追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~
第24話 元パーティ、借金地獄へ。装備がすべてガラクタ化。
王国騎士団長ヴァンガードが俺の信者となった翌日。
城の執務室で、俺はゼクスが淹れたコーヒーを飲みながら、新たな報告書に目を通していた。
報告の主は、冒険者ギルドのマスター、ガンドルからだ。
「……なるほど。ヴァルスたちが鉱山から脱走した際に、横領した『禁断の魔道具』が問題になっている、か」
俺は手紙をテーブルに置いた。
ガンドルからの手紙には、ヴァルスたち元『栄光の剣』の四人が鉱山労働中に脱走し、その際に保管庫から危険なアーティファクトを持ち出した可能性があると書かれていた。
しかし、その後の彼らの足取りは掴めていない。
魔神化したという情報もあるが、確証はないらしい。
「ふん、鼠がチーズを盗んで逃げたようなものじゃな」
隣でリンゴをかじっていたイグニスが鼻を鳴らす。
「放っておけばよいのではないか? どうせ主の敵ではない」
「まあな。でも、借りパクは良くない。あいつらが持っていった魔道具、俺が以前ギルドに寄贈した失敗作(試作品)なんだよ」
「失敗作?」
「ああ。『使用者の願望を具現化するが、対価として知能指数を著しく低下させる』っていう呪いの指輪だ」
イグニスがリンゴを喉に詰まらせそうになった。
俺の作るアイテムは、効果が強力すぎて副作用もエグいものが多い。
それを知らずに使えば、彼らは自滅するだけだろう。
「まあ、あいつらのことは一旦置いておこう。今はこっちの問題だ」
俺は別の書類――『領地経営報告書』を手に取った。
俺が買い取ったこの城と、その周辺の領地。
特級英雄として認定されたことで、俺は実質的にこの一帯の領主となっていた。
だが、領地経営なんてやったことがない。
「税収の管理、村人からの陳情、街道の整備……。面倒くさいな」
「旦那様、私ニ任セテ頂ケレバ、全テ効率的ニ処理シマスガ?」
エリスが無表情で提案する。
彼女の処理能力なら、領地経営など朝飯前だろう。
だが、全てを機械任せにするのも味気ない。
「いや、少しは自分たちでもやってみよう。……そうだ、リナ」
「なーに? お兄ちゃん」
ソファでテツジンとチェスをしていた(テツジンが負けそうになって盤面をひっくり返そうとしている)リナが顔を上げた。
「お前、村にいた頃は畑仕事とか手伝ってたよな?」
「うん! 土いじりは得意だよ! 素手で岩盤を耕したりしてたもん!」
「(それは畑仕事じゃなくて土木工事だな……)よし、じゃあ領内の農業改革はお前に任せる。俺の付与した種を使えば、砂漠でも育つ作物が作れるはずだ」
「わーい! 任せて!」
リナが目を輝かせる。
これで食料問題は解決だ。
「シルヴィアは、警備隊の指揮を頼めるか? ヴァンガードが置いていった騎士たちもいるし、彼らをまとめてくれ」
「はい! お任せください。鉄壁の守りを築いてみせます!」
「イグニスは……そうだな、温泉の温度管理と、あと空からの偵察を頼む」
「うむ、空の散歩か。悪くない」
役割分担が決まった。
これで領地も安泰だ。
俺は悠々自適なスローライフ(という名の引きこもり生活)を満喫できる。
……はずだった。
「レント様! お客様です!」
セレスティアが慌てて駆け込んできた。
「お客様? また貴族の媚びへつらいか?」
「いえ、それが……借金取りの方々だそうです」
「借金取り?」
俺に借金などない。むしろ貸している側だ。
不審に思いながら玄関ホールへ向かうと、そこには強面の男たちが数人立っていた。
彼らは俺を見るなり、少し怯んだが、すぐに気を取り直して怒鳴り声を上げた。
「お、おい! ここがヴァルスの連れが住んでる城か!」
「ヴァルス?」
俺は眉をひそめた。
「俺たちは『闇金商会』のもんだ! ヴァルスの野郎が、あんたの名前を連帯保証人にして金を借りて逃げやがったんだよ!」
