追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第23話 指一本で勝利。騎士団長もレントの信者になりました。

「レントお兄ちゃん! 会いたかったぁ!」

俺の城の玄関ホールに、可愛らしい少女の声が響き渡った。
小柄な体に似合わない、とてつもない勢いで飛び込んできたのは、俺の実の妹、リナだ。
彼女は俺の胸にロケットのように突っ込み、そのまま頬ずりをしてくる。

「ぐおっ……! リ、リナ? お前、すごい力だな……」

俺は妹を受け止めながら、冷や汗をかいた。
俺には【物理耐性】や【衝撃吸収】の付与がかかっているから平気だが、普通の人間なら今の抱擁で肋骨が数本イっていたかもしれない。
それほどまでに、彼女の突進には桁外れのエネルギーが込められていた。

「えへへ、そうかな? お兄ちゃんが毎月送ってくれる『栄養ドリンク(特製エリクサー)』と『漬物石(高純度魔石)』のおかげだよ! あれを食べてたら、いつの間にか岩とか素手で砕けるようになっちゃって!」
「食ったのか!? 魔石を!?」
「うん! カリカリして美味しかったよ!」

俺は戦慄した。
実家の村に残してきた病弱な妹を心配して、手に入れたアイテムを片っ端から仕送りしていたのだが、まさかそれが妹をモンスターに進化させていたとは。
彼女の背後には、護衛用にと送ったゴーレムの核から自律進化したと思われる、身長三メートルの巨大な鋼鉄ゴーレム『テツジン』が控えている。

「あー、まあ、元気になったなら良かったよ」
「うん! それでね、お兄ちゃんが国一番の英雄になったって聞いて、私もお手伝いに来たの! 私の魔法とテツジンがいれば、魔王軍なんてイチコロだよ!」

リナは胸を張り、ドヤ顔を決めた。
その全身から溢れる魔力は、宮廷魔導師長クラスを軽く凌駕している。
最強の兄にして最強の妹あり、か。

「レント様、可愛らしい妹さんですね」
「うむ、将来有望じゃ。妾の眷属にしてもよいぞ?」

シルヴィアとイグニスが、微笑ましそうにリナを見ている。
セレスティアも「妹さんができて嬉しいです」とニコニコしている。
俺のハーレムパーティに、新たな(そして最強の)マスコット枠が加わった瞬間だった。

と、和やかな再会を楽しんでいたその時。
城の外から、厳めしい声が轟いた。

「たのもう! 特級英雄レント・シルバー殿は在宅か!」

「……ん?」

俺たちは顔を見合わせた。
エリスがスッと前に出る。

「来客デス。識別信号照合……王国騎士団総長、ヴァンガード氏ト確認。アポイントメントハアリマセン」
「騎士団総長?」

ヴァンガードといえば、この国の武の象徴とも言える男だ。
副団長のガレインや、かつてシルヴィアの部下だったクリスとは違い、王国の軍事力を統括するトップ中のトップ。
歴戦の猛者であり、『剣聖』と呼ばれたヴァルス(今はただの老人だが)でさえ、頭が上がらなかったという伝説の騎士だ。

「何の用だろ。陛下との話はついているはずだが」

俺はリナを撫でて落ち着かせると、皆を連れて城の正門へと向かった。

門の前には、全身を黄金の鎧に包んだ巨漢が立っていた。
身長は二メートルを超え、岩山のような威圧感を放っている。
背中には身の丈ほどもある大剣を背負い、顔には古傷が走る歴戦の相貌。
その後ろには、精鋭と思われる騎士たちが数十名整列していた。

