ダンジョン爆破計画!
第3話
「「最初はグー! じゃんけんポン!」」
全神経を集中させた俺のグーは、イグナのチョキを容易に破壊した。
俺たちは宝箱の前に立っている。辺りの草を踏み倒すように乱雑に置かれたその箱には、全ての冒険者の夢と希望がつまっている。
何が出るかはわからない。ガラクタかもしれない。それでも、俺たちはこの箱に魅了されてしまう。
「おーし、今回は俺があけるぞ。いいな」
手をチョキにしたままガックシとうなだれてるイグナが、「うー」と言葉にならない音で返事をする。
宝箱を開ける。この行為は、単なる記念以上の価値を秘めている。
「たのむぞ~、いいもん来てくれ!」
ダンジョンにはいくつもの不思議が存在するが、宝箱の存在は中でも特に不思議なものの一つだ。
宝箱は、人を見ているという。大抵は大したものは入っていないが、まれに出る貴重な品は、開けた人にとって必要なものが出やすいのだ。剣士には剣が、魔術師には杖が。商人が開けて、魔法のそろばんが手に入ったという言い伝えもある。
「リクはなにが欲しいんじゃ?」
いつの間にか元気を取り戻したイグナが、そわそわした様子で宝箱を見ている。
「かっちょいい剣とかがいいかな。ルークのアニキみたいな魔法戦士になりたい」
「いまのピッケルのほうが、おぬしには似合うとおもうがのう」
「余計なこというな! 宝箱に聞かれたらどうするんだよ! 宝箱様、どうか俺に最強の剣を!」
地面に膝をついて、ひとしきり宝箱を撫でまわしたあと、ゆっくりと蓋に手をかけた。
「おお! 開けた瞬間、中が光ったぞ! なんじゃ! なにがはいっとったんじゃ!」
出てきたのは、一冊の小さな本だった。分厚い革装丁の本で、片手で持てるほどの大きさ。表紙にはシンプルな草花の模様が刻まれている。使い込まれているような質感で、革に擦り切れた箇所があり、角が少し丸くなっている。
「うん? なんだこれ? 手帳?」
「残念、武器じゃなかったの。中を開いてみい。宝の地図かもしれん」
少し期待外れだったのは間違いないが、とりあえず開いてみる。
表紙をめくり、裏表紙を見たとき、俺は目を疑った。
「なにこれ、日本語じゃん」
そこには日本の言葉で書かれた使い方が記されていた。
「その、日本というやつ。久々に聞くのう。リク、最近はあんまり日本の話をしとらんかったのに」
そういって、イグナは俺の手元の手帳を覗き込む。
幼馴染のイグナには、昔から日本の話をたまにしていた。あまり興味がないのか、聞きながら寝てたりするから最近は話すことをやめていた。俺もこの世界に馴染んで、日本のことを思い出す機会も少し減ったしな。
それでも、久々に見た日本語の文字は、驚くほど自然に読めた。案外、忘れないもんだね。十数年ぶりの日本語なのに。
「ふむ? これが日本語なのか? わしは文字は多くは読めんが、町で見る文字とそう変わらんようにおもうが」
「はあ? 全然違うだろ。何言ってんだよ」
「お、ここは少し読めるの。なになに。この、ずかんは、あなたには、つかえません。もちぬしに、おかえし、ください。なんじゃこりゃ?」
「なんだ? どういうことだ? 俺とイグナで違うものみてるのか?」
見る人によって書かれた内容が違うのだろうか。とにかく、何かしらの魔法のアイテムであることは確かなようだ。
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これは、君の冒険をさらに充実させる、「万物図鑑」だ! さぁ、アイテムをどんどん登録して、君だけの図鑑を埋めていこう!
〇アイテムの登録方法
登録したい植物、鉱石、魔物素材をページに挟んで、ぐっと押し込んでみてくれ!図鑑が「任せろ!」とばかりに素材を吸い込み、新規のページを作ってくれるぞ! 特徴や効能をメモして、君だけのオリジナル図鑑をつくるんだ!
〇目次ページから検索
欲しい素材の名前を目次ページでポンっと押すと、その素材が収められているページにビューンと飛べる!「植物」「鉱石」「魔物素材」としてきっちり分類されてるから、迷うことなし!
