追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第19話 レントの噂。国中の貴族が彼に取り入ろうと必死です。

「旦那様、本日届いた郵便物です。仕分けは済ませておきました」

朝の穏やかな光が差し込む城の執務室。
俺が優雅にティータイムを楽しんでいると、メイドのエリスが恭しく銀盆を差し出した。
そこには、山のような手紙の束が積み上げられていた。
しかも、どれもこれも封蝋に金粉が混じっていたり、封筒自体が高級紙だったりと、見るからに只者ではない雰囲気を醸し出している。

「多いな。全部で何通ある?」
「本日分だけで三百通デス。昨日までと合わせると、未読分は二千通を超えマシタ」
「二千……。ファンレターにしては熱烈すぎるな」

俺は苦笑しながら、一番上にあった手紙を手に取った。
差出人は『バルバロス公爵家』。
内容は、要約すると「我が家の娘と一度お見合いをしませんか? 持参金として領土の半分を差し上げます」というものだった。

次の手紙は『大商人ギルバート』から。
「新しい魔導具開発の共同出資をお願いしたい。利益は全額レント様に」という媚びへつらい全開の内容。

さらに次は『王立魔術アカデミー』から。
「名誉教授としてお迎えしたい。講義はしなくていいので名前だけ貸してくれ」という虫のいいオファー。

「……やれやれ。有名になるのも考えものだな」

俺は手紙をテーブルに放り投げた。
『栄光の剣』が没落し、代わりに俺が特級英雄として認定されてからというもの、国中の権力者たちが俺に取り入ろうと必死になっているのだ。
かつては「荷物持ちのレント」と見向きもしなかった連中が、今や俺の靴の裏を舐めんばかりの勢いで擦り寄ってくる。
現金なものだ。

「これらはどう処理シマスカ? 全部燃ヤシテ、焼き芋ノ燃料ニシマショウカ?」

エリスが無表情で物騒な提案をする。
彼女にとって、俺の平穏を害するものは全て燃料認識らしい。

「いや、さすがに全部無視すると角が立つかもしれない。適当に……おっと、これは」

俺は手紙の山の中に、一際豪華な、王家の紋章が入った封筒を見つけた。
差出人は国王アラルド三世。

「拝啓、特級英雄レント殿。……来週開催される『建国記念舞踏会』への招待状か」

建国記念舞踏会。
この国の貴族、王族、そして高名な冒険者などが一堂に会する、年に一度の最大イベントだ。
普通なら、招待されるだけで家門の誉れとなるような晴れ舞台である。

「舞踏会ですか! 素敵です!」

背後から弾んだ声がした。
振り返ると、シルヴィアが目を輝かせて立っていた。
彼女は亡国の姫として、こういう華やかな場所には特別な思い入れがあるのだろう。

「シルヴィア、行きたいか?」
「はい! ……あ、でも、今の私はただの居候ですし、ドレスも……」
「ドレスなら買えばいいし、居候じゃなくて俺の『パートナー』として堂々と参加すればいい」
「パートナー……! レント様のエスコートで……!」

シルヴィアの頬が赤く染まる。
そこへ、イグニスとセレスティアも顔を出した。

「ほう、宴か? 美味い酒と肉はあるのじゃろうな?」
「あの……私のような元呪われた身が、そんな煌びやかな場所にいてもいいのでしょうか……?」

三者三様の反応だが、全員まんざらでもなさそうだ。
俺としても、ずっと城に引きこもっているよりは、たまには外の空気を吸うのも悪くない。
それに、社交界デビューをしておけば、変な噂や干渉を牽制する意味でも有効だろう。

「よし、決まりだ。全員で舞踏会に乗り込むぞ」
「はいっ!」
「うむ、楽しみじゃ!」

俺の号令に、美女たちが華やぐ。
こうして、俺たち最強ハーレムパーティの、社交界殴り込み(デビュー)が決まった。

数日後。
舞踏会当日。

王城の大広間は、数百人の参加者で埋め尽くされていた。
煌びやかなシャンデリア、生演奏のオーケストラ、そして着飾った貴族たち。
彼らの話題は、もっぱら一人の男に集中していた。

