ゲーム知識の使い方〜使い捨てキャラの抵抗録〜
19話 閑話
「お、久しぶりだね。元気にしてたね」
「お……いや待て断定かよ。まぁ元気だけどよ」
「それはそうだろうさ、君の話は僕にまで届くくらいだからね。剣技大会、優勝おめでとう」
どんな人脈してんのか分からねぇが、フィンテ子爵領から王都に戻る道中、丁度ウィトゥルム侯爵領に方向転換するならこの辺り、といった場所で通りすがりの商人に呼び出しの案内をされた。
明らかに見知らぬ商人なので警戒したが、向こうも「まさか本当にここで会うとは」と驚いていたので毒気が抜かれた。
聞けば「クラウス様からもし会ったらウィトゥルムに来るよう伝えてくれ」と言付かったそうだ。
……マジで会ってるから笑えねぇ。どんな予測能力してんだこいつ。
「それで、何の用だよ?」
今いるのはウィトゥルム侯爵家の邸宅だが、サロンに二人きりなので敬語はなし。スラム出身のガキと会うのに護衛を下げるのは普通ありえねぇと思うんだが。
まぁ一応この四年でクラウスをはじめ貴族共と話す時は敬語を使う事を覚えはしたが、あまり使ってないのが実情だ。
「ははっ、せっかちなのは変わらないね。まぁ君らしいし、話が早いのは僕も好きだよ」
そう笑って紅茶を一口飲み、いつもの微笑みのまま続ける。
「ちょっとした相談みたいなものさ。君達のところのペナ、カルタ、クーミをうちの家で働かせる気はないかい?」
「……何?」
予想外な言葉に目を丸くする。……てっきり転生者の話でもせがまれるかと思った。
俺の中のアイツもそう思って驚いてるようだが……アイツいわく、これはチャンスらしい。珍しくテンション上がってて脳内がうるせぇ。
現在、ペナ達はカレンのネフィカ商会で働いている。
ペナは事務、カルタは側近、クーネはメイドとしてだ。
しかしいくらネフィカ商会が大きな商会といっても平民の組織には変わりない。
だがクラウスの所で勤務するなら『貴族の侯爵家で勤務実績あり』という箔がつく、らしい。
……アイツって別世界で平民だよな?妙に理解度高くねぇ?
「あー……俺からすりゃあ願ってもない話だけどよ、それはなぜだ?使い潰すつもりだったり、同情や施しなら却下だ」
「僕がそんなつまらない真似するはずがないだろう?実は最近になって僕も本格的に政務を手伝う事になってね。それで僕個人に仕える優秀な人材が欲しいんだ」
「へぇ。まぁペナ達が優秀なのは同意するが……確かお前次男だろ?政務には関わらないって前言ってなかったか?」
クラウスはウィトゥルム侯爵家次男で、上に兄と姉が一人ずついる。特に姉は優秀だとか言ってた気がするんだが。
「よく覚えてるね。実は姉が学園を卒業して嫁いでね。それで兄のフォローをしていた姉の穴埋めが僕に回ってきたのさ」
「へぇ……ん?それって、お前の兄は大丈夫なのかよ?普通一人でやるイメージなんだが」
「はははっ!はっきり言うね。まぁニクスの言う通り、あまり優秀とは言えないね。ここだけの話、家令も苦労してるよ」
と、ここでアイツが不安そうに何か言ってるので、それをクラウスに聞いてみる。
「言えないなら言わなくていいが、もしクラウスの方が兄より結果を残したら、お前が当主になる事もあるのか?もしそうなるとこう、色々大変なんだろ?」
「……へぇ、今の質問は〝あの人〟からのものかな?」
「バレたか。よく分かるよな」
「そりゃあね。君に貴族の後継問題の機微が分かるとは思えないからね」
「っせぇよ、興味がねぇだけだ」
クラウスは、今となってはアイツが転生者だと知ってる唯一の人間であり、今は引っ込んでる事も知ってる。
その話をした甲斐あってか、クラウスが興味を持ったアイツがいなくなっても俺と付き合いを続けてくれてる。
たまにアイツから聞いた話を伝えると、いつものクールさをぶん投げてテンション上がるんだよな。ちょっと怖えんだよあれ。
「君だから話すけど他言無用で頼むよ?結論から言うと、可能性はある。しかも働き次第ではあるけど、可能性はかなり高いね」
