追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~
第27話 「魔王軍? ただの経験値稼ぎの場所だよな」
東の国境で『暴風要塞』を制圧し、四天王ガルドを捕虜(新たな庭師)として城に連れ帰った俺たちは、一躍時の人となっていた。
いや、すでに特級英雄や勇者として知られていたが、今回の件でその名声は国外にも轟くことになったのだ。
十万の軍勢を擁する空飛ぶ要塞を、たった数人のパーティで無傷で落としたという事実は、もはや戦略兵器としての認識を決定づけるものだった。
「レント様、他国からの同盟要請が止まりません」
「帝国の残党も、無条件降伏を申し出てきたそうですよ」
城のサロンで、シルヴィアとセレスティアが大量の書状を整理しながら苦笑している。
テーブルの上には、世界中の王家や組織からの親書が山積みになっていた。
「面倒だなあ。全部エリスに任せていいか?」
「了解シマシタ。友好国ニハ儀礼的ナ返信ヲ、敵対的ナ国ニハ『次ハ首都ヲ更地ニスル』トイウ警告文ヲ送ッテオキマス」
「過激すぎるだろ。……まあ、牽制としてはいいか」
俺はソファに深く沈み込んだ。
平和なのは良いことだが、有名税が高すぎる。
たまには誰にも邪魔されず、ダンジョンで無心にモンスターを狩りたい気分だ。
「そういえばレントよ。捕まえたあの緑色のデカブツ(ガルド)、意外と使えるぞ」
庭から戻ってきたイグニスが、リンゴをかじりながら言った。
「風魔法で枯れ葉を集めたり、洗濯物を一瞬で乾かしたりしておる。ゼクスとの相性も悪くないようだ」
「そうか。四天王も使いようだな」
かつて世界を震え上がらせた魔王軍の幹部たちが、俺の庭で家事に精を出している。
シュールな光景だが、平和利用としては最善だろう。
「お兄ちゃん! 大変!」
そこへ、リナが血相を変えて飛び込んできた。
彼女の手には、クリスタル製の通信機が握られている。
「どうした、リナ」
「ギルドから緊急連絡! 『魔王城』が……浮上したって!」
「魔王城?」
俺たちは顔を見合わせた。
魔王軍の幹部は二人も捕まえたし、残党も壊滅状態のはずだ。
今さら本拠地が出てきてどうするというのか。
「場所は?」
「王都の真下! 地下迷宮の最深部から、地上へ向かって浮上中だって!」
王都の地下。
俺が以前、ヒドラを狩ったあの場所か。
あそこは旧文明の遺跡だと思っていたが、まさか魔王城そのものが封印されていたとは。
「原因は?」
「わからないけど……誰かが封印の鍵を使ったみたい」
誰か。
心当たりはないが、王都の地下にアクセスできる人物となると限られてくる。
「行くぞ。俺の城(マイホーム)の近所で騒がれるのは迷惑だ」
俺たちは転移魔法で王都へ向かった。
◆
王都はパニックに陥っていた。
地面が激しく揺れ、中央広場の石畳がひび割れていく。
その裂け目から、どす黒い瘴気と共に、巨大な漆黒の城が姿を現したのだ。
鋭利な塔が空を突き刺し、城壁には無数の髑髏が埋め込まれている。
まさに『魔王城』と呼ぶにふさわしい威容だ。
「キャアアアアッ!」
「魔王だ! 魔王が復活したんだ!」
市民たちが逃げ惑う中、城のバルコニーに人影が現れた。
魔王……ではない。
豪奢なドレスを纏った、美しい少女だ。
「……ミリア?」
俺は空中に浮遊しながら、その顔を見て呟いた。
以前の舞踏会で会った公爵令嬢、ミリア・バルバロスだ。
だが、彼女の様子はおかしい。
瞳は赤く染まり、肌には黒い紋様が浮かんでいる。
そして手には、禍々しい光を放つ黒い宝石――『魔王復活の鍵』が握られていた。
「オホホホホ! 見なさい! これが私の城よ!」
ミリアが高笑いする。
その背後には、虚ろな目をした貴族たちや、洗脳された兵士たちが控えている。
彼女は鍵の力で魔王城を制御し、人々を操っているようだ。
「レント様! お待ちしておりましたわ!」
ミリアが俺を見つけ、恍惚とした表情で手を振った。
「見てくださいまし! 貴方にふさわしい『お嫁さん』になるために、私、こんなに素敵な力を手に入れましたのよ!」
「……お前、それが何かわかってるのか?」
「ええ、魔王の力ですわ! これがあれば、シルヴィア様やイグニス様にも負けません! さあ、私と結婚して、この世界を支配しましょう!」
完全にイカれている。
ヤンデレが魔王の力を手に入れるとこうなるのか。
愛が重すぎて世界が滅びそうだ。
「悪いが、俺は支配なんて興味ないし、お前とも結婚する気はない」
「……なんですって?」
ミリアの表情が一瞬で凍りついた。
可愛らしかった顔が、般若のように歪む。
「どうして……? どうして私を見てくださらないの? こんなに頑張ったのに! こんなに力を手に入れたのに!」
「力が全てじゃない。それに、その力はお前のものじゃないだろ」
俺は冷たく言い放った。
彼女が持っている鍵。
そこから溢れ出る瘴気は、彼女の精神を蝕んでいる。
このままでは、彼女自身が魔王の依代として消費されてしまうだろう。
「うるさい……うるさいッ! 私のものよ! レント様が振り向いてくれないなら……力づくで私のものにしますわ!」
ミリアが鍵を掲げた。
ズズズズ……ッ!
