第二十五章 猫眼

猫はとても神秘的な動物で、可愛くて愛嬌があり、頭が良くておとなしい。伝説によると、猫は9つの命を持ち、猫の目は人間が見えないものを見ることができる。身をもって経験しなければ、おそらく「猫の目で幽霊を見る」という言い方は私の頭の中で永遠にただの伝説のままだっただろう。

私はお茶を飲むのが大好きで、これはおそらく家庭の影響だろう。記憶の中で、祖父と父はいつも手元に茶碗を持っていた。

祖父が早く亡くなってからも、家でお茶を飲む人は減らなかった。なぜなら、その頃から私もお茶を飲み始めたからだ。中国の茶文化は深く広いが、残念なことに東夷の島国で発揚され、「茶道」と称されている。

神農氏が百草を試し、茶には体の機能を調節する様々な効能があることを発見した。1壷の鉄観音と新聞1部、あるいは充電が切れていない携帯電話さえあれば、私は茶屋で半日を過ごすことができる。そして今回の物語は、茶屋で始まる。

ある日、私は磁器口の茶屋に座り、携帯をいじりながら、川劇を耳にし、時々は川の景色も見ていた。そのまま半日をつぶすつもりだったが、茶屋のある女性が私をいつも意図的に見ていることに気付いた。彼女が私の容姿に惹かれているという要素を排除した後、私も時々彼女を見つめ始めた。

彼女は20歳前後で、大学生のような雰囲気がある。顔が白く、少し疲れているように見える。彼女が私が見ていることに気付くと、立ち上がって私のテーブルの前にやってきて、そして座り込んだ。

後でわかったが、彼女の名前には「娟」という字があり、重慶医科大学の学生だった。科学教育を受けた学生として、理論的には「鬼神」のような宿命論的なものの存在を信じることは許されないはずだ。しかし、皮肉なことに、10年以上科学理論を研究してきた人たちがしばしば科学が織りなす大きな網にはまり込んでしまう。

生まれつき異なる人でなければ、10年以上科学を学んできた人が口で「幽霊を見た」と言うのを想像することは難しい。彼女は私の前に座り、私を驚かせる言葉を口にした。彼女は天生の陰陽眼で、人間と幽霊の両方が見えると言った。私は最初は半信半疑で、「陰陽眼は陰陽眼だけど、何で私をずっと見つめているんだ？」と尋ねた。

