バッドエンドってなんですか、それはこっちのセリフですよ

soltier

第二話 反逆のシュヴァイツェ

お兄様にはいったんご退場を?いやでもただならぬ雰囲気だし、というかそもそもお兄様が勇者シュヴァイツェなんてどういうこと!?どうして教えてくれなかったのお父様
まぁここにはお父様がいるし最悪のことにはならない、よね?

「せっかく久しぶりに会ったのにひどいですお兄様」

「今は一刻を争う事態なのだ、後で埋め合わせはする」

一見普通に見えるお兄様はいつもの優しい表情だけれど、お父様への殺気があふれている

「一つ私から忠告しておきますよお兄様、暗殺をするなら真正面からではだめですよ?それと、言葉は魔法ですよ。敵の前で会話をしてはこんな風に.....」

お兄様にこの魔法を使いたくはなかったけれど仕方ない
お父様の言う通り勇者シュヴァイツェの生まれ変わりだとしたらこのままお兄様はお父様と戦うつもり?

「くっ何をしたメーベル!」

人格は残したまま、動きを止める

「ベーリエ、いやシュヴァイツェよ。貴様らには誤算があった、メーベルこそが我ら魔族の最終兵器。ここでお前の本当の最後にしてやる」

お父様が魔力を込める
圧倒的な存在感と力、魔族たちを長年まとめ上げて人間たちから守り抜いた

「メーベル!父上の圧政を知っているだろう!民は疲弊している。そして呪いによっておかしな言動までいうようになってしまったんだ。このままでは魔族が滅びてしまう!
勇者が死んで30年、私は魔族のために尽力した。その間父上は何をしていた?すっかり気が狂っている。だから今こそ時代を変える必要がある」

お兄様とお父様を戦わせるなんて女神ってやつはなんて性格が悪いのだろうか
でも、近頃のお父様の不振については私も思うところがある。
勇者を撃退して私たち兄妹が生まれてから目立った動きがない、なさすぎるのだ
人間たちとの小競り合いもなくならず、魔族内の内部分裂も起きている
お兄様はそんな魔族を立て直そうと動いているのは事実
だからこそ真意が見えない

「私はどうしたら.......いいのでしょうか」

私の心の乱れから魔法の効果が薄れる
そのすきにお兄様が動き出し、お父様へと魔法を放つ
迎え撃つようにお父様も魔法を放つ
戦いが始まってしまった

お兄様は私と同じく普通であったら魔族には扱うことのできない聖属性の魔法が使える
聖属性は女神の加護を受けたもの、またはその子孫しか扱うことができない
私やお兄様が使えるのは女神の呪いの影響?だとしたらお父様がおっしゃっている勇者の転生についても本物.....
う~ん、わからない
テーナーが言うには人間すべてではないが珍しいものでもないらしい
ってこんなこと考えるよりもこの戦いを止めないと!

「お父様、お兄様おやめください!まったくもう」

二人の間に入り、動きを止める。
抵抗力がものすごいお二人ですが、なんとか動きを止めるくらいはできます

「む、メーベルよなぜ我も止める」

「一度話し合いましょう!お父様はまだ話していないことがありますよね。お兄様も無策に真正面からお父様に挑むなんて、勇者みたいなことしないでください」

聡明なお兄様にしては軽率すぎるし、お父様も乗り気になって戦う気満々だし

「無策に見えるのであればよい、魔族というものは真正面から最大限の力を引き出して勝つものだ。それに勇者には仲間がいるではないか、一人で戦い抜いた魔将軍にも同じことが言えるのか?」

よりにもよって私の憧れのバグゼット様を引き合いに出すなんて、また動揺を誘っているのかな、それに含みのある言い方
やっぱり何かあるの?
お兄様って優秀だから敵に回すと恐ろしい

「同じ手は食らいませんよ、お兄様の狙いはわかりませんが争いは望んでいません。それよりお父様、話してください」

「話していないことか、ちょうどよいせっかく家族がそろっているんだ。真実を話そう」

「やっぱり何かあったのですね」

そう、私たちは3人家族。お母様のことは何も知らない
聖属性のことや呪いのことについては私たちの誕生に大きくかかわっているのだろう

「我が勇者を打倒した後の話をしようか」

それからお父様は勇者との戦いを語った
勇者パーティは5人
勇者、戦士、魔法使い、僧侶、裏切った魔族
最初に戦士を殺し、次に魔法使いの魔法を封じたのち殺した
その後魔族の魔力を奪い封印
そして、僧侶への攻撃をかばった勇者が死に、残った僧侶と封印された魔族は幽閉された

戦いが終わった後、お父様は呪いを受けて魔王城から出られなくなった
そこで自分の代わりとなる存在を欲したお父様は次の勇者に負けることのない、神の力に目を付けた

「まさかソフィナを!貴様よくも!!」

ソフィナというのが僧侶のことだとしたらお兄様はやはり勇者の生まれ変わり

「つまり私たちのお母様は人間だということですか?でも人間と交わるなんてこと」

「通常ではありえない種族の交わりを可能にする秘薬を使った」

私たちが特異な存在なのもそのせいなんですね
お兄様は怒り狂っているようで、完全に正気を失っている

「それで、お母様は今どこにいるのですか」

「ここからは言えぬ、それにベーリエがシュヴァイツェの生まれ変わりということはわかっただろう。さぁメーベルよ、勇者を殺せ、できないのであれば今度こそ我が引導を渡す」

結局その流れですか

「いえ、その必要はありませんよ。私の力を使えば」

私はお兄様の目を見る、精神干渉魔法はこの方がかけやすい
結局のところお兄様から勇者の記憶を消せばすべてが解決する
お兄様は魔族のために動いていた、ということは勇者であっても魔族だからと恨んでいるわけではないのだろう。それに魔族としての誇り、これは魔族の文化や歴史を知った影響かお父様の血の影響か
消えていないのは魔王への恨み

「いつものお兄様に戻ってくださいっ!?うわっ!」

魔法に集中していたせいで周りが見えていなかった
本来ではこんな場所にいるはずのない人が、私に攻撃してきた
すぐ対応しようとしたが、索敵したころにはすでにお父様と私しかこの部屋にはいなかった

「してやられたようだ。まったく我もメーベルも残虐さが足りないな」

「申し訳ありません」

私の中途半端な心がこんなことを招いてしまったのだろう。でもいきなりすぎて対応できませんよ

「メーベルには旅のついでに勇者の討伐も命ずる。まずは国内を回り、各地の困りごとを解決して欲しい。その際の方法は問わぬ、そのうち王として君臨するのだからいろいろとみていくといい、それが落ち着いたらエルフの国に赴きそこから人間の国々へ行き敵を知るのがよいだろう」

本当に旅をさせるのですね

「準備ができ次第出発致します」

「うむ、各地への通達はしておく。復興によりお金はあまりないがメーベルなら問題ないだろう」

テーナーのおかげでこの国の問題点はいろいろありすぎていることはわかる
お父様のお力がご健在のおかげで内乱にはなっていないものの、いつ起きていてもおかしくはない

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