追放された付与術師、自分自身を『神』へと強化する。~捨てられた俺、実は万能チート。美少女と無双する間に、元仲間は全滅しているようですが?~

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第11話 素材を売っただけで国家予算レベルの稼ぎになりました。

王城での騒動を終え、俺たちは再び冒険者ギルドへと戻ってきた。
目的は、先日預けておいたドラゴン素材と、その他のドロップ品の査定結果を聞くためだ。
ギルド内は相変わらず冒険者たちの熱気でむせ返るようだが、俺たちが足を踏み入れた瞬間、その喧騒がピタリと止んだ。

「お、おい……あれ、レントだよな?」
「特級英雄に認定されたってニュース、本当かよ……」
「王城の宝珠をぶっ壊したって噂だぜ……」

ひそひそ話が聞こえてくる。
どうやら、王城での一件はすでに尾ひれがついて広まっているらしい。
俺は苦笑しつつ、カウンターへ向かった。
受付嬢のレイナさんが、以前にも増して緊張した面持ちで待っていた。
彼女の背後には、ギルドマスターのガンドルも控えている。

「お、お帰りなさいませ、レント様……!」
「様付けはやめてくれよ、レイナさん。今まで通りレントでいい」
「そ、そうはいきません! 特級認定を受けた方を呼び捨てになんてしたら、私の首が飛びます!」

レイナさんは顔をブンブンと横に振った。
どうやら俺の社会的地位は、俺が思っている以上に跳ね上がってしまったようだ。

「レントよ、待ちわびたぞ」

ガンドルが重々しい口調で口を開いた。
その手には、分厚い羊皮紙の束が握られている。

「素材の査定が終わった。……正直に言うとな、わしらも計算していて頭がおかしくなりそうじゃったわ」
「そんなにか?」
「まずはこの明細を見てみろ」

ガンドルが羊皮紙をカウンターに広げた。
そこには、細かい字でびっしりとアイテム名と査定額が記されていた。

・キメラの牙(50本):金貨500枚
・アダマンタイト・ゴーレムの核:金貨10,000枚
・古代兵器のパーツ一式:金貨5,000枚
・エンシェントドラゴンの逆鱗:白金貨1,000枚
・エンシェントドラゴンの牙(大):白金貨500枚
・エンシェントドラゴンの宝玉:測定不能(推定白金貨5,000枚相当)
・その他雑多な財宝類:金貨30,000枚

俺は一番下の合計欄に目を落とした。
そこにある数字は、俺の常識を遥かに超えていた。

【合計支払額:金貨換算 約120億ガルド】

「……いち、じゅう、ひゃく……」

俺は桁を数えて、諦めた。
この世界の通貨単位であるガルドは、大体1ガルドが1円くらいの感覚だ。
つまり、120億円。
サラリーマンが生涯かけて稼ぐ金額の数十倍を、たった一度のダンジョン探索(しかも実質半日)で稼ぎ出してしまったことになる。

「国家予算レベルじゃな」

ガンドルがため息交じりに言った。

「この国の年間軍事費に匹敵する額じゃ。当然、ギルドの金庫にある現金をかき集めても到底足りん。王家にも掛け合ったが、全額を即金で用意するのは不可能だと言われた」
「だろうな。で、どうするんだ?」
「分割払い、および現物支給での対応とさせてもらいたい」

ガンドルが別の書類を取り出した。

「まず、現金として即時用意できるのは金貨100万枚(約10億円)。これは馬車数台分になるから、お主の【四次元収納】に入れてくれ」
「わかった」
「残りの110億ガルド分だが……この国の『国債』と、王都内の一等地の土地権利書、それから王家直轄の鉱山の一部の採掘権。これらを譲渡するという形でどうじゃ?」

国債に土地に鉱山。
もはや冒険者の報酬というより、貴族同士の領土取引みたいな話になってきている。

「レント様、すごい……。これだけの資産があれば、小国なら買い取れてしまいますよ」

シルヴィアが明細を覗き込み、目を丸くしている。
彼女は一国の姫だったから金銭感覚は一般人よりマヒしているはずだが、それでもこの額には驚きを隠せないようだ。

「ふん、竜の財宝としては妥当なところじゃな。妾の寝床にあったガラクタが、人間社会ではこれほどの価値を持つとは」

イグニスは我関せずといった様子で、カウンターに置いてある飴玉を勝手に食べている。
彼女にとって金貨はただの光る金属片でしかないのだろう。

「わかった。その条件で手を打とう。現金ばかりあっても使い切れないしな」
「助かる。……しかし、これだけの富を持つとなると、色々と面倒な輩も寄ってくるぞ。商会やら貴族やらが、投資話や縁談を持ちかけてくるじゃろうな」
「全部断るよ。俺は自由にやりたいんだ」
「カッカッカ! そう言うと思ったわい。まあ、特級英雄の威光があれば、無理強いできる奴もおらんじゃろうがな」