魔王城が変形し、巨大な砲門が俺たちに向けられた。
さらに、城の周囲から無数の魔物――高レベルのデーモンやガーゴイルが召喚される。
「行け! 私の愛(しもべ)たちよ! レント様を捕まえてらっしゃい!」
「またこのパターンか」
俺はため息をついた。
魔王軍だろうが何だろうが、俺にとってはただの雑魚処理だ。
「みんな、経験値稼ぎの時間だぞ」
「はいっ! 遠慮なく行きます!」
「うむ、運動不足解消じゃ!」
戦闘開始。
王都の上空で、俺たちと魔王城の全面戦争が勃発した。
シルヴィアが聖剣でデーモンを一刀両断する。
イグニスがブレスでガーゴイルの群れを焼き払う。
セレスティアが浄化の光で瘴気を晴らす。
リナとテツジンが砲撃を防ぎ、逆に隕石魔法で反撃する。
「つ、強い……! なぜ!? 魔王の軍勢なのよ!?」
ミリアが悲鳴を上げる。
彼女の繰り出す魔物は、どれもレベル80以上のSランク級だ。
普通の冒険者なら即死レベルだが、俺たちにとっては「ちょっと硬い雑魚」でしかない。
「レベルが違うんだよ」
俺は瞬歩でミリアの目の前に移動した。
バルコニーに降り立ち、彼女と対峙する。
「ひっ……!」
ミリアが後ずさる。
俺の放つプレッシャーに、彼女の本能が警鐘を鳴らしているのだ。
魔王の力を借りていても、所詮は貴族の令嬢。
修羅場を潜り抜けてきた俺とは、魂の格が違う。
「その鍵、返してもらおうか」
「い、嫌よ! これは私の……!」
「駄々をこねるな」
俺は一歩踏み込み、彼女の手首を掴んだ。
バチッ!
黒い電流が走るが、俺は無視して鍵を握りしめた。
「付与術・【強制解除(アンロック)】」
パリンッ!
黒い宝石にヒビが入り、砕け散った。
中から溢れ出ていた瘴気が霧散し、ミリアの洗脳も解ける。
「あ……あれ? 私……何を……?」
ミリアはその場に崩れ落ちた。
正気に戻った彼女は、自分がしでかしたことの重大さに気づき、顔面蒼白になって震え出した。
「ご、ごめんなさい……私、レント様に振り向いてほしくて……」
「気持ちは分からなくもないが、やりすぎだ。しばらく頭を冷やせ」
俺は彼女をエリスに引き渡した。
罪は償ってもらう必要があるが、命まで取るつもりはない。
彼女もまた、魔王の力に魅入られた被害者の一人だ。
「さて、残るはこの城の本体だな」
俺は魔王城を見上げた。
鍵が壊れても、城自体はまだ活動を続けている。
どうやら、城の最深部に『魔王本体』が眠っており、それが目覚めようとしているらしい。
「オオオオオオオッ!!」
城の地下から、地獄の底から響くような咆哮が聞こえた。
大地が割れ、巨大な黒い影が這い出してくる。
伝説の魔王、『終焉の王』。
その力は四天王など比較にならない。
「やっとラスボスの登場か」
俺はニヤリと笑った。
普通の物語なら、ここで絶望するところだろう。
だが、俺にとっては最高の『サンドバッグ』だ。
ステータス無限の俺が、どれだけ本気を出せるか試せる相手。
「みんな、下がってろ。ここは俺一人でやる」
俺は空中に飛び出した。
魔王の巨大な拳が迫る。
ビル一つ粉砕するような一撃。
俺は拳を握り、真っ向から迎え撃った。
ドォォォォォォォォン!!
