外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

第28話 お仕置きタイム

 ジャイルが剣を構える。

 仕方なく俺も腰の剣を右手で抜き、剣と盾を構えグッと腰を落とす。
 防御重視の姿勢を取る。

 ここまで来たら仕方がない。
 ジャイルと剣で一戦交えるしかない。

 だが、俺とジャイルの剣は、リーチ差がある。

 体格の良いジャイルが持つ剣は、俺の剣よりも長い。
 両手で扱う長目の剣だ。

 俺の剣は、ギルド受付のドナさんが選んでくれた剣で、小柄な俺が片手で扱える短めで軽い剣だ。
 魔物との戦闘では小回りが効いて良いのだが、こうして一対一の対人戦になると武器の違いを意識してしまう。

(防御重視でジャイルの隙を見て攻撃を加える……)

 俺は戦い方を決めて、フウッと息を吐き出し呼吸を整える。
 よし! 落ち着いている!

 ジャイルが、無邪気に残酷な顔をする。
 いじめっ子特有の表情だな。

「どうした? 怖いか? ぐふふふふ!」

 自分が優位に立ち、好きに嬲れることに愉悦を感じていやがる。
 俺は強い嫌悪感を覚える。

(下衆だな……)

 ジャイルがミレットと仲良くなることはないだろう。

 ん? そうだ! 少し挑発して冷静さを失わせてやろう。


「ジャイル。オマエさ。ミレットのことが好きだろう?」

「なっ!? ななな!? 何を――!」

「ナナナナ~♪ ナナナナ~♪ ジャイルはミレットが好き! バレバレだぞ!」

 俺は前世テレビで見た芸人さんの動きでジャイルをからかう。
 ジャイルは顔が真っ赤だ。

「うううううう! うるさい!」

「でも、気の毒だけどさ。ジャイルがミレットと結ばれることはないから」

「なんだとぅ!」

「ミレットは心が優しい。誰とでも分け隔てなく接する。ジャイルは、自分が偉い、自分が中心って考えだからな。ミレットのタイプじゃないよ」

「オ、オ、オ、オマエに何が分かる!」

「分かるさ! パーティーメンバーだからな! ミレットはジャイルが嫌いだよ」

 ジャイルは怒りながら涙目になるという器用なことをしている。
 先ほどまで、ジャイルは剣を抜き自分が優位だと余裕をぶっこいていた。

 だが、今は頭に血が上り心が揺れている。
 冷静とは一万マイル離れた状態だ。

 ジャイルは剣を俺に向け。

「黙れー!」

「いや、動揺してるじゃん! ホレホレ! 掛かってこいよ! 先手は譲ってやるよ!」

「ふんがー!」

 ジャイルが剣を大きく振りかぶった。
 テレフォンパンチならぬテレフォンソードだ。
 正面から真っ直ぐ切り下ろすことが丸わかり。

 俺は余裕を持って斜め後ろにステップし、ジャイルの剣を交す。

「ふん! ふん! ふんがー!」

「ほっ! ほっ! ほいっ!」

 ジャイルの剣は、スキル【剣術】の補正が入っているだけあって振りが鋭い。
 だが、大ぶりの斬撃なので、俺は冷静に回避を続けられている。

 俺の動きはノースキルだ。
 剣術スキルがあっても、使いこなせなければノースキルでも対処出来るのだなと、俺は一つ学びを得た。

「ふんがー! うんがー!」

「よっ! よっ!」

 ジャイルはムキになって攻撃をしてくるが、俺は淡々と訓練のように剣を交す。
 そろそろ終わりにしますか……。

 俺は一歩踏み込み、ジャイルが振り下ろした剣を盾でいなした。
 ジャイルは、俺に剣をいなされたことでバランスを崩し、とっさに踏ん張ろうとする。

(隙だらけだよ!)

 俺は剣の平らな部分で、ジャイルの腕を叩いた。

「あっ! 痛い! うううっ!」

 ジャイルが剣を落とす。
 俺はジャイルが取り落とした剣を蹴り飛ばし、ジャイルが拾えなくした。

 俺はジャイルに冷たく言い放つ。

「剣を抜いて襲いかかってきたんだ。覚悟は出来てるよな? 殺そうとしたら……、殺されても文句は言えない……。わかるな?」

「ひっ……!」

 ジャイルの顔が引きつる。
 俺は剣の平でジャイルの横っ面を叩いた。
 ジャイルが倒れる。

 殺すつもりはない。
 そんなことをしたら大問題になる。

 だが、お仕置きは必要だ。
 何せ剣を抜いて俺を殺そうとしたのだ。

 俺は続けてジャイルの足、腕を剣の平で叩く。
 ジャイルが何とか起き上がろうとするので、またジャイルの横っ面を剣の平で叩いた。

「ひいい! 止めてくれー!」

「止めない。始めたのはオマエだ!」

 ジャイルは、惨めに這って逃げようとした。
 俺は容赦なく尻や背中を剣の平で叩く。

 ジャイルは、四つん這いの姿勢をとれなくなり地面に倒れる。
 俺は追撃し、剣の平で顔を叩く。
 ベチベチと音が響き。
 やがてジャイルは失神した。

「ふう……。お仕置き終了……」

 これだけやっておけば、少しは大人しくなるだろう。

 俺は失神したジャイルを背負って冒険者ギルドへ向かった。

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