消え残るアクアマリン

清水レモン

おれが戦う相手

 リラックスは正義。リラックスこそがスキルそのもの。
 リラックスして、ゆったりと硬直から解放された体はおれの意思と綿密に連携して動いてくれる。
 おれのIQは残念ながらかなり低いらしいが、いま備えているIQそのものをフル稼働できればそれでいい。
 おれが戦う相手は、能力の高いきわめて優秀なあいつらか。
 違うだろ。
 違うよな。

 あいつらはすぐマウントとってこちらを見下してヘラヘラ不気味な笑いを浮かべやがる。だがそれがどうした。忘れるなよ、あいつらだって人間だ。なんなら緊張することもあるらしい。っていうか、誰でも緊張にふるえ未来を案じて鬱になる要素を兼ね備えている。
 な?

 おれが倒すまでもない。勝手に自滅してくれる。
 おれと同じようにリラックスしてリミッター解除されるとそれはもうどうしようもない。どうしようもないことだけど、もしそういう状況になれることを知っている相手なら『友だち』になれる可能性がある。マウントとって見下してくるやつなんて、こっちから願い下げではあるけれど。
 友だち…か。
 悪くない響きだ。
 うん。どんなやつにもひとつくらいは、人に言えない秘密を持っていたりするものさ。その秘密をめぐる冒険においては、敵は味方になってくれたほうがストーリーが面白い。強力で嫌味なやつであればあるほど、ひとたび味方になってくれようものなら絶大なる無敵さを誇れるようになるだろう。まあ単純に、敵対し続けるよりも妥協でいいから表向きなんとか仲良くふるまえるほうが生きやすくなる。それだけのことさ。

 それだけのこと…か。うーさむ。

 ああ、寒い。

 まじ指先ヤバイ凍えてきてヤバめ。おれはカバンのジッパーを手で探る。慣れたもんさ、見なくても。ジジジーッと開けて、そう、このあたり。っていうところに手袋が入れてある。ほうら、あった。おれは手袋を取り出して、まずは左手それから右手に。
 って、なったところで、

 『うわっ! ヤバイ落ちる落ちる落ちる落ちちゃう、したたりおちて落ちてくる~』

 ってなった。鼻水な。すごく水っぽくてサラサラなやつ、あれ。
 つつつーって。
 瞬間的かつ反射的に、おれは静止する。
 制止できなかったサラサラ鼻水が千切れて落ちていった。
 砂利に、しみこむ。

 『…』

 まあ、いいさ。
 おれは装着途中の手袋を解除して脱ぎ、カバンに元通り戻した。

 ちなみにおれが戦う相手は…いや、もうそんなことどうでもいい。どうでもいいから気にしない。気にしないんだから、もう気にしないしホントどうでもいいんだってば!

コメント

  • 清水レモン

    【激しく補助席希望さま】
    ありがとうございます! 透明感のあるコメントいたみいります感激です!!
    アクアマリンの石言葉をベースに物語を進めています。
    ですから、綺麗だ澄み渡っていると言っていただけて感謝しかありません。
    ひらがなは同じ言葉でも手ざわりというか心ざわりを表現できる気がしているので、美しく感じましたなんて言われてとびあがる勢いの喜びです。
    ありがとうございます!!!

    2
コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品