追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

sika3

第15話 見下してくる元仲間に、圧倒的な『格』の違いを見せてやる。

王都の目抜き通りにある高級商店街。
その一角に、一際大きな威容を誇る建物がある。
『ゴロンド商会』。
武器、防具、魔道具から、希少なモンスター素材まで、ありとあらゆる物を取り扱う国内最大手の商会だ。
特にその本店は、一流の冒険者や貴族御用達の場所として知られ、入店するだけでもそれなりの身分と紹介状が必要とされる格式高い店である。

そんな商会の入り口で、怒号が響いていた。

「ふざけるな! これが金貨五枚だと!? ゼロが二つ足りないぞ!」

カウンターで喚いているのは、泥と煤にまみれた男――元『栄光の剣』のリーダー、ヴァルスだ。
彼の後ろには、同じく薄汚れた姿のエリナ、ジャミル、アリアが肩を落として立っている。
彼らは今、手持ちの装備を売って現金を工面しようと必死だった。

「お客様、そう仰られましても……」

対応している初老の鑑定士は、困惑と軽蔑が入り混じった表情で、カウンターに置かれた剣――『ドラゴンスレイヤー(偽)』の成れの果てを見下ろしていた。

「この剣、刀身に致命的なクラックが入っております。それに、長期間魔力の手入れを怠ったせいか、素材である竜骨が腐食し始めています。もはや武器としての価値はありません。素材(ジャンク)として買い取るなら、金貨五枚が限界です」
「嘘だ! これは国宝級の業物だぞ! 俺が……俺たち『栄光の剣』が愛用していた伝説の剣だ!」
「以前はそうだったかもしれませんが、今の状態ではただの骨董品以下です。それに……」

鑑定士は鼻をつまむ仕草をした。

「お客様方、失礼ですが少々臭います。他のお客様のご迷惑になりますので、商談が成立しないのであれば、お引き取り願えますか?」
「なっ、臭うだと!? 俺たちを追い出す気か! 支配人を呼べ! 俺はSランク冒険者だぞ!」

ヴァルスがカウンターを叩く。
しかし、店内の警備兵たちが冷ややかな目で近づいてくるのを見て、ジャミルが慌ててヴァルスの袖を引いた。

「おい、よしなよヴァルス。ここで暴れたら衛兵を呼ばれる。ただでさえ俺たち、指名手配寸前の噂が立ってるんだぞ」
「くそっ……! なんでだ、なんでどいつもこいつも俺たちを敬わないんだ!」

ヴァルスは歯ぎしりをした。
金がない。宿にも泊まれない。
最後の頼みの綱だった装備の売却も、二束三文にしかならない。
彼らのプライドは、現実という壁の前に粉砕されようとしていた。

その時だった。

カランカラン♪

入り口のドアベルが軽やかに鳴り、店の空気が一変した。

「いらっしゃいませー! ……おや? あの方は!」

店員たちの声が弾む。
奥の執務室から、恰幅の良い男が飛び出してきた。
この商会の会長、ゴロンドその人だ。

「おお! お待ちしておりましたぞ! 特級英雄、レント様!」

ゴロンド会長が揉み手をして出迎えた先には、黒いコートを優雅に着こなしたレントと、その両脇を固める二人の美女――シルヴィアとイグニスの姿があった。
彼らの周りだけ、まるで照明が当たっているかのように輝いて見える。

「やあ、ゴロンド会長。急にお邪魔して悪かったね」
「とんでもございません! レント様のご来店とあれば、店を貸し切りにしてでも歓迎いたしますとも!」

レントは微笑みながら店内へと足を踏み入れた。
その視線が、ふとカウンターの隅で固まっている薄汚れた集団――ヴァルスたちに向けられる。

「ん? また会ったな。奇遇だ」

レントの言葉に、ヴァルスはビクリと肩を震わせた。
朝、城門前で銅貨を投げつけられた屈辱が蘇る。

「レ、レント……!」
「買い物か? それとも、また物乞いか?」
「ち、違う! 商談だ! 俺たちは客として来てるんだ!」

ヴァルスは虚勢を張って叫んだ。
だが、その声は震え、説得力のかけらもない。

ゴロンド会長が訝しげにヴァルスたちを見た。

「レント様、こちらの浮浪者……いえ、お客様とお知り合いで?」
「ああ、昔の知り合いだよ。……それで会長、今日は頼んでいた『あれ』を見せてもらおうか」
「はい! もちろんです! こちらへどうぞ!」

