モフを守りし王となる〜MPのMはモフのエム〜
ああ、ケモッ娘1
「スゥ〜、はぁぁぁ!」
『同意はありますが本意ではないモフです。半強制的なモフに大きくモフの充足が失われます。
モフポイントが2回復します』
首元とはまた少し違う香り。
レオの鼻が力を最大限に発揮して黒い犬のケモッ娘のにおいを感じ取ろうとする。
頭の中に声が響いて体の気だるさが解消されていく。
「ありがとう、助かったよ」
「あ……はい」
非常に嫌そうな顔をして黒い犬のケモッ娘が腕を引いた。
腕も引いたが気分もドン引きのようである。
「あの……お礼を。助けていただいてありがとうございます。私はユーファンと言います」
ドン引きしてはいるが恩人なのでちゃんとお礼はする。
「ああ、いいさ。ケモッ娘を救うのは当然のことだからね」
「そのケモッ娘が何かは分かりませんが獣人を救うのは普通のことじゃないですよ」
「俺にとってはそうじゃないのさ。それにしてもなんであんな奴らに襲われてたんだ?」
「……多分憂さ晴らしですよ。私が何か盗んだなんてアイツら言ってましたけど何も盗んでません。きっと何かイラつくことでもあって当たりたい相手が欲しかったんです」
「そんなことのために暴力を?」
レオは眉をひそめた。
獣人の状況が悪いと聞いていたけれど想像していたよりも悪そうだ。
「……まだ暴力を振るわれるだけならマシな方です」
伏し目がちに答えるユーファンを見てレオは思った。
ケモッ娘にこんな悲しい顔をさせてはならないと。
レイラは少し冗談混じりに王になれ、なんて言っていた。
けれどもしかしたらケモッ娘を笑顔にするためにはその必要もあるのかもしれない可能性がある。
「それよりも私はあなたの方が心配です。獣人を庇っただなんて他の人間に知られたら……」
「大丈夫だ」
レオはユーファンの肩に手を乗せてしっかりと頷いてみせた。
ケモッ娘を虐げる悪虐非道な連中になど屈することはない。
「ただ君の仲間に会いたいのだけど」
「それは……ごめんなさい」
「ダメなのか?」
ユーファンは少し悩んで頭を下げた。
「獣人は人間を信用していません。連れていったら……どんな目に遭うか分かりません」
人間が獣人を人と見ていないのと同じく、獣人も人間のことを良い感情では見ていない。
レオとしては獣人側に立ってこの世界で生きていきたいと考えているが、獣人側がレオのことを受け入れないのである。
下手すると人間がユーファンにやったように暴行を加えられることだってあり得ない話ではないのだ。
「……そうか」
守られるという行為も決して一方的なものではない。
守り守られることにも信頼関係というものが必要なのだ。
今のレオは獣人たちにとってただの人間であり、獣人は人間をよく思っていない。
どうにかして人間ではなくレオとして見てもらい、信頼を勝ち取っていかねばならない。
「……まずは知ることからだな」
「なにか?」
「いや、じゃあ人間の町の方向を教えてくれないかな?」
「それでしたらあちらの方に真っ直ぐに歩いていけばすぐに着きますよ」
「ありがとう。君は……送らなくても大丈夫かい?」
「はい。お助けくださりありがとうございました」
ユーファンは深く頭を下げると人間の町とは違う方に歩いていった。
「しかし…………ケモッ娘だぁ!」
獣人が厳しい状況にあることは分かったけれどそれよりも本物のケモッ娘が目の前にいることにレオは興奮を覚えていた。
柔らかく包み込むような毛、鼻孔をくすぐる香り、視覚にも分かるほどにモフモフした肢体。
神様ありがとうとレオは天を仰いだ。
同時にケモッ娘たちは任せてくださいと天に誓った。
なんとなくレイラが苦笑いしている気がするけれど、レオはそんなお顔も素敵ですよと思う。
「ひとまず知ることから始めよう」
何事も下準備は必要だ。
レイラから世界の情勢について獣人側からの視点でざっくりと話を聞いたけれども他のことについて全く知らないことにレオは気がついた。
獣人の置かれている状況や問題、人間が獣人をどう思ってどうしているかやどこにどんなケモッ娘がいるのか。
知っていかねば始まらない。
知れば獣人たちの信頼を得るための方法も思いつくかもしれない。
ひいてはケモッ娘たちとお近づきになりたい。
「待っていてくれ……ケモッ娘たち。俺がきっと君たちのことを救ってあげるから」
決意を新たに。
レオはユーファンに教えてもらった町の方に歩き出した。
「あとは色々必要だしな」
歩いていると冷静さも取り戻してきた。
ケモッ娘に会えた感動で知能が低いことになっていたけれどレオはこの世界において何も持っていない人である。
お金も住む場所もなく、生活する上での知識や常識もない。
ケモッ娘を助けるというが今日のご飯すらないのがレオの現状であることにようやく気がついた。
まずは早急に身を立てる手段を考えねばならない
自分の生活がままならないのにケモッ娘を助けることなんかできやしない。
お金があれば困っているケモッ娘を助けられることだってあるはずだ。
「あれが町か」
ユーファンの言う通りすぐに町が見えてきた。