「はあ?」
男が突きつけた借用書には、確かにヴァルスの汚い字で署名があり、保証人欄に勝手に『レント・シルバー』と書かれていた。
金額は、金貨五千枚。
「ふざけるな。勝手に名前を使われただけだ。無効だろ」
「知ったことか! あいつは『レントは俺のマブダチだ。俺のツケはあいつが払う』って言ってたんだぞ! あんた特級英雄なんだろ? 金貨五千枚くらい、端金だろ!」
男たちは居直った。
どうやら、ヴァルスたちは鉱山送りになる前、最後の悪あがきとして俺の名前を使って借金を重ね、その金で豪遊(といっても安酒を飲んだ程度だが)していたらしい。
そして鉱山から脱走した今、取り立てが俺のところに回ってきたわけだ。
「……呆れたな。あいつら、どこまでも俺に迷惑をかける気か」
俺はため息をついた。
金貨五千枚なんて、今の俺にとっては小銭だ。払っても痛くも痒くもない。
だが、あいつらの尻拭いをするのは癪に障る。
「おい、おっさんたち」
俺は冷たい声で言った。
「その借用書、偽造だよな? 筆跡鑑定すれば一発だぞ」
「ぐっ……! だ、だが、ヴァルスはあんたの元パーティメンバーだろ! 道義的責任ってのが……」
「ないよ、そんなもん。あいつらは俺を追放した。赤の他人だ」
俺は指を鳴らした。
エリスがスッと前に出る。
ガトリングガンを展開し、男たちに向けた。
「不当請求デスネ。営業妨害ト詐欺未遂デ、衛兵ニ突キ出シマスカ? それとも、ココデ肥料ニナリマスカ?」
「ひ、ひぃぃぃッ!」
男たちは顔面蒼白になり、借用書を放り投げて逃げ出した。
あんな連中、脅せばすぐに逃げる。
「まったく、死んでも迷惑な奴らだ」
俺は床に落ちた借用書を拾い上げ、指先から出した炎で焼き払った。
だが、これで終わりではなかった。
ヴァルスたちの負の遺産は、借金だけではなかったのだ。
その日の午後。
城の門前に、今度はボロボロの荷馬車が到着した。
御者は泣きそうな顔をした商人だった。
「あ、あのぅ……レント様でしょうか?」
「今度はなんだ?」
「ヴァルス様たちから注文を受けた『最高級装備一式』をお届けに参りました……。代金はレント様が支払うと……」
荷台には、輝くミスリルの鎧や、宝石をあしらった杖などが積まれていた。
総額、金貨一万枚相当。
これもヴァルスたちが「レントにツケとけ」と言って注文し、商品だけが届いてしまったパターンだ。
あいつら、鉱山に行く前にどんだけ発注してたんだ。
「返品だ。受け取らん」
「そ、そんな! これらは特注品で、もうキャンセルできません! うちのような小さな店では、これが売れないと倒産してしまいますぅぅ!」
商人が地面に泣き崩れる。
これを見捨てるのは、さすがに寝覚めが悪い。
ヴァルスたちのせいで、無関係な商人が破産するのは理不尽だ。
「わかった。買い取ろう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。ただし、定価の半額だ。それと、今後あいつらの名前で注文が来ても、絶対に受けるなよ」
「はいっ! ありがとうございますぅぅ!」
商人は涙を流して感謝し、金を受け取って帰っていった。
残されたのは、山のような高級装備。
だが、俺の鑑定眼で見ると、それらはどれも「見掛け倒し」の品だった。
装飾ばかり豪華で、実用性は皆無。
ヴァルスたちの虚栄心を象徴するようなガラクタだ。
「これ、どうするの? お兄ちゃん」
「リナ、お前のゴーレムの装甲材にでもするか?」
「うーん、脆すぎて使えないかも。テツジンがクシャミしたら壊れちゃうよ」
リナが指で鎧をつつくと、ペコリと凹んだ。
ひどい品質だ。
「じゃあ、ゼクスの配下のスケルトンたちに着せるか。畑仕事用のおしゃれ着として」
「ははっ、カカシ代わりにはなるかもしれませんな」
ゼクスが苦笑する。
