ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私にドラゴンはご褒美デス。

美杉。節約令嬢、書籍化進行中

種族間の人気争い

「私はルナティア。アーザ様に嫁ぐためにこの国に来たの。よろしくねアミン」
「はい。ルナティア様」

 ルストによって案内された部屋は、とても日当たり良く中庭を眺めることが出来る大きなお部屋だった。
 客間らしいけど、規模的には前に私がいた部屋と同じくらいかしら。

 天蓋付きのベッドや、薄い水色のレースカーテンなどは真新しい。
 きっと私が来ると聞いて、新しくしてくれたのだと思う。

 なんだかそう考えると申し訳ないわね。
 何から何まで。
 まだ何の役にも立てないのに。

「えっとアミン、いろいろと聞きたいのだけどいいかしら?」

 部屋の中央にあるソファーに腰を下ろした私は、ドア近くで静かに佇むアミンに声をかけた。
 従順そうで物静かなアミンは、私にまったく近づこうとはしない。

 ただテキパキと部屋に通された私のお手伝いを、無言でこなしてくれた。
 
 距離があるっていうか、壁がある感じね。
 ルストが非難したげな瞳の理由はこれね。

 仲良くしたいのに、全然そんな感じじゃないんだもの。
 人が嫌いなのかしら。

 そもそもアミンは何の獣人なんだろう。
 肩よりも短い深緑の髪に、金色っぽい瞳。

 この国に来てから分かったことが一つだけある。
 獣人の人って、元の獣の形だったモノとその髪と瞳の色が同じなのよね。

「ん-」
「何をお聞きになりたいのでしょうか、ルナティア様」

 そうアミンは声を上げたものの、私の顔を見ることはない。
 嫌われてる感じはないけどなぁ。

 緑に金の瞳……。
 ああ、アーザ様も緑の髪よね。少し色味は違うけど。
 あれ、もしかして。

「アミンって、もしかしてアーザ様と同じ獣人なのかな?」
「……いえ。あの方のような高貴な一族ではございません」
「そうなんだー。緑色の髪だから、てっきりそうかと思ったんだけど」
「そのようなコトが気になられるのですか?」

 短いため息のあと、アミンはやっと私の顔を見てくれた。
 しかし愛想の欠片もないその顔は、美しいだけあってキツク感じる。

「だってせっかくこの国に嫁ぐことになったのだもの。色んな方と仲良くなりたいし」
「そうですね……。でしたらワタシのような者ではなく、ルスト様のような方たちと仲良くされた方が良いかと」
「あら、なんで? あの方に役職があるから? それともアーザ様と仲が良いから」
「それもありますが、何よりあの方がウサギ族の方だからです」

 ウサギ族。
 確かにあの耳はウサギだったわね。
 メガネウサギって言ったら、絶対に怒られるだろうけど。
 ランドのせいで苦手なんだもの。

「ウサギ族だと何かいいことがあるの?」

 こてんと首をかしげる私に、驚いたようにアミンはその大きな瞳をさらに大きくさせた。

「ウサギですよ? ウサギ」
「ええ。で?」
「で、って」
「ウサギは何か偉いとか、そういう感じなの? 仲良くすると得するみたいな」
「いえ、そうではなくて。ヒトはああいうのが好きなのでしょう? モフモフの可愛らしい姿の」
「え、アレかわいいの? だってどう見ても性悪メガネウサ……」
「ルナティア様? 随分心外なことを言っておられるようですが?」

 短いノックのあと、ルストがこの部屋に戻ってきた。
 ああ、もう戻ってこないと思っていたから、つい本音が出てしまったわ。

「ああ、ごめんなさいね。悪気はないのよ? ただあなたが私の幼馴染にあまりに良く似ているから」
「だから苦手だとおっしゃるのですね」
「ええそうね。ごめんなさい」
「別に気にしないので大丈夫です。ですが、ウサギならどうですか?」

 まるでウサギなら絶対に可愛いだろうと言いたげなルスト表情。
 確かに、フワモフのウサギは人気があると思う。
 つぶらな瞳に、あの可愛い鼻。垂れ下がった耳も魅力的だ。

 とは思う。思うんだけど。

「ん-。そうね、可愛いんじゃないかしら?」
「なんであなたはそう、疑問形なんですか」

 なんでって言われても、これは好みの問題だと思うのよね。
 別に可愛くないって言ってるわけじゃないんだし、揚げ足とらなくてもいいのに。

「アミン、種族にも人気があるの?」
「もちろんです。ルスト様のウサギ族は近年、高い人気がございます。犬族と猫族が常にトップですが、ウサギ族と鳥族はそのすぐ下につけていますね」
「へー」

 やっぱりみんな、フワモフが好きなのね。
 人にもこの人が人気~みたいに、種族間でもあるっていうのはなんだか大変ね。
 
「もちろん我々は獣人であり、ペットとは別物ですが、皆完全に獣になることも出来ます。子どもなど幼い者は特に、人になることが難しく獣のままな者も普通です」
「へー。完全に獣というのは、先ほどのアーザ様みたいな感じね」
「そうです。それゆえに余計に、対立こそないものの種族はこの国では重要なのです」

 確かに。別種族間の婚姻だと、それが顕著に現れそうね。
 
「獣人って、いいわね。人と獣のいいとこどりじゃない。すごいわ」
「……本気でそれを言っておられますか?」

 静かなアミンの声には、やや棘があるように思えた。
 
「ええ。もちろんよ? だってどちらにもなれるって素敵じゃないの」
「それはルスト様のような種族だけにございます」

 ウサギねぇ。
 まぁ、可愛いわよ。
 だけどなぁ。そういうのは個人の好みだと思うんだけど。
 アミンを見ていると、ただそれを言葉にしただけでは通じないような気がする。

 それになんとなくだけど、アミンは自分に対してなのか自分の種族に対してなのか、大きなコンプレックスを抱えているようなのよね。

 だからこそ、ここは実力行使よ。

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