外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

第49話 外れスキル 氷の守護者4

「やった!」

 ショートソードを持ったゴブリンを倒した!
 これで俺たちが俄然有利だ!

 俺は松明をミレットの足下にかざして、ミレットの足を覆う氷を溶かす。

「ユウト! ありがとう!」

「一人にして、ごめん。怖かっただろう? でも、これで俺たちが有利になった! さあ、魔法を詠唱して!」

「そ、それなんだけど……」

 何だろう?
 ミレットが引きつった笑顔をした。

「あと……一発しか……」

「え?」

「あとファイヤーボール一発分しか魔力が残ってないの!」

「なっ――!」

 俺は思わず作業の手を止める。

 しまった!
 氷の守護者の体力を削りきるより先に、ミレットの魔力が尽きてしまう……かもしれない……。

「とにかく撃ってみて……、ひょっとしたらあと一発で倒せるかもしれないし……」

「そ、そうですよね!」

 ミレットが杖を構えて集中を始めた。
 俺はミレットの集中を乱さないように、下を向いて黙々とミレットの足を覆う氷を溶かす作業をする。

 ミレットの足の氷を松明の炎で炙って、溶けてきたらショートソードの柄で叩いて砕く。
 ミレットの足は、一分ほどで自由になった。

「ファイヤーボール!」

 ミレットが魔法を撃った!

 俺とミレットはファイヤーボールを見ながら祈る。

(これで倒れてくれ!)

「キアアァ!」

 氷の守護者が空中で回転しながら苦しみ悶える。
 だが、一向に姿は消えない。

「ダメか……」

「ああ……」

 俺とミレットが悔しがる。
 そして、氷の守護者の反撃だ。

 俺はミレットをかばって盾を構える。
 今回の攻撃は氷のつぶてだ。

 盾にガツガツと氷のつぶてがぶつかる音を聞きながら、俺は考える。

 ――どうする?

 氷の守護者は物理攻撃が通用しない。
 聖属性魔法か火属性魔法しか効かないのだ。

 そして、火属性魔法を持つミレットは魔力切れ。
 もう、氷の守護者への攻撃手段がない。

 ――撤退か?
 いやいや!
 今、撤退しては、アンのお父さんを探しに中級ダンジョンへ行けない。
 がんばって、ここまで来たのだ。
 何とか氷の守護者を倒して、初心者ダンジョンをクリアしたい。

 ――では、さらに長期戦?
 アンが戦っている棍棒ゴブリンを倒し、ミレットの魔力回復を待つ。
 ミレットの魔力が回復したら、氷の守護者を攻撃する……。

 ダメではない……。
 ダメではないが……。
 あと、何発で氷の守護者を倒せるかわからない。
 下手をすると一晩中、ミレットの魔力回復と魔法攻撃を繰り返すことになる。
 時間が掛かりすぎて、俺たちの体力が持つかどうか……。

 クソッ!
 他に手はないのか!

 いや……ある!
 俺がスキル【レベル1】を使って火属性魔法を獲得し、俺が氷の守護者をファイヤーボールで攻撃するのだ!

 俺はチラリとミレットを見た。
 このアイデアを実行すると、ミレットに俺のスキル【レベル1】がバレてしまう。

 俺は悩んだ。
 だが、ここまで来て手ぶらで帰ることは出来ない。

 氷の守護者の攻撃が止むと、俺はミレットに頼んだ。

「ミレット。後ろを向いてくれないかな?」

「え? 後ろ?」

「そう」

「……どうしてですか?」

 ミレットは困惑している。
 そりゃそうだ。
 戦闘中に後ろを向けだなんて、無茶な話だ。

 俺は真剣な目でミレットを見た。

「氷の守護者を倒すためだ。俺を信じて欲しい」

 ミレットは、ジッと俺の目を見た。
 そしてニッコリと笑った。

「わかりました。どうするのかわかりませんが、何か作戦があるのでしょう? ユウトを信じます」

 ミレットはくるっと、俺に背を向けた。

「ありがとう」

 俺はミレットの背中に礼を述べると、すぐにステータスを表示させ操作をする。
 先ほどスラッシュを使ったので、残っている討伐ポイントは2だ。
 俺は1ポイントを使ってスキル【火属性魔法】を取得した。

(あっ……こういう感じなんだ……)

 魔法を取得すると、『どうやって魔法を撃つのか?』、『どうやって魔力を使うのか?』が、頭に流れ込んできて、すぐに理解出来た。

 俺は氷の守護者をグッとにらむ。
 右手を前に突き出し、体内の魔力を練り上げるように意識して、右手の先に集める。

(あっ……意外にキツイ……精神力を使うんだな……)

 俺は額に汗をかきながら、魔力を練り上げた。
 魔力が右手に貯まっていく。
 ここで撃てると本能的にわかった。

 詠唱!

「炎よ……、我が手に宿り、我が敵を討て! ファイヤーボール!」

 詠唱が終ると同時に、俺の右手から火球が放たれた。
 火球はうねりをあげて、真っ直ぐに氷の守護者に襲いかかる。
 氷の守護者の胴体に着弾した。

「キアアアアアアアアァァァァァァ! キアアアアアアアアァァァァァァ!」

 氷の守護者は、長い叫びを発し、空中でピクピクと痙攣し動きを止めた。
 空中の氷の守護者が、ゆっくりとダンジョンの床に落ち姿を消した。

 氷の守護者を倒したのだ!

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