結局、かつてSランクパーティが喉から手が出るほど欲しがった装備は、俺の城ではカカシの服に成り下がった。
因果なものだ。
「それにしても、ヴァルスたち……本当にどこへ消えたのかしら」
シルヴィアが不安げに呟く。
「鉱山から脱走して、魔神の力を得たという噂もありますが……」
「まあ、生きていればそのうち向こうから接触してくるだろう。俺に復讐するためにな」
俺は城壁から遠くの山並みを眺めた。
魔の山の方角。
そこから漂ってくる瘴気は、日増しに濃くなっている気がする。
「来るなら来ればいい。今度こそ、骨の髄まで後悔させてやる」
俺は静かに決意した。
だが、俺の予想よりも早く、そして最悪の形で、彼らは再び俺の前に現れることになる。
それは、ただの復讐劇ではなかった。
彼ら自身も制御できない『魔神の暴走』が、王都全体を巻き込む大災害へと発展しようとしていたのだ。
その夜。
王都の空に、赤黒いオーロラが現れた。
不吉な予兆。
街の人々が不安そうに見上げる中、俺のギルドカードが激しく震えた。
緊急アラートだ。
『緊急事態発生! 王都近郊の森より、正体不明の巨大魔獣が出現! 進路は王都! 全冒険者は直ちに迎撃せよ!』
巨大魔獣。
その姿がモニターに映し出された時、俺は思わず眉をひそめた。
それは、四つの頭と、無数の触手を持つ、醜悪な肉の塊だった。
それぞれの頭には、見覚えのある顔がついている。
ヴァルス、エリナ、ジャミル、アリア。
四人が融合し、一つの巨大な怪物と化していたのだ。
「……あいつら、ついに合体しやがったか」
それはもはや人間でも魔人でもない。
欲望と憎悪だけで動く、殺戮兵器『融合魔獣(キメラ・ビースト)』だった。
彼らの意思はもうない。
あるのは「レントを殺す」というプログラムされた殺意だけ。
「行くぞ、みんな。今度こそ、あいつらを『終わらせて』やる」
俺はコートを翻した。
最後の決着をつける時が来た。
かつての仲間への、最初で最後の慈悲として、彼らを塵一つ残さず消滅させてやる。
それが、最強の付与術師としての俺の責任だ。
城の執務室で、俺はゼクスが淹れたコーヒーを飲みながら、新たな報告書に目を通していた。
報告の主は、冒険者ギルドのマスター、ガンドルからだ。
「……なるほど。ヴァルスたちが鉱山から脱走した際に、横領した『禁断の魔道具』が問題になっている、か」
俺は手紙をテーブルに置いた。
ガンドルからの手紙には、ヴァルスたち元『栄光の剣』の四人が鉱山労働中に脱走し、その際に保管庫から危険なアーティファクトを持ち出した可能性があると書かれていた。
しかし、その後の彼らの足取りは掴めていない。
魔神化したという情報もあるが、確証はないらしい。
「ふん、鼠がチーズを盗んで逃げたようなものじゃな」
隣でリンゴをかじっていたイグニスが鼻を鳴らす。
「放っておけばよいのではないか? どうせ主の敵ではない」
「まあな。でも、借りパクは良くない。あいつらが持っていった魔道具、俺が以前ギルドに寄贈した失敗作(試作品)なんだよ」
「失敗作?」
「ああ。『使用者の願望を具現化するが、対価として知能指数を著しく低下させる』っていう呪いの指輪だ」
イグニスがリンゴを喉に詰まらせそうになった。
俺の作るアイテムは、効果が強力すぎて副作用もエグいものが多い。
それを知らずに使えば、彼らは自滅するだけだろう。
「まあ、あいつらのことは一旦置いておこう。今はこっちの問題だ」
俺は別の書類――『領地経営報告書』を手に取った。
俺が買い取ったこの城と、その周辺の領地。
特級英雄として認定されたことで、俺は実質的にこの一帯の領主となっていた。
だが、領地経営なんてやったことがない。
「税収の管理、村人からの陳情、街道の整備……。面倒くさいな」
「旦那様、私ニ任セテ頂ケレバ、全テ効率的ニ処理シマスガ?」
エリスが無表情で提案する。
彼女の処理能力なら、領地経営など朝飯前だろう。