ゴロンド会長はヴァルスたちを完全に無視し、レントを店の奥にあるVIPルームへと案内しようとした。
その扱いの差に、ヴァルスの我慢が限界を超えた。

「待てよ! 俺たちが先だろ! 俺の剣の査定はどうなったんだ!」
「まだ居たのですか?」

ゴロンド会長が冷ややかに振り返る。

「鑑定士が提示した金額が不満なら、他を当たってください。うちはガラクタ置き場ではありませんので」
「ガラクタだと!? ふざけるな! レント、お前からも言ってやれ! この剣の価値を一番知ってるのはお前だろ!」

ヴァルスは縋るようにレントに話を振った。
プライドをかなぐり捨てて、かつての仲間に助け舟を求めたのだ。
レントなら、「確かにそれは名剣だ」と証言してくれるかもしれない。そうすれば、高く売れるはずだ。

レントは足を止め、ヴァルスの手にあるボロボロの剣を一瞥した。

「ああ、その剣か」
「そ、そうだ! お前がメンテしてたんだ、凄さはわかるだろ?」
「……ただの『竜骨の剣(模造品)』だな」

レントは淡々と言った。

「もともと素材の質は中の下だ。俺が【硬化】と【斬撃強化】を十重二十重に掛けて、無理やりSランク相当の性能を持たせていただけだ。付与が切れた今、それはただの骨ですらない、カルシウムの塊だよ」
「な……に……?」
「金貨五枚なら御の字だろ。俺なら銅貨でも買わない」

レントは興味なさげに肩をすくめた。
ヴァルスの顔色が、赤から青、そして土気色へと変わっていく。

「そ、そんな……。俺の剣は、偽物だったのか……?」
「本物にしたければ、相応の金と技術を注ぎ込むことだ。……もっとも、今のお前らにその価値があるとは思えないが」

レントは踵を返し、VIPルームへと消えていった。
残されたのは、絶望に打ちひしがれたヴァルスたちと、彼らを冷たい目で見る店員たちだけだった。

「……金貨五枚でいい。売る」

ヴァルスは掠れた声で言った。
英雄の証だった剣を、端金で手放す。
それは、彼がSランク冒険者であることを完全に諦めた瞬間でもあった。



VIPルームに通された俺たちは、ふかふかのソファに腰を下ろしていた。
最高級の紅茶とお菓子が運ばれてくる。

「レント様、さっきの方々……本当に惨めでしたね」
「自業自得よ。主の慈悲を無下にした報いじゃ」

シルヴィアとイグニスが呆れたように言う。
俺も正直、彼らに関わっている時間がもったいないと感じていた。
彼らはもう、俺の人生における登場人物(モブ)ですらない。背景の一部だ。

「さて、レント様。本日ご用意したのはこちらです」

ゴロンド会長が、恭しく一つの木箱をテーブルに置いた。
蓋を開けると、そこには虹色に輝く液体が入った小瓶が収められていた。

「『世界樹の雫(エリクサー)』。伝説の霊薬です。死者すら蘇らせ、あらゆる呪いを解き、不老長寿をもたらすとされる奇跡の品……」
「ほう、これが」

俺は小瓶を手に取った。
鑑定スキルで見ると、確かに凄まじい生命エネルギーを感じる。
だが。

「……純度が低いな」
「へ?」

ゴロンド会長が目を丸くした。

「こ、これは世界最高峰の錬金術師が精製したもので、純度90%を誇る逸品ですが……」
「いや、混ぜ物が多い。保存料としての魔力水が多すぎるせいで、効果が薄まってる。これじゃ死者は蘇らないし、寿命も精々十年伸びる程度だ」
「そ、そんな……」
「まあ、ベースとしては悪くない。俺が再精製(リファイン)すれば使えるか」

俺は小瓶に指を当て、魔力を流し込んだ。
【不純物除去】、【成分濃縮】、【効果増幅】。

カッ!!