彼女は言った。「さっきあなたのそばにいつも何かがいて、時にははっきりと見え、時には曖昧で、あなたが怖いらしく、あなたの周りを避けて歩いていたんです。」
だから私は思うんですが、もしあなたが正気があまりに旺盛でなければ、きっと道士さんなんです。私は道士ではありませんし、正気が旺盛であるとも言えません。やはり学識があると違うんですね。いくつかの手がかりを分析し出せるんです。
そこで、彼女が私の職業と多少関係があると思ったので、簡単に自分がどんな業界に属しているのか話しました。ところが、彼女は突然とても興奮し、ずっと私のような人を探していたと言い、私に彼女の話を最後まで聞いて欲しいと願いました。
川劇は分からず、携帯も飽きてしまい、その上この女の子が割り込んだので、彼女の話を聞いてもいいかなと思いました。真偽は別として、とにかく時間をつぶせることがあるのは嬉しいです。彼女は小さいころから陰陽眼を持っていました。たぶん子供のころは分からなかったので、あまり怖く感じなかったでしょう。だんだん大きくなるにつれて、他人には見えないものを見始めました。時々他人に話しても、誰も信じてくれませんでした。長い間、彼女は友達の目には神経質な人間になってしまい、いつも他人に分からないことを言っていました。そして彼女も徐々に他人の無視を慣れてしまいました。女の子なので、年を取るにつれてこうしたものを見ることがますます怖くなってきました。
大学に合格してから、彼氏を作り、ついに普通の女の子のような生活を送りたいと思い、彼氏と一緒に住むことにしました。ある夜、彼氏はどうしても眠れず、体がだるいと感じ、彼女を起こして、電気をつけて、自分の頭の上に蛾が飛んでいないか見て欲しいと言いました。彼女が彼氏を見るために振り返ったとき、突然顔色が変わりましたが、すぐに抑えました。
それからずっと彼氏を慰め、「何もないよ、勘違いだよ。早く寝なさい、早く寝なさい」と言い、それから彼氏を見ないように振り返り、寝ようとしても寝られませんでした。
翌朝になって、彼女はやっと彼氏に言いました。「昨日の夜、私が電気をつけなかった理由を知っていますか？あなたの頭の上に長い髪の女の人の頭が浮いていて、あなたを見つめていたからです！」
私は彼女を遮り、「頭だけ？」
彼女は「はい」と答えました。
私は「頭だけが浮いているんですか？」
彼女は「はい」と答えました。
これは私に2005年に処理した一件のことを思い出させます。あの幽霊はこの娘の話とまったく逆で、頭がなく、体だけがありました。その時の出来事を経て、私は師匠の手記に書かれていた「霊欠」に印象を残しました。霊欠は幽霊の一種で、北方では「断鬼」と呼ばれ、江浙福建一帯では「残麻子」と呼ばれ、数は極めて少なく、このような幽霊に出会うことは宝くじに当たるようなものです。
縁ですね。ただ、このような幽霊の由来と形成は比較的曲折して複雑で、必ずしも冤罪で死んだことが前提であり、また身体と魂が統一的に完全にならない表れです。つまり、人が死ぬとき、身体が完全ではないということです。
この種の幽霊は魂自体が不完全なので、妖怪の中でも「神経病」といえます。対象の選択に規則性がないだけでなく、必ず人を害する悪鬼です。
もしこの娘の言うこの幽霊が本当に霊欠なら、おそらく死んだとき、頭が切断されたに違いありません。彼女の言うことが私の興味を引きつけましたが、彼女に誤解を与えるのを恐れ、私は彼女の家に行って見たいという要求を我慢して言い出さなかった。
そこで、まず彼女の彼氏を誘って一緒に夕食を食べ、夜に家に行って見ることを提案しました。そこで、その晩磁器口でチキンマラを食べました。中国の典型的な食いしん坊として、私は感動の涙をこぼしました。彼女の家は大坪石油路の近くにあり、夕食の後、私は車で彼らを家に送りました。
これは古い住宅で、エレベーターがなく、廊下は音響式の白熱電球で、薄暗いです。3階の部屋の中で、彼ら二人は約10平方メートルの部屋を借りていました。
部屋にはベッドとパソコン以外は何もありませんでした。多分学生のカップルは皆こんな感じなのでしょう。私は彼女の家の飾り付けを見てみましたが、何かおかしなところは見つかりませんでした。しかし、羅針盤の指針からすると、この部屋には確かに魂の痕跡がありました。
ただ、その時私はその幽霊が部屋にいるかどうか確定できませんでした。
正確に判断できないため、私はその娘に、この数日は寝るときは電気を消さないようにと言いました。彼女の彼氏も明らかに彼女が以前言った頭の上に幽霊がいるという話で怖がっており、電気を消さないで寝ると何度も言っていました。そして、私は赤い紐で銅貨をつなぎ、彼らのベッドの頭とドアに掛けました。
この方法は「財路を敷く」と呼ばれ、言い換えれば金銭で幽霊をなだめ、自ら去って、もう悪さをしないように願うものです。
霊欠はランダム性が強く、この方法が必ずしも有効ではないかもしれませんが、少なくともこのカップルには少しの安心感を与えることができます。
そのまま1週間が過ぎ、何事もなく平安に過ごせました。生も私に電話をかけてきて、部屋の中には何もないと言いました。私はこんなに簡単に問題を解決できたと思い、心の中ではかなり嬉しかったです。

誰が知ろうと、また数日が経った後、女の子が電話をかけてきて、夜中に突然その亡霊がまた現れたと言いました。そして今回はもっと恐ろしく、まっすぐ逆さになって彼女の彼氏に向き合って近づいて見つめていました。彼女は声を出す勇気がなく、彼氏にも教える勇気がなく、私に電話をかけて、再度助けを求めるしかありませんでした。

私は金運を開く方法が役に立たないことに気づいた後、この問題が少し厄介だと感じ始めました。もともと私はやむを得ない手段を使ってその亡霊を消滅させるしかないと思っていましたが、女の子との2回目の会話の中で、女の子のおじいさんとおばあさんが数年前に相次いで亡くなり、両親は他の都市でビジネスをしていることを知りました。先日、夢の中でおばあさんに会い、おばあさんが女の子にベッドの向きを変えるように言ったそうです。起きた後はあまり気にしなかったし、彼女自身の体質が特殊で、亡霊を見ることは日常茶飯事になっていました。怖くても、やはり強くこの状態に適応してきました。

