消え残るアクアマリン

清水レモン

いいところだな

 おれは、ここ。こっちの教室。
 記憶している受験番号が該当する。念のため、受験票を確認しようか。そう思ったけどやめた。
 カバンの中にしまってある。いちいちあけたくない。取り出してうっかり、ヒラヒラっと風に舞わせでもしたらどうする。
 危ない、危ない。
 またまた油断するところだった。
 なんのために受験番号を覚えてきたと思ってるんだ。
 脳内ひとりごとを放置したまま、おれは会場に入る…

 広かった。広い。しかも階段教室!
 ああ、それになんという窓、窓、窓、どれもおおきくて。
 透けている白いカーテンは巨大。
 ガラスは透明だから外の景色まるわかりだった。

 なんだよ、すごいたくさんの木々だな、おい!
 ほとんどが落葉樹。枝と幹だけ。それが線描画のように繊細で美しい。
 ここに来るとき咲いて見えていた梅は見当たらない。

 もしかするとその木々は桜だろうか、桜じゃないのかな、いやそれ桜だろう。
 おれの脳内で、ばあっと開花して咲き乱れる桜の映像。見たことないのに。

 いいところだな、とあらためて思った。

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