追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第25話 土下座して戻ってこい? 断る。条件は『全財産の譲渡』だ。

王都の防衛ライン。
巨大な城壁の上に、無数の冒険者と騎士たちが集結していた。
彼らの視線の先、数キロ離れた平原を、山のような巨体が地響きを立てて進んでくる。

「な、なんだあれは……!」
「でかすぎる……ドラゴンより大きいぞ……!」

兵士たちが戦慄する。
それは四つの頭と無数の触手、そしてドロドロに溶けた肉塊で構成された異形の怪物――『融合魔獣(キメラ・ビースト)』だった。
高さは五十メートルを超え、歩くたびに大地が腐食し、瘴気が撒き散らされる。
四つの頭はそれぞれ、ヴァルス、エリナ、ジャミル、アリアの顔を模しており、口々にうわ言を呟いている。

『レント……レントォ……』
『カネ……カネをよこせ……』
『殺してやる……』
『私の……栄光……』

理性など欠片もない。
ただの怨念の塊だ。

「総員、構えッ! 魔導砲、発射!」

ヴァンガード総長の号令で、城壁から魔法の光弾が一斉に放たれた。
数百発の爆炎が怪物を包む。
だが、煙が晴れると、怪物は無傷だった。

「き、効かない!? 再生しているのか!?」
「いや、吸収したんだ! 魔法を食いやがった!」

怪物の体表にある無数の口が、魔法のエネルギーを吸い込んでいたのだ。
そして次の瞬間、四つの口が一斉に開かれた。

『オオオオオオオッ!!』

凄まじい咆哮と共に、紫色の光線が放たれた。
それは城壁の一部を消し飛ばし、守備隊を薙ぎ払った。

「ぐわぁぁぁぁっ!」
「撤退! 撤退しろ! 勝てる相手じゃない!」

パニックになる防衛線。
そこへ、一台の黒いリムジンが空から舞い降りた。

キキーッ!

城壁の上に滑り込んだリムジンから、俺たちが降り立つ。
俺、シルヴィア、イグニス、セレスティア、リナ、そしてゼクス。
最強のハーレムパーティの到着だ。

「師匠! 来てくれたのですか!」

ヴァンガードが駆け寄ってくる。彼は煤まみれで、鎧も半壊していた。

「遅くなって悪かったな。……あれが、成れの果てか」

俺は怪物を見上げた。
かつての仲間たちが、あんな醜い姿になってしまうとは。
自業自得とはいえ、少し哀れに思う。

『ア……ア……レント……?』

怪物の中央にあるヴァルスの顔が、俺に気づいたようだ。
濁った瞳が俺を捉える。

『レントォォォ! そこにいたかぁぁぁ!』

怪物が加速した。
触手が伸び、城壁に取り付こうとする。

「みなさん、下がってください!」

シルヴィアが前に出て、聖剣を構える。
イグニスも炎を纏い、リナも杖を掲げる。
だが、俺はそれを手で制した。

「待て。まずは話をしよう」
「えっ? 話ですか? あんな怪物と?」
「ああ。まだ微かに自我が残っているみたいだからな」

俺は拡声魔法を使い、怪物に向かって声をかけた。

「おい、ヴァルス。聞こえるか?」

『……ウゥ……レント……』

怪物の動きが止まった。
ヴァルスの顔が歪み、苦しげに言葉を紡ぐ。

『助けろ……レント……痛い……苦しい……』
『元に戻せ……お前の付与術で……俺たちを……』

命乞いか。
あれだけ威勢よく俺を殺すと言っていたくせに、いざ窮地に陥るとすぐに縋ってくる。
変わらないな、こいつらは。

『俺たちが悪かった……謝る……だから……』
『戻ってこい……また一緒に……パーティを……』
『お前が必要なんだ……レント……』

エリナやアリアの顔も、涙を流しながら訴えてくる。
土下座して戻ってこい、と言わんばかりの懇願だ。
以前なら、俺は情に流されて助けてしまったかもしれない。
だが、今の俺は違う。

「断る」

俺は冷たく言い放った。

『な……に……?』

「俺はお前らの道具じゃない。お前らが勝手に自滅して、勝手に怪物になったんだ。知ったことか」
『そ、そんな……! 恩知らずめ……! 俺たちが拾ってやったのに!』
『見捨てるのか! この悪魔!』