小瓶が眩い光を放ち、中の液体が虹色から、透き通るような黄金色へと変化した。

「こ、これは……!?」
「純度100%の『真・エリクサー』になった。これなら神の呪いでも解けるし、飲めば不老不死(永続的な若返り)も夢じゃない」
「し、真・エリクサー……! 神話の中にしか出てこない幻の……!」

ゴロンド会長が震える手で小瓶を見つめる。
市場価値をつけるなら、国が三つくらい買える値段になるだろう。

「これを買わせてもらうよ。城の庭にある世界樹の苗木に使いたいんだ」
「な、苗木に!? 肥料にするおつもりで!?」
「ああ。早く大きくしたいからな」

俺は事もなげに言った。
ゴロンド会長は泡を吹いて倒れそうになったが、なんとか堪えた。
特級英雄の金銭感覚と使い道は、常人の理解を超えているようだ。

「……承知いたしました。代金は、先日お預かりしたドラゴンの素材の売却益から差し引かせていただきます」
「頼む。それと、もう一つ相談があるんだが」

俺は紅茶を一口啜り、本題を切り出した。

「使用人が欲しい」
「使用人、ですか?」
「ああ。城が広すぎて、エリス(オートマタ)一人じゃ手が回らなくなってきた。それに、シルヴィアやイグニスの身の回りの世話もできる、優秀な人材が必要なんだ」
「なるほど……。普通のメイドや執事なら手配できますが、レント様のお眼鏡に叶う人材となると……」

ゴロンド会長は顎に手を当てて考え込んだ。
俺の周囲は、Sランク冒険者くずれやドラゴン、姫騎士といった規格外ばかりだ。
普通の人間では、魔力あたりして倒れてしまうかもしれない。

「普通の紹介所じゃ無理だろうな。……だから、会長に頼んだんだ。『裏』のルートも持ってるんだろ?」

俺は試すように言った。
ゴロンド商会ほどの大きさになれば、表の商売だけでなく、闇市場(ブラックマーケット)とも繋がりがあるはずだ。
犯罪奴隷や、訳ありの亜人などを扱う場所と。

ゴロンド会長の目が一瞬鋭くなり、すぐに柔和な笑みに戻った。

「……さすがはレント様。お見通しですか」
「俺は出自や種族にはこだわらない。優秀で、そして『運命』を感じる相手なら、いくら出してもいい」

会長は声を潜め、懐から一枚の招待状を取り出した。
漆黒の紙に、金色の文字で日時と場所が記されている。

「今夜、王都の地下区画で特別なオークションが開かれます。表には出せない、希少な『商品』ばかりを集めた闇の競売会です」
「闇オークションか」
「はい。そこには、曰く付きですが、とてつもない潜在能力を秘めた『掘り出し物』が出品されるという噂があります。……特に、教団によって封印された『忌み子』などが」

忌み子。
その単語に、俺の直感が反応した。
封印、呪い、教団。
ファンタジー小説のお約束なら、それは十中八九、不遇な扱いを受けているヒロインのフラグだ。

「面白そうだ。行ってみるよ」
「では、この招待状をお持ちください。VIP席をご用意しておきます」

俺は招待状を受け取った。
今夜の予定が決まった。
新しい仲間(ハーレム要員)を見つけるための、ショッピングだ。

「レント様、闇オークションですか? なんだかドキドキしますね」
「うむ、強い奴隷なら良いが、弱っちいなら妾が食ってしまうぞ」

二人の反応も悪くない。
俺たちは商会を後にした。

帰り際、店の外にはまだヴァルスたちがたむろしていた。
彼らは手に入れた金貨五枚を握りしめ、どう分配するかで揉めているようだった。

「五枚じゃハイポーション一本も買えねえよ!」
「宿代と飯代にしたら一瞬で消えるわ!」
「俺のナイフも買い直さないと……」
「借金の利息だけで五枚持っていかれるんですよ!」

救いようがない。
俺は彼らの横を通り過ぎる際、わざと聞こえるようにシルヴィアに話しかけた。

「ああ、そういえばさっき買った『真・エリクサー』だけどさ、やっぱり庭の肥料にするのはもったいないかな?」
「そうですねえ。一本で金貨十万枚はする代物ですから、もう少し有意義に使っても……」
「金貨十万枚か。まあ、俺のポケットマネー(小銭)みたいなもんだし、別にいいか」

「「「「じゅ、十万枚ぃっ!?」」」」

ヴァルスたちが素っ頓狂な声を上げて振り返る。
俺の手の中で遊ばせている小瓶。
そこから溢れる光だけで、彼らの持っている金貨五枚がゴミに見えるほどの価値があることは、馬鹿でもわかった。

