僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
#10 部活日和です(後編)
家庭科室に甘く芳醇な香りが広がる。少しするとコーヒーや紅茶の香りも加わり、雅なるお茶会に来たような感覚になる。
「では、いただきましょうか」
焼き上がった蒸しケーキはほのかなピンク色で春らしさを漂わせている。
一口頬張れば春の訪れを感じ、二口頬張れば春真っ盛りだ。飲み込んだ後は余韻に浸れる……そんな仕上がりだった。………まぁ、作ったのボクだけどね。ちょっと間を開けてからマイマグに口をつける。
「悠希ちゃんってカフェイン系は苦手なの?」
調理台を挟んで向こう側に座る希名子ちゃんが尋ねてきた。そう、ボクが飲んでいるのはホットココア……正直な話、紅茶もコーヒーも飲んだことがないのだ。う~ん、飲んでみようかな……。
「そんなことないと思うんだけどねぇ」
そうして喋っていると、
「失礼しまーす。悠希? 迎えにきちった」
ガラガラと扉が開けられ、現れたのは麻琴だった。
「お!! 君かな? 姫宮さんのフィアンセって!?」
フィアンセ!? なにそれ!?
「悠希がようやく素直になってくれたか……大丈夫、悠希のご両親なら理解してくれるよ」
何を言ってんだコイツ……。
「部長!? 私は部長に麻琴の話は一切してませんのに、なんで麻琴のことを!?」
麻琴の近く――というか教壇と扉の中間――にいた部長はボクのもとに駆け寄って、
「私の従妹が、ほら姫川さんと同じ四組なのよ。で、従妹から凄くユリユリしたカップルがいてねっていう話を聞いていてさ」
「ユリユリなんてしてません!!」
「まあ、いいや。入って入って」
いまいち聞いているのか分からないが、部長は麻琴を自然にボクの横に座らせた。
「これ悠希が作ったの? 美味しそうだね。いただきま~す」
麻琴は私の前にあった皿から蒸しケーキをつまみ、口にほうった。咀嚼して飲み込む音にドキドキしてしまう……何故だ。
「お、美味いな。流石だよ悠希」
麻琴はこっちを向いてニコリと微笑んだ。頬が紅潮している気がしてならない。なんで麻琴相手にこんな状態なんだ……。ボクは……。
「お、お粗末さま。ところで、陸上部の方は?」
麻琴の所属する陸上部は、というか運動部は門限ギリギリまで活動をしている。仮入部の頃は一緒に帰れたが、もう一緒に帰れる回数はメッキリ減るだろう……そう思っていたんだが……。
「一年生の娘が貧血で倒れて流れ解散になっちゃってさぁ……。暇だから来てみた」
そうなんだ。ま、今日だけだろう。
それからしばらくして、片付けを始める。使った食器類を洗い、水切り篭に置く。最後に窓の施錠を済ませ、挨拶をして下校。家庭科部は礼に始まり礼に終わるのです。
「う~ん、なんか微妙に陽の落ちた空っていいよねぇ」
麻琴が欠伸の後に伸びをしながら呟いた。確かに空が綺麗だ。雲の白や、空色と茜色…混ざったような紫に近い色。空を見上げていると、麻琴が囁くように言った。
「ま、空も綺麗だけど悠希が最高だよ」
―――――っ!!
ボクはなんとも言えない心地だった。顔が赤くなるのが見なくても分かる……。嬉しいような恥ずかしいような……とはいえ、相手は麻琴だ。
「麻琴なんかに褒められたって嬉しくなんかないんだからね!!」
無意識にボクは駆け出していた。赤みを帯びた顔は夕陽のせいにできても、このにやけた顔は隠せないから。
ま、インドアな私が陸上部の麻琴から逃げれる訳もないのにね。
そんなことすら気付けなくさせる……。これが、乙女心だったりして。沈む夕焼けを見ながら、そんな想いがよぎっていった。
「では、いただきましょうか」
焼き上がった蒸しケーキはほのかなピンク色で春らしさを漂わせている。
一口頬張れば春の訪れを感じ、二口頬張れば春真っ盛りだ。飲み込んだ後は余韻に浸れる……そんな仕上がりだった。………まぁ、作ったのボクだけどね。ちょっと間を開けてからマイマグに口をつける。
「悠希ちゃんってカフェイン系は苦手なの?」
調理台を挟んで向こう側に座る希名子ちゃんが尋ねてきた。そう、ボクが飲んでいるのはホットココア……正直な話、紅茶もコーヒーも飲んだことがないのだ。う~ん、飲んでみようかな……。
「そんなことないと思うんだけどねぇ」
そうして喋っていると、
「失礼しまーす。悠希? 迎えにきちった」
ガラガラと扉が開けられ、現れたのは麻琴だった。
「お!! 君かな? 姫宮さんのフィアンセって!?」
フィアンセ!? なにそれ!?
「悠希がようやく素直になってくれたか……大丈夫、悠希のご両親なら理解してくれるよ」
何を言ってんだコイツ……。
「部長!? 私は部長に麻琴の話は一切してませんのに、なんで麻琴のことを!?」
麻琴の近く――というか教壇と扉の中間――にいた部長はボクのもとに駆け寄って、
「私の従妹が、ほら姫川さんと同じ四組なのよ。で、従妹から凄くユリユリしたカップルがいてねっていう話を聞いていてさ」
「ユリユリなんてしてません!!」
「まあ、いいや。入って入って」
いまいち聞いているのか分からないが、部長は麻琴を自然にボクの横に座らせた。
「これ悠希が作ったの? 美味しそうだね。いただきま~す」
麻琴は私の前にあった皿から蒸しケーキをつまみ、口にほうった。咀嚼して飲み込む音にドキドキしてしまう……何故だ。
「お、美味いな。流石だよ悠希」
麻琴はこっちを向いてニコリと微笑んだ。頬が紅潮している気がしてならない。なんで麻琴相手にこんな状態なんだ……。ボクは……。
「お、お粗末さま。ところで、陸上部の方は?」
麻琴の所属する陸上部は、というか運動部は門限ギリギリまで活動をしている。仮入部の頃は一緒に帰れたが、もう一緒に帰れる回数はメッキリ減るだろう……そう思っていたんだが……。
「一年生の娘が貧血で倒れて流れ解散になっちゃってさぁ……。暇だから来てみた」
そうなんだ。ま、今日だけだろう。
それからしばらくして、片付けを始める。使った食器類を洗い、水切り篭に置く。最後に窓の施錠を済ませ、挨拶をして下校。家庭科部は礼に始まり礼に終わるのです。
「う~ん、なんか微妙に陽の落ちた空っていいよねぇ」
麻琴が欠伸の後に伸びをしながら呟いた。確かに空が綺麗だ。雲の白や、空色と茜色…混ざったような紫に近い色。空を見上げていると、麻琴が囁くように言った。
「ま、空も綺麗だけど悠希が最高だよ」
―――――っ!!
ボクはなんとも言えない心地だった。顔が赤くなるのが見なくても分かる……。嬉しいような恥ずかしいような……とはいえ、相手は麻琴だ。
「麻琴なんかに褒められたって嬉しくなんかないんだからね!!」
無意識にボクは駆け出していた。赤みを帯びた顔は夕陽のせいにできても、このにやけた顔は隠せないから。
ま、インドアな私が陸上部の麻琴から逃げれる訳もないのにね。
そんなことすら気付けなくさせる……。これが、乙女心だったりして。沈む夕焼けを見ながら、そんな想いがよぎっていった。
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