〇高次元空間での素材取り出し
高次元空間にアクセスするには、ページを開いて素材名をトントン叩くだけ!あっという間に素材の出し入れできるぞ!
〇フリースペースの使用方法
図鑑に登録・収納できるのは素材やアイテムだけだ! けち臭い? もっといろんなものを収納したい? 仕方ないな。特別に、最後の10ページはフリースペースにしよう。フリースペースに荷物を入れて、快適な冒険者ライフを!
フリースペース活用!冒険に必要な荷物をまとめて収納!
〇荷物の収納方法
ページを開いて、入れたい荷物を図鑑に向けて軽く押し込むだけ!すぐに収納完了!タグも付けておくと、後で見つけやすいよ。
〇荷物の取り出し方
必要な荷物のページを開いて、ぐににっと押すと、荷物が「はい、どうぞ!」って感じで出てくるよ。呼び出したい荷物の名前を呟いて取り出すこともできる! スマートでかっこいいかも!
〇緊急用の「お気に入り」設定
頻繁に使うものはページの隅に小さく「お気に入り」と書き込んでおこう。お気に入りと呟くだけで、必要な荷物が素早く出てきて便利だよ!
以上が「万能図鑑」の説明だ! いろんなアイテムを登録してくれよ!
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まどろっこしく分かりづらい説明を読んで、俺は頭を抱えた。
「……なんかとんでもないことが書いてあるな」
文体がウザいのはさておき、書いてある通りの性能ならば、驚異的な性能だ。要は、用途が偏ったマジックバックみたいなものだろうか。
フリースペースの容量にもよるだろうが、俺たちの冒険が有利になることはまちがいない。
「イグナ、これ、大当たりかもしれないぞ」
「いいのう。ずるいのう。最初に開いた人しか使えないアイテムなんてあるとは、考えたことがなかったわ」
何度イグナがこの図鑑を開こうとしても、開くことができなかった。最初に開いた俺が所有者として登録されたのだろうか。
イグナは拗ねたような、不満タラタラのまなざしでこっちを見ている。
「そう落ち込むなよ。ほら、次に宝箱見つけたら、イグナが開けていいから」
「ほんとじゃの! 約束じゃ!」
いままでの落ち込みようが嘘のように、ぱっと笑顔になる。
はめられた。イグナは言質を取りたかっただけのようだ。
「はあ、まったく。まあ、次の宝箱がいつになるやらわからんがな」
「このダンジョンでもう一個宝箱をみつけるまで、わしは帰らんぞ!」
そういうと、イグナは飛び跳ねるようにダンジョンの奥へと駆けていった。
「ぎゃっ!!!!」
次に見たのは、落とし穴の底で泥まみれになっている姿だった。
「リク~! 助けてくれ~!」
やはり、イグナは‘‘よほどのバカ‘‘だったようだ。
イグナの落ちた落とし穴は、極めて単純な構造をしたものだった。
道端に直径一メートル、深さ2、3メートルほどの穴が掘ってあるだけである。穴の上に何かかぶせてあるわけでもなく、穴の底にとげなどが設置されているわけでもない。正真正銘、ただの穴である。
出来立てのダンジョンなので、それほど凝った罠があるとは思わなかったが、ここまでひどいとは思わなかった。というか、これは罠と呼んでいいものなのか。これに引っかかったイグナは、罠に引っかかったといっていいのか。
「あきれたよ。なにやってんだイグナ」
イグナは少し恥ずかしかったのか、顔を赤らめキッとこちらをにらむ。
「はやく引きあげんか! 手を貸せ!」
土のついた手を軽く払い、イグナは手を伸ばす。俺も胸を地面につけるようにして、手をさしだす。
「おい、イグナ。もうちょっと、手を、伸ばして」
「これが限界じゃ! リクこそ、もっと伸ばせ! 肩を脱臼させてみたらどうじゃ?」