「へぇ………で?長男派閥と揉める可能性があるってか」
「お、また〝あの人〟から聞いたのかな?まぁそうだね、長男以外の後継となると大抵揉めるものさ」
やっぱ貴族って面倒くさそうだな……スラムにいた頃は良い御身分だなとか思ってたけど、話を色々聞いた今となってはなりたいとは思えねぇ。
「ま、お前なら大丈夫だとは思うが、そんなとこにペナ達を送り込んで大丈夫なんだろうな?」
「君も過保護だね。勿論怪我や命の危機がないようにはするさ……それに何より、派閥争いや陰湿だったり迂遠な会話を躱したりするのも必要な経験だよ」
……つまり厳しい状況だからこそ成長出来るって事か。
それは正直分かる。ディウス達もスラムなんかに居たからこそあれだけ貪欲に頑張ってるんだろうし。
「……分かった。そういう事なら俺も賛成する。ただし本人達の意思次第だ」
「勿論分かってるさ。僕だって無理矢理連れてくる気なんかないよ。ただまぁ……間違いなく来るとは思うけどね」
「はっ、まぁな」
ペナ達だってババアの下で暮らし、カレンやセレス、ディウスやメメと同じく、あの環境から這い上がるべく貪欲に頑張っている……あいつらの同志だ。
戦闘職じゃないから度胸や根性がない訳じゃない。むしろ負けてねぇくらいだ。だから、こんなチャンスを前に尻込むような奴等じゃねぇのは分かってる。
だからこそクラウスも先に俺ーー最近形だけになってるが、一応ババアに任されて面倒を見る立場ーーに確認してきたんだろう。
「さて、王都に戻るんだろう?ペナ達に伝えてくれたまえ……あ、あとカレンにコレを渡しておいて」
中身を聞けば、ペナ達の雇用主としてのカレンに正式な引き抜きの申し込みの手紙みたいなモンらしい。
「おう、分かった」
その手紙を預かり、しばらく美味い菓子と茶を堪能しながら近況を話し合った。
なんだかんだで長い付き合いのクラウスは、貴族なのに不思議と話しやすいし話が合う。これも貴族の話術なのかね。
「それじゃそろそろ行くか。……あとペナ達を預かる以上、俺も気にかける。兄と揉めたりしてもし手が必要なら呼べよ」
「ふ、君の手を借りれるなら百人力だね。その時はありがたく、そして遠慮なく借りるよ」
下手な遠慮なんてしないのがクラウスだ。なんならたまに上手い事使おうとすらしてくる。
そのくせやり口が上手いせいかむしろ気が楽でいいし、その分何かしらで返してくるから腹も立たねぇしな。
貴族なんて嫌いだったが、この四年間でクラウスだけは信じてもいいと思えるようになった。
「っつーワケで、お前らに声が掛かった」
「行くっ!よしっ、これで王城勤務にまた近付いた!」
編み込んでまとめた茶髪を揺らし、大きな茶色の目を光らせるペナが拳を握る。
ちなみにペナはすくすく背が伸びて、女子の中だとカレンを抜いてメメの次に大きい。
顔立ちも幼さが抜けてきて、最近男にしつこく言い寄られると愚痴ってくるくらいには可愛らしく成長した。
元気で前向きな、非武闘派三人組のリーダー的ポジションだ。
「うん、ボクも是非。ふふ、またクラウスさんには気を遣ってもらっちゃったね」
ピシッと撫で付けた茶髪と、メガネの奥に見える知的な青い瞳を細めて笑うのがカルタだ。
こいつも随分と大きくなったけど、縦はともかく横が細い。つまりひょろ長い。まぁ執事だか側近だかをする上で必要以上に鍛える必要はないんだろうけどな。
大人しい口調だが生真面目で熱意のある我らが弟分である。
「だねぇ〜。えへへ、上のお兄ちゃんが二人いるみたいで嬉しいな〜」
ふわっふわな話し方をする、茶髪をひとまとめにして揺らし、くりくりした碧の目に好奇心を宿す孤児院組最年少のクーミ。
こいつも大きく……は微妙なところで、カレンと身長ワーストを競うおチビだ。
しかし雰囲気ふわふわのくせに機敏に動くし、体力もあるからずっと動き回ってる。
セレスと並ぶ我らが妹分で割と甘えっ子な気質だが、意外と黒いところもある。クラウスの影響なんだろうか……。
