追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第16話 奴隷市場で『呪われた聖女』を発見。もちろん即決購入。

「金貨一万枚。即決だ」

俺の宣言が、地下オークション会場の空気を完全に凍りつかせた。
一万枚。
それは、小国の国家予算の数十分の一に匹敵する大金だ。
それを、たった一人の奴隷――しかも「呪われていて使い物にならない」と言われている少女のためにポンと出す。
狂気の沙汰としか思えないだろう。

司会者が震える手で木槌を握りしめている。
会場の貴族たちは、バルコニー席にいる俺を、まるで異世界の怪物を見るような目で見上げていた。

「ら、落札……! 金貨一万枚にて、特級英雄レント様が落札されましたぁぁぁッ!」

カァァァン!

木槌の音が響き渡り、会場が爆発したような騒ぎになる。
俺は悠然と立ち上がり、ステージへと向かった。
隣ではシルヴィアが「さすがレント様、お買い物が豪快です」と感心し、イグニスが「ふむ、新しいペットか。弱そうじゃが大丈夫か?」と値踏みしている。

ステージに上がると、鉄檻の前に立っていた警備兵たちが、慌てて道を空けた。
彼らは檻の中の少女――セレスティアから漏れ出る瘴気に怯え、顔面蒼白になっていたのだ。

「鍵を開けろ」

俺が命じると、司会者が脂汗をかきながら近づいてきた。

「あ、あの、レント様。本当によろしいのですか? この『呪われた聖女』は、触れるだけで皮膚が壊死し、精神が汚染されるほどの強力な呪毒を放っています。魔封じの枷をしていてもこの有様でして……」
「構わない。開けろ」
「は、はい! ですが、何かあっても当方は責任を……」
「いいから」

俺の威圧に押され、司会者は震える手で檻の鍵を開けた。
ギギギ、と重い鉄格子が開く。

中から、ドス黒い霧のような瘴気が溢れ出した。
会場の前列にいた客たちが「ひっ!」と悲鳴を上げて後ずさる。
腐臭と、焦げ付くような硫黄の臭い。
それはまさに、地獄の蓋が開いたかのような光景だった。

俺はその黒い霧の中へ、躊躇なく足を踏み入れた。

「……来ない、で」

少女の掠れた声が聞こえた。
セレスティアは檻の隅で膝を抱え、小さく震えていた。
ボロボロの修道服。
泥と血にまみれた手足。
そして、背中から生える漆黒の翼からは、コールタールのような黒い液体が滴り落ちている。

彼女は顔を上げ、虚ろな瞳で俺を見た。

「私に近づけば……あなたも、死ぬ……」
「死なないさ」

俺は彼女の目の前まで歩み寄り、膝をついて目線を合わせた。
俺の体には、すでに【状態異常無効】【呪い無効】【聖域結界】の三重の防御付与がかかっている。
彼女の放つ瘴気は、俺の肌に触れる前にジュウッと音を立てて蒸発していた。

「……え?」

セレスティアが目を見開いた。
彼女にとって、自分の周りの瘴気の中で平然としている人間など、今まで存在しなかったのだろう。

「ほら、平気だろ? 俺はちょっとやそっとの呪いじゃ壊れない」
「嘘……どうして……? 教団の司祭様たちでさえ、防護魔法越しでも倒れたのに……」
「俺はそいつらより強いからな。それだけだ」

俺は彼女の手首を掴んだ。
魔封じの枷が嵌められている手だ。
触れた瞬間、バチバチッ! と黒い稲妻が走ったが、俺は意に介さず、そのまま枷を引きちぎった。

バキンッ!

鋼鉄の枷が飴細工のように砕け散る。
足枷も同様に破壊する。

「あ……」

自由になった手足を、彼女は信じられないように見つめた。
だが、次の瞬間、枷によって抑え込まれていた呪いの力が暴走を始めた。

ゴオオオオオオッ!!

彼女の体から噴き出す瘴気が倍増し、黒い竜巻となって周囲を薙ぎ払おうとする。
会場の照明が明滅し、ガラスが割れる音が響く。

「きゃあああっ!?」
「逃げろ! 呪いが暴走したぞ!」

客たちがパニックになって逃げ惑う。
セレスティアは涙を流し、自分の体を抱きしめた。

「やっぱり……ダメ……! 私の体は、災厄そのものなの……! お願い、私を殺して! そうしないと、みんな死んじゃう!」

悲痛な叫び。
彼女はずっと、こうして自分を呪い、死を望んできたのだろう。
生まれながらにして『忌み子』として扱われ、誰からも愛されず、ただ恐れられてきた孤独。

「殺さないよ」

俺はその黒い嵐の中心で、彼女の頭を優しく撫でた。

「こんな面白い才能、殺すなんてもったいない」
「……面白い?」
「ああ。世界を滅ぼしかねない呪いと、それを内側で必死に抑え込んでいる聖なる光。その矛盾した二つの力が、お前の中でせめぎ合ってる。……芸術的ですらあるな」

