百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
第7話 感謝の気持ち
霧が晴れるとそこにはすっきりとした顔のイザーが胸の前で手を合わせた状態で立っていた。
それを満足そうに見つめるシスターと何が何だかわからないと言った感じの栗宮院うまな達。しばらくの間誰もその場を動くことが出来ず、まるで一枚の絵画のように見えたのだった。
「ありがとうございます。今までずっと聞こえてきた嫌な声も耳の横でずっと何かを振っているような感覚も無くなりました。私は神なんて自分の考えを押し付けてくる野蛮な存在だと思ってたんですけど、こちらの神様は他の神と違って私のようなサキュバスにも救いを与えてくださるんですね」
「いえ、そうではないのですよ。今起こした奇跡は神の御業ではなく私が個人的に行っただけなんです。あなたが困っているようでしたので、私の意志であなたをお救いしたまでですよ。それに、私たちに救いを求めてやってきたものを助けるのは私たちの義務ですからね」
何とも晴れ晴れとした表情で会話を続ける二人と対照的に栗宮院うまなは少し困っているようだ。イザーが救われたことは当然嬉しいことではあるのだけれど、完全復活をしたイザーが工藤珠希とのデート権を争うことになるのは好ましいことではなかった。
それでも、他のサキュバスの力を借りてイザーに一矢報いる方法を考えることはしているようだ。例え不可能なコトだったとしても、工藤珠希とのデート権を獲得するためには負けられない戦いになるのだ。
「お救い頂いたお礼をしたいのですが、私に出来ることなどあるのでしょうか?」
「お礼なんて結構ですよ。私共はそのような見返りを期待しているわけではないのですから。お気持ちだけで十分ですよ」
「ですが、サキュバスである私を助けていただいたのですから何かお返しをしなくてこれからどう接していいのかわからなくなってしまいます。なので、私を助けるというつもりで何か私に出来ることをおっしゃっていただきたいのです」
「困りましたね。そう言われると断りづらいですよ。ですが、本当に私共はあなたに何かをしてもらいたくてやったわけではないですからね」
その後もしばらく押し問答が続いてしまった。
それを見ていた栗宮院うまなもレジスタンス寮の寮長も何も変わらない状況に焦りを感じ始めていた。その状況を打破するために何か言おうと思っている栗宮院うまなではあるのだが、この場を上手く丸く収める言葉も出てこず黙って見ているしかなかった。
そんな時、レジスタンス寮の寮長が二人の間に割って入った。
「横から口を出すことになってしまって申し訳ないのですが、お互いに何か納得出来るものが無いかお困りのようですね」
「そうなんですよ寮長さん。私としては助けることが当たり前だと思っているのでお礼などはいらないのです。逆に、お礼を頂くことで私共がそれを目当てに行動していると思われてしまいそうだと思いませんか?」
「シスターの言いたいことは理解出来ますが、イザーさんも助けてもらって言葉だけで済ますようなことは出来ず、何もお礼が出来ないというのはこの世界最強の生物としてのメンツが立たないのではないでしょうか」
「そうなんです。どこのどなたかは存じ上げませんが、私の言いたいことを言っていただきありがとうございます。この方の言う通りで、私はこれまでに誰かを助けたことは何度もあるのですが、助けられたという経験はほとんどしたことが無かったのです。誰かに助けられた者がどんな気持ちで感謝を述べているのかという事が生まれて初めて分かったのですが、言葉だけで終わらせてしまうのは違うと感じているのです。私が生まれて初めて人に感じた感謝の気持ちを行動で示していきたいのです」
「そうは言われましても、私共は何かを期待してあなたをお救いしたわけではないのですよ。それだけはご理解いただければと思います。なので、何かしていただくというのはこちらとしても受け取ることが出来ないのですよ。あなたが私共の信徒となっていただけるのでしたら話は変わってきますが、それは無理な話だとこちらも重々承知しております」
お互いに妥協点を探そうと努力はしているのだが、シスターとしては信徒以外の者から何かを受け取るという事は出来ず断るしかない。イザーとしても今まで生きてきてここまで困った事態に陥ったことが無かったのを救ってもらうだけでお礼もせずに帰ることなど出来ない。
どうにかして両者納得出来る形にして終わらせたいと思っているのだけれど、そもそもの考え方がまったく違っているのでお互いの思いがかみ合う事は無いのだ。片方でも考えを柔軟に変えることが出来れば丸く収まるのだが、二人ともそう簡単におのれの信念を曲げることが出来なかった。
「お二人の気持ちはわかります。シスターもイザーさんもお互いに譲れない気持ちがあるという事ですよね。そこで一つ私から提案があるのですが、少し聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「寮長に何かいい案があるというのでしたらお伺いいたします」
「ありがとうございます。イザーさんもそこまで警戒せずに気楽に聞いてください。私の話を聞いたお二人は、きっと納得してくれると思いますから」
二人の間に割って入ったサキュバス寮の寮長はとても強く偉大な人物のように見えていた。