「おい、聞いたか? 今日のゲストに、あの『レント・シルバー』が来るらしいぞ」
「ああ、ドラゴンを一撃で葬り、城の測定器を破壊したという、あの……」
「噂では、彼が動くだけで金貨が湧き出し、彼が睨むだけで魔王軍が消滅するとか」
「なんと恐ろしい……。是非とも我が派閥に取り込まねば」

貴族たちは、期待と畏怖、そして欲望の入り混じった視線を入り口に向けていた。
そんな中、入り口の衛兵が声を張り上げた。

「特級英雄、レント・シルバー様! 並びに、そのお連れ様方、ご到着!」

重厚な扉がゆっくりと開く。
会場のざわめきが一瞬で消え、静寂が支配した。

カツ、カツ、カツ。

靴音が響き、俺たちが姿を現した。

俺は漆黒のタキシードに身を包んでいた。
ただの布ではない。『暗黒竜の皮』をなめして作った特注品で、光を吸い込むような深い黒色が、俺の存在感を際立たせている。
胸元には、特級英雄の証である勲章と、さりげなく『黒のギルドカード』をアクセサリーとして飾っている。

そして、俺の両脇を固める美女たち。

右腕には、純白のドレスを纏ったシルヴィア。
そのドレスは『天蚕(テンサン)の絹』で織られており、彼女が動くたびに光の粒子が舞うような錯覚を覚えさせる。
銀髪は美しく結い上げられ、頭上には小ぶりだが本物のダイヤモンドをあしらったティアラが輝いていた。
亡国の姫としての気品と、Sランク冒険者としての凛とした強さが同居する、完璧な貴婦人だ。

左腕には、真紅のドレスを着たイグニス。
背中が大きく開いた大胆なデザインだが、彼女の褐色の肌と豊満な肢体がそれを完璧に着こなしている。
首元には、彼女自身の魔力を結晶化させた『竜玉のネックレス』が燃えるように赤く輝き、周囲を威圧するほどの美貌を放っている。

そして俺の後ろには、メイド服ではなく、清楚な水色のカクテルドレスを着たセレスティアと、護衛として礼服を着た執事のゼクス、メイド長のエリスが控えている。
セレスティアの背中からは、隠しきれない(というか隠していない)六枚の黄金の翼が微かに発光しており、まるで女神が降臨したかのようだ。

「……っ!」

会場の誰もが息を呑んだ。
美しい、という言葉では足りない。
圧倒的な『格』の違い。
生物としてのレベルが違う存在が、そこに立っていた。

「あ、あれがレント・シルバー……?」
「なんてオーラだ……。直視できない……」
「連れている女性たちも……あれは人間か? 神々しすぎる……」

ため息のような称賛が漏れる中、俺たちは悠然と会場の中央へと進んだ。
人波が、まるでモーゼの海割りのように左右に開いていく。
誰も俺たちの前に立ちはだかることができないのだ。

「レント殿! お待ちしておりましたぞ!」

一番に出迎えてくれたのは、国王アラルド三世だった。
彼は満面の笑みで俺の手を握った。

「よく来てくれた。貴殿のような英雄を迎えることができて、余も鼻が高い」
「招待感謝するよ、陛下。なかなか盛況だな」
「うむ。皆、貴殿を一目見ようと必死でな。……ほら見ろ、ハイエナどもの目が血走っておる」

国王が小声で冗談めかして言う通り、周囲の貴族たちは虎視眈々と俺に接触する機会を窺っていた。
だが、俺の放つ威圧感と、イグニスやシルヴィアのガードが堅すぎて、容易に近づけないようだ。