「私がレントだ。総長殿がわざわざ俺の城になんの用だ?」

俺が声をかけると、ヴァンガード総長は鋭い眼光で俺を睨みつけた。
鑑定スキルを使わなくてもわかる。
こいつ、俺のことを全く信用していない目だ。

「貴殿がレントか。……ふむ、見た目はただの優男だな」

ヴァンガードは鼻を鳴らした。

「陛下より聞いた。帝国軍を退け、魔王軍四天王を降し、数々の武功を挙げた『勇者』だと。……だが、儂は認めん!」
「認めるも何も、結果は出してるぞ」
「結果などどうとでもなる! 魔法道具や、強力な従魔(モンスター)を使えばな!」

ヴァンガードの視線が、イグニスやセレスティア、そして背後の巨大ゴーレムに向けられる。

「貴殿の報告書を読んだが、ドラゴンを倒したのも、要塞を落としたのも、全て貴殿の『仲間』や『謎の技術』によるものばかりではないか! 貴殿自身の剣技や武勇が記されていない!」
「まあ、俺は付与術師(エンチャンター)だしな。裏方が本職だ」
「ならば尚更だ! 他人の力を借りて英雄気取りなど、武人の風上にも置けん!」

ヴァンガードは地面を大剣の柄で叩いた。
ズシン、と地響きがする。

「勇者とは、個の武勇において最強でなければならぬ! 民を守る盾となり、敵を砕く剣となる、強靭な肉体と精神こそが必要なのだ! 小手先の魔法や女子供に守られた男に、国の命運は預けられん!」

なるほど。
典型的な筋肉至上主義か。
ヴァルスたちとは違って悪意や嫉妬ではなく、純粋な信念から来る頑固さだ。
こういう手合いは、言葉で説明しても無駄だ。

「じゃあ、どうすれば認めてくれるんだ?」
「決まっておる! 決闘じゃ!」

ヴァンガードが大剣を抜き放った。
その刀身は魔力を帯びて青く輝いている。

「儂と一対一で勝負せよ! 魔法道具の使用は禁止、従魔の加勢も無用! 己の身一つで儂の剣を受け止めきれたなら、貴殿を勇者として認めよう!」
「勝負か。……いいぜ、受けてやる」

俺は前に出た。
シルヴィアが「レント様!」と心配そうに声を上げるが、俺は手で制した。

「大丈夫だ。すぐに終わる」
「お兄ちゃん、頑張って! あんな筋肉だるま、やっつけちゃえ!」

リナの声援を背に、俺はヴァンガードと対峙した。

「武器を持て、レント殿。儂は手加減せんぞ」
「武器はいらない。これだけで十分だ」

俺は左手をポケットに入れたまま、右手の人差し指を一本だけ立てた。

「……なんだ、それは」
「だから、これだけで相手をしてやるって言ってるんだ」
「貴様……ッ! 儂を愚弄するか!」

ヴァンガードの顔が怒りで赤黒く染まる。
王国最強の騎士に対し、指一本での相手。
最大の挑発だ。

「後悔するなよ! 死んでも文句は言わせんぞ!」
「来いよ」

俺がクイクイと指を動かした瞬間、ヴァンガードが動いた。
速い。
あの巨体からは想像できない瞬発力だ。
縮地のような踏み込みで、一瞬で俺の間合いに入る。

「【剛剣技・岩砕斬】!」

ヴァンガードの大剣が唸りを上げて振り下ろされる。
風圧だけで地面が割れるほどの威力。
直撃すれば、城壁すら両断する必殺の一撃だ。

だが、俺にはスローモーションに見えた。

「【一点集中(ポイント・ガード)】」

俺は人差し指の先に、圧縮した防御結界を付与した。
大きさは指先ほどだが、強度はダイヤモンドの数万倍。

ガギィィィィィン!!