何を言うのか全く分からないのだけれど、その姿は何を言っても説得力があるように見えていたのだった。
それを満足そうに見つめるシスターと何が何だかわからないと言った感じの栗宮院うまな達。しばらくの間誰もその場を動くことが出来ず、まるで一枚の絵画のように見えたのだった。
「ありがとうございます。今までずっと聞こえてきた嫌な声も耳の横でずっと何かを振っているような感覚も無くなりました。私は神なんて自分の考えを押し付けてくる野蛮な存在だと思ってたんですけど、こちらの神様は他の神と違って私のようなサキュバスにも救いを与えてくださるんですね」
「いえ、そうではないのですよ。今起こした奇跡は神の御業ではなく私が個人的に行っただけなんです。あなたが困っているようでしたので、私の意志であなたをお救いしたまでですよ。それに、私たちに救いを求めてやってきたものを助けるのは私たちの義務ですからね」
何とも晴れ晴れとした表情で会話を続ける二人と対照的に栗宮院うまなは少し困っているようだ。イザーが救われたことは当然嬉しいことではあるのだけれど、完全復活をしたイザーが工藤珠希とのデート権を争うことになるのは好ましいことではなかった。
それでも、他のサキュバスの力を借りてイザーに一矢報いる方法を考えることはしているようだ。例え不可能なコトだったとしても、工藤珠希とのデート権を獲得するためには負けられない戦いになるのだ。
「お救い頂いたお礼をしたいのですが、私に出来ることなどあるのでしょうか?」
「お礼なんて結構ですよ。私共はそのような見返りを期待しているわけではないのですから。お気持ちだけで十分ですよ」
「ですが、サキュバスである私を助けていただいたのですから何かお返しをしなくてこれからどう接していいのかわからなくなってしまいます。なので、私を助けるというつもりで何か私に出来ることをおっしゃっていただきたいのです」
「困りましたね。そう言われると断りづらいですよ。ですが、本当に私共はあなたに何かをしてもらいたくてやったわけではないですからね」
その後もしばらく押し問答が続いてしまった。
それを見ていた栗宮院うまなもレジスタンス寮の寮長も何も変わらない状況に焦りを感じ始めていた。その状況を打破するために何か言おうと思っている栗宮院うまなではあるのだが、この場を上手く丸く収める言葉も出てこず黙って見ているしかなかった。
そんな時、レジスタンス寮の寮長が二人の間に割って入った。
「横から口を出すことになってしまって申し訳ないのですが、お互いに何か納得出来るものが無いかお困りのようですね」
「そうなんですよ寮長さん。私としては助けることが当たり前だと思っているのでお礼などはいらないのです。逆に、お礼を頂くことで私共がそれを目当てに行動していると思われてしまいそうだと思いませんか?」
「シスターの言いたいことは理解出来ますが、イザーさんも助けてもらって言葉だけで済ますようなことは出来ず、何もお礼が出来ないというのはこの世界最強の生物としてのメンツが立たないのではないでしょうか」
「そうなんです。どこのどなたかは存じ上げませんが、私の言いたいことを言っていただきありがとうございます。この方の言う通りで、私はこれまでに誰かを助けたことは何度もあるのですが、助けられたという経験はほとんどしたことが無かったのです。誰かに助けられた者がどんな気持ちで感謝を述べているのかという事が生まれて初めて分かったのですが、言葉だけで終わらせてしまうのは違うと感じているのです。私が生まれて初めて人に感じた感謝の気持ちを行動で示していきたいのです」
「そうは言われましても、私共は何かを期待してあなたをお救いしたわけではないのですよ。それだけはご理解いただければと思います。なので、何かしていただくというのはこちらとしても受け取ることが出来ないのですよ。あなたが私共の信徒となっていただけるのでしたら話は変わってきますが、それは無理な話だとこちらも重々承知しております」
お互いに妥協点を探そうと努力はしているのだが、シスターとしては信徒以外の者から何かを受け取るという事は出来ず断るしかない。イザーとしても今まで生きてきてここまで困った事態に陥ったことが無かったのを救ってもらうだけでお礼もせずに帰ることなど出来ない。
どうにかして両者納得出来る形にして終わらせたいと思っているのだけれど、そもそもの考え方がまったく違っているのでお互いの思いがかみ合う事は無いのだ。片方でも考えを柔軟に変えることが出来れば丸く収まるのだが、二人ともそう簡単におのれの信念を曲げることが出来なかった。
「お二人の気持ちはわかります。シスターもイザーさんもお互いに譲れない気持ちがあるという事ですよね。そこで一つ私から提案があるのですが、少し聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「寮長に何かいい案があるというのでしたらお伺いいたします」
「ありがとうございます。イザーさんもそこまで警戒せずに気楽に聞いてください。私の話を聞いたお二人は、きっと納得してくれると思いますから」
二人の間に割って入ったサキュバス寮の寮長はとても強く偉大な人物のように見えていた。
何を言うのか全く分からないのだけれど、その姿は何を言っても説得力があるように見えていたのだった。
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