逆ギレ。
やはり反省などしていない。
自分たちが助かるためなら、どんな嘘でもつくし、他人を罵倒する。
その腐った根性は、魔物になっても変わらないようだ。

「ただし」

俺は言葉を続けた。

「一つだけ、助ける条件がある」
『じょ、条件……?』
『なんだ……金か? 金ならやる……これから稼げばいい……』

「違う。条件は『全財産の譲渡』だ」

『は……?』

「お前らが隠し持っている財産、装備、そしてその命。全てを俺に差し出せ。そうすれば、その苦しみから解放してやる」

俺は彼らが鉱山から持ち出した『禁断の魔道具』だけでなく、彼らが過去に冒険者として得た名声や、魂そのものを要求したのだ。
それは実質的な「死」を意味する。
だが、怪物として生き続けるよりはマシな救済措置だ。

『ふ、ふざけるな……! 死ねって言うのか!』
『嫌だ……まだ死にたくない……!』
『殺してやる……レントォォォ!』

交渉決裂。
怪物が再び暴れだした。
触手が俺に向かって殺到する。

「交渉は終わりだ。……やれ、みんな」

俺の合図と共に、仲間たちが動いた。

「【聖剣技・極光斬】!」

シルヴィアの聖剣が、巨大な触手を切り落とす。

「【竜王・獄炎ブレス】!」

イグニスの炎が、再生しようとする肉を焼き尽くす。

「【メテオ・ストライク】!」

リナが召喚した隕石が、怪物の胴体に直撃する。

「【聖なる浄化(ホーリー・ピュリファイ)】!」

セレスティアの光が、怪物の瘴気を中和していく。

「ギャアアアアアアッ!!」

怪物が悲鳴を上げてのたうち回る。
圧倒的な戦力差。
Sランク四人が融合しても、俺のハーレムパーティには傷一つつけられない。

「トドメだ。ヴァルス、お前の『栄光』はここで終わりだ」

俺は右手を掲げた。
指先に、無限の魔力を収束させる。
使うのは、かつて彼らが俺を追放したあの日に覚醒した、最初の一撃。

「【神威・デコピン】」

パチンッ!!

放たれた衝撃波は、光の槍となって怪物の核――四人の魂が融合している中心核を貫いた。

ズガァァァァァァァァンッ!!

怪物の体が内側から崩壊していく。
肉塊が塵となり、光となって消えていく。
その中で、ヴァルスたちの叫び声が聞こえた気がした。

『あぁ……俺の……栄光……』

最後の一欠片まで消滅した時、空には雲一つない青空が広がっていた。
彼らは何も残さなかった。
名誉も、財産も、命も。
全てを失い、歴史の徒花として散っていった。

「……終わったな」

俺は静かに呟いた。
胸に残るのは、虚しさではなく、清々しい達成感だった。
これで本当に、過去との決別ができた気がする。

「レント様、お疲れ様でした」

シルヴィアが寄り添ってくる。
俺は彼女の肩を抱き、仲間たちと共に城壁を降りた。
背後では、兵士や民衆たちが「勇者レント万歳!」と歓声を上げている。

元パーティへのざまぁは完了した。
だが、物語はまだ終わらない。
ヴァルスたちが持ち出した『禁断の魔道具』の一つ――『魔王復活の鍵』が、彼らの消滅と共に行方不明になっていたからだ。

そして、その鍵を拾ったのは、帝国の残党でも、魔王軍でもない。
もっと身近で、意外な人物だった。

「……ふふ、見つけましたわ」

瓦礫の山で、一人の少女が黒い宝石を拾い上げた。
公爵令嬢ミリア。
舞踏会で俺に袖にされた、あの娘だ。
彼女の瞳には、かつてないほどの暗い執着の炎が宿っていた。

「レント様……貴方を手に入れるためなら、私は悪魔にだって魂を売りますわ」

ヤンデレ化した公爵令嬢による、新たな波乱の幕開け。
俺の平穏なスローライフは、まだまだ遠いようだ。

第26話へ続く。

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