消え残るアクアマリン

清水レモン

あまりにもあっけなく

 もうとっくに通り過ぎてしまった校門を、あまりのあっけなさにおれは振り返ってしまう。
 見間違いでもないし、錯覚でもない。うっかり考え事してて無言スルーな通過でもなく。
 おれは確かに校門を通って学校の敷地に入ってきた、よ?

 急に恥ずかしくなってしまう。
 なんだよ、なんだよ、なんなんだ!
 おれは、おれは、別にさあ…
 
 恥ずかしい。握手を交わす準備をしていただなんて。
 もう消えたい。入試よりも握手に緊張していたのに。
 なんて言う、なんて答える、そもそも挨拶ってなにが正しい。
 そんなことを数日前から考えて脳内で予行練習しまくっていたというのに。

 『がんばれよ』
 『はい』
 『がんばってね』
 『はい』
 『大丈夫! 大丈夫だからな!!』
 『ありがとうございます』
 『実力を見せてやれ』
 『ハイッ』
 『おちついて! しっかりね! ふぁいとっ!』
 『おぅっ!!』

 なんなの、おれ。なんだったのあのシミュレーション意味ねえ…

 誰もいない、想像だけの花道は無機質なアスファルト&コンクリート。
 あまりにも、あっけなく。
 おれのドラマ初回が終了した。

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