だが、全てを機械任せにするのも味気ない。
「いや、少しは自分たちでもやってみよう。……そうだ、リナ」
「なーに? お兄ちゃん」
ソファでテツジンとチェスをしていた(テツジンが負けそうになって盤面をひっくり返そうとしている)リナが顔を上げた。
「お前、村にいた頃は畑仕事とか手伝ってたよな?」
「うん! 土いじりは得意だよ! 素手で岩盤を耕したりしてたもん!」
「(それは畑仕事じゃなくて土木工事だな……)よし、じゃあ領内の農業改革はお前に任せる。俺の付与した種を使えば、砂漠でも育つ作物が作れるはずだ」
「わーい! 任せて!」
リナが目を輝かせる。
これで食料問題は解決だ。
「シルヴィアは、警備隊の指揮を頼めるか? ヴァンガードが置いていった騎士たちもいるし、彼らをまとめてくれ」
「はい! お任せください。鉄壁の守りを築いてみせます!」
「イグニスは……そうだな、温泉の温度管理と、あと空からの偵察を頼む」
「うむ、空の散歩か。悪くない」
役割分担が決まった。
これで領地も安泰だ。
俺は悠々自適なスローライフ(という名の引きこもり生活)を満喫できる。
……はずだった。
「レント様! お客様です!」
セレスティアが慌てて駆け込んできた。
「お客様? また貴族の媚びへつらいか?」
「いえ、それが……借金取りの方々だそうです」
「借金取り?」
俺に借金などない。むしろ貸している側だ。
不審に思いながら玄関ホールへ向かうと、そこには強面の男たちが数人立っていた。
彼らは俺を見るなり、少し怯んだが、すぐに気を取り直して怒鳴り声を上げた。
「お、おい! ここがヴァルスの連れが住んでる城か!」
「ヴァルス?」
俺は眉をひそめた。
「俺たちは『闇金商会』のもんだ! ヴァルスの野郎が、あんたの名前を連帯保証人にして金を借りて逃げやがったんだよ!」
「はあ?」
男が突きつけた借用書には、確かにヴァルスの汚い字で署名があり、保証人欄に勝手に『レント・シルバー』と書かれていた。
金額は、金貨五千枚。
「ふざけるな。勝手に名前を使われただけだ。無効だろ」
「知ったことか! あいつは『レントは俺のマブダチだ。俺のツケはあいつが払う』って言ってたんだぞ! あんた特級英雄なんだろ? 金貨五千枚くらい、端金だろ!」
男たちは居直った。
どうやら、ヴァルスたちは鉱山送りになる前、最後の悪あがきとして俺の名前を使って借金を重ね、その金で豪遊(といっても安酒を飲んだ程度だが)していたらしい。
そして鉱山から脱走した今、取り立てが俺のところに回ってきたわけだ。
「……呆れたな。あいつら、どこまでも俺に迷惑をかける気か」
俺はため息をついた。
金貨五千枚なんて、今の俺にとっては小銭だ。払っても痛くも痒くもない。
だが、あいつらの尻拭いをするのは癪に障る。
「おい、おっさんたち」
俺は冷たい声で言った。
「その借用書、偽造だよな? 筆跡鑑定すれば一発だぞ」
「ぐっ……! だ、だが、ヴァルスはあんたの元パーティメンバーだろ! 道義的責任ってのが……」
「ないよ、そんなもん。あいつらは俺を追放した。赤の他人だ」
俺は指を鳴らした。
エリスがスッと前に出る。
ガトリングガンを展開し、男たちに向けた。
「不当請求デスネ。営業妨害ト詐欺未遂デ、衛兵ニ突キ出シマスカ? それとも、ココデ肥料ニナリマスカ?」
「ひ、ひぃぃぃッ!」
男たちは顔面蒼白になり、借用書を放り投げて逃げ出した。
あんな連中、脅せばすぐに逃げる。
「まったく、死んでも迷惑な奴らだ」
俺は床に落ちた借用書を拾い上げ、指先から出した炎で焼き払った。
だが、これで終わりではなかった。
ヴァルスたちの負の遺産は、借金だけではなかったのだ。
その日の午後。
城の門前に、今度はボロボロの荷馬車が到着した。
御者は泣きそうな顔をした商人だった。
「あ、あのぅ……レント様でしょうか?」
「今度はなんだ?」