「あー、分かるっ。上のお兄ちゃん二人と、長女メメ姉、次女カレン姉、その次の三男がディウス兄で、次はあたし!」
「うーん、そこはボクじゃない?ペナってたまにそそっかしいしなぁ」
何の話をしてるんだか。
前にも言われたが、上の兄二人ってのは俺とクラウスの事らしい。勝手に兄弟にするな。
「ねぇニクス兄〜、ディウスの次は誰だと思う〜?」
「俺に振るなよ……あー、あれだ。ペナとカルタが双子で、その下にセレスとクーミでいいだろ」
くだらない話だが、適当に答えておく。濁すと長くなるんだよ、探究心というか知識欲みたいなのが強ぇんだよな。
「「双子かー」」
微妙そうな顔で見合わせる二人。息ぴったりじゃねぇか、それでいいだろ。
「ねぇねぇ、じゃあさ、私とセレスならどっちが上〜?」
「セレスじゃね?」
年齢的にも喋り方的にも。
「そっか〜。じゃあさ、まだまだニクス兄にはお世話をしてもらわないとね〜」
そう言いながら腰に腕を回してしがみついてくるクーミ。……こいつはまだまだ甘えっ子な部分が抜けないな。
「うわぁ、まーたやってるよクーミ」
「うん、ハンターの目をしてるよね」
何やらペナとカルタが仲良さげにこそこそ話してる。俺はかなり五感が鋭い方だが、こいつらも慣れたもので俺に聞こえない範囲を熟知してひそひそと話すようになった。
それを眺めてるとクーミが俺の手をとって頭に乗せてくるので、半ば無意識に撫でる。
結局カレンが来るまでそのままの体勢で撫で続けた。カレンが来てすぐ剥がされたが。
こんな甘えたがりを送り出して大丈夫か少し不安だが、説明を聞いたカレン含め全員が乗り気なのでクラウスの世話になる事は決定。
引き継ぎやらが済み次第、ウィトゥルム領に移動する事になった。
その際は俺やメメ、ディウス、カレンと全員一緒に護衛をかねて送る事になり、久しぶりに集まった事もあって道中は随分盛り上がった。
野営の時に仲間外れになったセレスがマギフォン越しに拗ねたのは言うまでもないだろう。
「お……いや待て断定かよ。まぁ元気だけどよ」
「それはそうだろうさ、君の話は僕にまで届くくらいだからね。剣技大会、優勝おめでとう」
どんな人脈してんのか分からねぇが、フィンテ子爵領から王都に戻る道中、丁度ウィトゥルム侯爵領に方向転換するならこの辺り、といった場所で通りすがりの商人に呼び出しの案内をされた。
明らかに見知らぬ商人なので警戒したが、向こうも「まさか本当にここで会うとは」と驚いていたので毒気が抜かれた。
聞けば「クラウス様からもし会ったらウィトゥルムに来るよう伝えてくれ」と言付かったそうだ。
……マジで会ってるから笑えねぇ。どんな予測能力してんだこいつ。
「それで、何の用だよ?」
今いるのはウィトゥルム侯爵家の邸宅だが、サロンに二人きりなので敬語はなし。スラム出身のガキと会うのに護衛を下げるのは普通ありえねぇと思うんだが。
まぁ一応この四年でクラウスをはじめ貴族共と話す時は敬語を使う事を覚えはしたが、あまり使ってないのが実情だ。
「ははっ、せっかちなのは変わらないね。まぁ君らしいし、話が早いのは僕も好きだよ」
そう笑って紅茶を一口飲み、いつもの微笑みのまま続ける。
「ちょっとした相談みたいなものさ。君達のところのペナ、カルタ、クーミをうちの家で働かせる気はないかい?」
「……何?」
予想外な言葉に目を丸くする。……てっきり転生者の話でもせがまれるかと思った。
俺の中のアイツもそう思って驚いてるようだが……アイツいわく、これはチャンスらしい。珍しくテンション上がってて脳内がうるせぇ。
現在、ペナ達はカレンのネフィカ商会で働いている。
ペナは事務、カルタは側近、クーネはメイドとしてだ。
しかしいくらネフィカ商会が大きな商会といっても平民の組織には変わりない。
だがクラウスの所で勤務するなら『貴族の侯爵家で勤務実績あり』という箔がつく、らしい。
……アイツって別世界で平民だよな?妙に理解度高くねぇ?