その時、私は再び彼女の家に駆けつけました。彼女の彼氏は家にいませんでした。私は赤糸と銅貨の侵食された痕跡を調べ、この問題は私には解決できないことに気づき始めました。

赤糸と銅貨はすべて五行の液体に浸けられたもので、これまで何度も私を助けてくれました。今では赤糸は白くなり、銅貨は緑がかっています。これはこの亡霊が私の対策を無視するだけでなく、逆に私に挑戦していることを表しています。以前にこの女の子に約束した以上、どうしても最後まで手伝わなければなりません。自分では解決できないので、高名な方に出馬してもらおうと決めました。そのため、この女の子は私と一緒に万州市に行かなければなりません。万州市は重慶の東に位置し、美しい小さな都市で、長江に隣接し、美しい青龍大滝があります。

女の子を説得した後、彼女は彼氏にメッセージを送りました。正午に彼氏が家に帰ったとき、私たちは万州市に向かいました。私は万州市に昔の知り合いがいます。60歳を超えるおばあさんです。おばあさんの苗字は吉で、地元では非常に有名な巫女です。

吉おばあさんはとても分かりやすいです。左目が普通の人と異なっています。その左目はまるで猫の目のように見えます。だから彼女はいつも茶色のガラスの眼鏡をかけています。彼女は古い羌の人の子孫で、家族は代々巫女を務めており、手法は独特です。

魂を引きつけ、亡霊を呼び出すのに蒲の葉を使います。昔、何度か会ったことがあります。彼女は決して亡霊を捕まえませんが、霊界と通じる能力があります。性格は明るく、人のために仕事をしていないときは、普通のおばあさんと同じように、腰太鼓を打ったり、麻雀を打ったり、広場でダンスを踊ったりします。生活には前向きで明るく、仕事には控えめで落ち着いています。