「レント様、ごきげんよう」

最初に勇気を出して声をかけてきたのは、以前俺に手紙を送ってきたバルバロス公爵だった。
恰幅の良い、いかにも狸親父といった風貌の男だ。
彼の隣には、着飾った令嬢が恥ずかしそうに立っている。

「おお、これは公爵。手紙の件はどうも」
「読んでいただけましたか! いやはや、光栄です。こちらは娘のミリアでして……レント様のような素晴らしい英雄に、ぜひご紹介したく」
「初めまして、レント様……」

令嬢がカーテシーをする。
確かに可愛らしい娘だが、残念ながら俺の隣にいるメンツが強すぎる。
シルヴィアの清楚さ、イグニスの妖艶さ、セレスティアの聖性。
これらと比較されてしまうのは、彼女にとって酷というものだろう。

「ご挨拶、痛み入ります。ですが残念ながら、俺のパートナーの席は少々混み合っておりまして」

俺はシルヴィアとイグニスの腰を抱き寄せた。
二人は公爵令嬢に対し、にっこりと(しかし目は笑っていない)余裕の笑みを向けた。

「あら、可愛らしいお嬢さんですね。でも、レント様のお世話は私たちが完璧にこなしておりますので」
「うむ。主の夜の相手も順番待ちの状態じゃからの。悪いが列の後ろに並んでくれるか?」

強烈な牽制。
公爵令嬢は「ひっ」と小さな悲鳴を上げて後ずさり、公爵も冷や汗をかいて引き下がった。

「くっ、さすがは英雄の伴侶たち……。格が違う……」

公爵の敗退を見て、他の貴族たちも「娘を売り込む作戦」は諦めたようだ。
次は「金品や権力で釣る作戦」に出た者たちが群がってきた。

「レント様! 我が領地の特産品を献上いたします!」
「ぜひ我が派閥へ! 次期宰相のポストを用意させますぞ!」
「魔導具の共同開発を!」

うるさい蠅のようだ。
俺は軽く手を振った。

「悪いが、金なら腐るほどあるし、権力には興味がない。俺が欲しいのは『自由』と『平穏』だけだ。それを邪魔しない限り、俺は誰の敵にもならないし、味方にもならない」

俺は明確に線引きをした。
中立宣言だ。
だが、同時に「邪魔するなら敵とみなす」という警告も含んでいる。

「そ、そうですか……」
「失礼いたしました……」

貴族たちは蜘蛛の子を散らすように去っていった。
俺の言葉の重みを理解したのだろう。

「ふふ、レント様ったら。相変わらずモテモテですね」
「モテてるというより、金ヅルだと思われてるだけだろ」

俺はシルヴィアと笑い合い、グラスを受け取った。
その時、会場の奥から一人の男が近づいてきた。
他の貴族たちとは違う、鋭い眼光を持つ男だ。
身なりは簡素だが、纏っている魔力の質が高い。

「お初にお目にかかります、レント卿。私は宮廷魔導師団の副団長、クライスと申します」

クライスと名乗った男は、慇懃無礼な態度で一礼した。
その目は俺を値踏みするように観察している。

「宮廷魔導師団か。先日は団長さんが気絶しちゃって悪かったな」
「ええ、あのおかげで団長は引退を余儀なくされました。……まあ、老害が消えて清々しましたがね」

クライスは冷笑した。
どうやら、ただの真面目な魔導師ではないらしい。野心家の匂いがする。

「単刀直入に申し上げます。貴方のその『付与術』……我々に提供していただけませんか? もちろん、相応の対価はお支払いします」
「提供? どういう意味だ?」
「貴方の使う付与は、既存の理論を超越しています。その術式を解析し、軍事転用したいのです。我が国だけでなく、周辺国をも圧倒する兵器として」

きな臭い話になってきた。
やはり、俺の力を利用しようとする輩は後を絶たないか。

「断る。俺の技術は俺だけのものだ。それに、兵器なんて物騒なものに興味はない」
「……そうですか。それは残念です。ですが、あまり独り占めしていると、思わぬところから『刺客』が現れるかもしれませんよ?」