ガンドルが豪快に笑い、手続きを進めてくれた。
俺は魔法の袋から大量の金貨を受け取り(実際には袋ごと収納スキルで吸い込んだ)、分厚い権利書の束を受け取った。

「ありがとうございました! またのご利用をお待ちしております!」

レイナさんと職員たちが、直角にお辞儀をして見送ってくれる。
まるで王様になった気分だ。
まあ、資産的には王様より持っているかもしれないが。

ギルドを出ると、外は昼下がり。
懐が温かい(というか熱すぎて燃え尽きそうな)俺たちは、とりあえず昼食をとることにした。
もちろん、最高級のレストランで。

「レント様、あのお店はどうでしょう? 『銀の匙』亭。王都でも三本の指に入ると評判のレストランです」

シルヴィアが指差した先には、白亜の壁と洒落たテラス席を持つ優雅な店構えがあった。
入り口には黒服のドアマンが立っており、庶民を寄せ付けないオーラを放っている。
以前の俺なら、店の前を通ることすら躊躇しただろう場所だ。

「いいな。行こうか」

俺たちが近づくと、ドアマンが一瞬怪訝な顔をした。
俺の服装は黒竜王の外套だが、一見するとただの黒いコートに見えるかもしれない。
だが、隣にいるシルヴィアの気品と、イグニスの圧倒的な美貌、そして何より俺の胸元に輝く『黒のギルドカード』(わざと見えるように下げておいた)を見て、態度は一変した。

「い、いらっしゃいませ! 特級英雄レント様とお連れ様ですね! お待ちしておりました!」

どうやらここにも情報は回っているらしい。
俺たちは最上階の個室、王都を一望できるテラス席へと案内された。

「最高級のコースを三人前。あと、おすすめのワインを」
「かしこまりました!」

運ばれてくる料理は、どれも絶品だった。
前菜の『幻獣のテリーヌ』、スープの『黄金芋のポタージュ』、メインの『霜降りバイソンのステーキ』。
どれも一口食べるごとに舌がとろけるような美味さだ。

「ん~っ! 幸せです……! こんなに美味しいお料理、亡国以来初めてです……」
「うむ、悪くない。だが昨日のヒドラのほうが魔力があって美味かった気もするが、これはこれで繊細な味わいじゃな」

二人の美女が美味しそうに食事をする姿を見ながら、俺はワイングラスを傾けた。
窓の外には、平和な王都の街並みが広がっている。
金があり、力があり、隣には最高の仲間がいる。
これ以上の幸せがあるだろうか。

「……それに比べて、あいつらはどうしてるかな」

ふと、思考の端に元パーティの連中のことがよぎった。
俺がこれほどの贅沢をしている今、彼らは一体どんな昼食をとっているのだろうか。
まあ、知ったことではないが、最高のスパイスとして想像してみるのも悪くない。



一方その頃。
王都の裏路地にある、薄汚れた安宿『ドブネズミの寝床』の一室。
腐った木材の臭いと、カビの臭いが充満する狭い部屋に、『栄光の剣』の四人はいた。

「……なんだよ、これ」

リーダーのヴァルスが、目の前に置かれた皿を見て呻いた。
そこにあるのは、黒ずんだパンの切れ端と、具の入っていない薄いスープだけ。
スープには正体不明の油が浮いており、酸っぱい臭いを放っている。

「文句言うなよ。今の俺たちの所持金じゃ、これが限界なんだ」

盗賊のジャミルが、硬いパンをかじりながら不機嫌そうに言った。
彼の前歯は、昨日のクエストでビートルに殴られた際に一本折れており、間抜けな音がする。

「なんで……なんで私たちがこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」

魔導師エリナが叫び、スプーンを投げつけた。
カラン、と乾いた音が響く。

「私の杖! 修理に出したら『魔力回路が焼き切れている。直すには金貨500枚かかる』って言われたのよ!? そんなお金、どこにあるっていうの!」
「俺の剣もだ……」

ヴァルスが頭を抱えた。
彼の愛剣『ドラゴンスレイヤー(偽)』は、刃こぼれが酷く、刀身にヒビが入っていた。
鍛冶屋に見せたところ、「こんなガラクタ、鉄屑として買い取るのが精々だ」と鼻で笑われたという。