凄まじい金属音が響き渡り、衝撃波が周囲の木々を揺らした。
砂煙が舞い上がる。

「決まったか……!」

ヴァンガードの配下の騎士たちが確信したように呟く。
だが、煙が晴れた時、彼らの目は驚愕に見開かれた。

そこには、大剣の刃を指先一本で受け止めている俺の姿があった。
一歩も下がっていない。
足元の地面は衝撃で陥没しているが、俺の体は微動だにしていなかった。

「な……ッ!?」

ヴァンガードが目を見開く。

「ば、馬鹿な……! 儂の全力の一撃だぞ!? それを指一本で……!」
「重さは悪くない。だが、キレがないな」

俺は淡々と評価した。

「力に頼りすぎて、魔力操作が雑だ。剣に込めた魔力が三割ほど漏れている。それでは真の威力は出ないぞ」
「ぐぬぅぅッ!」

ヴァンガードは剣を引き、追撃を繰り出した。
横薙ぎ、突き、斬り上げ。
怒涛の連撃が俺を襲う。

しかし、その全てを俺の指先が弾いた。

キンッ! カンッ! ガギンッ!

「遅い」
「そこ、隙だらけだ」
「もっと腰を入れろ」

俺はまるで剣術の指南をするかのように、彼の攻撃をあしらい続けた。
ヴァンガードの額から脂汗が噴き出す。
攻撃が通じない恐怖。
そして、目の前の男の底知れない実力に対する畏怖。

「はぁ……はぁ……! 貴様、一体何者だ……! 魔法使いではなかったのか!?」
「付与術師だと言ったろ。自分自身に【身体強化】と【剣技直感】を付与すれば、達人を超えることなんて簡単だ」

俺のステータスは『無限』だ。
ヴァンガードがどれほど鍛え上げていようと、生物としてのスペック差がありすぎる。
アリが象に挑むようなものだ。

「くそっ……! ならば、これはどうだ!」

ヴァンガードが後ろに飛び退き、剣を上段に構えた。
全身の魔力を剣に集中させる。
彼の切り札、奥義だ。

「我が騎士人生の全てを懸けた一撃! 受けてみよ! 【聖雷・断空剣】!!」

大剣から雷光が迸る。
大気中のマナをも巻き込み、巨大な雷の刃となって俺に襲いかかる。

「レント様、危ない!」
「お兄ちゃん!」

仲間たちの悲鳴。
だが、俺はニヤリと笑った。
その技、少しは見どころがある。
なら、敬意を表して『デコピン』で迎撃してやろう。

「付与術・【衝撃増幅(インパクト・ブースト)】。対象、俺の指」

俺は親指と中指を重ね、力を溜めた。

「弾けろ」

パチンッ!!

俺が指を弾いた瞬間。
放たれたのはただの空気の塊だ。
だが、俺の異常な筋力と付与術によって圧縮された空気弾は、大砲の弾丸をも超える運動エネルギーを持っていた。

ズドォォォォォン!!

デコピンの衝撃波が、ヴァンガードの奥義である雷の刃と正面衝突した。
一瞬の拮抗。
しかし、すぐに結果は出た。

俺のデコピンが、雷を貫通し、かき消したのだ。

「なっ……!?」

衝撃波はそのままヴァンガードを直撃した。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ヴァンガードの巨体が、木の葉のように吹き飛ばされた。
鎧の一部が砕け散り、彼は数十メートル後方の地面に叩きつけられ、何度もバウンドして止まった。

シーン……。

辺りが静まり返る。
騎士団の精鋭たちは、口をパクパクさせて言葉を失っていた。
彼らの無敵の総長が、指一本、デコピン一発で敗北したのだ。

「……手加減はしたけど、大丈夫か?」

俺が声をかけると、瓦礫の山からヴァンガードがよろよろと立ち上がった。
鎧はボロボロ、顔も煤だらけだが、その瞳にはもはや敵意はなかった。
あるのは、純粋な驚愕と、感動にも似た輝き。