「あー……俺からすりゃあ願ってもない話だけどよ、それはなぜだ?使い潰すつもりだったり、同情や施しなら却下だ」
「僕がそんなつまらない真似するはずがないだろう?実は最近になって僕も本格的に政務を手伝う事になってね。それで僕個人に仕える優秀な人材が欲しいんだ」
「へぇ。まぁペナ達が優秀なのは同意するが……確かお前次男だろ?政務には関わらないって前言ってなかったか?」
クラウスはウィトゥルム侯爵家次男で、上に兄と姉が一人ずついる。特に姉は優秀だとか言ってた気がするんだが。
「よく覚えてるね。実は姉が学園を卒業して嫁いでね。それで兄のフォローをしていた姉の穴埋めが僕に回ってきたのさ」
「へぇ……ん?それって、お前の兄は大丈夫なのかよ?普通一人でやるイメージなんだが」
「はははっ!はっきり言うね。まぁニクスの言う通り、あまり優秀とは言えないね。ここだけの話、家令も苦労してるよ」
と、ここでアイツが不安そうに何か言ってるので、それをクラウスに聞いてみる。
「言えないなら言わなくていいが、もしクラウスの方が兄より結果を残したら、お前が当主になる事もあるのか?もしそうなるとこう、色々大変なんだろ?」
「……へぇ、今の質問は〝あの人〟からのものかな?」
「バレたか。よく分かるよな」
「そりゃあね。君に貴族の後継問題の機微が分かるとは思えないからね」
「っせぇよ、興味がねぇだけだ」
クラウスは、今となってはアイツが転生者だと知ってる唯一の人間であり、今は引っ込んでる事も知ってる。
その話をした甲斐あってか、クラウスが興味を持ったアイツがいなくなっても俺と付き合いを続けてくれてる。
たまにアイツから聞いた話を伝えると、いつものクールさをぶん投げてテンション上がるんだよな。ちょっと怖えんだよあれ。
「君だから話すけど他言無用で頼むよ?結論から言うと、可能性はある。しかも働き次第ではあるけど、可能性はかなり高いね」
「へぇ………で?長男派閥と揉める可能性があるってか」
「お、また〝あの人〟から聞いたのかな?まぁそうだね、長男以外の後継となると大抵揉めるものさ」
やっぱ貴族って面倒くさそうだな……スラムにいた頃は良い御身分だなとか思ってたけど、話を色々聞いた今となってはなりたいとは思えねぇ。
「ま、お前なら大丈夫だとは思うが、そんなとこにペナ達を送り込んで大丈夫なんだろうな?」
「君も過保護だね。勿論怪我や命の危機がないようにはするさ……それに何より、派閥争いや陰湿だったり迂遠な会話を躱したりするのも必要な経験だよ」
……つまり厳しい状況だからこそ成長出来るって事か。
それは正直分かる。ディウス達もスラムなんかに居たからこそあれだけ貪欲に頑張ってるんだろうし。
「……分かった。そういう事なら俺も賛成する。ただし本人達の意思次第だ」
「勿論分かってるさ。僕だって無理矢理連れてくる気なんかないよ。ただまぁ……間違いなく来るとは思うけどね」
「はっ、まぁな」
ペナ達だってババアの下で暮らし、カレンやセレス、ディウスやメメと同じく、あの環境から這い上がるべく貪欲に頑張っている……あいつらの同志だ。
戦闘職じゃないから度胸や根性がない訳じゃない。むしろ負けてねぇくらいだ。だから、こんなチャンスを前に尻込むような奴等じゃねぇのは分かってる。
だからこそクラウスも先に俺ーー最近形だけになってるが、一応ババアに任されて面倒を見る立場ーーに確認してきたんだろう。
「さて、王都に戻るんだろう?ペナ達に伝えてくれたまえ……あ、あとカレンにコレを渡しておいて」
中身を聞けば、ペナ達の雇用主としてのカレンに正式な引き抜きの申し込みの手紙みたいなモンらしい。
「おう、分かった」
その手紙を預かり、しばらく美味い菓子と茶を堪能しながら近況を話し合った。
なんだかんだで長い付き合いのクラウスは、貴族なのに不思議と話しやすいし話が合う。これも貴族の話術なのかね。
「それじゃそろそろ行くか。……あとペナ達を預かる以上、俺も気にかける。兄と揉めたりしてもし手が必要なら呼べよ」
