追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

sika3

第22話 魔人化した元仲間たち。「俺たちが最強だ!」→デコピンで沈みました。

帝国の地下実験施設、その第三区画。
広大な空間は、異様な魔力の嵐によって揺れ動いていた。

「シネェェェッ! レントォォォッ!」

魔人と化した元『栄光の剣』リーダー、ヴァルスの絶叫が響き渡る。
彼の姿はもはや人間ではない。
漆黒の甲殻に覆われた巨体。背中から生えた四本の触手。そして両腕は、鋼鉄をも容易く引き裂く巨大な鎌へと変貌していた。

彼が取り込んだ『魔神の欠片』。
それは使用者の生命力を食らい尽くす代わりに、物理法則を無視した破壊力を与える禁断のアーティファクトだ。
今のヴァルスのステータスは、単純な数値だけで言えばSランク冒険者の十倍、いや百倍にも達しているだろう。

「速い……! 目にも止まらぬとはこのことか!」

帝国軍のマッドサイエンティスト、ベルガー博士が眼鏡を押さえながら驚嘆の声を上げた。
彼の目から見ても、ヴァルスの動きは測定限界を超えていた。
音速を置き去りにする踏み込み。
空間ごと削り取るような鎌の一撃。

それは、間違いなく必殺の威力を持っていた――相手が、レントでなければ。

カィィィン!!

硬質な音が響き、ヴァルスの鎌が空中で静止した。
受け止めたのは、剣ではない。
盾でもない。

俺の、左手の人差し指だ。

「……は?」

ヴァルスの複眼が、理解不能な現実に点滅した。
彼の渾身の一撃。山をも砕く破壊エネルギーが込められた刃が、たった一本の指先によって完全に遮断されていたのだ。

「なんだ、その程度か?」

俺はあくびを噛み殺しながら言った。

「力が溢れてるとか言ってなかったか? これじゃあ、そよ風と変わらないぞ」
「な、なにを……! 偶然だ! まぐれだ!」

ヴァルスが咆哮し、猛攻を再開する。
鎌が残像となり、秒間数百発の斬撃となって俺を襲う。
触手も鞭のようにしなり、死角から俺の首を狙う。

だが、当たらない。
俺は一歩も動いていない。
ただ指先を指揮棒のように軽く動かすだけで、全ての攻撃を弾き、逸らし、無効化していた。

「遅いんだよ。動きに無駄が多すぎる」

俺は冷ややかに指摘した。

「力任せに振り回してるだけだ。以前のお前なら、もう少しマシな剣筋をしてたはずだぞ」
「黙れ黙れ黙れぇッ! 俺は最強だ! 魔神の力を手に入れたんだ!」

ヴァルスの攻撃は激しさを増すが、焦りからか軌道が単調になっていく。
そこへ、後方から援護射撃が飛んできた。

「ヴァルスだけにいい格好はさせないわよ! 死になさいレント!」

蜘蛛女と化したエリナが、口から紫色の極太レーザーを吐き出した。
魔神の瘴気を圧縮した破壊光線。
直撃すれば要塞の城壁すら貫通する威力だ。

「【魔力反射(リフレクション)】」

俺は掌を軽く前にかざした。
眼前に透明な壁が出現し、レーザーを鏡のように跳ね返す。

「えっ?」

ズドォォォォォン!!

跳ね返ったレーザーがエリナの足元に着弾した。
爆発と共に彼女は吹き飛び、蜘蛛の脚が数本もげた。

「ギャアアアッ! 痛い! 私の脚がぁぁ!」
「学習しないな。俺に魔法戦で挑むなんて、百年早い」

俺は呆れて首を振った。
続いて、獣人化したジャミルとアリアが左右から飛びかかってくる。
理性なき獣の咆哮。
爪と牙による原始的な攻撃。

「お座り」

俺は【重力操作】を局所的に発動させた。
ズンッ!
二人の体に見えない重石がのしかかり、地面に顔面から叩きつけられた。

「グゥ……ッ!」
「アウゥ……ッ!」

二人はカエルのように潰れ、ピクリとも動けなくなった。

「さて、残るはリーダーのお前だけだな」

俺はヴァルスに向き直った。
彼は肩で息をしながら、信じられないものを見る目で俺を睨んでいた。

「バカな……ありえない……。俺たちは魔人になったんだぞ? 人間を超越したんだぞ? なんで……なんでお前ごときに傷一つつけられないんだ!」
「簡単な話だ」

俺は一歩、彼に近づいた。

「お前らの力は『借り物』だ。魔神だか何だか知らないが、他人の財布から金を盗んで豪遊してるようなもんだ。中身が伴ってない」
「借り物だと……!?」
「対して俺の力は、地道な『付与』の積み重ねだ。毎日毎日、自分自身の細胞一つ一つを強化し、概念を書き換え、最適化してきた。その密度の差だよ」

俺の体には、数千、数万という種類のバフが常時発動している。
それは一朝一夕で手に入るものではない。
「地味で役立たず」と罵られながらも、腐らずに技術を磨き続けた結果だ。
インスタントなパワーアップで追いつける領域には、俺はもういない。

