冷蔵庫兼空調係』として、城内の温度管理を担当。
タイタンは『土木工事兼荷物持ち係』として、リナの開墾事業を手伝うことになった。

最強の魔族たちが、家事に勤しむ光景。
これぞ平和の象徴かもしれない。



一方、その頃。
城から遠く離れた荒野を、四つの影が彷徨っていた。

「水……水をくれ……」

元『栄光の剣』のリーダー、ヴァルスだ。
彼は以前、融合魔獣となって俺に倒され、全財産と力を失った。
だが、しぶとく生きていた。
俺の『デコピン』で魔獣の体は消滅したが、彼ら自身の命までは奪っていなかったからだ。
ただし、その代償として、彼らはレベル1の初期ステータスまで弱体化し、装備も金も名誉も全て失った状態で、荒野に放り出されていた。

「なんで……なんで俺たちがこんな目に……」

エリナが泣き言を漏らす。
彼女の自慢だった美貌も、今は泥と垢にまみれて見る影もない。
魔法も使えない。ただの無力な少女だ。

「レント……あいつのせいだ……。あいつさえいなければ……」

アリアが呪詛のように呟く。
逆恨みもここまで来ると病気だが、彼らにとっての生きる糧は、それしかなかった。

「見ろよ……あれ」

ジャミルが震える指で空を指差した。
遠くの空に、俺の城――『レント城』が輝いているのが見える。
そこには、楽しげに空を飛ぶ魔族たちや、幸せそうな俺たちの姿があった。

「あいつら……魔王軍まで手懐けやがって……」
「許せない……。私たちの居場所を奪っておいて、自分だけ……!」

彼らの心に、どす黒い嫉妬の炎が燃え上がる。
だが、今の彼らに何ができるわけでもない。
近づこうにも、城の周囲には強力な結界があり、エリスの迎撃システムが作動する。
彼らは指をくわえて見ていることしかできなかった。

「……諦めるな」

ヴァルスが立ち上がった。
その目は虚ろだが、狂気だけがギラギラと光っていた。

「まだだ。まだ手はあるはずだ。俺たちは『栄光の剣』だぞ? 選ばれた勇者なんだ。きっと、逆転のチャンスがあるはずだ」

彼は足元の石ころを握りしめた。

「悪魔でもいい。魔神でもいい。俺に力をくれるなら、何だって差し出してやる……!」

彼の執念が、何かを呼び寄せたのか。
あるいは、単なる偶然か。
荒野の裂け目から、奇妙な『黒い霧』が立ち上り始めた。

『……力が、欲しいか?』

またしても、あの声だ。
以前、鉱山で彼らを魔人化させた『魔神の欠片』の声。
だが、今回はもっと深く、もっと根源的な闇の響きを持っていた。

『我は、天界を追放されし堕天使の王。お前たちの絶望、実に美味だ』

「堕天使……?」

ヴァルスは空を見上げた。
黒い霧が凝縮し、一人の男の姿を形作った。
漆黒の翼を十二枚持ち、顔には仮面をつけた異形の天使。

『レントという男に恨みがあるようだな。我も同じだ。あやつは調子に乗りすぎた。神の領域を侵す「イレギュラー」として、排除せねばならん』

堕天使は冷ややかに告げた。

『協力しよう、人間よ。お前たちに、我の眷属としての力を与える。その代わり、レントの城に侵入し、ある「鍵」を盗み出せ』
「鍵……?」
『そうだ。あやつの城の地下深くに封印されている、天界への扉を開く鍵だ。それがあれば、我は再び神の座に返り咲ける』

利害の一致。
ヴァルスたちに迷いはなかった。

「やってやる……! 力をよこせ! レントを殺せるなら、悪魔の手先でも何でもなってやる!」

堕天使が指を鳴らすと、黒い雷がヴァルスたちを打った。
彼らの体が再び変異を始める。
今度は魔人ではない。
もっと禍々しく、冒涜的な『堕天の使徒』へと。

「グオオオオオオッ!!」

新たな力を得た彼らは、再びレント城を目指して歩き出した。
これが最後の戦いになるとも知らずに。



城のテラスで、俺はくしゃみをした。

「誰か噂してるな」
「風邪ですか? レント様」
「いや、俺に風邪は引けない仕様だ」

俺は空を見上げた。
雲行きが怪しい。
ただの天候の変化ではない。
何か、世界の外側から圧力がかかっているような、嫌な予感がする。

「天界、か」

セレスティアが以前言っていた。
彼女のような天使が地上に堕ちてきたのは、天界で何らかの政変があったからだと。
そして、その余波が地上にも及ぼうとしている。

「まあ、来るなら来いって感じだがな」

俺はコーヒーを飲み干した。
最強の仲間たち、そして頼もしい(?)元魔王軍の部下たちもいる。
どんな敵が現れても、俺たちの平穏な生活は揺るがない。

「パパ! 遊ぼう!」
「だからパパじゃなくてレント様だって」

マオが飛びついてくる。
俺は彼女を抱き上げ、高い高いをした。
平和だ。
この笑顔を守るためなら、神様相手に喧嘩を売るのも悪くない。

決戦の時は近い。
天と地、そして人の因縁が交差する、最後のクライマックスへ向けて。

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