クライスは意味深な言葉を残し、人混みへと消えていった。
脅しか?
それとも、何か具体的な計画があるのか。

「レント様、あの男……嫌な気配がしました」

セレスティアが不安げに袖を引く。
彼女の『未来予知』のスキルが、微かに反応したのかもしれません。

「ああ。どうやら、この国の内部も一枚岩じゃないみたいだな」

俺は飲み干したグラスをゼクスに渡した。
外敵である魔王軍だけでなく、内なる敵も蠢いている。
まあ、どちらにせよ俺たちに手を出せばどうなるか、教えてやるまでだが。

「さあ、難しい話はこれくらいにして、踊ろうかシルヴィア」
「えっ、私とですか!?」
「パートナーとして連れてきたんだ。ファーストダンスは君の特権だぞ」

俺は手を差し出した。
シルヴィアは顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうにその手を取った。

オーケストラがワルツを奏で始める。
俺たちはフロアの中央へと進み出た。
かつての俺ならダンスなんて踊れなかったが、今の俺には【舞踏技術(ダンス・スキル)】の付与がある。
プロのダンサー顔負けのステップで、シルヴィアをリードする。

「きゃっ……! レント様、お上手です!」
「君こそ、さすが元王族だ。軽いな」

俺たちは流れるように踊った。
回転するたびに、シルヴィアのドレスが花のように開き、光の粒子を撒き散らす。
その美しさに、周囲の貴族たちは言葉を失い、ただ見惚れるしかなかった。

「見て……なんてお似合いなの」
「まるで絵画のようだわ」
「特級英雄と、亡国の姫騎士……物語の主人公そのものじゃないか」

いつしか、フロアには俺たち二人だけになっていた。
他のペアは遠慮して下がり、俺たちの独壇場となっていたのだ。

曲が終わり、俺がシルヴィアを抱き止めてフィニッシュを決めると、会場が割れんばかりの拍手に包まれた。

「レント様……夢のようです……」
「夢じゃないさ。これからもっと楽しいことが待ってる」

俺は彼女の耳元で囁いた。
次にイグニスとも踊り、セレスティアとも踊った。
イグニスとのダンスは情熱的で激しく、セレスティアとはふんわりと優しいダンスだった。
三者三様の魅力を見せつけ、俺の『ハーレムパーティ』の健在ぶりを、国中に知らしめることとなった。

舞踏会は大盛況のうちに幕を閉じた。
俺は貴族たちの賞賛を浴びながら、悠々と王城を後にした。

帰り道、リムジンの中で俺はふと考えた。
あのクライスという魔導師の言葉。
そして、最近ちまたで囁かれている「隣国の動き」。
シルヴィアの故郷を滅ぼし、今も勢力を拡大している『ガレリア帝国』。
彼らが、俺の存在を嗅ぎつけないはずがない。

「……そろそろ、向こうからコンタクトがある頃か」

俺の予想は的中していた。
俺たちが城に戻ったその翌日。
一人の使者が、城門を叩いたのだ。

それは帝国の使者ではなく、意外な人物――シルヴィアのかつての部下であり、今は帝国の捕虜となっているはずの『女騎士団長』からの密書を携えた、傷だらけの伝令だった。

「レント様! シルヴィア様! どうかお救いください! 我が国の残党が、帝国軍の実験施設で……!」

伝令の言葉が、新たな戦いの幕開けを告げていた。
社交界での遊戯は終わりだ。
次は、国家間の戦争レベルのトラブルが、俺たちを待ち受けている。

そしてその影で、鉱山送りになったはずの元仲間たちもまた、しぶとく生き残りをかけて蠢いていた。
彼らが手に入れたのは、鉱山の奥深くに封印されていた『禁断の魔道具』。
それが彼らを破滅させるのか、あるいは最後の逆転の鍵となるのか。

物語は『承』から『転』へと加速していく。

第20話へ続く。

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