俺は【鑑定眼】で彼女の内部構造を解析していた。
彼女の魂には、神話級の『熾天使(セラフィム)』の因子が埋め込まれている。
だが、何者かによって意図的に『呪いの楔』が打ち込まれ、聖なる力を反転させて魔力暴走を引き起こすように改造されていたのだ。
これは病気や体質じゃない。
誰かが作った、悪意あるシステムだ。

「誰がこんな悪趣味なことをしたのかは知らないが……俺の所有物になった以上、俺好みにリフォームさせてもらうぞ」

俺は右手に魔力を集中させた。
無限の魔力が、黄金の輝きとなって俺の腕を包む。

「付与術(エンチャント)・【定義改竄】。対象、セレスティアの『呪い』」

俺は宣言した。

「その呪いを――『祝福』へと書き換える」

ドクンッ!!

俺の手から放たれた光が、セレスティアの体内へと奔流となって流れ込んだ。
黒い瘴気が、光に押し流されていく。
破壊するのではない。
『呪いにより他者を害する』という性質を、『祝福により他者を癒やす』という性質へと、概念レベルで反転させる。

マイナスにマイナスを掛けてプラスにするような、強引な計算式の書き換え。

「あ、あああぁぁぁ……ッ!!」

セレスティアが背中を反らして絶叫した。
苦痛ではない。
生まれて初めて感じる、体中を駆け巡る温かさと、清浄な魔力の奔流に対する歓喜の叫びだ。

バサァッ!!

彼女の背中の黒い翼が大きく広げられた。
コールタールのような粘液が弾け飛び、その下から現れたのは――雪のように白く、そして黄金の光を帯びた、神々しい六枚の翼だった。

会場を覆っていた黒い霧が、瞬く間に黄金の粒子へと変わる。
腐臭は消え、百合の花のような芳醇な香りが満ちる。
逃げ惑っていた客たちが、その光景に足を止め、呆然と見上げた。

「な、なんだ……あの光は……?」
「天使……? 女神様か……?」

ステージの中央で、セレスティアは自分の手を見つめていた。
黒ずんでいた肌は透き通るような白磁の肌に戻り、虚ろだった瞳にはアメジストのような輝きが宿っている。

「体が……軽い……。痛くない……。寒くない……」

彼女は震える手で、自分の頬に触れている俺の手に触れた。

「温かい……」

涙が、彼女の瞳から溢れ出した。
それは黒い血の涙ではなく、宝石のように透明な涙だった。

「呪いは消えたわけじゃない。お前の力の一部として組み込んだ。これからは、その力を制御できるはずだ」
「貴方が……やってくれたのですか……?」
「買った商品のメンテナンスをするのは、飼い主の義務だからな」

俺はハンカチを取り出し、彼女の顔についた泥を拭ってやった。
素顔が現れると、シルヴィアやイグニスにも引けを取らない、儚げで守ってあげたくなるような絶世の美少女だった。

「さあ、行こうか。セレスティア」
「あ……はい……!」

俺が手を差し出すと、彼女は恐る恐る、しかし縋り付くようにその手を握り返してきた。
その手はもう冷たくない。
命の熱を持っていた。

「レント様、また派手にやりましたね」
「うむ、まさかあのドス黒いのが、こんな美味そうな魂に変わるとはのう。主の魔力は調味料としても最高じゃな」

シルヴィアとイグニスがステージに上がってくる。
セレスティアは二人を見て、一瞬ビクリと身を竦めたが、二人が笑顔で迎え入れてくれたことで少し安心したようだった。

「代金はここに置いておく」

俺は【四次元収納】から、金貨一万枚が入った巨大な麻袋をドスンと置いた。
床が抜けるほどの重量感だ。
司会者は腰を抜かしたまま、「あ、ありがとうございますぅぅ!」と平伏している。

俺たちは静まり返る会場を後にした。
貴族たちは誰も言葉を発せなかった。
圧倒的な財力、武力、そして「呪いを祝福に変える」という奇跡。
それらを目の当たりにして、レントという存在が自分たちの理解を超えた領域にいることを痛感させられたのだ。



王都の地下から地上へ戻ると、すでに夜は更けていた。
俺たちはリムジンに乗り込み、北の湖畔にある我が城へと帰還した。

「すごい……お城……」

セレスティアは、夜空に白く輝く城を見て目を丸くしていた。
彼女はずっと教団の地下牢や、奴隷商の檻の中に閉じ込められていたのだろう。
こんなに広い空や、美しい建物を見るのは初めてなのかもしれない。

