僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ

#3 Wake up sweet girl

 麻琴との買い物から一夜明けた朝のことだった。

  いつもよりは早く起床し、階段を降りて洗面所に向かう。

  今朝は不思議な感覚だ。身体全体は軽いのだが肩は重い……。昨日の荷物持ちで筋肉痛かな? 重いものを買った記憶はないのだが……。靴を買ったのだが、ブーツのような重いものではなく、サンダル系だった筈なのだが……。

  それに視点が低い気がする。10センチは違う気がする。

「ん、ん~」

 軽く伸びをしながら階段を降りきると珍しく母が台所に立っていたのだが、僕の顔を見ると途端に驚いた表情をした。春休みにしては早起きをしたが、驚くようなことではないだろうに。

  洗面所で顔を洗い、歯ブラシを取ろうとしたら……おや? 鏡に写っているのは女の子だ。僕の知らない女の子が何故に僕の家の洗面所に? 思わず顎に手をあてて考えようとしたら、鏡に写るその少女も顎に手をあてたのだ。そもそも、着ているジャージが僕のだ。てことは………つまり、僕!? この鏡の娘って僕!?

「ど、どういうことなの~!!」

 慌てて洗面所を飛び出す。今日ほど洗面所から居間の距離の短さに感謝した日はない。ごく僅かな時間で廊下を移動し、引き戸を力いっぱい開ける。……力なくなったなぁ。

「母さん!! どういうことになっているの!?」

 自分の耳に届く声が自分のではないことにようやく気付く。優しげで甘い可愛い声だ。

  母さんを問い質しても意味はないだろう……。でも、どうしたらいいのか全く分からない……。懊悩とする僕を余所に母さんはのんびりと引き出しを開け閉めしている。

「保険証とかアルバムを見てみたけど、姫宮悠希は女の子だと書いてあるのよ。にしても、背が低くなったねぇ」

 立ち上がった母さんが歩み寄ってくる。年齢を感じさせない大きな眸が目の前にある。こうも視線が近いということは……160を下回っているのか……。せっかく成長したのに……。

「それもそうだけど……本当に可愛いわね、あなた」

 ダメだ……この状況は。母さんが恍惚とした表情になりつつある……。しかし、ハッと意識を取り戻したようだ。どうしたのやら?

「服よ!! 新生悠希用の服を用意しなきゃ。採寸するわよ!! 脱いで脱いで」

 新生って……。未だに少年の魂が残っているためか母の前で脱ぐことに抵抗はあったが、母の機嫌が悪くならないうちに従った方が賢いと悟った。


「私より背は低いのに胸が……大きいなんて……辛いわ……。えー上から86の56の83ね。Eくらいかしら。Fでも……。でも、アンダーがなぁ……」

 僕の耳に届いたのはトップモデルみたいなスリーサイズだった。しかもグラビアの。髪も女の子仕様になっているみたいで背中をサワサワと擦ってきてくすぐったい……。でもすっこくいい香りがする……。小説やアニメだと、柑橘系だとか、花みたいな……なんて表現をされることがあるが、僕の鼻腔をくすぐるのはミルクみたいな匂いだ。

「少なくともこの家に悠希に合う下着がない……。うぅ、どうしよう……。あ、取り敢えずあれか!」

 唸っていた母さんはダッシュで二階へ上がり、すぐに戻ってきた。手には一着のワンピースが。

「下着なしでもギリギリ平気なワンピースだから、これを着て服を買いに出掛けましょ。裾は短いけど気にしないで。ゆったりとしたデザインだけど、今の悠希なら胸につっかかって落ちないでしょうに」

 微妙なセクハラ発言を受けながらもワンピースを着る。改めてキレイな鎖骨や豊満なバストに目がいく。男なら大興奮だが、徐々に精神が女の子化してきたのか、興奮とはかけ離れた心持ちだった。

  ワンピースは確かに胸に引っ掛かっている。そのせいか短い裾がさらに上がりミニワンピになりかけている。足がスースーする……。こんなん姉さんの悪ふざけで女装させられた時以来だ。すると二階から姉さんと夏希が降りてきた。姉さんなんて開口一番に、 

「その蠱惑的な可愛さの美少女は誰!?」

 なんて言うし、夏希は夏希で、

「この睫毛のバッサバッサ具合は兄さんだよ!!」

 なんて言い出す。いや、事実なんだけど……。むしろ事実であることの方が辛い……。

  母さんがチャラッと説明をし、皆も納得した。しかし、それでいいのか姫宮家……。そんなこんなで僕は昨日に続き駅前のデパートに買い物に行くことになった。

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