「ふざけるなぁぁッ! 認めん! 俺は選ばれた勇者だ!」

ヴァルスが最後の力を振り絞り、体内の魔石を暴走させた。
彼の体が膨張し、赤黒い光を放ち始める。
自爆覚悟の特攻か。

「レントォォォ! 道連れにしてやるぅぅッ!」

凄まじいエネルギーの奔流。
このままでは施設ごと吹き飛びかねない。
だが、俺は冷静だった。

「借りたものは返せよ」

俺はヴァルスの懐――魔神の欠片が埋め込まれている胸の中心に、掌を押し当てた。

「付与術・【強制剥離(フォース・デタッチ)】」

俺の魔力が、ヴァルスの体内に侵入する。
そして、彼の細胞と癒着していた魔神の欠片を、外科手術のように精密に、かつ強引に引き剥がした。

「ガ、ガハァッ……!?」

ヴァルスの動きが止まった。
彼の胸から、紫色の結晶体がズボリと抜き出される。
力の源を失った彼の体は、風船がしぼむように急速に縮んでいった。

甲殻がボロボロと剥がれ落ちる。
触手が干からびて消滅する。
鎌が人間の腕へと戻っていく。

「あ……あぁ……俺の力が……」

数秒後。
そこには、全裸で骨と皮だけになった、老人同然の男が転がっていた。
魔神の力を使った代償として、生命力を吸い尽くされた成れの果てだ。

「ひ、ひぃ……」

ヴァルスは震える手で自分の顔を触り、皺だらけになっていることに気づいて絶叫した。

「いやだ……なんだこれ……俺はまだ二十代だぞ……! 返せ! 力を返せぇぇ!」
「無理だな。それはお前が支払った対価だ」

俺は抜き取った『魔神の欠片』を、指先で粉々に砕いた。
パリン、と軽い音がして、邪悪な気配は消滅した。

同時に、エリナ、ジャミル、アリアの三人からも魔人の力が抜け落ちていった。
彼女たちもまた、ヴァルス同様に老化し、老婆や老人のような姿になって地面に転がった。

「私の肌が……!」
「体が動かない……」

Sランク冒険者としての栄光も、魔人としての力も、若ささえも失った。
これが、彼らが選んだ道の結末だった。

「……終わったな」

俺は彼らに背を向けた。
トドメを刺す価値もない。
この姿で生きていくことこそが、彼らにとって最大の罰になるだろう。



「ウオオオオオオッ!!」

一方、通路の反対側では、シルヴィアと魔人クリスの激闘が続いていた。
四本の腕で四本の魔剣を振るうクリス。
その剣技は、改造されて自我を失っていてもなお、洗練された達人のそれだった。

「くっ……! さすがは団長、隙がない!」

シルヴィアは聖剣で必死に防戦していた。
パワーでは強化されたクリスが上、手数も四倍。
普通なら防ぎきれない。
だが、シルヴィアの手にある剣は、俺が付与した『真・聖剣』だ。

「負けません! レント様から頂いたこの剣がある限り!」

シルヴィアが踏み込む。
クリスの四本の剣が同時に襲いかかる。

「【聖剣技・円舞(ロンド)】!」

シルヴィアが回転した。
銀色の髪と光の軌跡が舞う。
彼女はクリスの剣を全て受け流し、その懐へと潜り込んだ。

「戻ってください、団長!」

シルヴィアは剣の「峰」で、クリスの被っている仮面を強打した。
斬るのではない。衝撃を内部に浸透させ、洗脳の魔術回路を破壊する一撃。

パリーンッ!

仮面が砕け散った。
その下から現れたのは、傷だらけだが凛々しい、妙齢の女性の素顔だった。

「……う、あ……?」

クリスの動きが止まった。
虚ろだった瞳に、徐々に光が戻ってくる。

「ひ、姫……様……?」
「団長! わかりますか!?」

シルヴィアが剣を捨てて駆け寄る。
クリスはその場に膝をつき、シルヴィアを見上げた。

「ああ……ご無事で……。私は、なんてことを……」
「いいんです! 貴女は操られていただけです!」

シルヴィアはクリスを抱きしめた。
クリスの四本の腕のうち、魔改造で生やされた二本が、役割を終えたようにボロボロと崩れ落ちていく。
ベルガーによる術式が、ショックで解除されたのだ。

「感動の再会だな」

俺が近づくと、クリスがハッとしてシルヴィアを庇うように身構えた。

「姫様、下がってください! その男からは底知れない魔力が……!」
「待ってください団長! この方はレント様。私の……主であり、恩人です」
「主……?」

クリスが目を丸くする。
シルヴィアが俺を見る目は、忠誠と愛情に満ちていた。

「レント様、ありがとうございます。団長を助けていただいて」
「俺は何もしてないよ。お前の剣が届いただけだ」
「はい……!」

シルヴィアは涙を拭った。
これで、彼女の目的の一つは達成された。



「ば、バカな……。私の最高傑作たちが……」

残されたのは、ベルガー博士ただ一人だった。
彼は震えながら後退り、壁際に追い詰められていた。
彼の自慢だった魔人部隊は全滅。
乱入してきた魔人たちも無力化された。
自分の研究が、全て否定された瞬間だった。