「無茶言うな! あ、あとちょっと。もっとジャンプしろ!」
イグナがジャンプした衝撃で、ボンと破裂音がした。イグナのつなぎの右ポケットのなかで、爆弾の素材であるはじけ礫が暴発したのだ。
「いたっ!」
「あっ!」
はじけ礫の衝撃派はそれほど強くないし、量も少量。また、イグナのポケットは色んなものを詰め込めるように丈夫につくられているため、イグナは無事だろう。
無事じゃないのは、落とし穴の壁のほうだった。もともと、強度が弱く不安定だったのだろう。穴のふちから、俺の体重に耐えられなくなるように、土砂崩れの容量で崩れていった。
「んっぎゃ! 重い!」
イグナを下敷きにしたので俺は無事だったが、イグナはさらに土まみれになってしまった。
「おう。わるいな。イグナが下敷きになったおかげで助かったよ」
「リクのバカあほまぬけ! 乙女の上にのしかかるとは何事じゃ!」
「おい。それよりほら、みろよ」
「それよりとはなんじゃ! わしを下敷きにしたことより大事なことがあるか!」
「いいから見ろって!」
崩れた穴のふちは、土砂がつもり、なだらかな傾斜のようになって、穴の上へと続いていた。
そして、崩れたことによって新たに露出した場所には、赤黒い岩が所狭しと並んでいる。
爆裂岩。強力な爆弾の材料だ。
「お、おお、お。お宝じゃーーーー!」
イグナは目を大きく見開いて、その岩を十秒ほど眺めた後、せきを切ったように大きな声でさけんだ。
こちらをさっと振り向く。
俺たちは満面の笑みで、ハイタッチをした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
リクメモ!(※リクが転生してから書いている、素材の簡易メモです)
爆裂岩
レア度:★3
分類:ベース素材
説明:
ダンジョン内で採掘される、爆弾の材料。水分に反応して爆発する。赤黒い岩のような見た目で、拳ほどの大きさのものが多い。中規模の爆発を引き起こし、単純な破壊に適している。表層には見られないため、入手にはダンジョンでの掘削作業が必須となる。
注意:取り扱いには十分注意すること。暴発するとやけどでは済まない。
ひとこと:危険物のため、流通が制限されている。購入には許可証が必須なので、希少価値以上に入手難度が高い。
全神経を集中させた俺のグーは、イグナのチョキを容易に破壊した。
俺たちは宝箱の前に立っている。辺りの草を踏み倒すように乱雑に置かれたその箱には、全ての冒険者の夢と希望がつまっている。
何が出るかはわからない。ガラクタかもしれない。それでも、俺たちはこの箱に魅了されてしまう。
「おーし、今回は俺があけるぞ。いいな」
手をチョキにしたままガックシとうなだれてるイグナが、「うー」と言葉にならない音で返事をする。
宝箱を開ける。この行為は、単なる記念以上の価値を秘めている。
「たのむぞ~、いいもん来てくれ!」
ダンジョンにはいくつもの不思議が存在するが、宝箱の存在は中でも特に不思議なものの一つだ。
宝箱は、人を見ているという。大抵は大したものは入っていないが、まれに出る貴重な品は、開けた人にとって必要なものが出やすいのだ。剣士には剣が、魔術師には杖が。商人が開けて、魔法のそろばんが手に入ったという言い伝えもある。
「リクはなにが欲しいんじゃ?」
いつの間にか元気を取り戻したイグナが、そわそわした様子で宝箱を見ている。
「かっちょいい剣とかがいいかな。ルークのアニキみたいな魔法戦士になりたい」
「いまのピッケルのほうが、おぬしには似合うとおもうがのう」
「余計なこというな! 宝箱に聞かれたらどうするんだよ! 宝箱様、どうか俺に最強の剣を!」
地面に膝をついて、ひとしきり宝箱を撫でまわしたあと、ゆっくりと蓋に手をかけた。