「今日からここがお前の家だ。部屋は売るほどあるから、好きなところを使っていいぞ」
「家……私の、居場所……」

彼女は噛み締めるように呟いた。
城に到着すると、エントランスでメイドのエリスが出迎えてくれた。

「オ帰リナサイマセ、旦那様。……オヤ、マタ新シイ家族ガ増エマシタカ。スキャン中……種族・堕天使改メ聖天使。推定ランクSS。大変優秀ナ戦力デス」
「エリス、彼女はセレスティアだ。今日からここで暮らす。部屋の用意と、新しい服、あと食事を頼む」
「了解シマシタ。直チニ準備シマス」

エリスはセレスティアに一礼した。
セレスティアは自動人形(オートマタ)を見るのも初めてのようで、「人形が……喋った……?」と驚いている。

その夜。
セレスティアは、エリスの手によってお風呂に入れられ、清潔なシルクのネグリジェに着替えさせられた。
長い金髪は艶やかに梳かされ、天使の翼も丁寧にブラッシングされている。
見違えるほど綺麗になった彼女は、俺の私室へと連れてこられた。

「あ、あの……レント様」

彼女はモジモジとしながら、俺の前に立った。
その顔は真っ赤に染まっている。

「ど、どうすれば……いいのでしょうか……?」
「どうすればって?」
「その……奴隷として買われた以上、夜のご奉仕をするのが義務だと……教わりました」

彼女はギュッと目を瞑り、服の裾を握りしめている。
奴隷商人に余計なことを吹き込まれていたらしい。

「いや、そんな義務はないぞ。俺はお前を戦力として、仲間として買ったんだ。奴隷働きをさせるつもりはない」
「で、でも……! 私、他に何も返せるものがありません! 命も、心も、この体も、全部レント様に救っていただいたのに……何か役に立たないと、また捨てられてしまうかもって……」

彼女の目から、また涙が溢れそうになる。
見捨てられる恐怖。
それが彼女のトラウマになっているのだ。

俺はため息をつき、ベッドの端に腰掛けた。

「わかった。じゃあ、一つだけ仕事を頼む」
「は、はい! なんでもします!」
「ここに来て、俺の隣に座れ」

俺がポンと隣を叩くと、彼女はおずおずと近づき、ちょこんと座った。
羽毛のように軽い。

「俺はな、強い魔力を使うと、たまに魔力過多で熱っぽくなるんだ(嘘だ)。だから、お前のその『聖なる冷気』で冷やしてほしい」
「冷やす……ですか?」
「ああ。こうやって、くっついててくれればいい」

俺は彼女の肩を抱き寄せた。
彼女の体温は少し低く、ひんやりとして気持ちがいい。
そして何より、彼女自身が俺の体温を感じて安心しているのが伝わってくる。

「……はい。これなら、私にもできます」

彼女は嬉しそうに微笑み、俺の胸に頭を預けてきた。
六枚の翼が、ふわりと俺を包み込むように広がる。
それは最強の防御結界であり、最高の布団でもあった。

「(まあ、呪いの残滓がまだ少し残ってるから、定期的に俺の魔力で中和してやる必要があるんだけどな)」

それは口に出さず、俺は彼女のサラサラとした髪を撫でた。
こうして、俺の城にまた一人、最強の仲間(天使)が加わった。

だが、平穏な夜は長くは続かない。
翌朝、城の玄関が激しくノックされた。
やってきたのは、王国の騎士団長――ではなく、意外な人物だった。

「レント様! 大変です!」

息を切らして駆け込んできたのは、冒険者ギルドの受付嬢レイナさんだった。
彼女の手には、緊急の赤紙(レッド・レター)が握られている。

「どうした、レイナさん。朝から血相変えて」
「ま、魔王軍です! 北の山脈に、魔王軍の幹部『四天王』の一人が軍勢を率いて現れました! 王都へ向けて進軍を開始したそうです!」
「四天王?」
「はい! しかも、その進軍ルート上に……レント様のこの城があるんです!」

なるほど。
俺の城は王都の北、山脈の手前にある。
王都を攻めるなら、ここを通過するのは必然か。

「国軍は迎撃に出ないのか?」
「それが……先日の『栄光の剣』の失敗や、騎士団の弱体化で、すぐに出せる戦力がなくて……。王家から、特級英雄であるレント様に『防衛協力要請』が出たんです!」

レイナさんは泣きそうな顔で訴えた。
国の一大事だ。普通なら絶望的な状況だろう。

だが、俺はニヤリと笑った。

「ちょうどいい」
「え?」
「新しい仲間(セレスティア)の力試しと、城の防衛システムの実地テストをしたかったところだ。魔王軍? いい実験材料が向こうから来てくれたな」

俺の背後で、シルヴィアが聖剣を抜き、イグニスが炎を纏い、エリスがガトリングガンを展開し、そしてセレスティアが黄金の翼を広げた。

「行こうか、みんな。俺たちの庭を荒らす不届き者を掃除しに」

最強のハーレムパーティ、初の防衛戦が始まろうとしていた。
そしてその戦場には、なぜか懲りずにあの元仲間たちも紛れ込んでいるようだが……それはまた、別の話。

第17話へ続く。

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