「ありえない……! 人間が魔人を超えるなど! 私の理論は完璧だったはずだ!」
「理論が間違ってたんだろ。命をパーツ扱いするような研究じゃ、本当の強さは作れない」

俺はベルガーを見下ろした。
彼は狂乱し、懐からスイッチを取り出した。

「ならば、道連れだ! この施設の自爆装置を起動させる! ここにある『魔導炉』が暴走すれば、この要塞ごと吹き飛ぶぞ!」
「あー、それな」

俺はポリポリと頬をかいた。

「さっきエリスに裏口から侵入させて、魔導炉の制御権を奪っといたから。そのスイッチ、もうただのおもちゃだぞ」
「は……?」

ベルガーがスイッチを押した。
カチッ。
何も起きない。
もう一度押す。
カチカチカチカチッ。
シーンとしている。

「嘘だ……嘘だァァァッ!」

ベルガーはスイッチを投げ捨て、頭を抱えて崩れ落ちた。
彼の野望は、完全に潰えた。

「ゼクス、こいつを拘束しろ。帝国の捕虜として国に突き出す」
「御意」

俺の影から現れた死霊公爵ゼクス(執事Ver)が、ベルガーを骨の手で捕縛した。
かつての帝国幹部が、今や俺の忠実な下僕として働いている姿を見て、ベルガーは白目を剥いて気絶した。

こうして、帝国の地下施設での戦いは幕を閉じた。
俺たちは捕らわれていた他の捕虜たちも解放し、要塞を制圧した。

要塞の中庭。
解放された数百人の捕虜たちが、俺たちを取り囲んで歓声を上げている。
その中には、シルヴィアの故郷の民も多く含まれていた。

「レント様! 万歳! 勇者様、万歳!」
「シルヴィア様もご無事で!」

涙を流して喜ぶ人々。
シルヴィアも、クリスと共に民の手を取って喜んでいる。

「よかったな、シルヴィア」
「はい……! これも全部、レント様のおかげです!」

シルヴィアが戻ってきて、俺に抱きついた。
公衆の面前だが、興奮して周りが見えていないらしい。
イグニスやセレスティアも「よくやったのじゃ」「みなさん無事でよかったです」と微笑んでいる。

その光景を、遠くから見つめる影があった。
老化し、動けなくなった元『栄光の剣』の四人だ。
彼らは瓦礫の陰で、人々の歓声を聞いていた。

「……あぁ……」

ヴァルスが掠れた声を漏らす。
かつて自分たちが浴びるはずだった称賛。
自分たちが立つはずだった英雄の座。
それが、あまりにも遠い場所にあることを、彼は今更ながらに悟っていた。

「俺たちは……何を間違えたんだ……」

後悔の涙が、彼の皺だらけの頬を伝う。
だが、時を戻すことはできない。
彼らは誰にも気づかれることなく、歴史の闇へと消えていく運命にあった。



帝国の要塞を陥落させた俺たちは、そのまま帝都へ向かう――必要はなかった。
要塞陥落の報せと、ベルガー博士の逮捕、そして謎の勇者(俺)による圧倒的な蹂躙劇を聞いた帝国皇帝が、即座に降伏を宣言したからだ。
どうやら、皇帝自身もベルガーたちの暴走を完全には制御できておらず、これを機に責任を押し付けて手打ちにしようとしたらしい。

数日後。
俺たちは王都へ凱旋した。
勇者としての任務を達成し、多くの捕虜を救出した俺たちを迎えるパレードは、かつてないほどの盛り上がりを見せた。

紙吹雪が舞う中、リムジンから手を振る俺たち。
隣には、故郷を取り戻す希望を得たシルヴィアが、最高に輝く笑顔を見せている。

「レント様、大好きです!」

彼女が小声で囁いた。
俺は彼女の手を握り返した。

これで一件落着――かと思いきや。
俺の活躍があまりにも派手すぎたせいで、今度は「世界そのもの」のバランスを管理する高位存在――『神』や『管理者』といった連中が、俺を危険因子としてロックオンしたらしい。

空を見上げると、雲の隙間から巨大な『目』がこちらを覗いているような気がした。
まあ、神様だろうが何だろうが、俺の平穏を邪魔するならデコピンで退場してもらうだけだが。

そして、俺の城に戻った俺たちを待っていたのは、またしても新たなトラブル……ではなく、意外な来訪者だった。

「お兄ちゃん!」

城の玄関で待っていたのは、俺が故郷の村に残してきたはずの、病弱だった妹――リナだった。
しかも、なぜか彼女は全身から凄まじい魔力を放ち、背後には巨大なゴーレムを従えていた。

「え、リナ? お前、病気じゃなかったのか?」
「レントお兄ちゃんが送ってくれた仕送り(Sランク魔石やエリクサー)のおかげで、元気になりすぎて覚醒しちゃったの!」

どうやら、俺の過剰な仕送りが、妹を最強の魔導師へと進化させてしまったらしい。
ブラコンで最強の妹が加わり、俺のハーレムパーティはさらに混沌(カオス)を極めることになる。

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