衝撃波が王都の空を裂いた。
魔王の拳と、俺の拳が激突する。
拮抗?
いや、違う。
「【筋力増強・限界突破】」
俺が力を込めると、魔王の腕がミシミシと音を立てて砕け始めた。
「グオッ……!?」
魔王が驚愕の声を漏らす。
人間ごときに力負けするなど、彼の辞書にはなかったはずだ。
「終わりだ。【極大消滅魔法(アルティメット・デリート)】」
俺はゼロ距離から、ありったけの魔力を叩き込んだ。
付与術の応用。
対象の存在確率をゼロにする、究極のデバフ攻撃。
カッ!!!!
王都の空が白く染まった。
魔王の絶叫と共に、黒い巨体は光の彼方へと消滅していった。
静寂が戻る。
魔王城は魔力を失い、ただの瓦礫となって崩れ落ちていった(もちろん、市街地に被害が出ないように結界で防いだが)。
「……勝った……のか?」
「レント様が……魔王を倒したぞ!」
地上から、割れんばかりの歓声が上がった。
二度目の英雄譚。
俺の名声は、もはや神話の領域に達していた。
「ふう、いい運動になったな」
俺は肩を回しながら、仲間たちの元へ戻った。
シルヴィアたちが涙ぐみながら迎えてくれる。
これで、本当に平和が訪れるはずだ。
国内の敵も、国境の敵も、そして魔王さえも倒した。
あとはミリアの処遇と、戦後処理を済ませれば、念願のスローライフに戻れる。
……そう思っていた。
だが、運命はまだ俺を休ませてくれないらしい。
瓦礫の山となった魔王城の跡地から、奇妙な『卵』が見つかったのだ。
それは魔王の生まれ変わりか、あるいは……?
そして、その卵を巡って、新たな勢力――『天界』からの使者が現れることになる。
俺の戦いは、地上だけでなく、天とも関わる壮大なスケールへと発展していくのだった。
いや、すでに特級英雄や勇者として知られていたが、今回の件でその名声は国外にも轟くことになったのだ。
十万の軍勢を擁する空飛ぶ要塞を、たった数人のパーティで無傷で落としたという事実は、もはや戦略兵器としての認識を決定づけるものだった。
「レント様、他国からの同盟要請が止まりません」
「帝国の残党も、無条件降伏を申し出てきたそうですよ」
城のサロンで、シルヴィアとセレスティアが大量の書状を整理しながら苦笑している。
テーブルの上には、世界中の王家や組織からの親書が山積みになっていた。
「面倒だなあ。全部エリスに任せていいか?」
「了解シマシタ。友好国ニハ儀礼的ナ返信ヲ、敵対的ナ国ニハ『次ハ首都ヲ更地ニスル』トイウ警告文ヲ送ッテオキマス」
「過激すぎるだろ。……まあ、牽制としてはいいか」
俺はソファに深く沈み込んだ。
平和なのは良いことだが、有名税が高すぎる。
たまには誰にも邪魔されず、ダンジョンで無心にモンスターを狩りたい気分だ。
「そういえばレントよ。捕まえたあの緑色のデカブツ(ガルド)、意外と使えるぞ」
庭から戻ってきたイグニスが、リンゴをかじりながら言った。
「風魔法で枯れ葉を集めたり、洗濯物を一瞬で乾かしたりしておる。ゼクスとの相性も悪くないようだ」
「そうか。四天王も使いようだな」
かつて世界を震え上がらせた魔王軍の幹部たちが、俺の庭で家事に精を出している。
シュールな光景だが、平和利用としては最善だろう。
「お兄ちゃん! 大変!」
そこへ、リナが血相を変えて飛び込んできた。
彼女の手には、クリスタル製の通信機が握られている。
「どうした、リナ」
「ギルドから緊急連絡! 『魔王城』が……浮上したって!」
「魔王城?」
俺たちは顔を見合わせた。
魔王軍の幹部は二人も捕まえたし、残党も壊滅状態のはずだ。
今さら本拠地が出てきてどうするというのか。
「場所は?」
「王都の真下! 地下迷宮の最深部から、地上へ向かって浮上中だって!」
王都の地下。
俺が以前、ヒドラを狩ったあの場所か。
あそこは旧文明の遺跡だと思っていたが、まさか魔王城そのものが封印されていたとは。
「原因は?」
「わからないけど……誰かが封印の鍵を使ったみたい」
誰か。
心当たりはないが、王都の地下にアクセスできる人物となると限られてくる。
