消え残るアクアマリン

清水レモン

ひとまたぎで校門

 じっくり観察したいけど、体は迅速に通り過ぎたがっていた。
 レールを超える、ひとまたぎ。
 足元を見たとき、いつもと歩幅がちがうと感じた。なによりも静かな違和感がある。その正体それは。

 誰もいない。

 おれは脳裏で記憶を呼び寄せる。
 なあ、おい?
 塾や予備校の先生方が整列して待っていてくれるんじゃなかったのかい。

 誰に聞いた話。あるいはドラマかコミックか。いや、冷静に考えよう、おれはこの一年間ほとんどテレビを見ていない。電車に読み捨てられていたコミック雑誌ならペラペラめくったことがあるけど。

 じゃあ、おれのこの脳内イメージは、いったいなに!
 校門前に塾の先生が並んで受験生ひとりひとりと握手して送り出している、「がんばれよ」と声をかけ握手を交わし、なによりも満面の笑みで…
 
 なにもない。
 誰も、…いなかった。

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