外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

第50話 宝箱 ボス戦の報酬

 氷の守護者を倒すと、後は簡単だった。
 アンが相手取っている棍棒ゴブリンを、俺、ミレット、アンでタコ殴りにして終わりだ。

 俺は両手を上に突き上げて大声で叫んだ。

「やった! 初心者ダンジョンをクリアしたぞ!」

「やりました!」

 ミレットが喜んで俺に抱きつく。
 ああ、良い匂いがする。
 がんばったご褒美かな!

 ミレットは、俺の魔法について特に質問をしない。
 どうやら黙っておいてくれそうだ。

 俺とミレットは抱き合って喜んだが、アンはちょっと微妙な顔をしている。

「アン。どうしたんだ? 嬉しくないのか?」

「そりゃ、嬉しいけど……。私、最終戦はあまり役に立たなかったから……」

 そうか……。
 アンは自分が活躍していないと思い込んで、遠慮しているのか……。

 これは良くない。
 俺は真面目な顔でアンを褒める。

「アンは、よくやってくれたよ! アンがしっかり棍棒ゴブリンを引きつけてくれたから、俺もショートソードを持ったゴブリンを倒せたし、ミレットが氷の守護者を倒せたんだ!」

 さらっと、ミレットが氷の守護者を倒したことにしたが良いだろう。
 俺は最後に一発ファイヤーボールを撃ち込んだだけなのだ。
 氷の守護者を倒したのは、ミレットの手柄だ。

 俺はアンに続ける。

「三人が、それぞれ役割を果たしたから初心者ダンジョンをクリア出来たんだ! 誰一人欠けても突破は出来なかった。アンも役割を果たした一人だよ!」

「そうですよ。アンさん。アンさんがいなかったら、私とユウトの二人だけでしょう? 二人だけでは、絶対にボスを突破できませんでした。アンさんは、しっかりと仕事をしましたよ。胸を張って下さい!」

 ミレットもアンの働きを認めた。

「そ、そうかな? そうだよね! 私、頑張ったよね! 実は途中で、かなりしんどかったんだけど、二人がなんとかしてくれると思って粘ったんだ!」

 見ればアンの右手は震えている。
 腕の力が限界に来ているのだ。

「アンは、本当に限界まで頑張ったんだな! ありがとう!」

「ありがとうございます! アンさん!」

「えへへ!」

 ようやくアンの顔に笑顔が戻った。
 俺たちは一通り喜び合いお互いをたたえ合い、少し冷静になった。

 ミレットが自分のステータス画面を見ながら言う。

「討伐ポイントは10ポイント入りましたね!」

「ボス戦の討伐ポイントが10ポイントか……。普通の魔物の十倍だけど、あれだけ苦労したんだから、もっと欲しかったな」

 俺が口を尖らせると、ミレットがクスッと笑った。

「ユウトの言う通りだと思います。けど、ほら! あれを見て下さい!」

 ミレットがボス部屋の奥を指さす。

「「「宝箱!」」」

 ボス部屋の奥には、木製の宝箱が出現していた。
 ドロップがないと思ったが、ボス戦では宝箱が出るのか!

 三人で宝箱に駆け寄る。
 蓋に手をかけて、せーので宝箱を開けると中には、革製の小さなベルトバッグが入っていた。

「バッグ?」

「ちょっと失礼しますね」

 ミレットが小さなバッグを手に取ると、蓋を開けてグッと手を突っ込んだ。
 するとミレットの腕が、するするとバッグに入ってしまった!

「えっ!?」

 俺が驚くと、ミレットはニッコリ笑った。

「これはマジックバッグですね! 馬車一台分くらいの荷物が入りますよ!」

 ミレットが俺にマジックバッグを渡す。
 俺もミレットの真似をして、マジックバッグに腕を入れてみる。

「あっ!」

 すると頭の中にマジックバッグの使い方や要領が流れ込んできた。
 なるほど、マジックバッグを近づけて収納すると念じれば、マジックバッグに収納できるのか。
 バッグの口よりも大きな物も収納できるようだ。

「良かったですね! アタリですよ! 宝箱の中身は、ポーションみたいな消耗品のこともあるんですよ!」

 アンが、興奮気味にまくしたてる。

 ボスは手強い相手だったけれど、宝箱がアタリで良かった。
 さっきより納得感が出て来たぞ。

「このマジックバッグは、どうしようか?」

「私は自分のマジックバッグがあるので遠慮しますね」

 俺が質問すると、ミレットは辞退した。
 アンに視線を向けると、どうぞどうぞとジェスチャーする。

 むっ……どうしたものかな……。
 このマジックバッグは、三人で戦った成果だ。
 俺が独り占めするのは、良くない。

「じゃあ、このマジックバッグはパーティーの所有物にしよう。とりあえず俺が身につけているよ」

「はい。ユウトが持っていて下さい」

「うんうん。そうして」

 俺はマジックバッグを腰のベルトに通して身につけてみた。
 こうして装備品が増えると、冒険者としてやり甲斐を感じる。

「さあ、帰ろう」

 ボス部屋の奥には、地上へ転移する魔方陣がある。

 俺たちは魔方陣に乗り地上へ向かった。

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