「おお! 開けた瞬間、中が光ったぞ! なんじゃ! なにがはいっとったんじゃ!」
出てきたのは、一冊の小さな本だった。分厚い革装丁の本で、片手で持てるほどの大きさ。表紙にはシンプルな草花の模様が刻まれている。使い込まれているような質感で、革に擦り切れた箇所があり、角が少し丸くなっている。
「うん? なんだこれ? 手帳?」
「残念、武器じゃなかったの。中を開いてみい。宝の地図かもしれん」
少し期待外れだったのは間違いないが、とりあえず開いてみる。
表紙をめくり、裏表紙を見たとき、俺は目を疑った。
「なにこれ、日本語じゃん」
そこには日本の言葉で書かれた使い方が記されていた。
「その、日本というやつ。久々に聞くのう。リク、最近はあんまり日本の話をしとらんかったのに」
そういって、イグナは俺の手元の手帳を覗き込む。
幼馴染のイグナには、昔から日本の話をたまにしていた。あまり興味がないのか、聞きながら寝てたりするから最近は話すことをやめていた。俺もこの世界に馴染んで、日本のことを思い出す機会も少し減ったしな。
それでも、久々に見た日本語の文字は、驚くほど自然に読めた。案外、忘れないもんだね。十数年ぶりの日本語なのに。
「ふむ? これが日本語なのか? わしは文字は多くは読めんが、町で見る文字とそう変わらんようにおもうが」
「はあ? 全然違うだろ。何言ってんだよ」
「お、ここは少し読めるの。なになに。この、ずかんは、あなたには、つかえません。もちぬしに、おかえし、ください。なんじゃこりゃ?」
「なんだ? どういうことだ? 俺とイグナで違うものみてるのか?」
見る人によって書かれた内容が違うのだろうか。とにかく、何かしらの魔法のアイテムであることは確かなようだ。
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これは、君の冒険をさらに充実させる、「万物図鑑」だ! さぁ、アイテムをどんどん登録して、君だけの図鑑を埋めていこう!
〇アイテムの登録方法
登録したい植物、鉱石、魔物素材をページに挟んで、ぐっと押し込んでみてくれ!図鑑が「任せろ!」とばかりに素材を吸い込み、新規のページを作ってくれるぞ! 特徴や効能をメモして、君だけのオリジナル図鑑をつくるんだ!
〇目次ページから検索
欲しい素材の名前を目次ページでポンっと押すと、その素材が収められているページにビューンと飛べる!「植物」「鉱石」「魔物素材」としてきっちり分類されてるから、迷うことなし!
〇高次元空間での素材取り出し
高次元空間にアクセスするには、ページを開いて素材名をトントン叩くだけ!あっという間に素材の出し入れできるぞ!
〇フリースペースの使用方法
図鑑に登録・収納できるのは素材やアイテムだけだ! けち臭い? もっといろんなものを収納したい? 仕方ないな。特別に、最後の10ページはフリースペースにしよう。フリースペースに荷物を入れて、快適な冒険者ライフを!
フリースペース活用!冒険に必要な荷物をまとめて収納!
〇荷物の収納方法
ページを開いて、入れたい荷物を図鑑に向けて軽く押し込むだけ!すぐに収納完了!タグも付けておくと、後で見つけやすいよ。
〇荷物の取り出し方
必要な荷物のページを開いて、ぐににっと押すと、荷物が「はい、どうぞ!」って感じで出てくるよ。呼び出したい荷物の名前を呟いて取り出すこともできる! スマートでかっこいいかも!
〇緊急用の「お気に入り」設定
頻繁に使うものはページの隅に小さく「お気に入り」と書き込んでおこう。お気に入りと呟くだけで、必要な荷物が素早く出てきて便利だよ!
以上が「万能図鑑」の説明だ! いろんなアイテムを登録してくれよ!