彼はふらつく足取りで俺の元へ歩み寄り――その場に土下座した。

「……ま、参りましたァァッ!!」

地面に額を擦り付ける勢いだ。

「儂の完敗だ! 言い訳のしようもない! 貴殿の力は本物だ! いや、本物以上の……神の如き御業!」
「わかってくれればいいよ」
「あのようなデコピン……いや、衝撃波など見たことも聞いたこともない! 道具に頼るどころか、貴殿自身の肉体こそが最強の兵器であったとは! 儂の目は節穴であった!」

ヴァンガードは顔を上げ、涙ぐみながら俺の手を取った。

「レント殿! いや、レント師匠! どうか儂に、その強さの秘訣をご教授願いたい! 儂も貴殿のような高みを目指したいのだ!」

「は?」

「これより、王国騎士団は貴殿の私兵となりましょう! どんな命令でも聞く! 靴でも舐める! だから、どうか儂を弟子にしてくれ!」

どうやら、筋肉ダルマの思考回路は「負けた相手=自分より強い=尊敬すべき師匠」という単純なものだったらしい。
先程までの頑固さはどこへやら、今や完全に俺の信者(ファン)と化していた。

「いや、弟子とかいらないし。騎士団が私兵になったら困るだろ」
「ならば、せめて貴殿の『筋肉トレーニング』のメニューだけでも!」
「筋トレじゃなくて魔法なんだけどな……」

俺が困惑していると、リナが飛びついてきた。

「すごーい! やっぱりお兄ちゃんは最強だね! あんなおじさん、デコピンで吹っ飛ばしちゃうなんて!」
「さすがはレント様です。騎士団総長をも魅了してしまうなんて」

シルヴィアも誇らしげだ。
配下の騎士たちも、総長にならって一斉に跪いた。

「レント様! 万歳! 最強の勇者に栄光あれ!」

こうして、俺の城の前に、数百人の騎士たちが平伏するという異様な光景が出来上がった。
王国最強の武力が、俺の軍門に下った瞬間だった。
これにより、俺の国内での権力は王家をも凌ぐものになってしまったわけだが……まあ、面倒ごとはゼクスあたりに丸投げしておこう。

「ふむ、これで国内の憂いはなくなったわけじゃな」

イグニスが満足そうに頷く。
そうだ。
これで俺の地位を脅かす者は国内にはいなくなった。
元仲間の『栄光の剣』も消え、騎士団も味方につけた。

だが、平穏は長くは続かない。
ヴァンガードが俺の手を握りしめながら、ふと思い出したように言った。

「そういえば師匠。先日、鉱山の方から奇妙な報告がありましてな」
「鉱山?」
「はっ。罪人として送られた元冒険者たちが脱走し、その後行方不明になったと。……現場には、禍々しい『魔神』の痕跡が残されていたとか」

俺の眉がピクリと動いた。
元冒険者。
間違いなく、ヴァルスたちのことだ。
行方不明? 魔神の痕跡?
あいつら、ただ野垂れ死んだわけじゃなかったのか。

「まあ、放っておけばいい。今更あいつらが何をしようと、俺の敵じゃない」

俺は軽く受け流した。
今の俺には、そんな敗残兵よりも、目の前の妹の相手や、新しい城での生活のほうが重要だ。

「お兄ちゃん、お腹すいた! お肉食べたい!」
「わかったわかった。エリス、特大のステーキを頼む」
「カシコマリマシタ。テツジン用ノ最高級潤滑油モ用意シマス」

俺たちは賑やかに城へと戻っていった。
ヴァンガード総長も「では、儂もご相伴に預かろう!」と勝手についてきたが、まあ追い返すのも面倒なので入れてやった。

最強の勇者と、最強の妹。
そして個性豊かなハーレムメンバーと、忠実な(?)騎士団長。
俺の周りはますます騒がしくなっていく。

しかし、鉱山の闇から逃げ出した「何か」は、確実に成長し、俺への復讐の機会を窺っていた。
それはかつての仲間たちの姿を借りた、より強大で邪悪な意思。
物語の『転』は、まだ終わっていなかったのだ。

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