正午に重慶から車で出発し、万州市に着いたとき、もうすでに夕暮れ時分でした。

私は吉おばあさんに電話をかけ、簡単に来訪の目的を説明しました。彼女は私に翌日の朝にその女の子を家に連れていくように言いました。
2日目、約束通りに行った。ドアを開けた瞬間、吉おばあさんは言った。「小娟、小刘、おいでくださいましたね。」この言葉に、そのカップルはとても驚いた。なぜなら、私は吉おばあさんに彼らの呼び方を決して告げていなかったからだ。しかし、私はこれが彼女の常套手段だと知っている。まずあなたに驚きを与え、そうしないと後で疑い深くなるからだ。私たちは皆、商売をしているので、あなたが私を信じなければ、協力して仕事をするのはとても難しい。
吉おばあさんは私たちを部屋に招き、座らせ、小娟に事柄を再び完全に話し聞いた。吉おばあさんは少し眉をしかめた。なぜなら、私は彼女の考えが私と同じだと知っているからだ。このような霊欠に遭遇するのは、本当に厄介なことだ。
吉おばあさんは長い間考え、ついに魂を呼び、尋ねることを決めた。彼女の魂を呼ぶ方法は私とまったく違う。私は直接召喚するのに対し、彼女はそれを乗り移らせる。
吉おばあさんは小娟を寝室に連れて行った。私たちは別の流派なので、見るのも不便だった。だから、私は彼女がどうやってやっているのか知らない。約1時間後、小娟が泣きながら部屋から出てきた。小刘は彼女が泣いているのを見て、急いで何があったのか尋ねた。小娟はやっと部屋で起こったことを私たちに伝えた。
部屋に入った後、吉おばあさんは小娟に自分の生年月日を書かせ、そして小娟の髪の毛を一本引き抜き、水と一緒に飲み込んだ。数秒後、吉おばあさんは徐々に目を開け、口を開いて言った。「娟娟、元気ですか？」
小娟はこの言葉を聞いて驚いた。娟娟という名前は、彼女の両親と祖父以外の人は誰もこう呼ばない。両親はまだ健在で、ならば祖父が吉おばあさんに乗り移ったことになる。祖父は生前、彼女をとても可愛がっていた。吉おばあさんが声以外に、話し方の口調や態度が自分の祖父に非常に似ていることに気づき、恋しさから泣き出した。
祖父と少し話した後、吉おばあさんはまた祖母を呼び出した。祖母が彼女を呼ぶ方法は祖父とまた違う。祖母は彼女を娟児と呼ぶ。これら吉おばあさんに告げていないことから、小娟は完全に信じ込んだ。
しかし、彼女は祖父と祖母を呼び出す目的が何なのか分からないと言った。もしただの雑談だけなら、自分が現在直面している霊欠の問題を根本的に解決することはできない。
このとき、吉おばあさんが突然言った。「あなたの家には、まだ一人、あなたと話したい人がいます。」震えが起こり、口調が変わり、数言言った後、小娟は今度乗り移ったのが数年前に麻薬で暴死したいとこの霊欠は1998年に殺され、死んだ。死体を解体され、怨霊が長らく消えなかったため、ランダムに人を害するようになった。小娟の祖父、祖母、いとこはすべて彼女に殺された。全体の会話はばかばかしい内容で、大まかな意味は彼女自身が非常に憎しみを持っており、必ず人を殺さなければならないということ。祖父、祖母、いとこ以外にも、彼女は何度も小娟の彼氏と小娟を殺そうとしたが、小娟の両親が外で商売をしていて、普段も善いことをし、お寺参りをしているため、いつも手をつけられなかったという。彼女はこれが両親が彼女の命を救ったことだと言った。
そして小娟がなぜ祖父を殺さなければならなかったのかと尋ねたとき、それはまた無茶なことを言い始めました。吉おばあさんの能力はとても強く、彼女が霊欠を放さなければ、霊欠は離れることができません。
小娟が話し終えた後、吉おばあさんが私に入るように言っていることを教えてくれました。私は部屋に入り、吉おばあさんが髪を乱しているのを見ました。その様子は小娟が先ほど私に言った女の頭とよく似ていました。多くの質問も必要なく、赤糸で首を巻き、朱くさで額に印を付け、ガチョウの羽で目を覆い、指を切り、削りを吉おばあさんの人中に塗りました。これは吉おばあさんの体に付いていた霊欠を私が作った陣の中に閉じ込め、そして口訣を唱えて、安らかに彼女を旅立たせました。
その後、吉おばあさんは私と一緒に部屋を出て、小娟たちと一緒に座りました。
吉おばあさんは霊欠に取り付かれたとき、自分の過去を見たと言いました。悪事を行っていたけれども、生前は悪人ではありませんでした。彼女は生前ただの小さな職員で、夜勤の帰り道に人に脅され、まず侮辱されてから殺されました。不慮の災いで、誰でも怨念を持つでしょう。
幸いにもその事件はすぐに解決され、犯人も法の裁きを受けました。
死刑判決を受けましたが、処刑の数日前に自ら壁にぶつかって死んでしまいました。これもまた報いだと言えます。この事件も終わったと思っていたのですが、死体が解体され、一部の体がどこにも見つからなかったため、体と魂が不完全なまま、世の中をさまよい続けました。やがて、人間性を失い、悪鬼に堕ちました。
「生前は長く眠る必要がありません、死後は自然に長い眠りにつきます」と言う言葉があります。
もし人が死んでも安らかに眠れないなら、これは別の悲劇の始まりになることは決まっています。吉おばあさんに別れを告げた後、私たちは当日重慶に帰りました。道中、私は小娟に天生の陰陽眼は恥ずかしいことではないと言いました。あなたが霊や怪を見るとき、善悪があるけれども、これは私たち人間と同じです。あなたが怖がるのはあなたが見るものがとてもリアルだからです。善には必ず悪があり、原因には必ず結果があります。人を害するのは、つまり人間の醜い一面がもたらす悪い結果です。
その霊欠も言っていました。あなたとあなたの彼氏を傷つけなかったのは、あなたの両親があなたのためにたくさんの善いことをしてくれたからで、ポジティブなエネルギーとネガティブなエネルギーが衝突して打ち消し合うため、彼女は人を害することができなかったのです。
小娟を家に送り届けた後、私と彼女の彼氏は力を合わせてベッドの向きを変えました。その後、小娟は私の手伝いをして多くの難しいことを成し遂げました。やがて自分の陰陽眼が人を助けることができる才能だと感じるようになり、気持ちが晴れやかになりました。