「アリア、回復魔法で直せないのかよ!」
「無理よ……。私の魔力も、レントがいなくなってから全然回復しないの。それに、物の修復は聖女の専門外だわ……」

アリアは体育座りをして、虚ろな目で壁を見つめていた。
彼女の聖衣は薄汚れ、かつての清楚な輝きは見る影もない。

「それに、借金取りがうるさいんですよ」

賢者ガイルが、割れた眼鏡を指で押さえながらため息をついた。
彼もまた、装備の維持費や生活費のために高利貸しから金を借りていたらしい。

「Sランクパーティの信用があるから借りられましたが、このままだと利息だけで破産します。クエストを受けて稼がないと……」
「クエストだ!? 装備もボロボロ、ポーションも買えない状態で、どうやって戦えって言うんだよ!」

ヴァルスが机を叩く。
ボロい机はミシッと音を立てて傾いた。

「Eランクの薬草採取でもやるか? それともドブ掃除か? 俺たち『栄光の剣』がそんな真似できるかッ!」

彼らのプライドは、まだSランクのままだった。
しかし、現実は非情だ。
稼ぎがなければ食っていけない。
装備がなければ高ランクの依頼は受けられない。
完全に詰んでいた。

「……おい、聞いたか?」

ジャミルが忌々しげに口を開いた。

「レントの野郎、ギルドでとんでもない額を換金したらしいぜ」
「え……?」
「なんでも、ドラゴンを倒したとかで、報酬が100億ガルドを超えたって話だ」

「ひゃ、100億!?」

全員の声が重なった。
100億ガルド。
彼らが全盛期に稼いだ総額の何倍もの金額だ。

「嘘よ……嘘に決まってるわ! あいつがそんな……!」
「でも、ギルドの公式発表だ。あいつは今や『特級英雄』様で、国賓扱いらしいぞ」

ジャミルの言葉に、ヴァルスは絶句した。
怒りと、嫉妬と、そして後悔がごちゃ混ぜになった感情が胃の腑から込み上げてくる。

もし、レントを追放していなければ。
あのドラゴンの報酬は、自分たちのものになっていたかもしれない。
100億あれば、装備を新調し、城を建て、一生遊んで暮らせたはずだ。
それを、自分たちの手で捨ててしまった。

「ふざけるな……ふざけるなよ……!」

ヴァルスは爪が食い込むほど拳を握りしめた。

「あいつの金は、本来俺たちのものだ! 俺たちが育ててやったからこそ、あいつは強くなれたんだ! それを独り占めするなんて、許されるわけがねえ!」

論理もへったくれもない逆恨み。
だが、追い詰められた彼らにとって、それは縋り付くべき唯一の希望(妄想)だった。

「そうだ……会いに行こう」
「え?」
「レントに会いに行くんだ。そして、俺たちの取り分を請求する。慰謝料だ。あいつが勝手に抜けたせいで、俺たちはこんな被害を受けてるんだからな!」

狂気じみた提案に、しかし誰も反対しなかった。
エリナもアリアも、金があれば今の惨めな生活から抜け出せると、その一点だけで頷いた。

「そうね……。あいつ、昔から気が弱かったもの。私たちが強く言えば、きっと金を出すわ」
「情に訴えれば、戻ってきてくれるかもしれません……」

彼らはまだ知らなかった。
レントがもう、昔の「気の弱い荷物持ち」ではないことを。
そして、彼に近づくことが、火口に飛び込むよりも危険な行為であることを。



「……ん、なんか耳がかゆいな」

高級レストランで、俺は耳をかいた。
誰かが噂でもしているのだろうか。

「レント様、どうなさいました?」
「いや、なんでもない。デザートが来たみたいだ」

目の前に運ばれてきたのは、『天使の涙』と呼ばれる希少な果物を使ったゼリーだ。
透き通るような青色が美しい。

「さて、腹も満たしたことだし、午後の予定を決めようか」
「はい! どこへ行きますか?」
「住む場所を探そうと思う。さっきも言ったが、いつまでも宿暮らしじゃ手狭だしな」