「あ、あいつ……肥料にするだと? 国が買えるような薬を?」
「格が……違いすぎる……」

ヴァルスはその場にへたり込んだ。
怒りすら湧いてこない。
ただ、圧倒的な経済力と実力の差を見せつけられ、心が折れる音が聞こえた。

「じゃあな、元仲間たち。せいぜいその五枚を大切にするんだな」

俺はニヤリと笑い、リムジンに乗り込んだ。
背後で彼らが絶望に沈んでいく気配を感じながら、俺たちは次なる舞台――闇のオークション会場へと向かうのだった。



その夜。
王都の地下深く、入り組んだ水路の奥にある秘密のホール。
仮面をつけた紳士淑女が集う、異様な熱気に包まれた空間があった。
闇オークション会場だ。

俺たちはゴロンド会長の手配したVIP席、会場全体を見下ろせるバルコニー席に座っていた。
シルヴィアもイグニスも、場違いなほどの美しさで周囲の注目を集めているが、俺の放つ威圧感のおかげで、誰も声をかけてこない。

「さて、どんな商品が出るのかな」

オークションが始まった。
最初は横領された美術品や、盗掘された宝石などが競りにかけられた。
どれも一級品だが、俺の食指は動かない。
俺の【四次元収納】の中には、ドラゴンの巣から回収したもっと凄い財宝が山ほどあるからだ。

「次は、生体販売のコーナーです!」

司会者の声と共に、会場の空気が変わった。
ステージの檻の中に、手錠をかけられた亜人や、犯罪奴隷たちが連れてこられる。
屈強なオークの戦士、美しいエルフの少女、珍しい獣人。
貴族たちが欲望を剥き出しにして値を釣り上げていく。

「ふん、どいつもこいつも目が死んでおる。つまらん」

イグニスがつまらなそうに欠伸をした。
確かに、彼らは絶望し、生きる気力を失っているように見えた。
俺が求めているのは、逆境にあっても折れない心を持つ、あるいは俺の手で輝きを取り戻せる原石だ。

「本日最後の目玉商品です!」

司会者が声を張り上げた。
重厚な鎖の音が響き、巨大な鉄檻がステージ中央に運ばれてきた。
檻の中は黒い布で覆われており、中身は見えない。
だが、そこから漏れ出る禍々しい瘴気が、会場の気温を一気に下げた。

「これは……!」

俺は身を乗り出した。
鑑定スキルが反応している。
ただの瘴気ではない。これは、強力な『呪い』と、それを抑え込もうとする神聖な『光』がせめぎ合っている反応だ。

「教団の異端審問官によって捕縛された、『呪われた聖女』! 彼女は生まれながらにして災厄を招く呪いを宿し、触れる者すべてを不幸にすると言われています! しかし、その身に秘めた聖なる力は本物! 使いこなせば最強のヒーラーに、あるいは呪毒の兵器にもなり得る、禁断の素材です!」

布が取り払われた。
そこにいたのは、ボロボロの修道服を着た少女だった。
手足には魔封じの枷。目には光がない虚ろな瞳。
だが、その顔立ちは人形のように整っており、金色の髪は泥にまみれてもなお輝きを失っていなかった。
そして何より、彼女の背中には――漆黒に染まった『天使の翼』が生えていた。

「堕天使……いや、違うな」

俺は鑑定した。

【名前:セレスティア】
【種族:熾天使(セラフィム)の末裔(呪いにより堕天状態)】
【状態:呪詛浸食度99%(あと少しで魔王化)】
【スキル:神聖魔法(極大)、呪術(極大)、未来予知】

「当たりだ」

俺は確信した。
彼女こそ、俺が探していた「使用人」であり、新たな仲間だ。
魔王化寸前の聖女。
こんな面白い素材、放っておく手はない。

「開始価格は金貨1000枚から!」

会場がどよめく。
呪い付きの奴隷にそんな大金を出す物好きはいない、と皆が尻込みする中。

「金貨一万枚」

俺は静かに札を上げた。

「……は?」

司会者が固まった。
会場中の視線が、バルコニー席の俺に集まる。

「い、一万枚!? 一万枚出ました! 他に……他にいらっしゃいませんか!?」

シーンとなる会場。
当たり前だ。呪い付きの少女に、城が買える値段を出す馬鹿はいない。
俺以外には。

「決まりだ。即決で頼む」

俺は立ち上がり、ポケットから金貨袋(中身は【四次元収納】直結)を取り出した。

「セレスティア。お前を買う」

ステージ上の少女が、ゆっくりと顔を上げた。
虚ろだったその瞳に、俺の姿が映る。
彼女は微かに唇を動かした。

「……逃、げて……。私に関わると……死ぬ……」

「死なないよ。俺は神様より丈夫だからな」

俺はニヤリと笑った。
呪われた聖女との出会い。
これが、俺のハーレムパーティに新たな伝説(トラブル)を呼び込む幕開けだった。

第16話へ続く。

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