消え残るアクアマリン

清水レモン

絶妙な違和感

 ジャリッ。


 『ん?』
 おれは絶妙な違和感を覚える。
 足元から聞こえる砂利の音。いやまあ普通に砂利道ってことなんだけど。それだけなんだけど。
 地図からは読み解けなかったな。
 なにしろ、恐れるべきは雪道だった。いつ雪が降ってもおかしくない天気なのは変わりがないが、天気予報は曇りときどき晴れ。降っても小雨程度だろう。ここ数日間まったく雪が降っていないから路面の凍結も心配ない。
 砂利道。ここ、この道って砂利道だったか。

 砂利なら凍結の心配がない。だったら滑りようもない。
 ふ…
 なんだなんだ、なあんだ。
 なんだよ、これ。むしろ幸先のいい舗道じゃないか。
 滑りようのない道。見たところどこも凍りついていない。
 ただひたすら線路沿いにまっすぐ、砂利道が続いている。それだけだった。

 ふぅーっ…
 無意識のうちに息を吐く時間が長くなっているような。
 白くなるのが面白かった。ふぅーっと吐いて息が広がる。もやのように、煙のように。

 『ああ、そういえばマスクしろって言われてたんだっけ。忘れてたよ?』

 思わずコートのポケットの中で手探り。
 うん、あった。マスクだ、あるあるある。
 つけるつもりはない、だがちゃんと持ってきているというこの安心感。
 どうだ、おれ。
 すごいだろ、準備万端でスキなどない。持つべきものは持ち備えている。

 しかも、どのタイミングでどのように使うのかは、おれの気持ちひとつ。自分次第だ。

 『当然だろ? 主役は、おれ。おれが主役で主人なんだ、いつどれをどのように使うか使わないかを決めるのはこの、おれ!』

 家族の誰かではない。
 塾の先生でもない。
 中学受験は私的な行動ゆえに義務教育課程の小学校が関与する余地などない。
 …いや、正確には少しあるな。内申書、あったし。でも、だからどうしたって?

 おれは、おれ。おれこそが、おれ。おれがおれを支配する。おれを支配していいのは、おれだけだ!

 ちがうか?


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