「ヴァルス様たちから注文を受けた『最高級装備一式』をお届けに参りました……。代金はレント様が支払うと……」
荷台には、輝くミスリルの鎧や、宝石をあしらった杖などが積まれていた。
総額、金貨一万枚相当。
これもヴァルスたちが「レントにツケとけ」と言って注文し、商品だけが届いてしまったパターンだ。
あいつら、鉱山に行く前にどんだけ発注してたんだ。
「返品だ。受け取らん」
「そ、そんな! これらは特注品で、もうキャンセルできません! うちのような小さな店では、これが売れないと倒産してしまいますぅぅ!」
商人が地面に泣き崩れる。
これを見捨てるのは、さすがに寝覚めが悪い。
ヴァルスたちのせいで、無関係な商人が破産するのは理不尽だ。
「わかった。買い取ろう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。ただし、定価の半額だ。それと、今後あいつらの名前で注文が来ても、絶対に受けるなよ」
「はいっ! ありがとうございますぅぅ!」
商人は涙を流して感謝し、金を受け取って帰っていった。
残されたのは、山のような高級装備。
だが、俺の鑑定眼で見ると、それらはどれも「見掛け倒し」の品だった。
装飾ばかり豪華で、実用性は皆無。
ヴァルスたちの虚栄心を象徴するようなガラクタだ。
「これ、どうするの? お兄ちゃん」
「リナ、お前のゴーレムの装甲材にでもするか?」
「うーん、脆すぎて使えないかも。テツジンがクシャミしたら壊れちゃうよ」
リナが指で鎧をつつくと、ペコリと凹んだ。
ひどい品質だ。
「じゃあ、ゼクスの配下のスケルトンたちに着せるか。畑仕事用のおしゃれ着として」
「ははっ、カカシ代わりにはなるかもしれませんな」
ゼクスが苦笑する。
結局、かつてSランクパーティが喉から手が出るほど欲しがった装備は、俺の城ではカカシの服に成り下がった。
因果なものだ。
「それにしても、ヴァルスたち……本当にどこへ消えたのかしら」
シルヴィアが不安げに呟く。
「鉱山から脱走して、魔神の力を得たという噂もありますが……」
「まあ、生きていればそのうち向こうから接触してくるだろう。俺に復讐するためにな」
俺は城壁から遠くの山並みを眺めた。
魔の山の方角。
そこから漂ってくる瘴気は、日増しに濃くなっている気がする。
「来るなら来ればいい。今度こそ、骨の髄まで後悔させてやる」
俺は静かに決意した。
だが、俺の予想よりも早く、そして最悪の形で、彼らは再び俺の前に現れることになる。
それは、ただの復讐劇ではなかった。
彼ら自身も制御できない『魔神の暴走』が、王都全体を巻き込む大災害へと発展しようとしていたのだ。
その夜。
王都の空に、赤黒いオーロラが現れた。
不吉な予兆。
街の人々が不安そうに見上げる中、俺のギルドカードが激しく震えた。
緊急アラートだ。
『緊急事態発生! 王都近郊の森より、正体不明の巨大魔獣が出現! 進路は王都! 全冒険者は直ちに迎撃せよ!』
巨大魔獣。
その姿がモニターに映し出された時、俺は思わず眉をひそめた。
それは、四つの頭と、無数の触手を持つ、醜悪な肉の塊だった。
それぞれの頭には、見覚えのある顔がついている。
ヴァルス、エリナ、ジャミル、アリア。
四人が融合し、一つの巨大な怪物と化していたのだ。
「……あいつら、ついに合体しやがったか」
それはもはや人間でも魔人でもない。
欲望と憎悪だけで動く、殺戮兵器『融合魔獣(キメラ・ビースト)』だった。
彼らの意思はもうない。
あるのは「レントを殺す」というプログラムされた殺意だけ。
「行くぞ、みんな。今度こそ、あいつらを『終わらせて』やる」
俺はコートを翻した。
最後の決着をつける時が来た。
かつての仲間への、最初で最後の慈悲として、彼らを塵一つ残さず消滅させてやる。
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