外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

第2話 スキル獲得! ~成人の儀式・トロザの街

「九十九! 百!」

 俺は無心で素振りを繰り返す。
 家の前の狭い道。
 木の棒が風を切る音が、狭い路地に響く。

 俺が異世界に転生して十三年が過ぎた。
 スキルがなく、未成年の俺にやれることはないかと考えて、毎日素振りをしている。

「ユウト! 朝ご飯よ!」

「はーい!」

 母が俺を呼ぶ。


 転生の女神様が言っていた通り、転生した世界は魔物が跋扈する世界だった。

 俺が住んでいるのは、城塞都市でトロザという。
 トロザの街は、中世ヨーロッパをイメージしたゲーム世界という雰囲気だ。
 オレンジ色のタイル屋根で石造りの家が立ち並び、石畳の道路を商人の馬車が行き交う美しい街だ。

 だが、美しいのは貴族や豊かな平民が暮らす区画で、俺が住んでいるのは貧しい平民区画――そう、スラム街だ。

(もうすっかり慣れたけど最初はキツかったな……)

 日本とは全く違う生活環境。
 おまけに赤ん坊から人生やり直しなのだ。
 さらに俺が転生した家庭は、スラムの貧しい家で父親はいなかった。

 母の名は、サオリ。
 黒髪の日本風美人だ。
 サオリママは、女手一つで俺を育ててくれた。
 このトロザの街では、日本風の名前や黒髪は珍しいらしく、サオリママはご近所で人気のある美人だ。

 転生した俺の名前はユウト。
 日本風の響きがある名前なので、すぐに馴染んだ。
 明るいオレンジの髪をしたカワイイ顔立ちで、成長したらイケメンになれそうだ。
 やったね!

(さて、朝ご飯だ!)

 俺は家の外で日課の素振りをしていたが、母に呼ばれて家の中に入った。

 一部屋と台所があるだけの掘っ立て小屋。
 貧しいが文句はない。
 むしろサオリママには感謝している。
 この貧しい環境で俺を育ててくれたのだ。

 朝食は野菜スープに固いパン。
 食事の材料は、サオリママが働いているお屋敷でもらってくる捨てる野菜の切れ端と余ったパンだ。

 俺は固いパンをスープに浸し、パンを柔らかくして口に運ぶ。
 ジュワッと野菜の旨味が口に広がる。
 味付けは塩味だけだが、転生してから十年以上食べているお袋の味だ。

「お母さん! 美味しいよ!」

「ふふ。良かったわね。今日は成人の儀式に行くんでしょ?」

「うん。神様からスキルをもらうよ!」

「楽しみね」

 サオリママが優しい目で俺を見る。
 最初は違和感バリバリだったけれど、今ではサオリママを母親だと俺は受け入れている。


 この世界では十三歳になると成人だ。
 そして成人の儀式を神殿で行い神様からスキルをもらう。
 転生の女神様が言っていた通りだ。

(つまり……今日から俺のチート人生が始まる! お金持ちになってサオリママに良い暮らしをさせてあげるんだ!)

「行ってきます!」

 朝食を美味しくいただき、俺は神殿へ向かった。
 スラム街の細い路地を駆け抜ける。

 百十番街の大通りを横切れば平民街だ。
 身なりの良い人が多く、一目でスラムの子供とわかる俺は浮きまくっている。

 俺はボロイ服を着て裸足のまま。
 足の裏はすり切れては固まり、今ではすっかりカチカチになっている。

 中には俺を嫌そうな目で見る人もいるし、見ないようにあからさまに視線をそらす人もいる。
 正直不快だ。
 だが、スラム街には神殿がないので、平民街の神殿に行くしかない。
 俺は我慢して遠くに見える神殿へ走る。


 神殿は石造りの大きな建物で、前世で見たキリスト教の教会に似ている。
 神殿に入るのは初めてだ。
 俺はちょっと緊張しながら扉を開けて神殿の中に入った。

(うわっ! いっぱい人がいるな!)

 扉の先は大広間で奥に白い石像が飾られている。
 石像は転生の女神様に似ているが、多分あの石像が地元の神様なのだろう。

 大広間には沢山の子供が集まっている。
 身なりの良い子供は金持ち平民の子供だろう。
 両親も一緒の子供もいて、ちょっと羨ましい。

(サオリママは仕事だから仕方ないね……)

 俺は自分を納得させる。

 成人の儀式は、もう始まっていた。
 男の子が白い石像の前に進み、神官が祝詞を唱えると、男の子が柔らかい光に包まれた。

 男の子の体の前に透明なボードが浮かび上がった。

(おっ! ステータスボードだ!)

 あの透明なボードは、ステータスボードといわれる。
 昔、スキルを授かった近所のお兄ちゃんが、俺に自慢して見せてくれた。
 この世界ならではの不思議な物体だ。

 神官が透明なボードをのぞき込んで男の子に告げる。

「あなたのスキルは【剣術】です! 成人おめでとうございます!」

 神殿の中は大きな拍手とお祝いの声に包まれた。
 剣術のスキルを得た男の子は得意げだ。

 次々に子供たちがスキルを授かり俺の順番になった。

「さあ、こちらへ」

 俺は神官の案内で白い石像の前に立つ。
 目を閉じ両手を組んで神様に向かって一心に祈る。

(神様……。私は十三年前に日本から転生したユウトです。転生の神様にお願いした通りです。良いスキルをお願いします!)

 体がふわりと何かに包まれた感触があった。
 そっと目を開くと、俺の周りにキラキラした光が降り注いでいる。

「おお! これは!」

 神官が驚いている。
 先ほどまでの柔らかい光とは違う。
 金色の花びらが舞い散っているようだ。

 ステータスボードが目の前に浮かび上がった!
 スキルは何だ!

「「えっ……!?」」

 ステータスボードをのぞき込んだ神官と俺の声が重なった。
 俺も神官も困惑している。

 ステータスボードには、俺が得たスキルが表示されていた。


 ◆―― ステータス ――◆


【名前】 ユウト
【レベル】1
【スキル】レベル1


 ◆―――――――――――◆


 眉根を寄せ困惑していた神官が表情を作り直し、いかめしい顔で俺に告げた。

「あなたのスキルは【レベル1】です! 成人おめでとうございます!」

 待て! 待て! 待ってくれ!
 スキルがレベル1ってどういうことだよ!?

コメント

  • 清水レモン

    続きが気になる流れが素晴らしいです!
    主人公が親孝行なのも好き、このスキルがレアでいいことありますようお祈り申しあげます⭐️

    3
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