俺はナプキンで口を拭い、二人に提案した。

「ギルドから貰った土地の権利書の中に、いくつか良さそうな物件があったんだ。そこを下見に行こう」
「おお! ついに城か!」
「レント様との愛の巣……ですね!」

二人が色めき立つ。
俺はポケットから数枚の羊皮紙を取り出した。
どれも王都の一等地、あるいは郊外の広大な敷地を持つ物件だ。

その中に、一枚だけ異彩を放つ権利書があった。

『旧王都の離宮跡地(広大な庭園と地下迷宮付き)』

「……地下迷宮付き?」

俺は眉をひそめた。
解説文を読むと、かつて王族が別荘として使っていた城だが、敷地内に古いダンジョンの入り口が見つかり、管理しきれなくなって放棄された物件らしい。
普通なら「事故物件」扱いだが、俺にとっては……。

「これ、最高じゃないか?」

ダンジョン付きのマイホーム。
つまり、自宅の庭でいつでも魔物素材が手に入り、レベル上げもできるということだ。
しかもイグニスのような元魔物にとっても、魔素が濃い環境は居心地が良いはずだ。

「これにしよう。場所は……王都の北、静かな湖畔の森の中か」
「素敵です! 湖畔のお城なんて、ロマンチックですね!」
「うむ、水浴びもできるな。レントよ、一緒に入るぞ」

話は決まった。
俺たちは会計を済ませ(白金貨一枚をチップとして置いていき、店員たちを震え上がらせた)、レストランを出た。

目指すは北の湖畔。
俺たちの新しい拠点となるべき場所へ。

移動はもちろん、徒歩ではない。
俺は街中で魔法を使うのを自粛すると約束したが、誰も見ていない路地裏から空を飛ぶくらいなら許されるだろう。

「【飛行付与(フライ)】。【光学迷彩(インビジブル)】」

俺たち三人はふわりと宙に浮き、姿を消して空へと舞い上がった。
眼下に広がる王都の街並み。
人々が蟻のように小さく見える。

「わあぁっ! 空を飛んでる! 私、初めてです!」
「ふふ、風が気持ち良いのう。竜の背に乗った気分はどうじゃ?」

シルヴィアとイグニスがはしゃいでいる。
俺は二人の手を引きながら、風を切って進んだ。

数分後。
眼下に美しい湖と、そのほとりに佇む古城が見えてきた。
石造りの堅牢な城壁。尖塔を持つ優美な本館。そして、手入れはされていないが広大な庭園。
少々古びてはいるが、俺の【修復付与】があれば新築同様にするのは一瞬だ。

「あれが俺たちの城か」
「大きいです! あそこでレント様と暮らすんですね!」
「悪くない物件じゃ。あそこの塔のてっぺんを妾の部屋にしよう」

俺たちは城の中庭へと降り立った。
雑草が生い茂っているが、空気は澄んでいて気持ちがいい。
そして何より、城の地下から漂ってくる濃密な魔力の気配。

「よし、まずはリフォームからだな」

俺は腕まくりをした。
この廃墟同然の古城を、世界最強の要塞兼、最高に快適なスイートホームに作り変える。
DIY(ドゥー・イット・ユアセルフ)、いや、DIM(ドゥー・イット・マジック)の時間だ。

「【範囲修復(エリア・リペア)】! 【清掃(クリーン)】! 【構造強化】! 【防犯結界】!」

俺が指を鳴らすたびに、城がみるみる姿を変えていく。
崩れていた壁が直り、雑草が消え美しい芝生に変わり、窓ガラスがピカピカに輝き出す。
さらに、インテリアも【錬金術】で生成した最高級家具に総入れ替えだ。

数分もしないうちに、そこには王宮すら凌ぐ豪華絢爛な城が完成していた。

「……魔法って、こんな使い方もできるんですね」
「お主、本当に何でもありじゃな」

呆れる二人をよそに、俺は満足げに城を見上げた。
これで拠点は確保した。
資金もある。名声もある。
あとは、この場所でスローライフを満喫しつつ、時々ダンジョンで遊べば完璧だ。

だが、そう簡単に平穏が訪れるわけもない。
この城の「地下迷宮」には、前の持ち主たちが放棄せざるを得なかった『厄介な住人』が残っていたし、王都からは俺の財産を狙ってハイエナたちが動き出していたからだ。

そして何より、元パーティの連中が、いよいよ俺への接触を図ろうと動き出していた。

第12話へ続く。

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