バッドエンドってなんですか、それはこっちのセリフですよ

soltier

第五話 ごはんとお洋服

「ん~!おいしい!これはなんてお肉なのでしょう?香辛料もよく効いてますね」

お世辞にもアドレントでの食事はあまりおいしくはない、魔王城にいたころは他国から輸入したおいしいものがあった分旅に出たときにひどい味に落胆したものだ

「いっそのことヴァレンも魔族のものにしてしまえば.....えへへへへ」

どうやってヴァレンを攻め落とすか考えていると、ヤミたんが口をはさんでくる

「何物騒なことおっしゃっているのですか?もともと古来からの友好国ですし、この国にも強力な神が住まわれているので簡単ではありません、というか損しかしませんよ」

また、神だ。
神はいつも私の邪魔をする。魔族を滅ぼしたり、思い通りにならないのはいつも神のせいだ
まぁ私が生まれた理由も神なのだから複雑な心境なのだけれど

「そっか~、個々の神様はどんなものなのですか?」

「豊穣豊作、命や自然を司るそうです」

いかにもすごそうな神様だった。そんな神様だったらアドレントにもほしいくらいだ

「うちにもそんなすごい神様がいてくれたらよかったですのに」

アドレントにも神様が信仰されているところがある。古い種族だとまだ信仰する文化があるようで、特に竜族が熱心だった

邪神、それが魔族たちの間で一番信仰されている神様だ。
ヤミたんの人形のもととなった魔王もその邪神の血族らしいけど、、血が途絶えていないのなら私にも神様の血が流れてるのかな?時が流れ過ぎて血筋が変わってるかもしれないからよくわかんないけどね

「えぇ、人間たちにも広く信仰される強い神だそうです。この森のどこかに世界樹なるものがあって、そこに宿っているとかなんとか」

「諜報部なのにあいまいなのですね」

「これでも世界中のあらゆることを調べていますがそれぞれの分野の専門家ではないので、ご容赦ください」

神様は私にとって重要な議題の一つだ
魔族を旅して神について聞きまわってもあいまいな答えや否定的なものが多かった
過去のアドレントでも幅広く信仰されていたのに、ある時期から信仰を毛嫌いしている、いや、何かの意思があるかのように不自然にアドレント全土から神の存在が否定されるようになった

まるで雲をつかむような存在が私を悩ませる。
神がどういった存在なのかは知っているが、なぜ今なお私たちを滅ぼそうとしてくるのか
人間たちの考えも理解するためにもちゃんといろいろ調べないとね

「っと考え事をしてたら食べ終わっちゃいました。もうちょっと味わえばよろしかったのに」

宿をとって適当なご飯屋さんに入っただけなのにこんなにおいしいものが食べれるなんて、エルフたちは全くうらやましい

「まずは買い物ですね、まだ、魔法袋に余裕はあるので、必要なものを買っていきましょうか、ヤミたんは目ぼしいものがあったら私に教えて頂戴」

「承知しました」

手分けして市場に出る
魔法袋の中はお金や衣服、そのほか生活に必要なものなどいろんなものが入っている
旅の途中で種類分けしたんだけど、テーナーと離れてからまたごちゃついてきたから整理しないとなぁ

まず必要なのは服ですね、今の格好は魔族たちになめられないよう派手なのですごく目立つ。いちいち魔法で注目を集めないようにするのも面倒だから早いところ溶け込める服が欲しい
お気に入りのもの以外は売ってしまうか、エルフの長のところに行ったときに預かってもらおうかな

「それにしても、エルフたちってなんでこんな露出が多いのでしょうか」

特に女性のエルフは露出が多い、人口が回復したとはいえあまり繁殖能力が強いとは言えないための工夫なのだろうか
それともこの森の蒸し暑い気候のせいか
魔族にも露出の高い服装のものはいるがそれは男性が多かったり体毛があるものばかりだった
エルフは見た目上人間とさほど変わりないのに

「さすがにこれを買ったらヤミたんに怒られそう」

仮にも王女だからね私、魔王城内でも派手ではあったが肌をさらすような恰好はしたことがない
まぁお父様が旅に出すくらいだからそのあたりはあまり気にしていないのだろう

あ、こっちの区画には一応露出が控えめの服が並んでいる。明らかに値段が高いけど

「あの、こちらは」

「あぁそれかい?あなたのような観光客やおめでたい方のためのものだよ。人間は肌をさらすのをあまり好かないからね」

店主の視線の先にはおなかの大きな女性客がいた
なるほど

「ではこちらを頂けないかしら」

「毎度あり」

お店の奥でそのまま着替えさせてもらえた。サイズも問題なさそう
やっと街を歩くのに魔法を使わないで済む
鏡で見せてもらったけど、私の見た目はあまり目立たないから服を地味にするだけで印象が大きく変わる
若干赤みがかった薄汚れた暗い灰色の髪に、埋もれるくらい小さな角
服を着たらその存在がわからないくらい小さな翼としっぽ
目立つのはせいぜいお父様譲りの真紅の瞳くらいだ
お兄様はきれいな白銀の髪にきれいな紺碧色の瞳を持っているのに、きっと見知らぬお母さま譲りなのだろう
それなのに立派な角や翼、魔族としての部分もしっかり継承しているのだから全くうらやましい

そんなことを考えていると、ヤミたんが返ってきた

「お似合いでございます。メーベル様」

「ありがとうございます。それで、良さそうなものは見つかりましたか?」

「はい、あちらには保存食を扱っているお店と、耳よりの情報を手に入れてきました」

ヤミたんがうれしそうに伝えてきたということはよほどいい情報らしい

「まずは保存食ですね、どこでしょうか」

「はい、こちらです」

魔法袋は見た目以上に物が入るだけなので持ち歩く食料は保存のきくものでなくてはならない

「とりあえず全種類買っていきましょうか」

アドレントじゃまず手に入らない上等な干し肉や魚の煮干し、乾燥木の実など、多種多様なものが売っていた
しかも調味料まで!

「ここにテーナーがいたらもっとおいしいものが食べれたのでしょうか」

テーナーは料理が本当に上手で、まずい食材からましなものを作れる
おいしい材料であれば食べたことのないようなおいしさのものが作れるだろう
やっぱり連れてくればよかったかな~

ちなみにヤミたんは食料がいらないというか味とかもわかんないらしい
かわいそうに
一通り買い物をして肝心の情報を聞くことにする

「で、耳よりの情報って何ですか?」

「はい、どうやら首都まで運航している乗り物があるそうです。最近できたようで諜報部でも具体的にどことどこを結ぶまではつかめていなかったのですが」

「竜族が力を貸しているのですか?」

「いえ、大人数を運ぶものではないので値段が張るのですが、メーベル様の資金力なら問題ないかと」

なるほど、庶民では扱えない、値段によっては商人ですら常用できないものなのだろう
でも私にとっては好都合だ

「それで、そのくらいの時間で行けるの?」

「半日で行けるそうです!」

徒歩であれば数日、魔物に襲われることも考えたら1~2週間かかる距離を半日なんて、本当に竜族がやっているようなものがあるらしい

「ではいったん宿に戻って明日出発するとしましょうか、というか、そんなものがあるなら保存食はいらなかったでしょう?」

「首都で買うのとでは値段が変わります。それにずっとこのような乗り物があるとは限りませんからね。帰るときに買うのがよろしいかと」

なんか旅慣れてるなぁ、ヤミたん

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