最強カップルの英雄神話~チート転生者と最強神姫がダンジョンを攻略して、四年後に破滅する異世界を救う物語!!~
高橋陽翔②
学校の制服に着替える。
袖に手を通すときの感触が、何だか懐かしい。
「これに着替えるのも、久しぶりだなぁ……」
つい半年前までは、毎日のように着ていたのだ。
感傷に浸るのも無理はない。
制服に身を包んだ僕は、何となくそのままにしていたカバンを持って、下の階へと降りた。
成長したのか、制服が少し小さくてキツイ。
右手に持ったカバンが階段を降りる度に、ガタガタと音を鳴らす。
あぁ……この感触も久しぶりだなぁ…………。
下の階に降りると、リビングに両親が居た。
お母さんは朝ご飯を作っていて、お父さんはスーツ姿で新聞を読みながらコーヒーを啜っている。
そんな、いつも通りの両親を見た僕は、ネクタイをギュッと締めて朝の挨拶をする。
「おはようございます。お母さん、お父さん……」
覚悟を決めて挨拶をした気が、どこか照れくささを残してしまった。
頬を赤くし、頭をポリポリとかく。
「おはよう、陽翔。……ズズズ」
お父さんは、僕の方を見ないで挨拶を返した。
今も、新聞を見ながらコーヒーを啜っている。
いつも通りのお父さんって感じで、安心する。
「あら、おはよう」
お母さんは、料理を作りながら挨拶を返した。
上目遣いで、僕のことを視界に捉える。
ガタッガタッ。
お母さんは口をポカーンと開け、菜箸を落とす。
「…………って、その格好どうしたの?! 陽翔!?」
制服に身を包んだ僕を見たお母さんは、絵に描いたような驚き方をした。
まるで、信じられない光景を見ているかのように……。
そんなお母さんは、僕の方にジリジリと近寄って来る。
「おいおいお母さん。そんなに慌ててどうした? そんなに変な格好をしているのか?」
お母さんの声に驚いたお父さんが、お母さんの方を向いて宥めようとした。
その表情は温かく、微笑んでいる。
何が何か分からない様子のお父さんは、自分の後ろをお母さんが通ったのと同時に、僕の方を見て同意を求める。
「別にいつものオタTだよなぁ? はる、と……っ!?」
ガコッ……。
僕の制服姿を見たお父さんは、コーヒーの入っているカップをテーブルに置き、立ち上がる。
「おいおいおいおいおい!! どうしたんだその姿?!」
何も言わず近づいて来るお母さんに加え、お父さんまでもが僕の方にジリジリと近寄って来る。
二人の足取りが蹣跚けてて、ちょっとだけ怖い。
「ちょっとだけさ、勇気出してみようと思って……さ」
両親から視線を外し、頬をポリポリとかく。
なんかこーゆーの、こそばゆくて恥ずかしいなぁ……。
「…………えっ?」
優しく、ぎゅっと抱かれた。
お父さんは、頭をガシガシと撫でる。
お母さんは、顔を自分の胸へと抱き寄せる。
嗅ぎなれた匂いがして、穏やかな気持ちになる。
心地良い温もりを全身に感じて、安心する。
肩に冷たい雫が滴り落ちて、くすぐったい。
僕は何も言わない。
お母さんもお父さんも、何も言わない。
何でも無い、ただの静寂が訪れた。
コーヒーの匂いがする。
作り途中の朝ご飯の匂いがする。
両親の胸の鼓動が聞こえる。
時計の針が動く音が聞こえる。
ほんの十数秒間続いた静寂は、両親の言葉に解けゆく。
「そっか……そっかぁ……よく頑張ったなぁ…………よく立ち上がったなぁ…………」
それは、お父さんの言葉だった。
苦労して苦悩して、痛くて、辛くて。
そんな、葛藤の末に起こした一歩目。
そのたった一歩が、どれだけ心憂いた先に得た、前に進む為の機会か。
立ち上がることすら出来なかった僕にとって、お父さんの言葉は心に響いた。
やばい、泣きそうだ。
でもここで泣いてしまったら、きっと、弱い自分に戻ってしまう気がする。
だから、涙をぐっと堪えた。
「もし、また何かあったら、お母さん達に言うんだよ……陽翔は私達の、大事な宝物なんだからね…………」
それは、お母さんの言葉だった。
半年前に同じことを言われたの、今でも覚えてる。
あのときのお母さんは今と真逆で、僕に対する後悔と懺悔の色が強かった。
どうして私は、息子の辛さを分かってやれなかったのだろうか。
どうして私は、息子の苦悩に気づいてやれなかったのだろうか。
どうして私は……どうして私は……どうして私は、──この子の母親なのに。
そんな風に、一晩中泣いていたのを知っている。
僕の弱さがお母さんを苦しめ、泣かせたのだ。
でも、今は違う。
そうだ、違うのだ。
だって今は、慶びの涙を流しているのだから。
よかった、本当によかった。
行動に移せる自分で、本当に、よかった。
「うん、ありがとう。僕、もう大丈夫だから。半年も待ってくれて、ありがとう…………」
そう言った僕は、歯を磨いて、朝ご飯を食べて、両親と話して、お母さんに制服を直して貰って、家を出た。
「行ってきます!」
「「行ってらっしゃい!!」」
僕は手を振って、歩を進めた。
後ろから声が聞こえてくる。
「元気に帰って来いよ!!」
「嫌なことがあったら、帰って来て良いからね!!」
やがて、両親の目の前から陽翔の姿が消えた。
両親の表現は、嬉しさと、少しの心配を孕んでいる。
両親はホッと一息をつくと、家の中へと入り、玄関の扉を閉める。
このときの二人は、まだ知らない。
最愛の息子の生きた姿を見るのが、──これで最期であることを。
―――
【世界観ちょい足しコーナー】
○主人公
名前:高橋・陽翔(タカハシ・ハルト)
年齢:18歳
性別:男
身長:175cm
体重:60kg
血液型:O型
誕生日:7月25日
︎主語は僕
︎最強にイケメン
︎サラサラ髪
︎黒髪黒目
︎まつ毛バシバシ
︎オタクTシャツ
︎ジャージパーカー
︎ジャージのズボン
︎優しくて温厚
︎アニオタのニート
『前の世界でのハルト』
マジで有り得んくらいのイケメン。だがニート。イケメンであるが故に、女子につけ狙われたり、女子が自分を巡って醜い争いをしまくった。それだけなら良かったのだが、陽斗は男にも性的に見られていたのだ。周りを腐女子が囲み、逃げ場が無くなった所を男にキスされそうに……。そのことから、自分の安寧を守れる空間は学校に無いと思い、引きこもることになった。そして完成したのが、「誰かの役に立ちたい」と「アニメの世界は良いなぁ」が口癖の、超絶イケメンのう〇こ製造機なのだ。
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