『同意はありますが本意ではないモフです。半強制的なモフに大きくモフの充足が失われます。
モフポイントが2回復します』
首元とはまた少し違う香り。
レオの鼻が力を最大限に発揮して黒い犬のケモッ娘のにおいを感じ取ろうとする。
頭の中に声が響いて体の気だるさが解消されていく。
「ありがとう、助かったよ」
「あ……はい」
非常に嫌そうな顔をして黒い犬のケモッ娘が腕を引いた。
腕も引いたが気分もドン引きのようである。
「あの……お礼を。助けていただいてありがとうございます。私はユーファンと言います」
ドン引きしてはいるが恩人なのでちゃんとお礼はする。
「ああ、いいさ。ケモッ娘を救うのは当然のことだからね」
「そのケモッ娘が何かは分かりませんが獣人を救うのは普通のことじゃないですよ」
「俺にとってはそうじゃないのさ。それにしてもなんであんな奴らに襲われてたんだ?」
「……多分憂さ晴らしですよ。私が何か盗んだなんてアイツら言ってましたけど何も盗んでません。きっと何かイラつくことでもあって当たりたい相手が欲しかったんです」
「そんなことのために暴力を?」
レオは眉をひそめた。
獣人の状況が悪いと聞いていたけれど想像していたよりも悪そうだ。
「……まだ暴力を振るわれるだけならマシな方です」
伏し目がちに答えるユーファンを見てレオは思った。
ケモッ娘にこんな悲しい顔をさせてはならないと。
レイラは少し冗談混じりに王になれ、なんて言っていた。
けれどもしかしたらケモッ娘を笑顔にするためにはその必要もあるのかもしれない可能性がある。
「それよりも私はあなたの方が心配です。獣人を庇っただなんて他の人間に知られたら……」
「大丈夫だ」
レオはユーファンの肩に手を乗せてしっかりと頷いてみせた。
ケモッ娘を虐げる悪虐非道な連中になど屈することはない。
「ただ君の仲間に会いたいのだけど」
「それは……ごめんなさい」
「ダメなのか?」
ユーファンは少し悩んで頭を下げた。
「獣人は人間を信用していません。連れていったら……どんな目に遭うか分かりません」
人間が獣人を人と見ていないのと同じく、獣人も人間のことを良い感情では見ていない。
レオとしては獣人側に立ってこの世界で生きていきたいと考えているが、獣人側がレオのことを受け入れないのである。
下手すると人間がユーファンにやったように暴行を加えられることだってあり得ない話ではないのだ。
「……そうか」
守られるという行為も決して一方的なものではない。
守り守られることにも信頼関係というものが必要なのだ。
今のレオは獣人たちにとってただの人間であり、獣人は人間をよく思っていない。
どうにかして人間ではなくレオとして見てもらい、信頼を勝ち取っていかねばならない。
「……まずは知ることからだな」
「なにか?」
「いや、じゃあ人間の町の方向を教えてくれないかな?」
「それでしたらあちらの方に真っ直ぐに歩いていけばすぐに着きますよ」
「ありがとう。君は……送らなくても大丈夫かい?」
「はい。お助けくださりありがとうございました」
ユーファンは深く頭を下げると人間の町とは違う方に歩いていった。
「しかし…………ケモッ娘だぁ!」
獣人が厳しい状況にあることは分かったけれどそれよりも本物のケモッ娘が目の前にいることにレオは興奮を覚えていた。
柔らかく包み込むような毛、鼻孔をくすぐる香り、視覚にも分かるほどにモフモフした肢体。
神様ありがとうとレオは天を仰いだ。
同時にケモッ娘たちは任せてくださいと天に誓った。
なんとなくレイラが苦笑いしている気がするけれど、レオはそんなお顔も素敵ですよと思う。
「ひとまず知ることから始めよう」
何事も下準備は必要だ。
レイラから世界の情勢について獣人側からの視点でざっくりと話を聞いたけれども他のことについて全く知らないことにレオは気がついた。
獣人の置かれている状況や問題、人間が獣人をどう思ってどうしているかやどこにどんなケモッ娘がいるのか。
知っていかねば始まらない。
知れば獣人たちの信頼を得るための方法も思いつくかもしれない。
ひいてはケモッ娘たちとお近づきになりたい。
「待っていてくれ……ケモッ娘たち。俺がきっと君たちのことを救ってあげるから」
決意を新たに。
レオはユーファンに教えてもらった町の方に歩き出した。
「あとは色々必要だしな」
歩いていると冷静さも取り戻してきた。
ケモッ娘に会えた感動で知能が低いことになっていたけれどレオはこの世界において何も持っていない人である。
お金も住む場所もなく、生活する上での知識や常識もない。
ケモッ娘を助けるというが今日のご飯すらないのがレオの現状であることにようやく気がついた。
まずは早急に身を立てる手段を考えねばならない
自分の生活がままならないのにケモッ娘を助けることなんかできやしない。
お金があれば困っているケモッ娘を助けられることだってあるはずだ。
「あれが町か」
ユーファンの言う通りすぐに町が見えてきた。
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