「行くぞ。俺の城(マイホーム)の近所で騒がれるのは迷惑だ」
俺たちは転移魔法で王都へ向かった。
◆
王都はパニックに陥っていた。
地面が激しく揺れ、中央広場の石畳がひび割れていく。
その裂け目から、どす黒い瘴気と共に、巨大な漆黒の城が姿を現したのだ。
鋭利な塔が空を突き刺し、城壁には無数の髑髏が埋め込まれている。
まさに『魔王城』と呼ぶにふさわしい威容だ。
「キャアアアアッ!」
「魔王だ! 魔王が復活したんだ!」
市民たちが逃げ惑う中、城のバルコニーに人影が現れた。
魔王……ではない。
豪奢なドレスを纏った、美しい少女だ。
「……ミリア?」
俺は空中に浮遊しながら、その顔を見て呟いた。
以前の舞踏会で会った公爵令嬢、ミリア・バルバロスだ。
だが、彼女の様子はおかしい。
瞳は赤く染まり、肌には黒い紋様が浮かんでいる。
そして手には、禍々しい光を放つ黒い宝石――『魔王復活の鍵』が握られていた。
「オホホホホ! 見なさい! これが私の城よ!」
ミリアが高笑いする。
その背後には、虚ろな目をした貴族たちや、洗脳された兵士たちが控えている。
彼女は鍵の力で魔王城を制御し、人々を操っているようだ。
「レント様! お待ちしておりましたわ!」
ミリアが俺を見つけ、恍惚とした表情で手を振った。
「見てくださいまし! 貴方にふさわしい『お嫁さん』になるために、私、こんなに素敵な力を手に入れましたのよ!」
「……お前、それが何かわかってるのか?」
「ええ、魔王の力ですわ! これがあれば、シルヴィア様やイグニス様にも負けません! さあ、私と結婚して、この世界を支配しましょう!」
完全にイカれている。
ヤンデレが魔王の力を手に入れるとこうなるのか。
愛が重すぎて世界が滅びそうだ。
「悪いが、俺は支配なんて興味ないし、お前とも結婚する気はない」
「……なんですって?」
ミリアの表情が一瞬で凍りついた。
可愛らしかった顔が、般若のように歪む。
「どうして……? どうして私を見てくださらないの? こんなに頑張ったのに! こんなに力を手に入れたのに!」
「力が全てじゃない。それに、その力はお前のものじゃないだろ」
俺は冷たく言い放った。
彼女が持っている鍵。
そこから溢れ出る瘴気は、彼女の精神を蝕んでいる。
このままでは、彼女自身が魔王の依代として消費されてしまうだろう。
「うるさい……うるさいッ! 私のものよ! レント様が振り向いてくれないなら……力づくで私のものにしますわ!」
ミリアが鍵を掲げた。
ズズズズ……ッ!
魔王城が変形し、巨大な砲門が俺たちに向けられた。
さらに、城の周囲から無数の魔物――高レベルのデーモンやガーゴイルが召喚される。
「行け! 私の愛(しもべ)たちよ! レント様を捕まえてらっしゃい!」
「またこのパターンか」
俺はため息をついた。
魔王軍だろうが何だろうが、俺にとってはただの雑魚処理だ。
「みんな、経験値稼ぎの時間だぞ」
「はいっ! 遠慮なく行きます!」
「うむ、運動不足解消じゃ!」
戦闘開始。
王都の上空で、俺たちと魔王城の全面戦争が勃発した。
シルヴィアが聖剣でデーモンを一刀両断する。
イグニスがブレスでガーゴイルの群れを焼き払う。
セレスティアが浄化の光で瘴気を晴らす。
リナとテツジンが砲撃を防ぎ、逆に隕石魔法で反撃する。
「つ、強い……! なぜ!? 魔王の軍勢なのよ!?」
ミリアが悲鳴を上げる。
彼女の繰り出す魔物は、どれもレベル80以上のSランク級だ。
普通の冒険者なら即死レベルだが、俺たちにとっては「ちょっと硬い雑魚」でしかない。
「レベルが違うんだよ」
俺は瞬歩でミリアの目の前に移動した。
バルコニーに降り立ち、彼女と対峙する。
「ひっ……!」
ミリアが後ずさる。
俺の放つプレッシャーに、彼女の本能が警鐘を鳴らしているのだ。
魔王の力を借りていても、所詮は貴族の令嬢。
修羅場を潜り抜けてきた俺とは、魂の格が違う。
「その鍵、返してもらおうか」
「い、嫌よ! これは私の……!」
「駄々をこねるな」
俺は一歩踏み込み、彼女の手首を掴んだ。
バチッ!