「ふ、君の手を借りれるなら百人力だね。その時はありがたく、そして遠慮なく借りるよ」
下手な遠慮なんてしないのがクラウスだ。なんならたまに上手い事使おうとすらしてくる。
そのくせやり口が上手いせいかむしろ気が楽でいいし、その分何かしらで返してくるから腹も立たねぇしな。
貴族なんて嫌いだったが、この四年間でクラウスだけは信じてもいいと思えるようになった。
「っつーワケで、お前らに声が掛かった」
「行くっ!よしっ、これで王城勤務にまた近付いた!」
編み込んでまとめた茶髪を揺らし、大きな茶色の目を光らせるペナが拳を握る。
ちなみにペナはすくすく背が伸びて、女子の中だとカレンを抜いてメメの次に大きい。
顔立ちも幼さが抜けてきて、最近男にしつこく言い寄られると愚痴ってくるくらいには可愛らしく成長した。
元気で前向きな、非武闘派三人組のリーダー的ポジションだ。
「うん、ボクも是非。ふふ、またクラウスさんには気を遣ってもらっちゃったね」
ピシッと撫で付けた茶髪と、メガネの奥に見える知的な青い瞳を細めて笑うのがカルタだ。
こいつも随分と大きくなったけど、縦はともかく横が細い。つまりひょろ長い。まぁ執事だか側近だかをする上で必要以上に鍛える必要はないんだろうけどな。
大人しい口調だが生真面目で熱意のある我らが弟分である。
「だねぇ〜。えへへ、上のお兄ちゃんが二人いるみたいで嬉しいな〜」
ふわっふわな話し方をする、茶髪をひとまとめにして揺らし、くりくりした碧の目に好奇心を宿す孤児院組最年少のクーミ。
こいつも大きく……は微妙なところで、カレンと身長ワーストを競うおチビだ。
しかし雰囲気ふわふわのくせに機敏に動くし、体力もあるからずっと動き回ってる。
セレスと並ぶ我らが妹分で割と甘えっ子な気質だが、意外と黒いところもある。クラウスの影響なんだろうか……。
「あー、分かるっ。上のお兄ちゃん二人と、長女メメ姉、次女カレン姉、その次の三男がディウス兄で、次はあたし!」
「うーん、そこはボクじゃない?ペナってたまにそそっかしいしなぁ」
何の話をしてるんだか。
前にも言われたが、上の兄二人ってのは俺とクラウスの事らしい。勝手に兄弟にするな。
「ねぇニクス兄〜、ディウスの次は誰だと思う〜?」
「俺に振るなよ……あー、あれだ。ペナとカルタが双子で、その下にセレスとクーミでいいだろ」
くだらない話だが、適当に答えておく。濁すと長くなるんだよ、探究心というか知識欲みたいなのが強ぇんだよな。
「「双子かー」」
微妙そうな顔で見合わせる二人。息ぴったりじゃねぇか、それでいいだろ。
「ねぇねぇ、じゃあさ、私とセレスならどっちが上〜?」
「セレスじゃね?」
年齢的にも喋り方的にも。
「そっか〜。じゃあさ、まだまだニクス兄にはお世話をしてもらわないとね〜」
そう言いながら腰に腕を回してしがみついてくるクーミ。……こいつはまだまだ甘えっ子な部分が抜けないな。
「うわぁ、まーたやってるよクーミ」
「うん、ハンターの目をしてるよね」
何やらペナとカルタが仲良さげにこそこそ話してる。俺はかなり五感が鋭い方だが、こいつらも慣れたもので俺に聞こえない範囲を熟知してひそひそと話すようになった。
それを眺めてるとクーミが俺の手をとって頭に乗せてくるので、半ば無意識に撫でる。
結局カレンが来るまでそのままの体勢で撫で続けた。カレンが来てすぐ剥がされたが。
こんな甘えたがりを送り出して大丈夫か少し不安だが、説明を聞いたカレン含め全員が乗り気なのでクラウスの世話になる事は決定。
引き継ぎやらが済み次第、ウィトゥルム領に移動する事になった。
その際は俺やメメ、ディウス、カレンと全員一緒に護衛をかねて送る事になり、久しぶりに集まった事もあって道中は随分盛り上がった。
野営の時に仲間外れになったセレスがマギフォン越しに拗ねたのは言うまでもないだろう。
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