外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

第45話 ボス部屋の前(五階層)

 連戦が続いた。

 初心者ダンジョンの五階層は、渦巻き型のルートでショートカットはない。
 これまでの階層よりも移動距離が多い。
 その上、魔物とのエンカウント率も高く、俺たちは連戦を強いられた。

 行き止まりになっている脇道で、背後の安全を確保しながら小休止を取り、また進む。
 休み、戦い、走り、戦い……。

 ついに五階層のゴール地点、ボス部屋に俺たちはたどり着いた。

 俺は息を吐きながら、ミレットとアンに声をかける。

「ふう、来たね!」

「はい! 目標地点です!」

「ふああ! 本当に来ちゃった!」

 ミレットは真面目にキリッと気合いの入った声で、アンはぼやき気味にちょっと疲れた声で返事をした。

 ボス部屋の入り口は大きなアーチになっていて、部屋の中を見ることが出来る。
 俺たちは、そっとボス部屋の中をのぞいてみた。

「いるな」

「いますね」

「いるいる!」

 ボス部屋は広い。
 前世日本の学校にあった体育館ほどの広さだ。

 部屋の中央に、ゴブリンが二匹。
 そして、ゴブリンの間にゴーストがフワフワと浮いている。

「あれが氷の守護者か……。装備はないんだな……」

 氷の守護者は、いかにも幽霊といった雰囲気の女型のゴーストだ。
 長い髪にスラッとした姿をして、ドレスを身にまとっている。

「でも、剣や矢の攻撃は効きません」

 俺の下から顔をのぞかせるミレットだ。

 なるほど、ミレットの言う通りかもしれない。
 氷の守護者は半透明で、物理攻撃を受け付けそうにない。

「ねえ。あのゴブリン……。装備が違うよね?」

 一番下からのぞきこんでいるアンだ。
 俺はゴブリン二匹に目を向ける。

 向かって右側にいるゴブリンは、木製の棍棒を持っている。
 左側のゴブリンは、ショートソードに盾の装備だ。

 これまでのゴブリンはナイフを持っていただけなので、装備が格段に良くなっている。

「確かにアンの言う通りだね。ボス部屋だからかな」

「どうせなら、腰蓑一丁でサービスしてくれれば良いのに!」

「「ぶっ!」」

 アンの言い方に、俺とミレットは吹き出した。

「アン! 腰蓑だけでサービスって何だよ! どんなサービスだよ!」

「アンさん! 面白いです!」

 俺とミレットは、ボス部屋から顔を引っ込めて、腹を抱えて笑った。
 連戦で緊張を強いられていたので、フッと気が緩んだのだ。

 二人ともツボに入ってしまった。

「でもさ! 最後なんだからサービスしてくれても良いと思う! あのゴブ二匹強そうだもん!」

 アンはプリプリしている。
 その様子がおかしくて、俺とミレットは再び笑い転げた。

 一通り笑ったあとは、休憩と戦闘の準備だ。

 ボス部屋入り口の脇で水を飲み、ミレットがくれたビスケットをかじる。

「ここでレベルアップしよう!」

「はい!」

「そうだね!」

 連戦はきつかったけれど、その分討伐ポイントは貯まった。
 結局、五階層で魔物を二十七匹倒し、四階層の五匹と合わせて討伐ポイントは33ポイントだ。

 ちなみにドロップアイテムは二つ手に入った。
 レッサーツナからマグロの切り身が一つ。
 レッサートレントから木の実が一つ。

 ミレットによると、レッサートレントからドロップした木の実は香辛料になるそうだ。
 ぴりりとした辛い味で、砕いてコショウのようにふりかけて使うらしい。

 さて、レベルアップだ!


 ◆―― ステータス ――◆


【名前】 ユウト

【レベル】4

【スキル】レベル1 剣術 盾術 気配察知

【討伐ポイント】3


 ◆―――――――――――◆


 俺はショートソードを素振りしてみる。
 わずかながらショートソードを振るスピードや力が強くなっている気がする。

 レベル4にレベルアップした効果だ。
 わずか――このわずかな違いが戦闘では生死を分けるかもしれないのだ。

 ボス戦前にレベルアップ出来たのは大きい。

 ここのボス部屋は、入り口に扉がないので、出入り出来るタイプだ。
 ダンジョンによっては、一度入るとボスを倒すまで出られないボス部屋もあるそうなので、撤退出来るボス部屋は初心者にありがたい。

 俺たちは長めに休憩を取り、ボス戦の打ち合わせを行った。
 準備万端!
 さあ! ボス戦だ!

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