黒い電流が走るが、俺は無視して鍵を握りしめた。
「付与術・【強制解除(アンロック)】」
パリンッ!
黒い宝石にヒビが入り、砕け散った。
中から溢れ出ていた瘴気が霧散し、ミリアの洗脳も解ける。
「あ……あれ? 私……何を……?」
ミリアはその場に崩れ落ちた。
正気に戻った彼女は、自分がしでかしたことの重大さに気づき、顔面蒼白になって震え出した。
「ご、ごめんなさい……私、レント様に振り向いてほしくて……」
「気持ちは分からなくもないが、やりすぎだ。しばらく頭を冷やせ」
俺は彼女をエリスに引き渡した。
罪は償ってもらう必要があるが、命まで取るつもりはない。
彼女もまた、魔王の力に魅入られた被害者の一人だ。
「さて、残るはこの城の本体だな」
俺は魔王城を見上げた。
鍵が壊れても、城自体はまだ活動を続けている。
どうやら、城の最深部に『魔王本体』が眠っており、それが目覚めようとしているらしい。
「オオオオオオオッ!!」
城の地下から、地獄の底から響くような咆哮が聞こえた。
大地が割れ、巨大な黒い影が這い出してくる。
伝説の魔王、『終焉の王』。
その力は四天王など比較にならない。
「やっとラスボスの登場か」
俺はニヤリと笑った。
普通の物語なら、ここで絶望するところだろう。
だが、俺にとっては最高の『サンドバッグ』だ。
ステータス無限の俺が、どれだけ本気を出せるか試せる相手。
「みんな、下がってろ。ここは俺一人でやる」
俺は空中に飛び出した。
魔王の巨大な拳が迫る。
ビル一つ粉砕するような一撃。
俺は拳を握り、真っ向から迎え撃った。
ドォォォォォォォォン!!
衝撃波が王都の空を裂いた。
魔王の拳と、俺の拳が激突する。
拮抗?
いや、違う。
「【筋力増強・限界突破】」
俺が力を込めると、魔王の腕がミシミシと音を立てて砕け始めた。
「グオッ……!?」
魔王が驚愕の声を漏らす。
人間ごときに力負けするなど、彼の辞書にはなかったはずだ。
「終わりだ。【極大消滅魔法(アルティメット・デリート)】」
俺はゼロ距離から、ありったけの魔力を叩き込んだ。
付与術の応用。
対象の存在確率をゼロにする、究極のデバフ攻撃。
カッ!!!!
王都の空が白く染まった。
魔王の絶叫と共に、黒い巨体は光の彼方へと消滅していった。
静寂が戻る。
魔王城は魔力を失い、ただの瓦礫となって崩れ落ちていった(もちろん、市街地に被害が出ないように結界で防いだが)。
「……勝った……のか?」
「レント様が……魔王を倒したぞ!」
地上から、割れんばかりの歓声が上がった。
二度目の英雄譚。
俺の名声は、もはや神話の領域に達していた。
「ふう、いい運動になったな」
俺は肩を回しながら、仲間たちの元へ戻った。
シルヴィアたちが涙ぐみながら迎えてくれる。
これで、本当に平和が訪れるはずだ。
国内の敵も、国境の敵も、そして魔王さえも倒した。
あとはミリアの処遇と、戦後処理を済ませれば、念願のスローライフに戻れる。
……そう思っていた。
だが、運命はまだ俺を休ませてくれないらしい。
瓦礫の山となった魔王城の跡地から、奇妙な『卵』が見つかったのだ。
それは魔王の生まれ変わりか、あるいは……?
そして、その卵を巡って、新たな勢力――『天界』からの使者が現れることになる。
俺の戦いは、地上だけでなく、天とも関わる壮大なスケールへと発展していくのだった。
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