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まどろっこしく分かりづらい説明を読んで、俺は頭を抱えた。
「……なんかとんでもないことが書いてあるな」
文体がウザいのはさておき、書いてある通りの性能ならば、驚異的な性能だ。要は、用途が偏ったマジックバックみたいなものだろうか。
フリースペースの容量にもよるだろうが、俺たちの冒険が有利になることはまちがいない。
「イグナ、これ、大当たりかもしれないぞ」
「いいのう。ずるいのう。最初に開いた人しか使えないアイテムなんてあるとは、考えたことがなかったわ」
何度イグナがこの図鑑を開こうとしても、開くことができなかった。最初に開いた俺が所有者として登録されたのだろうか。
イグナは拗ねたような、不満タラタラのまなざしでこっちを見ている。
「そう落ち込むなよ。ほら、次に宝箱見つけたら、イグナが開けていいから」
「ほんとじゃの! 約束じゃ!」
いままでの落ち込みようが嘘のように、ぱっと笑顔になる。
はめられた。イグナは言質を取りたかっただけのようだ。
「はあ、まったく。まあ、次の宝箱がいつになるやらわからんがな」
「このダンジョンでもう一個宝箱をみつけるまで、わしは帰らんぞ!」
そういうと、イグナは飛び跳ねるようにダンジョンの奥へと駆けていった。
「ぎゃっ!!!!」
次に見たのは、落とし穴の底で泥まみれになっている姿だった。
「リク~! 助けてくれ~!」
やはり、イグナは‘‘よほどのバカ‘‘だったようだ。
イグナの落ちた落とし穴は、極めて単純な構造をしたものだった。
道端に直径一メートル、深さ2、3メートルほどの穴が掘ってあるだけである。穴の上に何かかぶせてあるわけでもなく、穴の底にとげなどが設置されているわけでもない。正真正銘、ただの穴である。
出来立てのダンジョンなので、それほど凝った罠があるとは思わなかったが、ここまでひどいとは思わなかった。というか、これは罠と呼んでいいものなのか。これに引っかかったイグナは、罠に引っかかったといっていいのか。
「あきれたよ。なにやってんだイグナ」
イグナは少し恥ずかしかったのか、顔を赤らめキッとこちらをにらむ。
「はやく引きあげんか! 手を貸せ!」
土のついた手を軽く払い、イグナは手を伸ばす。俺も胸を地面につけるようにして、手をさしだす。
「おい、イグナ。もうちょっと、手を、伸ばして」
「これが限界じゃ! リクこそ、もっと伸ばせ! 肩を脱臼させてみたらどうじゃ?」
「無茶言うな! あ、あとちょっと。もっとジャンプしろ!」
イグナがジャンプした衝撃で、ボンと破裂音がした。イグナのつなぎの右ポケットのなかで、爆弾の素材であるはじけ礫が暴発したのだ。
「いたっ!」
「あっ!」
はじけ礫の衝撃派はそれほど強くないし、量も少量。また、イグナのポケットは色んなものを詰め込めるように丈夫につくられているため、イグナは無事だろう。
無事じゃないのは、落とし穴の壁のほうだった。もともと、強度が弱く不安定だったのだろう。穴のふちから、俺の体重に耐えられなくなるように、土砂崩れの容量で崩れていった。
「んっぎゃ! 重い!」
イグナを下敷きにしたので俺は無事だったが、イグナはさらに土まみれになってしまった。
「おう。わるいな。イグナが下敷きになったおかげで助かったよ」
「リクのバカあほまぬけ! 乙女の上にのしかかるとは何事じゃ!」
「おい。それよりほら、みろよ」
「それよりとはなんじゃ! わしを下敷きにしたことより大事なことがあるか!」
「いいから見ろって!」
崩れた穴のふちは、土砂がつもり、なだらかな傾斜のようになって、穴の上へと続いていた。
そして、崩れたことによって新たに露出した場所には、赤黒い岩が所狭しと並んでいる。
爆裂岩。強力な爆弾の材料だ。
「お、おお、お。お宝じゃーーーー!」
イグナは目を大きく見開いて、その岩を十秒ほど眺めた後、せきを切ったように大きな声でさけんだ。
こちらをさっと振り向く。
俺たちは満面の笑みで、ハイタッチをした。
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リクメモ!(※リクが転生してから書いている、素材の簡易メモです)
爆裂岩
レア度:★3
分類:ベース素材
説明:
ダンジョン内で採掘される、爆弾の材料。水分に反応して爆発する。赤黒い岩のような見た目で、拳ほどの大きさのものが多い。中規模の爆発を引き起こし、単純な破壊に適している。表層には見られないため、入手にはダンジョンでの掘削作業が必須となる。
注意:取り扱いには十分注意すること。暴発するとやけどでは済まない。
ひとこと:危険物のため、流通が制限されている。購入には許可証が必須なので、希少価値以上に入手難度が高い。
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